2026年8月17日
シェアシェア

【セミナーレポート】<ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス[USMH]>首都圏スーパー4社が力合わせ共同センター設置でSCM高度化

【セミナーレポート】<ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス[USMH]>首都圏スーパー4社が力合わせ共同センター設置でSCM高度化

エルテックラボ代表の物流ジャーナリスト 菊田一郎氏をホストに、毎月お届けしているハコベルのウェビナー。2026年7月はゲスト講師にユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社(USMH)の鈴木惣一郎氏を迎え、同社が取り組む企業の垣根を超えた共同センターの運用について伺いました。

この記事でわかること

  • 共同センター構想検討の背景と目的
  • USMH初の共同センターとなる八千代グロサリーセンターの取組み
  • 共同センター稼働後の課題

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社

執行役員 ロジスティック本部

本部長 鈴木惣一郎 氏

1984年マルエツ入社(店舗配属)、1998年ベーカリーFS部バイヤー、2003年加工食品部シニアマーチャンダイザーを経て、
2007年より物流部SM物流プロジェクトリーダーに着任し、マルエツ横浜・八潮常温センター(2010年稼働)、マルエツ小型店センター(2013年稼働)を立ち上げ。
2017年マルエツ商品供給部長、2020年ユナイテッドスーパーマーケットホールディングスに出向、経営企画本部物流企画部長に着任。
2023年に八千代グロサリーセンターを立ち上げ、2024年商品戦略本部 物流企画部長、2025年ユナイテッドスーパーマーケットホールディングス執行役員ロジスティック本部長、2026年イオンフードスタイル取締役を兼務(現職)


エルテックラボ L-Tech Lab 代表

物流ジャーナリスト 菊田 一郎 氏

1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年間勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体役員等を兼務歴任。この間、国内・欧米・アジアの物流現場・企業取材は1,000件以上、講演・寄稿など外部発信多数。

2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化/DX、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスし、著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。17年6月より株式会社大田花き 社外取締役、20年6月より23年5月まで株式会社日本海事新聞社顧問、20年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル㈱顧問。著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。



菊田氏の聞きどころ解説

鈴木氏との対談に先立ち、菊田氏が物流の現状とウェビナーのポイントについて説明しました。

現在の物流はかつてない状況にあります。深刻なドライバー不足による物流危機を打開するため物流効率化法が改正され、すべての荷主、連鎖化事業者、物流事業者に「積載効率の向上等」「荷待ち時間の短縮」「荷役等時間の短縮」の努力義務が課されました。さらに特定荷主には、2026年度から物流統括管理者の設置が義務付けられています。


こうした中で2026年3月に公開された総合物流施策大綱の最新版には、物流2024年問題の総括とともに将来の見通しが記されています。これまで政府文書では2022年の予測として「2030年には輸送能力の約34%(9.4億トン)が不足する可能性がある」とされてきましたが、この予測数値を修正。余裕をもって「約26%の不足に備える」方針としました。


数値は下方修正されたものの、輸送力不足の見通しに変わりはありません。この大綱では担い手不足が深刻化する今後を見据え、2026年度から5年間にわたって取り組むべき施策を5つに集約しています。菊田氏は、今日のウェビナーでは特にこのうちの2つ「物流全体の最適化に向けた商慣行の見直しや荷主消費者の行動変容、産業構造の転換」「物流に携わる多様な関係者の連携・協力による物流標準化と物流DX・GXの推進」について詳しく聞けるはずだと話しました。

「ドライバーをはじめとする物流人材の不足、止まらない気候破壊。こうした喫緊の課題に対して、USMHはどんな解決策を提示してくれるのでしょうか。八千代グロサリーセンターの取り組みを中心に、5項目に分けてお話しいただきます。鈴木さん、よろしくお願いします」



USMHの紹介

菊田氏の呼びかけに応じて鈴木氏が登壇し、所属企業について紹介しました。


ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社(USMH)は、首都圏に展開するマルエツ、カスミ、いなげや、イオンフードスタイル4社の共同持株会社。2026年3月19日現在、グループ合計は761店舗におよび、首都圏1都7県にあるスーパーマーケットにおいて約9%のシェアを占めています。


