マテハンの基本と役割とは?導入で得られるメリットと事例解説

マテハンの基本と役割とは?導入で得られるメリットと事例解説

物流業界は、労働力の減少や労働環境の悪化、人件費・燃料費の高騰など、さまざまな課題を抱えています。一方、EC市場の拡大に伴い、さらなる効率性やスピード化が求められています。このような状況に対応するためには、マテハンの活用が重要となるでしょう。


経済産業省もマテハンを業界内へ浸透させるため、標準化、ルール化に取り組んでいます。(※)今後、物流業界ではマテハンの導入が活発化していくと考えられるでしょう。


本記事では、マテハンの基本的な役割、物流業務における重要性やマテハン機器の導入メリット、導入事例などについて解説します。


※出典:経済産業省,物流倉庫で活用される自動化・デジタル化技術の国際展開に向けたルール形成戦略に係る調査,p4-5

この記事でわかること

  • マテハンの基礎知識
  • マテハン活用の事例

1. マテハンとは何か

マテハンとは、マテリアルハンドリング(Material Handling)の略称です。JISでは荷役や運搬を指し、具体的には「モノ」を比較的短い距離に移動させる作業、つまり積卸し、運搬、積付け、ピッキング、仕分け、荷ぞろえなどの作業及びこれに付随する作業と定義されています。(※)


一般的には、これらの作業を含め物流業務を効率化することを指す場合が多いでしょう。ここでは、マテハンの概要や役割について解説します。


※出典元:JIS(日本産業規格),物流用語,p6

マテハンの概要

マテハンの目的は、物流現場や製造現場において、入庫、出庫、保管などの業務全般を効率的に管理することです。時間短縮、コスト削減、作業効率化などの効果が期待できるため、企業の競争力を高めるための重要な基盤となります。

物流業務における役割

マテハンには4つの基本原則が存在しています。この基本原則に従うことで、作業の効率化、省人化、生産性の向上などが実現可能です。

マテハンの基本原則

説明

活性荷物の原則

梱包を標準化し、作業者が荷物を動かしやすい状態に保つこと

自重軽減の原則

重量を分散したり軽量な素材を使用したりして、作業者の負担を軽減すること

重力化の原則

荷物の搬送や移動は、可能な限り重力を利用すること

継ぎ目の原則

搬送や移動のプロセスの継ぎ目を最小限にすること




2.マテハン機器の主な種類と機能

マテハン機器とは、工場や倉庫、物流センターなどで、物品や製品を移動、保管、積卸し、仕分けするための機器や装置の総称です。次のような種類に分けることができます。


マテハン機器の主な種類

搬送・昇降機器

フォークリフト、ドッグレベラー、パレタイザー/デパレタイザー、無人搬送車(AGV)、自律走行搬送ロボット(AMR)など

仕分け・保管機器

コンベア、オートラベラー、ソーターなど

ピッキング・出荷用機器

デジタルピッキングシステム、自動製函機、ピッキングロボット、ピッキングカートなど



搬送・昇降機器

搬送・昇降機器とは、製品や材料を工場内で運搬したり、重い物や高い場所にある物品を積上げたり積卸したりするための機器です。

※出典:国土交通省,トラックドライバーの長時間労働の是正と適正取引構築のために


荷物を載せるフォーク部分と、荷物を上げ下げするマスト部分を備えた運搬車両です。

ドッグレベラー

※出典:国土交通省,スワップボディコンテナ 運用説明,p9


トラックの積卸し作業をする際に、荷台と床の高低差を解消するための機器です。高さ調節の方式には、エア式、機械式、油圧式などの種類があります。

パレタイザー/デパレタイザー

※出典:国土交通省,物流DX導入事例集,p7


パレットの上に荷物を積上げる機器がパレタイザーです。低床式パレタイザー、高床式パレタイザー、パレタイジングロボットなどの種類があります。

一方、パレットの上に積上げられている荷物を卸す機器がデパレタイザーです。

無人搬送車(AGV)

※出典:国土交通省,搬送技術の現状について,p2


AGV(Automatic Guided Vehicle)は、無人で荷物を運ぶ車両です。

床に敷設した磁気テープや線を感知して走行する方式や、周囲の反射板やマーカーにレーザーを照射して自己位置を把握しながら移動する方式などの種類があります。

自律走行搬送ロボット(AMR)

※出典:国土交通省,倉庫業から観る物流の現状と今後について,p10


AMR(Autonomous Mobile Robot)とは、人と協働することを目的にした走行ロボットです。位置を特定できる機能や障害物を検知するセンサーなどにより、障害物を避けて目的位置に移動できます。

