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エルテックラボ代表の物流ジャーナリスト 菊田一郎氏をホストに毎月お届けしているハコベルウェビナー。2026年1月は、卸売大手の株式会社PALTACから開発部上席研究員の和田秀夫氏をお招きして、昨年サプライチェーンイノベーション大賞を受賞した事例を中心に同社の取り組みについて伺いました。
株式会社PALTAC 研究開発本部 開発部 上席研究員
和田 秀夫 氏
1999年にシャープ株式会社に入社。光半導体プロセスや光センサ、業務用自走式掃除機の開発などに従事し、部品単位の設計から製品設計に至るまで、幅広い領域を経験。
2016年、株式会社PALTACに入社。業革推進室(現・研究開発本部)に配属後、新物流システム「SPAID」における新規マテハン機器の開発や、新規物流センターの立ち上げに従事。
現在は、従来の「SPAID」比で生産性2倍となる、さらなる革新的な物流センターの実現に挑戦中。
エルテックラボ L-Tech Lab 代表
物流ジャーナリスト 菊田 一郎 氏
1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年間勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体役員等を兼務歴任。この間、国内・欧米・アジアの物流現場・企業取材は1,000件以上、講演・寄稿など外部発信多数。
2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化/DX、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスし、著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。17年6月より株式会社大田花き 社外取締役、20年6月より23年5月まで株式会社日本海事新聞社顧問、20年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル㈱顧問。著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。
まず菊田氏が登壇し、地球と物流の持続可能化を阻んでいる現状の課題を挙げました。
1. ドライバーが足りない
2. 物流現場で働く人も足りない
3. 気候破壊で地球が危ない
そして、これらの課題解決に株式会社PALTACが取り組んでいることを伝え、同社の和田秀夫氏を紹介。和田氏が登場して会社概要と卸売業の役割を説明しました。

株式会社PALTACは明治31年創業。大阪に本社を構え、化粧品・日用品、一般用医薬品の卸売業を営んでいます。卸には大きく2つの機能があります。ひとつはメーカーから商品をまとめて仕入れ、それを仕分けて小売店に届ける集荷・分散機能、もうひとつは適切な量の商品を中間で在庫しておくことで、必要なときに必要なだけ小売店にお届けできる在庫機能です。
「加えて、両者の情報が集まる中間流通業者という立場を活かし、メーカーには販路の拡大、マーケティング戦略強化、効率化ノウハウによる物流コスト低減といった価値を提供。小売業には売り場の魅力向上、販売施策の強化、安定供給とコスト低減などの価値提供を行っています」

「この図では、卸売業の存在自体が物流の集約化に貢献するものであるということがよくわかります。特に日雑品の業界は、ものすごい勢いで事業者の集約が進んできた歴史があります。」(菊田氏)
コメントいただいている通り、近年は集約化が進み、40年ほど前に2,000社以上あった卸売会社が10年前には約500社まで減り、現在は数社程度になっています。100社ほどの積み重ねで成り立っているPALTACは生活必需品50,000品目を取り扱い、年間35億点を出荷しています。取引先はメーカー1,000社、小売業400社(50,000店舗)。全国に19の拠点を展開して北海道から沖縄まで網羅していますが、設備の老朽化や人口分布の変化から再編を検討しています。
次に和田氏は、同社が生産性の高い物流モデル構築に取り組むことになった背景について説明しました。物流業界の課題は生産年齢人口の減少による人手不足であり、5,000人を超えるパート従業員に支えられているPALTACも年々人材確保が難しくなっていると明かします。
一方で女性や高齢者の働き手は増えています。そして2030年代には第二次ベビーブームの世代が退職し、高齢の働き手がいっそう増えると指摘。作業負荷の軽減など、高齢者にとって働きやすい環境を整えることが重要との考えを示しました。「私自身がこの世代ということもあって、高齢者がやりがいを持って働ける環境が必要だと強く感じています」

バラ物流化も進んでいます。核家族化や単身世帯の増加、ライフスタイルや嗜好の多様化を受けて、物流業界では20年ほど前から多品種・少量生産への対応が求められてきました。近年は化粧品のセミオーダー化、目的別のサプリメントなど特定ニーズへの対応がさらに増え、多品種・少量生産の傾向に拍車がかかっています。
この傾向は今後も続くと和田氏は予想。「消費者の志向に合わせて小型店舗も増えていて、弊社の主な届け先であるドラッグストアもここ20年で10,000店舗から20,000店舗と倍増し、配送がより細分化されました」
こうした動向を背景に、PALTACは生産性ダントツNo.1の物流モデルを構築し、既存領域を広げるとともに新たに共同配送網の構築と食品物流ノウハウの獲得を進め、価値提供領域のさらなる拡大をめざしています。

「この図での縦軸は社内的な取り組み、つまり生産性の向上ですね。そして横軸は、他社との連携による更なる価値創造となります。ここからは、この横軸の他社との連携について、薬王堂様とのお取り組みを深くご説明いただきます。この取り組みはサプライチェーンイノベーション大賞2025の大賞を受賞された取り組みです。」(菊田氏)
PALTACは、新しい物流モデルの構築を薬王堂と一緒に取り組んでいます。薬王堂は東北・関東に約420店舗を展開するドラッグストア。以前は非食品と食品の配送をPALTACと他企業に委託していましたが、2022年にPALTACが一括受託。宮城県の物流センターで非食品と食品(常温)の一括物流を2024年に開始しました。
「薬王堂様とは、2015年頃から効率的な物流システムについて話し合いを重ねてきました」と和田氏。PALTACはこの挑戦により、人手不足、物価上昇、環境負荷といった山積する社会問題の解決を図っていきます。

