物流業界では、かつてないほど「トラック予約受付システム」への注目が集まっています。その背景には、政府方針で示された「荷待ち・荷役時間の削減の具体的な数値目標」や、その対応策として「トラック予約受付システムの導入」が推奨されているため。いよいよドライバー不足が深刻化する状況下において、物流効率化への対策はもはや待ったなし!と言える現在。
そこでハコベルでは、去る2024年11月14日にオンラインセミナーを開催し「トラック簿」事業部の営業グループ マネージャーである小窪 亘が登壇のうえ、「荷待ち・荷役時間削減の実態」についてお話しました。トラック予約受付システムを導入すれば、荷待ち・荷役時間は解決するのか?それとも…? 担当者自らが “ システム万能論 ” に対するアンサーをじっくり解説しました。
まずは「トラック予約受付システムとは」をおさらいします。「機能は大きく受付と予約に分かれます。ドライバー様が倉庫に到着し、タブレットやスマホなど電子的媒体で受付をする。これが受付機能です。これまで紙でしか残らなかった受付・退場のデータを、手軽に確実に蓄積することを目的とした使い方です。もう一方の予約機能とは、ドライバー様または運送会社様側と倉庫側で事前に到着時間を1台ずつ約束する機能です。特定の時間にトラックが集中してしまう倉庫では、予約機能によって混雑の解消が期待できます」とサービスの役割を説明しました。
さらに実際に「トラック簿」の動作画面を投影して使い方を解説。「まず受付。ドライバー様が倉庫に到着し、受付をすると、その状況が倉庫側の管理画面で確認することができる」とし、現在リアルタイムで車両が何台待機しているか、荷役の状況、さらには各バースでの作業進捗までが確認可能だと言います。
また、「空いているバースや待ちができているバースがわかるので、その状況を見ながら呼出をかけていきます。現場から呼出をかけるとドライバー様の携帯に、指定されたバースに入るようメッセージが飛びます。その誘導をもとにドライバー様がバースへ接車し、荷物を積み降ろすときに、現場サイドあるいはドライバー様の方で荷役時間の打刻をしていきます。」開始・完了というボタン操作をするイメージで、わかりやすい操作画面であることが実感できます。
いったんここまでの使用方法をおさらいする形で、「ここまで申し上げた部分を機能別にまとめてみました。
予約に関しては、到着時間をコントロールして混雑を分散できます。そして予約時に得た事前情報を基にある程度荷役の準備をすることができます。そして受付に関しては、現場にいながらドライバーの到着や待機状況を把握でき、サービスによりますがスマホから遠隔で受付ができるようにしている会社さんもいらっしゃいます」と、具体的な活用をする方法についても触れつつ、「多様なデータが取れること。受付・退場・荷待ち・荷役、こういったものが正確にデータとして取得でき、紙に比べて集計分析がしやすい、こういったところが代表的なメリットと言えます」としました。
トラック予約受付システムとはその名の示すとおり、「予約」と「受付」ふたつの機能を持ち併せており、小窪が「代表的なメリット」と話すように多様なデータが取得・蓄積できます。改正物効法ではまずは荷待ち・荷役時間を計測することが求められているため、荷待ち・荷役時間を定量的に把握したいというニーズにはまさにぴったりのシステムをいえます。
荷待ち・荷役時間の削減に向けて、小窪は「まず荷待ち・荷役時間が発生する原因を明らかにすることから始める必要がある。そしてその原因を分析して改善していくことが大切だ。そこで当社に寄せられる代表的な原因をいくつかピックアップした」として、事例を提示しながらセミナーを進めていきます。
代表的なケースとして、「早いもの順にしていること。どうしても後ろの車両は待機時間が長くならざるを得ない」と示し、ほかに「処理能力を上回る物量であることや、荷役担当者不足・バースが少ないことも挙げられる。キャパシティの問題で、待機時間が長くなるケースは少なからずあるものだ。また、バラ積み・バラ卸ろしのような荷役効率が悪いことも原因。こうなるとどうしても1台あたりの処理は遅くなってしまう」と解説。
その他、「計画性のなさというのも多いとよく耳にする。また、紙に記入する書類受付も時間がかかっている要因で、受付で書類の授受をする必要があるためにすぐ接車ができない。また、ドライバー様の誘導に手間取ってしまう、庫内の導線が悪いという原因もよくお聞きしている」とコメントしました。
では、これらすべての原因に対して、トラック予約受付システムは効果を示すのでしょうか。小窪は「トラック予約受付システムは万能薬ではない、他の対策との併用が必要」と断言します。小窪は先に紹介した待機時間が発生する原因と、トラック予約受付サービスの機能を照らし合わせ、マル(〇)・バツ(✕)をつけることでパッと見てわかるように図を用いて説明しました。
「1番上に挙げた『早いもの順』に関しては、たとえば予約機能を使ってトラックが入場する時間をコントロールすることで、荷待ち時間の短縮につなげることができます。紙での受付で時間がとられてしまっているというケースでも当然ながら効果を発揮できます。一方、物量に対して処理能力や荷役の担当者が少ないという場合は、予約時に得た情報を基に荷役準備をすることで一定の効果が発揮されるケースもあります。しかし抜本的に解決を目指すには、人数を増やす・マテハンを導入するなど、処理能力を高める対策も必要になってきます。
