【セミナーレポート】世界初!新型物流ロボットが本稼働、ビームスの最先端自動化チャレンジ!!

【セミナーレポート】世界初!新型物流ロボットが本稼働、ビームスの最先端自動化チャレンジ!!

エルテックラボ代表の物流ジャーナリスト 菊田一郎氏をホストに毎月お届けしているハコベルウェビナー。2025年4月は、株式会社ビームスホールディングス ロジスティクス本部長 竹川誠氏をお迎えし、「世界初!新型物流ロボットが本稼働、ビームスの最先端自動化チャレンジ!!」と題して、2024年10月に稼働を開始したばかりの物流センター「江東区深川センター」の事例を中心に、ビームスの物流改革についてお話しいただきました。

この記事でわかること

  • 持続可能な物流を可能にするために必要なこととは
  • ビームスが誇る新物流拠点の“最先端自動化システム導入”の背景

株式会社ビームスホールディングス

ロジスティクス本部 本部長

竹川 誠 氏

1997年、株式会社ビームスへ新卒入社。

2002年、社内物流WMS構築、2004年物流改革プロジェクトに参画。

2010年、基幹システム刷新プロジェクトのプロジェクトリーダーを経て、

2012年より、RFID導入プロジェクトマネジャーとして、RFIDの全店舗展開を完結。

2016年には、自社オンラインEC物流の内製化を推進し、在庫一元管理を実現させました。

2020年、コロナなどのリスク分散を目的に、BCP関西物流センターを開設。

2024年10月、現職にて深川センターを開設し、次世代物流を推進中です。


エルテックラボ L-Tech Lab

菊田 一郎 氏

1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年間勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体役員等を兼務歴任。この間、国内・欧米・アジアの物流現場・企業取材は約1,000件、講演・寄稿など外部発信多数。

2020年6月に独立し現職に至る。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化/DX、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスし、著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。17年6月より株式会社大田花き 社外取締役、20年6月より23年5月まで株式会社日本海事新聞社顧問、20年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル株式会社顧問。著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。




生産年齢人口が減少する時代に、物流を持続可能にするために

セミナー冒頭、菊田氏による前ぶり解説では、「アパレル物流持続可能化の要件と、いま必要な取り組み」をテーマに、物流の革新に向けた取り組みの重要性が述べられました。

物流革新の最終的な目的は、物流と地球社会を持続可能にすることであると、菊田氏は説きます。そして、「働く人の環境保全」と「地球と社会の環境保全」がその鍵になることを、菊田氏は繰り返し主張しています。

背景には、構造的な人手不足の問題があります。生産年齢人口がもっとも多かった1995年前後、バブル崩壊からの就職氷河期で産業が冷え込んだ時期に、旧・物流二法が施行されたことで運送業への参入障壁が大幅に下がり、運送業者は増えるのに運ぶ荷物がない、という状況が生まれてしまいました。これが物流のレッドオーシャン化を招き、現在の物流危機を招く要因となったのです。

そこから30年。人口減少および生産年齢人口の減少を迎えるこの時代に、物流と地球社会を持続可能にするために何が求められるのでしょうか。菊田氏が訴えているのが、地球の環境保全に貢献する「グリーン物流」、働く人の環境を保全する「ホワイト物流」、そして自動化・効率化を進める「物流DX」の3点です。

こうした環境において、物流企業が取り組むべきは「働く人に選ばれる」物流会社になること。そして、荷主企業が取り組むべきは「物流会社に選ばれる」荷主になることです。物流危機回避のために、2025年4月に改正物流二法が施行されました。荷主・物流事業者に課せられる義務(努力義務)の着実な実施が急務となっています。




10年後の物流を描く、ビームスの「LX-プロジェクト」


続いて、株式会社ビームスホールディングス ロジスティクス本部 本部長の竹川誠氏が登壇し、ビームスが取り組む物流DXと、具体的な導入事例および成果が紹介されました。

ビームスは、アパレルとセレクトショップのブランドとして全国に約150の店舗を展開します。店舗への商品供給と、EC購入のお客様へお届けする商品は、東京都江東区の深川センターと、大阪府交野市の交野センターの2カ所の物流センターが担っています。今回のセミナーで主に紹介されたのは、深川センターの事例です。ここは、同社が2004年から運用してきた江東区東陽町と南砂のセンターを統合する形で、2024年10月に運用が開始されました。

竹川氏は、ビームスの物流には4つの特徴があると述べました。それは、「自社で運営管理をしていること」「ロボティクス化に積極的に取り組んでいること」「RFIDを活用して高精度・効率的な作業を実現していること」「自社ECの物流を内製化していること」です。

では、最新の深川センターはどのような戦略を持って立ち上げられたのでしょうか。同社では2021年、センター移転に向けた全社プロジェクト「LX-プロジェクト」が始動しました。LXとは「ロジスティクストランスフォーメーション」のことです。プロジェクトのキーワードは「描く」「捨てる」「活かす」の3つでした。

「描く」は、10年後の事業を想定し、物流戦略のあるべき姿を構想することです。目先の作業改善に留まるものではありません。「捨てる」は、それまでの手法が本当に最適なのかを問い直す姿勢です。20年前から続けてきた“当たり前”を見直し、最適解を探ります。そして「活かす」は、これまで同社が培ってきた強みやノウハウを再定義して、再び用いることです。東陽町センターが積み上げてきた実績を超えるDXプランが目標とされました。

