【セミナーレポート】<スギ薬局グループ>社会課題解決型の次世代ロジスティクス構築でドラッグストア業界をけん引!

【セミナーレポート】<スギ薬局グループ>社会課題解決型の次世代ロジスティクス構築でドラッグストア業界をけん引!

ハコベルでは、エルテックラボ代表の物流ジャーナリスト 菊田一郎氏をホストに、毎月ウェビナーをお届けしています。今回のゲストは、堅調な成長を続けるスギ薬局グループの北川信之様。AI・DX活用などこれまでの取り組みと、激甚化する自然災害や高温化などを見据えた今後について伺いました。

この記事でわかること

  • スギホールディングスの成長戦略・仕組み作りについて
  • AI・DXの活用方法について
  • 今後の取り組み「社会課題解決型の次世代ロジスティクス」について

スギホールディングス株式会社 スギ核ネット推進統括部 担当部長 兼 株式会社スギ薬局 ロジスティクス本部 担当部長

北川 信之 氏

大学卒業後、大手小売業に入社して食品のバイヤー職を経験。スギ薬局に転職後も引き続き食品バイヤーをやりながら、プロジェクトリーダー、物流部長、ロジスティクス統括部長などを歴任。2026年3月よりスギホールディングス株式会社に異動し、グループ会社のPMI業務を中心に従事。ロジスティクス経営士、国際物流管理士、運行管理者資格を保有。


エルテックラボ L-Tech Lab 代表

物流ジャーナリスト 菊田 一郎 氏

1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年間勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体役員等を兼務歴任。この間、国内・欧米・アジアの物流現場・企業取材は1,000件以上、講演・寄稿など外部発信多数。

2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化/DX、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスし、著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。17年6月より株式会社大田花き 社外取締役、20年6月より23年5月まで株式会社日本海事新聞社顧問、20年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル㈱顧問。著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。



菊田氏の聞きどころ解説

はじめに菊田氏が、現在の物流危機に至る歴史的背景を解説しました。

日本はこの半世紀余りで物流危機を3度経験。その都度、政府は対応策を実施してきました。1回目は高度経済成長期。1964年の一貫パレチゼーションの推進などで対応しました。2回目はバブル経済期の1990年。旧物流2法を施行して規制緩和を断行しましたが、直後にバブルがはじけて運送市場はレッドオーシャン化。4万者だった事業者が63,000者にまで増え、その後30年続く運賃のたたき合いと過度なサービス合戦が始まりました。

この物流暗黒時代の中で1995年に生産年齢人口のピークが訪れますが、世の中はバブル崩壊による就職氷河期に入っていました。その後およそ25年を経た2021年の国税調査では、生産年齢人口が約1,300万人減少。2040年前後までは、総人口の減少スピードより生産年齢人口の減少の方が速いため、しばらくは超人手不足時代が続きます。




そして今、私たちは3度目の物流危機に直面し、昨年から怒涛の規制強化が始まっています。幸い「物流2024年問題」は危惧されたほど大きな問題にはなりませんでした。しかし、「2030年問題」はある程度避けられないと言われ、対応が喫緊の課題となっています。

菊田氏は「請負階層2次までなどのルールに加え、一方的な価格決定などへの規制強化が発荷主に適用され、ドライバーの積み下ろしなどの無償作業に依存していた着荷主にも善処の義務が課されそうです」と、さらに強まる規制について言及。このような厳しい現状に、スギ薬局グループはどんな解決策を講じているのでしょうか?スギ薬局ホールディングス株式会社の北川信之氏にお話をおうかがいしてみましょう。



はじめに ~企業のご紹介

北川氏が登壇し、所属企業の紹介から本編がスタートしました。スギ薬局は愛知県の西尾市で誕生。「地域社会への貢献」を理念に、全国に2,185店舗を展開しています(2025年2月末時点)。2025年度には、目標としていたグループ売上高1兆円を1年前倒しで達成。北川氏は、「新しい仲間がグループにたくさん入ってきてくれたおかげ」と感謝します。