共同センター構想検討の背景と目的

鈴木氏はまず次世代物流構想の基本方針について語り、次にロジスティクスの課題など、次世代物流を考えるに至った経緯を説明しました。

USMHが考える次世代物流構想の基本方針は「持続可能な物流体制の構築」です。USMHが持つ20カ所の物流センターは、運営形態、規模、機能などさまざまです。持続可能な体制の実現のため、この多様な形を良しとする考えをいったんリセット。そしてコスト上昇に対応すべくスピード感を持って再編計画を進めるため、最も手を付けやすいと考えたグロサリーセンターから共同化に踏み切りました。

鈴木氏は「持続可能な物流体制を築くためには、継続性が重要」と考え、推進する4つの取り組みに引き続き注力していく方針だと話しました。

①サプライチェーン全体最適の視点での効率化・合理化
②USMH内で物流資産の共同化
③省人化・自動化による業務実態の可視化・効率化
④若手人材の育成

2017年~2018年頃、当時物流担当だった鈴木氏は、物流大綱やさまざまな人の知見を参考に潜在的な課題も含めて先々のリスクを洗い出し、当時の経営陣に伝えて対策などを進言してきました。しかし現在、人件費の高騰に加え、燃料・光熱費、建築資材費などほぼすべてのコストが上昇。働き方改革による残業時間の規制や関連法規制の強化もあり、想定されたさまざまなリスクはロジスティクスの「コスト上昇要因」として顕在化しています。「残念ながら当時予見したリスクがすべて現実になってしまい、悪い方のシナリオで動いています」

これらの課題を解決する方向性を、鈴木氏は「物流」から「ロジスティクス」への進化として説明。「現役世代は舗配送業務を軸に物流を捉え、足元の業務さえしっかりやっておけばいいという考え方でした。しかし、先々の見通しを立てるにはコスト視点も必要です。そのためには、ただモノを持って行けばいいわけではなく、視野を広げて卸やメーカーなども含めたサプライチェーン全体の最適化を考えなければいけません」

「部分最適」から「全体最適」へ。業務に携わる一人ひとりが認識を改めて対応を変えなければ効率化は進まないと考えた鈴木氏は、物流部門の認識を変えるべく、事あるごとに全体最適化の重要性を発信し、社員を啓蒙。社会が求める役割の変化とともに、マルエツの部署名も「商品供給」「物流」「ロジスティクス」と変遷してきたといいます。

物流課題の解決にはデジタル化、可視化と分析、共同化、人材育成が欠かせません。中でも共同化についての想いを鈴木氏は、「私たちUSMHは、4社の機能統合による競争力強化をドミナント戦略の柱にしています。だから、会社の垣根を超えた共同化を推し進められるのではないかと考えました」と明かしました。

共同化の第一歩となったのは、2017年に立ち上げた物流勉強会「ロジラボ」です。当初は外部の知見収集が目的で、多様な意見を聞くため幅広い企業に参加してもらい、最新ツールの情報からドライバー不足への対応策まで幅広くヒアリング。世の中の動向を知り、将来の見通しを立てるために役立ててきました。リスク予測や全体最適化についての協議も、このロジラボで行われました。

知見収集が進むと、「アイデアをどんどん試して具現化しよう」と実証実験を開始。共同センターの話もここから生まれました。センターや店舗における業務の見直しも実施。「店舗部の担当者に発想の転換を促し、物流視点から優先順位を考えてより効率的な業務を模索しました」


共同センター運営に向けた準備は、商流制作や店舗オペレーションを考慮して調整しながら推進。USMHはホールディングスであり、事業会社ごとにセンター運用のルールやオリジナル商品があるため、項目ごとに同一化の必要性を検討しました。事業会社ごとに異なる商品コードや商品マスタの扱いは、JANコードに変換する仕組みを作ることで解決。店舗の注文や確定データの確認は従来どおり各社のコードで行えるようにしました。

