現場に寄り添う運用設計で全国4工場に導入、場内の滞留時間を最大で45%削減。現場と本社をつなぐきっかけにも 株式会社ロッテ

会社名
株式会社ロッテ
業種
メーカー
従業員数
2,299名(2025年3月31日現在)
所在地
東京都新宿区西新宿3-20-1
URL
https://www.lotte.co.jp/corporate/
ハコベル導入による成果 :

場内の滞留時間可視化と改善を目的に全国4工場へトラック簿を導入。現場・運送会社を巻き込んだ丁寧な運用設計で定着を実現し、場内滞留時間を最大で45%削減。データを通じた現場と本社の連携も強化された。

株式会社ロッテは、「独創的なアイデアとこころ動かす体験で 人と人をつなぎ、しあわせな未来をつくる」というパーパスのもと、多くの生活者に愛される菓子・アイスクリームなどの商品を届けています。それらの商品を送り出すのが全国4つの工場ですが、時には平均待機時間が120分を超えるなど物流効率化に向けた課題を抱えていました。

そこで2025年に「トラック簿」を導入。最大で場内滞留時間を45%削減されています。その背景には、現場と運送会社に寄り添った導入と運用の工夫がありました。当初の課題と導入にあたっての取り組み、今後の展望までを伺いました。

SCM本部 SCM戦略部 SCM企画課 課長 高橋 陽介 様
SCM本部 SCM戦略部 SCM企画課 佐々木 良 様

(以下、敬称略)


トラック簿を選んだ理由
(1)現場社員への負担が少ない「直感的なわかりやすさ」
(2)工場の既存の運用を活かせる「カスタマイズ性」
(3)運送会社の負担を減らせる予約枠設定機能



荷主企業として、運送会社の負担も減らすサプライチェーンの最適化を目指す


——SCM本部SCM戦略部SCM企画課の役割について教えてください。

高橋:ロッテ全社のパーパスに則り、SCM本部では「持続可能なサプライチェーンで、 人と人をつなぎしあわせを届ける」をパーパスに掲げています。私たちの考える「サプライチェーンの最適化」とは自分たちだけの都合ではなく、取引先様までを含めてのことで、「三方良し」の状態です。
SCM企画課はその中で、調達から生産・物流・販売に至るサプライチェーン全体の最適化を実現するための企画を立案・実行する部署です。最近では法改正への対応がメインの業務となっており、荷待ち・荷役時間の削減と積載率の向上に紐付く施策を中心に検討・推進しています。

佐々木:喫緊の課題として物流2024年問題を認識しており、荷主企業として、物流を支えていただいているパートナー企業の皆様やドライバー様が「無理なく、安全に、健康的に働ける環境」を整えようと取り組んできました。以前から「ホワイト物流推進運動」に合わせて取り組みは進めており、当社としても2019年には自主行動宣言を行っています。当時から荷待ち時間については課題として認識していましたが、2025年以降の法改正で必要性が高まり、社内を巻き込んでの改善の動きを進めやすくなりました。

SCM本部 SCM戦略部 SCM企画課 課長 高橋陽介 様



客観的なデータ活用による改善アクションを見据えた


——そうした中で、バース運用の効率化に向けたシステム導入を検討されたのですね。

高橋:自社工場での物流品質の向上を目指す上では、大きく3つのステップに課題を整理していました。①待機状況のタイムリーな把握、②4工場のデータの標準化、③客観的データに基づいたアクション、の3つです。

佐々木:そもそも当時は待機状況の可視化はほとんど進められておらず、工場によってExcelで管理しているところもあれば、紙やホワイトボードで運用しているところもありました。集計というよりは「この車両の待機時間が長い」など点での認識に留まっており、時には運送会社様からご意見をいただいて気付くといった受け身のケースもありました。ですからまずはその改善が最初の課題でした。

SCM本部 SCM戦略部 SCM企画課 佐々木良 様


高橋:データというのは、見方によって解釈が分かれてしまうことがあります。そのため、集計方法や報告の基準が拠点ごとに異なると、全社として最適化を検討する上で本当に見たい情報にアクセスできなくなるという懸念もありました。ボトルネックだけでなく横展開すべき良いポイントを見つける上でも、各拠点の情報をフラットに比較・検討できる状態が必要だったのです。

こうしてデータが可視化されると、課題に対する認識が現場内でも、現場と本社の間とでも揃います。荷待ち・荷役時間の削減においてバース運用の改善は重要な一手ではあるものの、それだけでなく設備投資を伴う動線の改善が必要な場合もあります。現場の実情や気付きに定量データを組み合わせることで、このような改善策の検討・推進に繋げたいと考え、システム導入を検討することになりました。


