2024年12月16日
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グローバルバリューチェーンとは?取り組みのメリットとリスクを解説

グローバルバリューチェーンとは?取り組みのメリットとリスクを解説

グローバルバリューチェーンは、製品やサービスが消費者に届くまでの工程において、国境を越えて多様な企業や地域が関与する仕組みです。この取り組みによって、コスト削減、競争優位性の強化、経営資源の分散などの効果が期待できます。一方で海外特有の法規制、自然災害、地政学上のリスクに対策が欠かせません。

リスク評価と定期モニタリングによって管理を強化し、課題が発生しても迅速に対処できるよう対策を事前に整備することが重要となります。

この記事でわかること

  • グローバルバリューチェーンの基礎知識

1. グローバルバリューチェーンとは

グローバルバリューチェーンとは、製品やサービスの生産・流通過程で国際的に連携し、各国の資源や能力を活かして最適化されたネットワークを形成するという概念です。このチェーンでは、異なる国や地域での専門性を活用し、効率的なサプライチェーンを構築することでコスト削減や品質向上を図ります。

グローバルバリューチェーンの概要

グローバルバリューチェーンを理解する上で、まずはバリューチェーンの概念が重要です。バリューチェーンとは、企業における一連の事業活動を「価値を生み出す連鎖」として捉える考え方のことです。

バリューチェーンは、日本語では「価値連鎖」と訳され、アメリカの著名な経済学者であるマイケル・ポーター氏が提唱した用語です。なお、しばしばサプライチェーンとも混同されやすく注意が必要になります。サプライチェーンは商品・サービスなどがどのように供給されているかに焦点を当てる一方で、バリューチェーンの場合は、チェーンのどこでどのような価値が創造されているかに着目する概念です。

一方、グローバルバリューチェーンは、製品やサービスが消費者に届くまでの過程で国際的に分業・協力しながら行われる一連の活動を指す概念です。各国や地域がそれぞれの強みを活かし、商品の企画・開発、調達、販売、製造、流通・販売などを担当しながら、全体として価値を創造していく仕組みを指します。たとえば、商品企画・開発は日本、調達・製造はアメリカで行われるなども一例です。

グローバルバリューチェーンの目的は、企業が国際的に生産や供給、流通の各プロセスを分担・連携することで、競争力を高め、コスト効率や製品・サービスの質を向上させることにあります。

※参考:内閣府,平成26年度 年次経済財政報告 第3章 第2節 グローバル市場と我が国産業の課題

グローバルバリューチェーンの仕組み

グローバルバリューチェーンでは、国境を越えて製品やサービスを対象のマーケットに提供するために、まずは立地条件が異なる地域に生産工程を分散します。生産工程はタスクごとに分解され、それぞれの地域の諸条件(労働者の賃金や気候、経済状況など)を考慮した上で、最適な工程が割り振られる仕組みです。

これら分散した工程は、最終的にサービスリンク(異なる場所にある各生産プロセスを連携するためのサービスやインフラ)で相互に接続・統合する必要があります。近年ではIT技術の急速な進歩によって、物理的な距離を意識しないシームレスなサービスリンクが実現可能となってきています。


2. グローバルバリューチェーンのメリット

グローバルバリューチェーンを形成することによって、企業活動の幅広い領域にメリットがもたらされます。

コスト削減

先進国と途上国間の労働者の賃金の差を利用してコスト削減を達成することができます。具体的には、製造工程などの労働集約的な低付加価値製品の製造を日本国内よりも賃金が低い途上国で行い、他社との差別化につながるや技術集約的な高付加価値な工程を国内で行うことで、トータルの生産コストを削減します。

競争優位性の強化

グローバルバリューチェーンでは、海外での生産を拡大し、現地に販売チャネルを構築することで海外需要を取り込むことが可能です。その結果、競争優位性を強化できます。また、海外現地法人向けの資本やサービスを輸出することは外部で「稼ぐ力」を高めることにつながり、トップラインの拡大にも寄与します。

経営リスクの分散

グローバルバリューチェーンでは各国に生産や販売を分散した事業ポートフォリオを形成します。そのため政治的な問題、あるいは地政学的リスクによる事業の縮小を極小化することが可能です。さらに、問題発生時に他の国で機能を代替して事業を継続できる点も見逃せません。

イノベーションの促進

多様な視点とアイデア、異なる文化や市場の知見を取り入れることで、製品やサービスの革新を促進することができます。

市場アクセスの拡大

グローバルなネットワークを通じて、海外の新興市場への進出が容易になり、新しい顧客の獲得が期待できます。


3. グローバルバリューチェーンの課題

グローバルバリューチェーンは非常に有益な効果をもたらす一方で、国内に閉じた事業よりも地政学的緊張や自然災害、パンデミックなどの影響を受けやすいといった課題があります。

その場合、製品やサービスの供給途絶や製造工程の遅延に陥るため、リスクをあらかじめ特定した上で、適切な対策方針を策定しておく必要があります。

地政学リスク

政治の不安定化や国際的な緊張状態が生じると、製品供給に影響を与える可能性があります。具体的には、特定国との関係性で貿易摩擦や制裁によって部品の供給が滞ることなどが想定されます。

自然災害

海外では、必ずしも日本のように国家として防災の整備が行われているわけではありません。そのため、国によっては自然災害による被害が甚大となるケースも散見されます。この場合、製造拠点への物流網が途絶え、生産の遅延が生じてしまいます。

パンデミック

感染症の流行により、労働者の健康危機がバリューチェーンを麻痺させる可能性があります。記憶に新しいCOVID-19の流行時には、出入国の禁止や国境の閉鎖によって移動が大幅に制限される事態が生じました。

法規制

グローバルバリューチェーンでは、各国の法律的な規制にも注意を払う必要があります。具体的には、環境規制や労働法、輸出入の関税や認証基準の適合など、幅広く監視しておく必要があります。

為替レートの変動

異なる通貨で取引する場合、為替レートの変動が利益に影響する可能性があります。たとえばある国の通貨が急激に変動した場合、輸入コストや生産コストが予想外に上昇する可能性があります。

労働市場の変化

労働コストの低い国で生産を行っていても、経済発展に伴い賃金が上昇するとコストが増大し、利益率が低下するリスクがあります。また、特定の国で労働者不足が発生することで生産能力が低下することも考えられます。さらには労働者のストライキなどもリスクとなります。

4. まとめ

グローバルバリューチェーンは、製品やサービスの生産過程が国際的に分散され、各国の特性や資源を活かして効率的に行われる仕組みです。このアプローチにより、企業はコスト削減をはじめとして様々なメリットを得ることができるようになります。また、異なる市場へのアクセスを通じて新たなビジネスチャンスも生まれます。

しかし、課題も存在します。地政学リスクや異なる法規制が自社のビジネスに悪影響を与える可能性があります。そのため、グローバルバリューチェーンを成功させるためには、これらの課題を事前に想定して対処することが重要です。




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