注意しておかなければならないのは、トラック予約受付システムでは効果がないケースもあるということです。バラ積み・バラ降ろしが原因でトラックの荷下ろしに時間がかかってしまっている場合や、検品作業やパレットの積み替えなどの附帯業務に時間がかかっているケースは、予約受付機能を使うことでは荷待ち・荷役時間を解消できません。」このように原因と効果を一覧化すると、〇がつかないケースも存在するのです。小窪は「トラック予約受付システムは万能薬ではなく、原因に合わせた対策の一つとして使う必要がある」と強調しました。
では自社で荷待ち・荷役時間が発生している原因は何か? 「まずは『データを取ることで原因を明らかにする』という目的でトラック予約受付システムを導入することもよい」と小窪は言います。「荷待ち荷役時間を把握することがゴールではなく、本来の目的はあくまで荷待ち・荷役時間の短縮です。とはいえ、現状把握をせずに目標設定をすることも、適切な対応策を練ることもできません。また、対策が効果をあげているのか、目標に対して現在の進捗が順調なのかどうか、などを見ていくためにも、データに基づいた現状把握は欠かせません。」
「トラック簿においては、データが取れるだけでなくグラフにして誰でも見られるダッシュボードを標準機能として搭載しています。導入していただいているお客様は、ダッシュボードを見て現状把握をしながら、対策のアクションを取っていっています」と述べました。
万能薬ではないものの、やはり荷待ち・荷役時間の把握、短縮に効果を示すトラック予約受付システム。その有効活用のポイントを小窪は以下のようにまとめました。
「まずひとつには、適切な責任者を選ぶことが大事です。適任な方とは目的意識をきちんと持ち、現場任せにせずに自らシステムの理解に努める人のことです。また、目の前の成果で喜怒哀楽をせず、ポジティブ思考で改善策を実行しようと発想を持てることも大切です。次に、社内での認識合わせも重要なポイントの一つです。」とし、現場担当者と導入責任者が自分たちの課題を共有していないことで、なかば「押し付けられる」ような形でシステム導入が進んでしまうケースもある、と説明しました。そのような状態でハコベルからシステムの説明などをしても、建設的な議論ができないこともままあるのだと言います。
さらに「導入時の案内や説明が十分でないことが原因で、効果が出ないケースもある」と続けます。使い方がわからないドライバー様に対して、チラシを置いておくだけしかしていないケースもあったそうだ。「操作方法だけが書かれたマニュアル説明会は避けるべき。人は指示されただけではなかなか動かないので、WHYの部分をしっかりご理解いただくこと、一つひとつの機能に対してしっかり説明をすることが大切です」と話し、運送会社様への説明には「なぜこのシステムを自分たちが採用したのか、その経緯や運送会社側のメリット、それも含めてしっかりご理解いただけるようにすること」の重要性を改めて強調しました。
小窪は、きちんとしたすり合わせの重要性を以下のようなエピソードでも説明した。「責任者と現場で十分にすり合わせがないまま導入し、責任者が『その後どう?うまくいってる?』など声をかける。当然現場からは、今ひとつうまくいっていない、といった答えが返ってくる。そして、そのまま『システムを入れてもうまくいかなかった』と結論を出してしまう。このような残念なケースもまれに存在する。そうではなく、うまくいっていない理由を一緒に突き止めて、認識を合わせながら次の一手を打っていかない限り状況は改善していかない。これはシステムであろうが他の手段であろうが、同じであると思う」。
最後に小窪は、より俯瞰した観点から荷待ち・荷役時間の問題について語りました。
「荷待ち・荷役時間の対策を考える際、まずは倉庫側に問題があると考えられがちです。しかし、より俯瞰して捉えると、そもそもモノの動きの起点は販売・消費です。極端な需要の繁閑差などが発生してしまうと、いくら倉庫側のキャパを増やしても、どうしても荷待ち・荷役時間が発生してしまいます。本当に荷待ち・荷役時間を減らして、ドライバー様の負荷を下げようと考えるのであれば、サプライチェーン全体を俯瞰しての対策が不可欠なのです。
皆さんご存知の通り、今回の物流関連二法の改正ではこのような「サプライチェーン全体、物流事業者・荷主・消費者全体で課題解決を進める」という観点が盛り込まれています。トラック予約受付システムで取得できるデータを、他のデータと組み合わせて、より俯瞰的な原因究明、対策を進めていけば、荷待ち・荷役時間の短縮は必ず実現できるはずです。」
荷待ち/荷役問題については、原因と対策を徹底的に分析することを最初のアクションとすべしとしつつ、最終的な課題解決への道のりとしては、サプライチェーン全体を見直していくことの重要さを指摘し、物流事業者だけでなく生活者や社会全体で考えていくべき問題であることをお伝えしました。
ハコベルでは、トラック予約受付システムである「トラック簿」を展開しています。ご興味を持たれた方は、是非サービスサイトをご覧ください。
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引き続き、荷主企業様や物流事業者様に向けて定期的に各種セミナーを開催しております。
以下よりご確認いただき、ぜひご参加ください!