現場の声を最優先に、導入システムを選定


——「トラック簿」を評価いただいた決め手はなんですか。

佐々木:直感的に迷わず操作できる「わかりやすさ」と、各工場の運用ルールを活かせる「カスタマイズ性」が決め手です。現場社員にとっては今まで存在しなかったシステム操作が増えることになりますので、抵抗感があるのではないかと懸念していました。ですからその負担をなるべく抑えられるシステムであることが最も重要でした。
導入を進めるのは私たちSCM企画課でしたが、主に操作する現場社員の声を尊重しました。トップダウンで進めることだけはしないと意識し、コンペやシステム説明にも現場の社員に同席してもらって意見を集めました。

高橋:トップダウンで進めることも可能ではありますが、現場の気持ちを大切にしたかったのです。メーカーということもあり、現場の皆さんに気持ちよく商品を作ってもらいたいと思っています。最初に違和感や不満を持った状態で取り組みを始めると後々大きなズレとなりやすいので、ボトムアップで意見をもらって皆が納得した形で進めたいと考えていました。
コンペを経て「トラック簿」に対しては現場から「わかりやすい」「直感的に操作できる」という声が集まり、最も評価が高かったのですんなりと決まりましたね。


——カスタマイズ性を重視されたという点についても伺えますか?

佐々木:当社の場合、例えば工場によって自動倉庫システムを入れているところもあれば平置きのところもありますし、お菓子の工場とアイスの工場であれば温度管理が異なります。そうした理由から積込みにかかる時間も工場によってかなり幅がありますので、トラック1台あたりのカードの幅(注:予約枠1件あたりの時間設定)を工場ごとに調整しています。

また、工場によってお付き合いのある運送会社様の数も異なります。何社もの運送会社様の出入りがある工場では、運送会社様ごとに予約いただける枠を調整したカレンダーを作成し、予約業務のご負担を減らせるよう設定しました。

高橋:実は「トラック簿」の導入前に情報収集をする中で、運送会社様からは「バース予約システムが導入されたことで前日の深夜に予約を取らなければならなくなった」といったお声も聞いていました。早い者勝ちの予約枠ですとその運用となってしまい、仮に荷待ち時間を減らせたとしても運送会社様に新たな負担が発生してしまいます。「三方良し」を目指すなかでそれだけは絶対に避けたく、この点に配慮した運用ができるかどうかは非常に重視していました。


——導入にあたって留意されたことはありますか?

佐々木:何よりも、丁寧なコミュニケーションです。率直に言うと私たちも現場との距離がまだありましたので、工場の社員と直接顔を合わせて話すことで目線合わせを行いました。その上で工場の運用は変わらないこと、システム導入で見える化をすることによるメリットを伝えました。併せて、「管理強化」ではなく「ドライバー様の待機時間を減らし、選ばれる工場になること」が最終目的であるということを丁寧に説明しました。

高橋:運送会社様への説明も、直接訪問やWebミーティングを活用し丁寧に説明しました。最初に運送会社様にお話しした際には、予約業務が増える点に抵抗感を示される方もいらっしゃったので、社内で相当準備をして臨みました。

やはり予約が早い者勝ちになることや予約の工数が増えることを心配されており、その払拭が重要でした。そこで説明に伺う前に、社内で従来の紙やExcelの記録を分析して到着車両が少ない時間帯を見つけ出し、その部分を特定の運送会社様に割り当てるといった運用イメージまで組み立てました。その運送会社様は元々の運用でも長時間お待たせしてしまいがちでしたので、「これならできるかもしれない」と言っていただけました。


運用改善によって滞留時間が最大45%削減。現場と本社の距離も近づいた


——実際に導入されてからはいかがでしたか。

高橋:工場によりますが1〜3ヶ月ほどで運用が軌道に乗りました。現場とのコミュニケーションをとって改善を重ねた結果、場内滞留時間を最大で45%削減することができました。平均120分を超えていた拠点においても大幅な短縮を叶えるなど、効率的なバース運用を実現できています。

佐々木:数値的な成果も重要ですが、現場のストレスを軽減できたのも大きな成果だと感じています。車両の到着状況が一目で分かるため、自動倉庫の工場では到着した車両の荷物を予め出庫してスムーズに積み込みできる状態を整えられるようになるなど、業務効率の向上にもつながっています。

