「サイバーポート」は、港湾物流の効率化と国際競争力の向上を目指して開発されたデータプラットフォームです。従来のアナログ手法で行われていた港湾手続きを電子化し、情報共有の迅速化や業務効率化を実現してきました。
また、書類作成やデータ入力の手間を削減し、トレーサビリティの向上にも寄与しています。サイバーポートは、物流業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる革新的な取り組みと言えるでしょう。
本記事では、サイバーポートの特徴や役割、実際に導入を進めた企業の事例を解説します。
サイバーポートは港湾物流手続きを電子化し、生産性を向上させるためのデータプラットフォームです。従来は紙や電話、メールなどで行われていた事業者間の手続きをサイバーポートで統一することで、手続きにかかる時間やコストを削減できます。
また、サイバーポートは物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、港湾物流の情報を一元管理し、業務の標準化を推進しています。国土交通省が中心となって構築し、2021年(令和3年)に運用が開始されました。以来、実証実験で最大60%の時間削減効果が確認されるなど既存業務の効率化に貢献しており、今後もその役割が期待されています。
※参考:国土交通省,サイバーポート(港湾物流)の取組の概況
サイバーポートの役割は主に以下の3つです。
サイバーポートは港湾物流の効率化を目指し、従来の紙や電話、メールで行われていた民間事業者間の手続きを電子化します。書類作成やデータ入力の重複が削減され、情報共有が円滑に進むことで、事業者ごとの個別最適ではなく港湾物流全体の最適化が可能です。
また、港湾物流手続きの進捗状況をリアルタイムで可視化することで、手続きのトレーサビリティを向上させます。関係者全体が最新のデータを迅速に共有でき、手続きの遅延や情報の行き違いを未然に防ぐことが可能です。
サイバーポートによってコンテナ搬出入予約やゲート処理が簡素化されると、ゲート前での待機時間やトレーラーのターミナル滞在時間が短縮されます。また、各事業者が従来個別に行っていた手続きを統一し、リアルタイムでのデータ共有を実現することで、業務全体の無駄を減らします。
サイバーポートは、港湾物流に関連する膨大なデータを一元的に蓄積し、その有効活用を推進するプラットフォームです。港湾物流手続きの進捗状況や関連データを可視化することで、関係者間で迅速かつ効率的に情報を共有できます。
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国がサイバーポートを推進する背景を解説します。
サイバーポートは、港湾物流の電子化を推進することで、日本の港湾の国際競争力を強化する役割を担っています。従来、紙や電話、メールで行われていた手続きは、時間とコストがかかり非効率的でした。しかし、サイバーポートの導入により、これらのプロセスがデジタル化され、情報共有や手続きの進捗確認がスムーズに行えるようになりました。
世界の主要港湾がデジタル化を進める中、日本が競争力を維持・向上させるためには、効率的なプラットフォームが欠かせません。サイバーポートは生産性を高めるだけでなく、物流の信頼性を向上させ、国際的な競争環境に適応するための基盤を提供します。
サイバーポートによる手続きの効率化は、港湾作業員の減少が進む中、労働力不足への対応策としても注目されてきました。複雑な手続きが電子化されることで作業の手間が軽減され、少ない人員でも円滑に業務を遂行できる環境を整えます。
サイバーポートは港湾物流手続きを電子化し、業務効率を向上させます。この仕組みにより、事業者間の手続き進捗が可視化され、データ共有が迅速化されました。結果として、コンテナ物流全体の最適化が可能となり、関係者の負担軽減や時間削減を実現しています。
サイバーポートによって蓄積された物流データの活用も進んでいます。手続きが電子化され、港湾物流に関わる多様な情報の一元管理が可能となったためです。この統合的なデータを活用することにより、手続きの時間短縮や作業負担の軽減だけでなく、港湾全体の生産性向上と国際競争力の強化に貢献しています。
サイバーポートは、既存の物流関連システムや民間プラットフォーム、業務支援のパッケージソフトと連携することで、港湾物流の効率化を実現しています。
具体的には、貿易関連のオンライン手続きシステムであるNACCSや、コンテナターミナルの混雑解消を目的としたCONPASとの連携です。これにより、船積み依頼書のデータを自動的に共有することが可能となり、手作業によるデータ入力の手間を省けます。
