先進的で高効率な倉庫設備を有する吉田海運ロジソリューションズは、小郡物流センターの稼働開始(2020年)に合わせ、遠隔受付ができる「トラック簿」を導入。待機スペースのない敷地の特性に対応したオペレーションを構築した。また、曜日ごとの受付件数や待機時間、積荷の内容など、トラック簿で取得できるデータは従業員のシフト最適化にも活用されている。
吉田海運ロジソリューションズは、吉田海運グループで運輸・倉庫業を担う総合物流企業です。同社は2020年、福岡県小郡市の大分自動車道小郡ICに程近い場所に、新しく小郡物流センターを開設しました。食品をメインに扱う3温度帯、かつ約4,500パレットの保管能力を持つ冷凍の自動倉庫、仕分け機器などを備えた、先進的な自動化設備が特徴です。
しかし、敷地内にトラックの待機スペースがなく、周辺道路への渋滞を避けるため、当初から遠隔受付システムの導入を前提に稼働を開始しました。導入から5年経った現在、現場ではどのように運用されているのか、物流事業部次長の新澤安武さん、小郡物流センターで責任者を務める係長の鷲津孝行さんにお話をうかがいました。
物流事業部 次長 新澤 安武様
北部九州低温エリア小郡ブロック 小郡物流センター 係長 鷲津 孝行様
(以下、敬称略)
トラック簿を選んだ理由
(1)敷地内にトラック待機場がなく、オペレーションに遠隔受付が必須だった
(2)コスト面で利点があった
左から、鷲津様、新澤様
——小郡物流センターにトラック簿を導入されたきっかけを教えてください。
新澤:小郡物流センターは立地の関係で敷地内にトラックの待機場を設置できず、事務所で受付をすると敷地外に待機列ができてしまい、周辺の通行に影響してしまう懸念がありました。そこで、センターに来る前にスマホでの遠隔受付をしてもらい、順次呼び出して入場してもらう流れをつくる必要がありました。小郡物流センターは、立ち上げの時点から遠隔受付システム導入を前提に開設されたのです。当時の料金体系で、特にコスト面で利点のあったトラック簿を選択しました。
荷物を搬入する運送会社さんには、事前にドライバーさんのスマホにトラック簿のアプリを入れて登録してもらうよう、稼働開始前からお願いをして準備を進めました。一方で、搬出のトラックは数が多く、比較的小型の車両が多いため、現在のところ遠隔受付はせずに普通に入場してもらっています。
——実際に、受付から退場までどのような手順で運用していらっしゃいますか?
鷲津:まず、トラックが近隣へ到着したら、ドライバーさんにアプリから「受付」操作をしてもらいます。その際に、荷主さんや積荷の情報も入力していただき、倉庫側はその内容に応じて荷下ろし先のバースを準備します。準備ができたら積卸現場のタブレットからドライバーさんを呼び出します。ドライバーさんは大体10〜15分程度で来られる場所に待機してくれているケースがほとんどです。
リフトに設置したタブレットで、待機しているドライバー様を呼び出す
トラックが入場して指定のバースへ接車したら、ドライバーさんには一度事務所へ来てもらいます。そこで事務員と納品伝票など書類のやり取りをしていただくのですが、その際に事務員側でタブレット上の「作業開始」のボタンをタップします。荷下ろしが終わったらもう一度事務所へ来てもらいますので、そこで「作業終了」を操作する、という流れです。
ドライバーさんが事務所に来たタイミングで、作業の開始・完了ボタンを操作する
——人の流れとシステム操作の流れが一致していて、無駄がありませんね。
鷲津:倉庫内にもタブレットはあるのですが、積み降ろしの作業をしながらだと操作を忘れてしまうこともあるので、荷下ろしの前後にドライバーさんに事務所へ来てもらうタイミングで操作するようにしています。私は以前別の倉庫勤務だったので稼働開始当時の詳しい状況はわからないのですが、事務所と現場でお互いにできることを模索して、改善されてきた結果が現在の形になっているのだと思います。
——ドライバーさんは、スマホによる遠隔受付を問題なく行っていらっしゃいますか?
鷲津:ほとんどのドライバーさんには遠隔で受付を済ませていただけますが、なかには遠隔受付ができずに直接事務所に来られるドライバーさんもいらっしゃいます。その場合は受付で手書きで入場時間や電話番号などを書いてもらい、待機できる場所に一度移動してもらってから、バースの準備ができたら電話で呼び出す形にしています。
事前に遠隔受付ができるように運送会社さんにアナウンスをしていますが、このような対応は一定数出てきてしまいますね。
——そのためにアナログな方法も残していらっしゃるのですね。逆に、トラック簿を活用してどのような利点を感じますか?
鷲津:やはり、荷卸しのトラックがあと何台あるのか、現場でも事務所でも一目でわかることが大きいですね。また、受付時に荷物の内容を入力してもらっているので、データの集計からおおよそ何曜日の何時頃に何の便が来るのかがわかり、予想される作業量に合わせて必要な人手を当てられるようシフトを組むことに役立っています。
——今後、さらに活用を進めていきたい点はありますか?
新澤:現在は入荷のトラックのみ遠隔受付を利用してもらっていますが、今後は出荷の方でも活用していければ、バースをより計画的に運用できるのではないかと思います。また小郡センターは2拠点あるので、その拠点間の連携も進めていきたいですね。
鷲津:トラック簿には直接関係ないのですが、冷凍冷蔵品はバラ積みが多いため、積み卸しに時間がかかるのに加えて、箱が変形しやすいために自動倉庫内の運搬時にエラーが発生しがちです。そうした理由でかかる時間もトラック簿の集計データに現れているので、今後は荷主さんの協力を得ながらパレット化などの対応を進めていきたいと考えています。
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