この取り組みを始める前は、物流センターの中では複数の卸会社別に商品が在庫管理されていたため、同一カテゴリの商品も卸会社ごとに別々の折り畳みコンテナに仕分けられており、店舗での棚入れ時にそれぞれ仕分ける必要がありました。そこでPALTACの在庫と薬王堂の取引先専用在庫を共同管理に変更。まとめて納品することで店舗での仕分け作業をなくしました
現在はそこに食品が加わって売り場の7割をカバーしています。この取り組みにおける課題と成果を、和田氏は以下3つのポイントで解説しました。
①発注回数低減・在庫適正化で発注効率UP

・発注単位を大きくしてバラ発注を減らすことで、物流センター・店舗ともに作業時間と作業人員を10%削減。
・薬王堂、メーカーとPALTACがデータをオープンにして発注業務を連携し、PALTACで在庫を管理。
・商品レイアウトの全店統一や販促商品販売期間の一定化により、安定供給を支える需要計画の立案が容易になった。
②納品受け入れ時間の柔軟化、運行状況の可視化で配送効率UP

・夜間のみだった店舗の納品受け入れを営業時間内や翌日開店前も可能にしていただき、柔軟な納品時間対応を実現した。また、週6回の納品を週3日に半減させ、2日分をまとめて納品することによる品出しの混乱を防ぐため、あらかじめPALTACで優先度別に折り畳みコンテナに「1日目」「2日目」と記載して店舗での品出し順に商品を仕分ておくことにより、配送効率が向上し、トラック台数とCO2排出量を約2~3割削減することに成功。
・トラックにGPS端末を取り付けて運行状況を可視化。配送状況のリアルタイム把握とともにドライバーの拘束時間や店舗滞在時間などのデータを蓄積。長時間労働や荷待ち時間などの改善につなげた。

・運行情報から4t車メインによる積載効率の低さを把握し、10t車の比率を上げた。
・PALTACへの入荷に関し、ミルクラン集配方式や他取引先との共同配送で車両台数を削減。トラック台数、ドライバー、CO2排出量も約10%低減。
・メーカーから店舗への配送時に店舗でドライバーによる積み替え作業が必要だったため、メーカー出荷時に荷姿をかご車に統一してもらい、PALTACで荷合わせしてかご車で店舗に届けることに。店舗ではかご車の荷下ろし作業のみとなり、納品時間の短縮とドライバー負担軽減を実現した。
課題③リードタイムの短縮によりスペース効率UP
PALTACへメーカーから直接納品していただくことにより、リードタイムを短縮し、店で抱える在庫が減って店舗スペースを効率化できた。

「人時を減らしながら薬王堂様の既存店の売り上げを伸ばすことに成功。同時にPALTACの物流センターの人時生産性も伸びました。トラックの走行台数・走行距離・CO2排出量も約20%減少し、製・配・販の各課題を解消することができました」と、和田氏は定量的な効果を説明しました。
「これは従来存在していた物流をPALTAC様が統合・集約することによって、現場への負担を増やすことなく、リードタイムを短縮することができた、という取り組みといえます」(菊田氏)
和田氏は、現在は宮城県の物流センターのみでの取り組みですが、ノウハウを蓄積しながら、食品分野の取扱量の拡大や全国展開も視野に入れて進めています、と続けました。

物流センターが今後も安定して稼働するには、女性や高齢者が働きやすい労働環境がますます重要になってきます。この点に早くから着目したPALTACは、物流センターの自動化・省人化・作業負荷軽減に取り組んできました。そして、物流ノウハウとAIやロボットといった先端技術を融合し、独自の物流モデル「SPAID」を開発しました。高い生産性と重労働削減を実現する、人に優しい物流モデルです。

例えばバラ物流では、出荷指示のかかった商品を自動で作業者の手元に搬送するシステムにより、作業者は歩いて商品を取りに行く必要がなくなりました。ケース物流では、ロボットや自動搬送装置を活用して自動化・省人化を実現。コンベア搬送中に商品の種類と数量を確認する自動入荷検品システムも活用しています。

現在3つの物流センターに「SPAID」を導入。重労働や危険な作業を減らし、高い生産性と出荷精度を実現しています。直近で導入した2センターでは入荷検品・搬送・保管・コンベア投入・仕分けと順立・積付といった工程の自動化を達成。さらなる改善を進め、2028年3月期中には、現在の2倍の生産性を可能にする新モデルの稼働を考えています。

各企業単独の最適解の追求から協働・共創の時代に突入した今、PALTACがめざすのはサプライチェーン全体の物流プロデュースです。和田氏は「業界をリードする生産性ダントツNo.1の物流モデルを作り上げ、今後はサプライチェーン全体を変革していきたい」と抱負を語りました。
最後にご同席いただいた、専務執行役員 研究開発本部長 三木田 雅和様からも、今後の展望についてコメントいただきました。
「サプライチェーン全体を良くしていかない限り、世の中が良くなっていかないと考えています。そのためPALTACでは、物流センターの生産性向上だけではなく、サプライチェーン全体のプロデュースを目指していこうと考えています」(三木田氏)

「まさにPALTACさんの取り組みは、日雑品業界だけでなく、食品業界やそれ以外の業界も巻き込んだ生産性向上を実現できるものだと理解しています。ぜひサプライチェーン全体のプロデューサーとして、効率化・統合をリードしていただきたいです」(菊田氏)

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