「この3つのアプローチの答えとして行き着いたのが、『サステナブル・パーク』という新たな物流戦略です。まだ一部進行中ではありますが、徐々に形になってきています。機能・人・サステナブルという3つの軸をもとに、未来視点で考えた戦略です」(竹川氏)

サステナブル・パーク構想は5つの要素から成ります。竹川氏は今回、このうち「システム/デジタルとの協働」という要素をピックアップし、具体的な機器の導入事例や成果を紹介しました。中心となったのはロボティクス化とRFID活用のブラッシュアップです。


「システム/デジタルとの協働」を実現する、WMSとロボティクス化

最初の課題は、拡張性が高く他のシステムと柔軟に連携できるWMS(倉庫管理システム)の構築でした。

従来のWMSは、WCS(倉庫設備制御システム)と接続しながらも機能は分離しており、情報の二重管理が発生していました。同社は新たに、WMSの中で全てを管理する仕組みを構築し、これをWES(倉庫運用管理システム)と定義。倉庫管理とマテハンのシームレスな接続を実現しました。

次の課題は、庫内作業のロボティクス化とDX推進により、物流人材を循環型事業へシフトさせることでした。人材リソースの最大化と機能的価値の向上が目的です。

2030年には国内で644万人の人手不足が見込まれています。この課題に対して同社は、今後10年の人手対策は必須事項であり、それはすなわち「ロボティクスシフトによる生産性向上が必要」であると考えて取り組みを進めてきました。しかし、生産性向上だけでは不足する人手を十分に補えません。

「(人手対策として)働く女性を増やす、シニアを増やす、外国人を増やす、そしてロボティクス化で生産性を上げるという4つが考えられます。今回のロボティクス化では操作性やユーザーインタフェース(UI)に配慮し、誰でも操作できるようにすることを重視しました。他の3つの人手対策を、より効果的に推進することを念頭に置いたロボティクス化なのです」(竹川氏)

ここからは実際に深川センターで活用されているさまざまな機器の様子が、動画とともに紹介されました。

注目ポイントの1つが「HaiPick SYSTEM」です。これは、ACR(Autonomous Case-handling Robot)が倉庫内を自律走行し、商品棚からのピッキングや保管を行う自律型ロボットシステムです。

竹川氏は、物流センターで最も工数がかかるのは保管とピッキングだと指摘します。現場には、人手がかかり歩行距離が長くなること、保管場所把握に熟練が求められるといった課題がありました。しかし、HaiPick SYSTEMの導入によってピッキングと棚入れの自動化が実現し、作業工数の最大の削減になったと言います。高密度保管が可能で、拡張性が高いことも強みです。

2つ目は「CUEBUS(キューバス)」です。世界初のリニアモーターを使用した立体ロボット倉庫で、独自開発のリニアモーターユニットを床面側に設置することで、バッテリーなし・モーターなしで棚を移動させる仕組みです。秒速3メートルの高速搬送を可能とし、決定的な解決策がなかったZラック(ハンガー用ラック)の搬送手段として、荷受け現場の高速化に大きく貢献しています。

他にも、出荷先別(店舗/EC)に高速分配するソータ、自社EC出荷用の自動封函機「e-Cube」、RFIDタグを読んでお客様情報を呼び出す送り状自動貼付機などが紹介されました。




ロボティクス化で「おもてなし物流」にも成果

最後に、同社が「おもてなし物流」として取り組んできた、EC物流内製化の改善成果が紹介されました。ロボティクス化はここにも大きく寄与しています。行程順に見ていきましょう。

1)ピッキング作業

フラット品(たたんで入出庫する商品)は、HaiPick SYSTEM導入によりゼロピッキングを実現。ハンガー品や大物は従前の通り、RFID読み取り端末を使ったピッキングスキャンで効率化。



2)製品検品・物流加工

出荷されたことのない商品(新品)を優先的にECへ回す。出荷サイズを統一するためにたたみ直し、リアル店舗のスタッフと同じ気持ちで検品を実施。B品返品率を4%以下に抑えている。



3)複数購入荷合わせ

DAS(デジタルアソートシステム)を導入。作業者が読み取り端末にRFIDをかざすと、32オーダーバッジの棚のうち該当するオーダーの棚が光って投入を指示。間違って投入するとエラーが表示される仕組み。1時間あたり600点の分配を実現。



4)納品書・送り状発行

納品書はすでに廃止済みで、返品連絡票もオンライン化を検討中。送り状は自動発行・貼付機を導入し、印刷コスト削減と梱包スピードアップを実現。



5)梱包

段ボールケースの高さを自動調整する包装システムe-Cubeを、以前のセンターから継続して使用。商品の厚みを計測して自動封緘するため、最適な箱サイズを実現し積載率も向上。

今回紹介されたように、システムと人との協働によって持続可能な物流をつくる同社の取り組みは、物流効率化だけでなく同時に顧客体験(CX)向上にもつながる物流改善として成果を上げているのです。



◇◇◇

ハコベルでは定期的に各種セミナーを開催しております。

以下よりご確認いただき、ぜひご参加ください!

三菱倉庫の「サステナビリティ経営」に学ぶ、脱炭素物流のかたち法改定からみるトラック予約受付システム「トラック簿」の必要性と活用方法
シェアシェア

おすすめ記事