カーボンニュートラルとは|取り組む意義や達成を目指す背景を紹介

カーボンニュートラルとは|取り組む意義や達成を目指す背景を紹介

地球温暖化がもたらす気候変動は、いまや人類全体の課題となっています。その解決策の一つが「カーボンニュートラル」です。日本をはじめ、米国やEUなどの各国は、2050年までのカーボンニュートラル達成を目標に掲げ、産業やエネルギー分野での変革に取り組んでいます。

本記事では、カーボンニュートラルの基本的な概念や、世界各国がカーボンニュートラルを目標にしている背景について解説します。

この記事でわかること

  • カーボンニュートラルとは
  • カーボンニュートラルを目指す背景

1. カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を抑えつつ、森林などの自然や技術を活用して吸収・除去し、全体の排出量をゼロにすることです。特に、二酸化炭素(CO2)の削減に焦点が当てられており、植樹や二酸化炭素回収貯留(CCS:Carbon Capture and Storage)技術の活用が進められています。


日本では、2050年までにカーボンニュートラルを実現する目標が掲げられ、政府や企業が具体的な施策を講じています。カーボンニュートラル実現に向けた取り組みは、物流業界を含む全ての産業にとって重要な課題です。


※参考:経済産業省,「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?




2. カーボンニュートラルを目指す背景

カーボンニュートラルを目指すことになった背景を、国際的な目標と日本の目標それぞれで解説します。

国際的な目標

カーボンニュートラルに向けた取り組みの中核となるのが、2015年に採択されたパリ協定です。パリ協定で策定された国際枠組みでは、産業革命以前に比べて地球の平均気温上昇を2度未満、理想的には1.5度以内に抑えることを目標とし、すべての加盟国が温室効果ガスの削減を自主的に進めることを義務付けられました。各国は削減目標(NDC)を5年ごとに更新し、着実な進展を図っています。


そして現在は、120を超える国と地域が2050年までのカーボンニュートラル達成を目標として掲げています。米国、EU、日本などの先進国は、産業構造の転換を伴う大規模な投資を進め、環境配慮と経済成長の両立を目指しています。

米国

米国では、気候変動を国家の生存基盤に関わる深刻な脅威と捉え、その対策を外交や国家安全保障の重要な柱として位置付けています。バイデン政権は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標とし、2035年には発電部門の排出ゼロを達成する計画を掲げました。

また、米国では、2030年までに洋上風力発電を現在の2倍の生産量に拡大し、年間約5億トンのCO2削減を目指しています。(※)


さらに、バイデン大統領は就任初日にパリ協定へ再加盟し、気候変動対策の国際的なリーダーシップを強調しました。米国のカーボンニュートラル政策では、気候変動への対応を国家規模の重要課題とし、経済と環境の両立を図る姿勢を鮮明にしています。


※出典:経済産業省資源エネルギー庁,諸外国における脱炭素化の動向

EU

欧州連合(EU)は、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指し、2018年に「A Clean Planet for All」というビジョンを発表しました。このビジョンに基づき、EUは温室効果ガスの削減目標として80%、90%削減、そしてネットゼロ達成を目指す複数のシナリオを提案しています。これにより、柔軟なエネルギーミックスを維持しながら、電化、水素の活用、エネルギー効率の向上といった革新的な対策を取り入れる方針です。

英国

英国は、2050年までにカーボンニュートラルを達成するため、電力分野の脱炭素化を戦略の中心に据えています。英国では、電気自動車(EV)の普及や熱供給の電化により、2050年の電力需要が現在の2倍以上に増加する見込みです。これにより、最終エネルギー消費に占める電力の割合が50%を超える可能性があります。


この需要増に対応するため、英国は再生可能エネルギーや原子力を活用した脱炭素電源での発電量を、現在の4倍に引き上げる目標を掲げています。また、残存する排出量については、バイオマスを利用した発電と炭素回収・貯留技術(BECCS:Bio Energy with Carbon Capture and Storage)といったネガティブエミッション技術で相殺する計画です。

中国

中国は、2030年までにCO2排出量を減少に転じさせ、2060年までのカーボンニュートラル達成を目指しています。2020年には、GDP当たりのCO2排出量を2005年比で65%以上削減する目標を発表しました。


また、電動車の普及にも注力しており、2025年までに新車販売の20%を電動車にし、2035年には電気自動車を新車販売の主流とする計画です。2021年には「国家適応気候変動戦略2035」を策定し、気候変動への適応と持続可能な経済成長を両立させる施策を推進しています。

日本の目標

日本は、2020年10月の菅元総理による所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」ことを目標に掲げました。加えて、2030年までに2013年度比で温室効果ガスを46%削減するという、中間目標も設定しています。これらの目標は、気候変動の緩和と経済成長の両立を目指す「経済と環境の好循環」を実現する戦略の一環です。


また、日本はこれまで培ってきた技術力を基盤に、再生可能エネルギーの活用や脱炭素技術の研究開発を推進しています。具体的な施策は、エネルギー供給の安定性向上や、企業の競争力を強化するためのグリーントランスフォーメーション(GX)です。脱炭素技術の開発・普及は、エネルギー供給の安定や日本の産業競争力強化にもつながると期待されています。


3. まとめ

カーボンニュートラルは、地球温暖化を抑えるための重要な取り組みであり、世界各国が共通の目標として2050年の実現を目指しています。EU、英国、米国、中国、日本といった国々が、それぞれ異なる手法と計画を掲げて、温室効果ガス削減に取り組んでいます。


そして、物流業界にとっても、カーボンニュートラルの実現は不可避の課題です。物流業界を含めた各産業においても、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが求められています。


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