ドラッグストアの市場規模が拡大する中、同グループは「トータルヘルスケア戦略」を打ち出し、セルフケアから医療・服薬、介護・生活支援まで、生涯を通じて人々の健康を支援することをめざしています。


今までの取り組み~成長戦略、仕組み作り、AI・DXの活用、感謝の気持ち

次に、これまで同社が実施してきたさまざまな取り組みを振り返ります。まずは成長戦略を見ていきましょう。


2016年に、スギ薬局は本社を愛知県大府市に移しました。4階が執務室で下の3フロアが物流センター(大府センター)という造りで、物流現場への理解を深めるためにスギ薬局とグループ会社の社員がセンターを運営。物流を重視する企業であることを示しています。本部の社員がすぐに物流現場に駆け付けられる点も強みです。

そして仕組み作り。国が推進する「ホワイト物流」に賛同して2021年8月に自主行動を宣言。バース予約受付システムの導入や契約の書面化などへの取り組みを事前に発表しました。ドラッグストア業界では先進的だったこの行動のきっかけは、大府センターに待機車両が多かったことでした。

「4階の執務室からたくさんの待機車両が見えていたので、何もしないわけにはいきませんでした。対策を取らなければならないことは明らかだったので、あえて実施前に社内外に発信しました。宣言すればやらざるを得なくなりますから」と北川氏は真意を明かします。

最もこだわったのは作業手順の標準化。全センターのデータに整合性が生まれ、統一KPIで業務レベルを比較できるようになる。そこに大きな価値を見出したといいます。


「全国に約30あるスギ薬局の物流センターのうち、自社運営できているのは大府センターだけ。他の拠点の運営は物流会社さんに委託しています。しかし本部はすべてのセンターの動きも把握する必要がありました。委託先は物流のプロ。みなさん誇りを持って働いていらっしゃるので、物流が本業ではないスギ薬局が運営する大府センターよりKPIが下回るなど認められません。心に火が点きます。

標準化によって、集約率や店着時間順守率などを比べられるようになると、センター間で健全な競争が生まれました。毎月センター長を集めて開く会議では、全拠点のKPIを共有。成果のあった改善策などを報告し合い、互いに高め合っています。」

「愚直に毎月継続することで品質・効率を維持しています。業務プロセスが標準化されているので、センターが新設されてもすぐに他のセンターの業務レベルに追いつけます」と北川氏はノウハウ共有の意義を強調します。

物販売上の10%を占めるプライベートブランドの強化に伴い、ガバナンスを考慮した組織編成を行いました。商品開発部門ではなくロジスティクス部門内に品質管理の部署を設置。開発・製造と品質管理を分離することで、独立したチェック体制を確立しました。さらに2026年4月には、小売業では唯一ISO9001認証を取得。プライベートブランドへの本気度を示しました。


効率化に欠かせないAI・DXの活用も積極的に進めてきました。1つはバース予約システムです。2021年5月に導入すると、2時間以上の待機車両が即座に19%から2.5%まで減りました。そして同じシステムを全センターに導入して競い合うことで、さらなる削減に成功。5年かけて、2時間以上の待機車両2.5%を30分の待機車両0.34%まで減らしました。

予約システムは非常に効果的ですが、魔法の箱ではありません。ゼロに近づけるには運用が大事です。使いこなすだけでなく、毎日状況を見続けて使い倒すくらいの気持ちが必要です。


2つめは動態管理システムです。2024年3月に導入し、物流会社に委託している配送業務を可視化。多重下請け構造によるブラックボックスが解消されて納品時間が分かるようになりました。「店舗への納品時間は近隣住民との約束でもあるため、本来100%であるべきです。そこが9割未満の達成率だったことも、システムを入れて初めてわかりました」と北川氏。その後の継続的なモニタリングと健全な競争で、時間指定順守率も開店1時間前納品順守率も向上しました。


「最終的な判断を下すのは現場でも、同じ情報を見て話すことが大事だ」と考え、3年ほど前には天気予報と交通情報を確認できるシステムを全センターに導入。センターと本社で同じ判断材料を見て話せるようになり、台風や大雨の際にも意思疎通がしやすくなりました。