仕分け・保管機器

仕分け機器とは、荷物や部品を出荷先や製造現場ごとに仕分けする機器です。

保管機器は、製品や部品の効率的な保管を目的とした機器です。

コンベア

※出典:国土交通省,搬送技術の現状について,p2


荷物を一定の速度で搬送する機器です。ベルト式やローラー式などの種類があります。

オートラベラー

※出典:経済産業省,RFID技術を活用したビジネスの事例集,p39


コンベアラインで搬送している荷物に、目的のラベルを印刷して自動で貼り付けていく機器です。

ソーター

※出典:国土交通省,物流施設の自動化の現状について,p5


出荷先ごとに荷物を自動で仕分ける機器です。ポップアップ式、クロスベルト式、パン式、スライドシュー式など、さまざまなタイプがあります。

ピッキング・出荷用機器

ピッキング機器とは、対象の商品を選択する機器です。

出荷用機器とは、ダンボール組み立てなどの出荷準備作業を行う機器です。

デジタルピッキングシステム

※出典:国土交通省,物流総合効率化法「総合効率化計画」認定申請の手引き,p15


作業者のピッキング作業を支援するためのシステムです。表示機に商品の種類や数を表示し、作業効率を向上させます。

自動製函機

ダンボールの組み立て、テープ貼りを自動で行う機器です。


3. マテハン機器の導入メリット

マテハン機器を導入することで、さまざまなメリットが得られます。ここではどのようなメリットが得られるのかを解説します。

業務効率の向上

搬送・仕分け機器などにより、作業が自動化されることで時間短縮、生産性の向上が可能です。例えば無人搬送車(AGV)を導入することで24時間の稼働が可能となり、生産性の向上が実現できます。

コスト削減効果

業務を担当する作業員を減らすことが可能となり、人的コストの削減につながります。新規作業員の採用や教育にかかるコストも抑えることが可能です。労働力不足の解消にも役立てられるでしょう。

作業の安全性向上

作業員による重量物の運搬作業など危険な作業が自動化できるため、事故のリスクを低減することができます。労働環境の改善と安全性の向上が実現可能です。

品質管理の向上

運搬時の不注意による荷物の落下や破損などのミスが無くなるため、品質の向上が期待できます。また在庫管理や製品管理を自動化することで情報が正確となり、運搬や仕分け時のミスが減少します。


4.  マテハン技術による業務効率化事例

マテハンを導入することで多くの企業が成果を出しています。ここでは、マテハンの導入事例や効果について紹介します。

事例1:荷下ろし作業を自動化

パレット上の荷物を自動で荷下ろしするデパレタイザーを導入した事例です。

背景

1日あたり1万ケースもの商品を作業員が手作業でパレット上からコンベアに投入している。ケースの大きさや重さには複数の種類があり、重労働となっていた。

導入技術

複数種類のケースを自動で荷下ろしができるデパレタイザーを導入。

効果

さまざまな形状のケースが混在している場合でも、問題なく荷下ろしが可能。

1時間あたり400〜450ケースの荷降ろしを安定的に自動化できている。作業員の負担も大幅に軽減された。

企業名

坂塲商店

※出典:国土交通省,物流DX導入事例集,p7

事例2:工場内の搬送を自動化

この事例では、自律移動機能を搭載したロボットを導入し、工場内の搬送を自動化することで省人化を実現しています。

背景

増産によって人手が不足している中、新設工場内での搬送時間が大幅にかかるようになった。

導入技術

自律移動機能が搭載された台車型物流支援ロボットを導入。

フレキシブルなルート設定、人の後ろを追従する機能、台車を牽引する機能などを搭載。

効果

搬送業務が完全に自動化となり、作業員が不要となった。

3名分の省人化の効果がある。

企業名

ライジング

※出典:国土交通省,物流DX導入事例集,p8

事例3:入出庫作業の生産性を向上

この事例では、ハンドリフト牽引型の無人搬送車(AGV)を導入し、入出庫搬送を自動化することで作業員の負担を軽減しています。

背景

入出庫搬送作業では往復で最長500m移動する必要があり、作業者の負担となっていた。

導入技術

AGVを導入し、カゴ車搬送ユニットやコンベアユニットなどを付けることで、さまざまな種類の荷物が自動で搬送可能となった。

効果

工場の生産性が15%向上した。また2名相当の省人化の効果があった。

入出庫搬送による作業員の負担が軽減された。

企業名

ダイキン工業

※出典:国土交通省,物流DX導入事例集,p9


5. まとめ

マテハンを導入することで、物流や製造現場での各業務を効率的に管理し、時間短縮やコスト削減、作業効率の向上が実現可能です。また作業員の負担軽減や、安全の確保にも役立ちます。

労働力不足が深刻な問題となっている現状において、効果的な対策と言えるでしょう。マテハンの導入を検討してみてはいかがでしょうか。





2025年「物流持続可能性の危機」を乗り越える!
~「2024 年問題・運命の日」と改正物流法、働く人と地球の環境保全~25年1月最新情報!法改正の概要から対応策まで徹底的に解説します!
シェアシェア

おすすめ記事