「上図で示したのは抜粋で実際はもっと多くの項目があります。どこに標準化の軸を置くかがポイントです」


八千代グロサリーセンターの取組みについて

2023年9月、USMH初の共同センターとなる八千代グロサリーセンターを開設。「準備万端でスタートしたわけではありません。試行錯誤の繰り返しを想定し、チャレンジすること自体をコンセプトにしています」と鈴木氏。自動化・省人化、可視化による業務改善、共同配送、人材育成などに取り組み、挑戦を続けています。

新たに試している項目も多くあります。例えばJANコードオペレーションへの変更は販売計画書や店舗業務にも影響するので、その点を理解してもらう必要があります。共同配送によって車両は減らせていますが、届いた荷物を店内に運び入れる順番という新たな課題が生まれています。こうした課題は現場に担当者を呼んで一つひとつクリアするよう努め、試した項目は必ず評価。最終的にはすべてを合格ラインに引き上げるべく進めています。

自動化マテハンを導入して省人化を推進。コストバランスを見ながら有人作業と無人作業を併用しています。入荷工程に複数台の無人フォークリフトを活用してわかったのは、格納アイテム選定の重要性でした。良くも悪くも処理スピードが一定なので、重量物の搬送には適している一方で、出荷頻度の高い商品はそぐわない場合もあるといいます。

印字の位置によってはカメラが商品データを読み取れない、ミシン目入りなど天面カットに対応した箱を吸着で持ち上げようとすると上部だけ開いてしまう、といった課題も「やってみたからこそわかった」と鈴木氏。日々現場で得られる経験を今後の運用に活かしていきます。


共同センター稼働後の課題について

安定運営に向けた業務改善も行っています。例えば在庫SKU の計画値は当初8,500でしたが、実際には約11,000が常態化。ロボット導入では対応しきれず、人員を増やして保管スペースを捻出するなど負担が増え、思うように生産性を上げられていませんでした。内訳を確認すると、売れない商品も在庫している実態が判明。そこで出荷頻度に応じて在庫を分配するディストリビューター機能を設け、明確な基準の下で在庫を管理するようにしました。現在は毎月在庫状況を分析し、在庫SKU は8,500以下に抑えられています。

「センターを管理するのはロジスティクス本部ですが、在庫管理は商品部の管轄。極力無駄が発生しないよう、バイヤーが供給計画をしっかり立てて商談に臨むべきです。今後は目利きや商談のノウハウ、スペースの有効活用がよりいっそう重要になっていくでしょう。配送だけでなく、在庫の共同化も進めていきたいと考えています」

また、管理は内製化して作業は外部に委託する運営体制をめざしています。大事なのは、委託作業の設計図を社内の人間が作ること。効率化を実現するためには、常に問題意識を持って取り組み、内部で目を光らせる必要があるからです。

こうした運営体制を構築するには、管理能力に長けた人材の育成が欠かせません。そこで現在検討しているのが、若手を中心とした「ロジラボ」復活です。「情報収集やモチベーションにもつながることを期待しています」


USMH次世代物流構想について

八千代グロサリーセンターをモデルとした横展開をファーストステップに、次は低温センターの共同化に着手し、UMSC全体の再編を進めていく方針です。現在は2027年の実装をめざし、グループで共同利用できるシステムを開発中。2030年には、USMHの親会社であるイオングループのセンター相互利用開始も見込んでいます。

合意形成に苦慮した鈴木氏ですが、センター共同化への意志は揺るぎません。「個社最適になりがちですが、熱意を持って働きかけていくことが大事。これからも業種・業界を超えた仲間づくりを大事に、利他の精神で物流問題に向き合っていきたい」と力強い言葉でウェビナーを締めくくりました。



◇◇◇

ハコベルでは定期的に各種セミナーを開催しております。

以下よりご確認いただき、ぜひご参加ください!

<食品スーパー・マルアイ@関西SM物流研究会>
物流センターのオーバーフローを機にオペレーションの抜本改善に成功物流子会社・利用運送事業者必見!
トラック新法で求められる「新たな義務」の詳細と具体的な対応策をお伝えします
シェアシェア

おすすめ記事