高橋:以前は当日あと何台トラックが来るかの見込みが立たなかったり、工場のスタッフが待機場まで行ってドライバー様にお声がけすることもあったりしたので、負担がかなり軽減されたようです。紙の受付簿ですと、電話番号の読み間違いなども起きていたようなので、それらがなくなったのは良かったと思います。

佐々木:SCM企画課の目線では「トラック簿」の導入を機に工場との対話を深められたのも有意義でした。導入にあたり現場に行って話を聞くことで、非常にコミュニケーションがスムーズになったと感じています。また「トラック簿」は設定の柔軟性が高いため、私の手元の画面設定で現場の相談に応えられることも多いです。その結果、色々な相談を気軽に寄せてもらえるようになりました。

高橋:私たちは普段本社にいるので、どうしても現場と距離ができてしまいがちですが、物流は現場の話です。現場の困りごとや気付きにヒントが隠れているので、率直な声を聞けることは非常に重要だと思います。「トラック簿」が、現場と本社をつなぐ役割を担ってくれていると感じています。

佐々木:画面だけ見ていても分からないことも多いので、特に関東の近場の工場には小まめに行くようにしています。こうした対話は「トラック簿」を導入してから格段に増えたと感じています。
最近だと、工場内のバースの役割変更に合わせた画面設定の変更なども行いましたし、運送会社様からのフィードバックをいただいて、工場と相談して予約カード(予約枠)の時間を変えたこともあります。現場の要望をその場で聞いて汲み取れることで、信頼関係を深めることができているのではないでしょうか。



物流パートナーとの共存共栄、「選ばれる荷主」を目指して


——今後取り組まれたいことはありますか。

高橋:私たちの目指す姿は「持続可能なサプライチェーンで、 人と人をつなぎしあわせを届ける」ことです。
今回の国内4工場への導入、そして滞留時間の削減は物流DXにおける大きな一歩ではありますが、これがゴールだとは考えていません。ようやく、未来に向けた基盤が整った段階であると認識しています。

全社としては以下の3つの視点から、さらに進化した物流のあり方を追求していきたいと考えています。

一つ目は、データ主導による「ロッテバリュー」のさらなる追求です。今回の導入によって蓄積されるようになった現場のリアルなデータを活用し、拠点間のシームレスな連携やさらなる業務効率化につなげていきたいですね。客観的な事実があるからこそ、次なる一手を確信を持って打つことができるのだと思います。

二つ目は、物流パートナーとの共存共栄です。物流環境が厳しさを増す中、荷主企業として選ばれ続けるためには、ドライバー様や運送会社様にとって「最も働きやすい環境」を提供し続けることが不可欠です。現場の負担軽減が、結果として安定供給を支え、お客様へ製品を届け続ける力になると信じています。

そして三つ目が、社会課題の解決と持続可能な未来への貢献です。車両の待機時間を減らすことは、CO2排出量の削減にも直結します。企業理念に基づき、地域社会や環境に対して新たな価値を提供し続けるためにも、環境負荷の少ないクリーンな物流体制をより強固なものにしていきたいですね。

佐々木:足元では「運用の自走化」を目指したいと考えています。現在はSCM企画課がデータを分析して工場に改善提案を行っていますが、将来的には工場側でデータをもとに改善の動きが進む状態が理想的です。

また、中長期計画の対応を進める中で新たな課題も見つかってきており、それらも着実に進めたいと考えています。意識しているのはドライバー様の目線です。1時間以上の待機、バラ積みバラ降ろしの荷役などは負担が大きいのでなるべく減らしたいなと。完全にゼロにするのは難しいかもしれませんが、可能な限り少なくして平準化することで、持続可能性を高めたいと考えています。
こうした構想においても、データがあることで「できない理由」をすり合わせたり優先順位をつけたりするコミュニケーションが円滑になるので、データ活用は今後より強化したいですね。


——最後に、ハコベルへの今後のご期待があればお聞かせください。

佐々木:現場で計測したデータをタイムリーにAIで予測したり改善提案などを受けられるような、システムの進化を期待したいです。現在もダッシュボード機能は活用していますが、日々の気付きを促すような機能があると、現場の自走化がよりスムーズになるのではないかと思います。

高橋:当社は運送会社様との共存共栄の関係を築きたいと考えています。「ロッテの荷物を最優先に運びたい」と言っていただける状態が理想です。ハコベルさんは予約枠の設定機能など、随所にそうした運送会社様の目線を大事にしやすい機能を実現してくれていますので、今後も物流の未来を一緒に考えていくパートナーとして共に進化していけたら嬉しいです。



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