また、関連事業者が独自に利用している基幹システムや業務支援ソフトとも接続が可能で、書類様式や接続方法の統一を図ってきました。各企業がシステム改修に要するコストを削減するだけでなく、事業者間のデータ共有をスムーズにし、手続き全体の迅速化につながります。
※参考:国土交通省,港湾物流全体の最適化を実現する「サイバーポート」のご紹介,p6
最後に、サイバーポートを実際に導入した企業の事例を紹介します。
伏木海陸運送株式会社では、海貨システムと共同利用のターミナルオペレーションシステム間で、ブッキング情報やコンテナナンバーの二重入力が発生しており、作業効率の低下が課題でした。
サイバーポートの導入により、システム間でデータが自動連携され、二重入力が解消されると同時に、スムーズな情報共有が実現しました。
項目 | 導入前の状況 | 導入後の変化 |
システム間連携 | 海貨システムとターミナルオペレーションシステム間で、ブッキング情報やコンテナナンバーの二重入力が発生していた。 | システム間でデータが自動連携され、二重入力が解消。 |
情報共有の方法 | FAXやメール添付PDFでのやり取りが主流。手入力の負担が大きく、データが事務所や現場で別々に処理されており、情報共有にタイムラグが発生していた。 | ブッキング情報やコンテナナンバーがリアルタイムで登録・共有可能になり、スムーズな情報共有を実現。 |
荷主企業の利用 | 荷主企業はメールやFAXで依頼し、事務スタッフが内容を入力して処理。 | 荷主企業がCyber PortのWEB画面を直接利用してデータを入力可能に。依頼受付の手間が大幅に削減。 |
※参考:国土交通省,自社システムとCyber PortのAPI連携でデータの2重入力を解消
三井倉庫株式会社では、荷主・海貨業者・陸運業者・船舶代理店間の情報共有がFAXや電話に依存しており、非効率な業務体制が課題となっていました。
サイバーポートの導入により、Arrival Noticeや空コンテナピックアップオーダー情報が電子化され、情報共有が改善されました。
項目 | 導入前の状況 | 導入後の変化 |
情報共有の方法 | 荷主、海貨業者、陸運業者、船舶代理店間の情報共有がFAXや電話中心で非効率。 | Cyber Portを通じてArrival Noticeや空コンテナピックアップオーダー情報が電子化され、荷主や海貨業者が直接データを取得可能に。 |
問い合わせの頻発 | NACCSを利用できない陸運業者は海貨業者からの連絡を待つしかなく、多数の問い合わせが発生。 | Notify PartyがCyber Port上で輸入手続き関係者を設定可能となり、Arrival Noticeのスムーズな共有を実現。 |
業務フローの改善 | Arrival Noticeが共有されず、輸入通関時のトラブルや遅延が頻発。 | データの電子化と共有により、業務フローが簡素化。事務負担や電話対応が減少し、業務効率が向上。 |
※参考:国土交通省,Cyber Portを通じたデータ共有で、荷主・海貨・陸運業社・関係者全体の業務効率化に寄与したい
株式会社宇徳では、港湾物流における情報共有や手続きが電話・FAX・メールに依存しており、非効率な運用が課題となっていました。
サイバーポートの導入後は、海貨業者は営業時間外でも料金の確認や申し込みが可能となり、利便性が向上しました。
項目 | 導入前の状況 | 導入後の変化 |
情報共有の方法 | 電話・FAX・メールに依存し、非効率な運用が課題。 | 海貨業者が営業時間外でも料金確認や申し込みをWEB上で行えるようになり、利便性が大幅に向上。 |
決済手段 | カウンターでの現金・小切手支払いという旧来の方法。 | 料金確認や帳票出力がWEB上で完結し、電話やFAXが不要に。2022年9月時点でCyber Port経由が全体の70%に増加。 |
自動化の進展 | データ入力や手動の業務負担が多く、作業が煩雑。 | 入金確認以外の処理がほぼ自動化され、メールやデータ入力の負担が減少。業務効率が向上。 |
※参考:国土交通省,料金確認・申し込みがCyber Port上で24時間いつでもできるように
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サイバーポートは、港湾物流における手続きを電子化することで、業務効率化と生産性向上を実現するデータプラットフォームです。導入によって、従来の電話やFAXに頼ったアナログな手法から脱却し、データ共有やトレーサビリティの向上が実現しています。
また、NACCSやCONPASといった既存の物流システムとの連携も進めており、さらなる効率化が期待されています。港湾物流に関わる事業者がこのプラットフォームを活用することで、業界全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進し、国際競争力の強化に貢献するでしょう。