さまざまな取り組みを振り返った北川氏は、「年商1兆円の実現は、多くの方々の支援のおかげ」と感謝の意を表しました。同社では年に1回センター長を集め、KPIの達成度に基づいて各部門を表彰。社長自ら表彰状を授与して感謝の言葉を伝え、ドライバー個人にも感謝状を進呈しています。

物流に対する意識が高い会社であることを示す意味もありますし、今後も成長を続けるためには、さらに仲間を増やさなければいけません。DX・AIを活用する時代にあっても、一番大切なのはお世話になっている人々への感謝や敬意です。


今後の取り組み~社会課題解決型の次世代ロジスティクス



最後に、今後の取り組みを「人手不足」「自然災害」「気温変化」の社会課題別に紹介します。人手不足対策の1つは、納品リードタイムの延長です。発注当日に納品だった従来のリードタイムを1日延長することで、取引先の負担を緩和するとともにセンター運営も効率化。「これは我々荷主が言わないと進みません。まだ実証試験中ですが、標準化を進める予定です」と北川氏は話します。


2つめの対策は“運ばない物流”。物流センターが入っている建物に仕入れ先企業に入居してもらい、トラックによる配送をなくす革新的なモデルです。配送業務も不要となり、取引先の負担を大きく軽減できます。

「これまでは自社の都合だけで拠点を選定していましたが、今後は仕入れ先にとっても都合の良いところを探すことが重要です。すでに拠点一体化の例はあり、大手荷主が果たすべき責任として今後広がっていくでしょう」

3つめの対策は配車の自動化です。委託先の物流会社に自動配車システムを提供することで、属人的で作業負担の大きい配車業務のデジタル化をめざしています。まだテスト中ですが、標準装備にしたい考えです。


スギ薬局は生活インフラ拠点であり、医療提供施設。豪雨や地震といった自然災害に対しては、各センターが稼働不能となった場合を想定して備えています。1週間は被災したセンターの3割を近隣のセンターが代替し、130%の物量に対応(上図の左)。代替分を運搬するベンダー、薬やオムツなど優先する商品も決めてあります。

長期化した場合(上図の右)は、被災拠点の受け持ち分を該当エリアの全センターに振り分けて対応予定。年に1回ベンダー、物流会社、荷主らで訓練を実施しています。システムもこれらのパターンを組み込み済みです。地区に1つしかないため災害に脆弱な物流センターを強化することで、サプライチェーン全体の強化を図っています。


地球温暖化による夏場の高温。この気温変化に対しては、数年かけて大規模な対策を検討しています。北川氏はコールドチェーンを「生産者とお客様・患者様をつなぐ巨大な冷蔵庫」と表現。その上で、「医薬品、一部では調剤薬の取り扱いもあるスギ薬局では、流通過程の温度逸脱はあってはなりません。しかし、現状はまだ盤石な温度管理体制とは言い切れません。」とコメントしました。


対応策の1つは、物流センターの改築と供給ルートの最適化です。具体的には、ドックシェルターの設置による完全な外気遮断と温度管理、空調設備の刷新、などを検討。外部環境に左右されない温度管理体制の実現をめざします。そしてもう1つが最新の保冷輸送ツールと運用ルールの整備。トレーサビリティも確保し、厳格な輸送・保管プロセスを構築していきます。

「すぐにはできませんが、数年かけてすべて実現していきます。今日こうして発表してしまいましたから、やらざるを得ません」と笑う北川氏。自ら宣言して実行せざるを得ない状況に追い込む同社の取り組み姿勢は、改革を推し進めるヒントになったのではないでしょうか。

最後に北川氏は「さらなる成長をめざすにはシステムなどインフラ整備が不可欠ですし、資本関係や取引関係のある仲間の存在はますます重要になっていきます。今後も仲間を感動させ、自分自身も感動できるような仕事をしていきたいと思います」と締めくくりました。






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