物流業界で注目される輸送方法の1つに「路線便」があります。複数の荷主の荷物を1台のトラックに混載して運ぶ仕組みであり、輸送コストを抑えながら安定したスケジュールでの配送を実現します。また、小口貨物や特定地域への配送など、幅広いニーズにも対応可能です。
本記事では、路線便の基本的な仕組みや利用シーン、メリットやデメリットを解説します。
「路線便」とは、運送会社があらかじめ設定したルートやスケジュールに基づき、複数の企業から預かった荷物を1台のトラックに混載して輸送する方法のことです。主に企業間の物流(BtoB)で利用されており、小口貨物にも対応可能なため、少量の荷物を効率的に輸送するのに適しています。
路線便の特徴の1つは「リレー方式」の輸送です。まず、荷物は複数の発送元から最寄りの拠点に集められ、エリアごとに仕分けされます。その後、配送先に近い拠点へトラックで輸送され、最終的に別の配送手段で配送先へ届けられます。この仕組みにより、一度に多くの荷物を効率的に運べます。
ただし、拠点間の輸送が主体で直接配達を行わないため、到着日時を細かく指定するのが難しい点もあります。そのため、緊急性が低くコストを重視する場合に適した輸送手段といえるでしょう。
路線便は、コストを抑えつつ効率的に荷物を輸送したい場合に選ばれる輸送方法です。具体的には、以下のようなケースで利用されます。
<路線便が利用される主なケース>
・荷物の輸送を急いでいない
・輸送コストを抑えたい
・宅配便で対応できない荷物を運ぶ
・特定の地域に荷物を輸送する
<具体的な利用場面>
・企業間物流(BtoB):小売店や卸売業者向けに商品を配送する
・工場間輸送:部品や原材料を定期的に工場間で輸送する
・在庫補充:各地の倉庫や販売店に商品を補充するために定期的に配送する
小口貨物や少量の荷物を効率的に輸送できるため、企業間物流(BtoB)では、小売店や卸売業者への定期的な在庫補充にも適しています。(※)
また部品や原材料を定期的に移動させる工場間輸送では、コストパフォーマンスの高さがメリットです。
宅配便では対応が難しい長尺物や重量物など、特殊なサイズや形状の荷物を運ぶ際にも路線便が選ばれます。例えば、EC事業者が大型商品を全国へ配送する際には、路線便の広い拠点網と柔軟性が役立ちます。
※参考:経済産業省,物流業界が抱える課題と対応策について,p5
路線便を利用するメリットを、5つ紹介します。
路線便は、他の荷主の荷物と混載して輸送する相乗り方式を採用しているため、1荷主あたりの輸送コストを抑えられます。料金は荷物の重量やサイズに応じて決まるため、小口貨物の場合、トラックを丸ごと借りるチャーター便よりも割安で利用できます。
また、空きスペースを有効活用できるのもメリットです。運送会社にとっては輸送効率が向上し、荷主にとってはコスト負担の軽減につながるでしょう。結果、双方がコスト削減の利点を享受できる仕組みになっています。
路線便は、あらかじめ決められた定期的なスケジュールに従って運行するため、配送日時が安定しています。これにより、荷主は計画的な出荷や納品が可能となり、生産計画や在庫管理の効率化を図ることができます。
特に、定期的な補充や複数拠点間の物流が必要な場合、安定性のある路線便は有効な輸送手段となるでしょう。
路線便は、物流事業者が構築した全国規模の配送ネットワークを活用するため、広範囲に配送が可能です。物流センターや拠点をリレー方式で結ぶことから、依頼主が直接手配できない地域でも他の物流事業者との提携によって対応できます。
路線便は、小口貨物から長尺物、重量物まで幅広い荷物を輸送できる柔軟性があります。一般的な宅配便では難しい大きなサイズや重量の荷物もある程度扱えるため、特殊なサイズや形状の荷物を送りたい場合にも便利です。
路線便では多くの場合、荷物追跡システムが導入されており、輸送中の荷物の位置をリアルタイムで確認できます。荷主は配送状況を簡単に把握でき、納品予定や在庫管理の計画を立てやすくなります。
特に、重要な荷物やタイムリーな情報が必要な場合には、荷物追跡機能の存在が安心感につながるでしょう。
路線便の利用には、メリットだけでなくデメリットもあります。
メリット・デメリット双方を考慮したうえで、利用を検討しましょう。
路線便は複数の拠点を経由して配送するため、リードタイムが長くなりがちです。中継地点で積替え作業やスケジュール調整を行うことから、直行便やチャーター便と比較すると配送に時間がかかるケースが多いです。
また、路線便の定期的な運行スケジュールに合わせる必要があるため、荷主側には計画的な出荷準備が求められます。そのため、緊急配送や特急対応が必要な場合には適していません。
路線便は、中継拠点での積替え作業が多く、他の荷物と接触する機会が増えるため、破損や損傷のリスクが高まります。特に、精密機器や壊れやすい商品を送る場合には注意が必要です。
路線便は幅広い荷物に対応可能ですが、チャーター便や専用車に比べるとサイズや積載方法に一部制約があります。特に大型貨物や特殊な形状の荷物、危険物は対応できないケースが多く、利用が制限されることがあります。
規格外の荷物を送る際には別の輸送手段を検討する必要があり、追加の手続きや費用が発生するでしょう。荷物の特性を事前に確認し、条件に合った輸送方法を選択することが重要です。
路線便は、小口貨物や特定地域への輸送に適したコスト効率の高い輸送方法です。複数の荷主の荷物を混載することで輸送コストを抑え、広範な配送エリアや安定したスケジュール、荷物追跡システムといったメリットがあります。
しかし一方で、リードタイムが長くなる可能性や積替えによる荷物の損傷リスク、荷物の条件に制約があるといったデメリットも存在します。
路線便を利用する際はこれらの特性を理解し、輸送する荷物や納期に応じて適切に活用しましょう。