運行管理者は、事業用自動車の安全運行を確保するために選任が義務付けられている国家資格です。道路運送法および貨物自動車運送事業法に基づき、一定の資格要件を満たした人を営業所ごとに配置することが定められています。
本記事では、運行管理者の選任が義務化された背景や選任要件、選任プロセスや義務について解説します。安全な輸送体制を維持するために必要な運行管理者の役割を理解し、適正な選任と管理を実践しましょう。
運行管理者の選任は、道路運送法および貨物自動車運送事業法に基づき義務化されています。この制度は、自動車輸送の安全運行の確保と交通事故の防止を目的としており、事業者に代わって運行管理業務を担う専門職として、運行管理者を配置することが求められています。
自動車運送事業は、ドライバーが運行中に単独で業務を遂行する性質上、高い安全意識と適切な労務管理が必要です。事業者が直接すべての運行管理を行うことは難しいため、運行管理者が事業者とドライバーの橋渡し役として、安全かつ適正な職場環境を整える役割を果たします。
運行管理者の業務は多岐にわたり、点呼を通じた運転者の健康状態の把握や、安全な運行を確保するための指示、適正な勤務時間の管理などです。これらの業務を適切に遂行するためには国家資格を取得し、輸送の安全性向上に貢献できるスキルと知識を身につける必要があります。
運行管理者の選任要件は、以下のとおりです。
貸切:平成12年2月以降 乗合・乗用:平成14年2月以降 | トラック:平成2年12月以降 | |
運行管理者の資格要件 | 5年以上の実務経験かつ、所定の講習を5回以上受講していること(貸切は除く) 運行管理者試験に合格していること なお、受験資格として1年以上の実務経験または基礎講習受講が必要 | 5年以上の実務経験かつ、所定の講習を5回以上受講していること(貸切は除く) 運行管理者試験に合格していること なお、受験資格として1年以上の実務経験または基礎講習受講が必要 |
営業所毎の配置基準 | 貸切:保有車両39両まで2名、以降20両ごとに1名追加(保有車両100両以降は、30両ごとに1名追加) 乗合・乗用:保有車両39両まで1名、以降40両ごとに1名追加 | 保有車両29両まで1名、以降30両ごとに1名追加 |
※参考:国土交通省,運行管理者について
基本的に、運行管理者試験に合格することは必須条件ですが、受験資格として1年以上の実務経験または基礎講習の受講が求められます。貸切バスを除く事業者は、5年以上の実務経験を持ち、所定の講習を5回以上受講していることでも選任可能です。
また、営業所ごとに配置基準が定められています。例えば、貸切バス事業では保有車両39両まで2名の運行管理者が必要で、以降20両ごとに1名追加されます。乗合・乗用バスでは39両まで1名、それ以上は40両ごとに1名追加が必要です。トラック事業の場合は、29両まで1名、以降30両ごとに1名追加されます。
運行管理者の配置数は、営業所ごとの車両台数に応じて定められています。旅客自動車運送事業や貨物自動車運送事業では、保有する事業用車両の台数が一定数を超えるごとに追加の運行管理者を選任する必要があります。
また、運行管理者が他の営業所の業務を兼務することは認められていません。各営業所で確実に安全管理を実施できるようにするための措置です。ただし、霊柩車や一般廃棄物収集車を運行する営業所については、保有車両が5両未満の場合に限り、運行管理者の選任が不要とされています。
運行管理者を選任または解任した際は、所轄の運輸局に届出を行う必要があります。届出の期限は、旅客事業者の場合は15日以内、貨物事業者の場合は7日以内です。
届出時には、以下の書類を提出しましょう。
届出用紙には、運行管理者の氏名・生年月日・資格者証番号・交付年月日・担当する営業所の名称・所在地などの情報を正確に記載する必要があります。解任する場合は、その理由も記載してください。
届出を怠った場合、事業者には行政処分や罰則が科せられる可能性があるため、期限内に必ず手続きを行うことが重要です。また、運行管理者が新たに追加された際や、変更が生じた際にも、同様に届出が必要となります。
運行管理者には、選任後も継続して講習を受講する義務があります。事業用自動車の安全運行を確保するために定められた制度で、国土交通大臣が認定する講習を受講しなければなりません。
講習には一般講習と特別講習の2種類があります。一般講習は、すべての運行管理者が対象となり、2年に1回の受講が義務付けられています。一方、特別講習は事故や法令違反による処分を受けた場合に受講が必要で、事故発生日から1年以内に受講しなければなりません。
もし、講習を未受講のまま放置すると、行政処分の対象となるため注意しましょう。必要な講習を確実に受講することで、運行管理者としての責務を果たし、事業の安全性向上に貢献できます。
運行管理者の選任は、道路運送法および貨物自動車運送事業法に基づき義務化されており、安全運行を確保するために不可欠です。選任には一定の資格要件があり、営業所の保有車両台数に応じた配置基準が定められています。選任や解任の際には、所轄の運輸局へ速やかに届出を行いましょう。
また、運行管理者には業務の遂行だけではなく、定期的な講習の受講義務が課せられています。未受講の場合は、行政処分の対象となるため注意が必要です。事業者は適切な管理体制を整え、法令を遵守しながら安全な輸送環境を維持することが求められます。