「物流総合効率化法」荷主企業が今行うべき対策とは?

「物流総合効率化法」荷主企業が今行うべき対策とは?

「2024年問題」による物流停滞への懸念に対処するため、2024年4月に国会で改正案が可決された物流総合効率化法(以下、物効法)。業務の効率化や適正化を見据え、荷主企業は物効法対策をどのように行うべきなのでしょうか。ハコベルでは、経路探索エンジンの技術に強みを持つ株式会社ナビタイムジャパンから内門智弥氏をお招きし、事例を交えながら物効法対策を考えるウェビナーを開催しました。

この記事でわかること

  • 物流総合効率化法における対策方法

株式会社ナビタイムジャパン

ビジネスナビタイム事業部 部長

内門 智弥氏

2014年株式会社ナビタイムジャパン入社。エンジニアとして法人向けサービスの開発業務に携わり、2017年マネージャーに就任。2019年法人向け店舗データ管理クラウドサービス「NAVITIME Location Cloud」を立ち上げ、2021年事業部長に就任。2024年からは主に物流向けサービスを開発するビジネスナビタイム事業部長も兼務し、法人向けSaaSビジネスの統括責任者として従事。


ハコベル株式会社

物流DXシステム事業部 カスタマーサクセス部 部長

渡辺 健太

トーマツイノベーション株式会社(現・ラーニングエージェンシー)にて法人営業、セミナー講師、新規事業開発責任者等を担い、産学官連携プロジェクトマネージャーを歴任。2年間の上海現地子会社にてCOOとして幅広く経営に従事した後、2021年11月にラクスル株式会社ハコベル事業部に入社し、以来物流DXシステム領域の事業開発、カスタマーサクセス部門を管掌。



物効法改正にまつわる、昨今の“物流効率化”トレンド

ウェビナーでは始めに、ハコベルの渡辺より、直近の物流業界のトレンドをご紹介しました。




2023年3月、国全体の物流効率化を目指す関係閣僚会議の設置に端を発し、「政策パッケージ/緊急パッケージ」の決定等、物流の効率化に向けて様々な動きが出始めました。これらの動きは一貫して、「2024年問題による輸送力不足への懸念に対処するため、物流に携わる荷主企業・物流事業者及び一般消費者が協力して取り組む」という方向性のもとにあります。その具体的なアクションプランは改正物流二法、政省令の案として2024年12月までに作成され、2025年4月に施行、という流れになります。

一連の流れを受けて荷主企業・物流事業者は何をすべきなのか、政府から発表された「2023年度に向けた政府の中長期計画」を見てみましょう。(なお、ここには物流効率化に向けたデジタル技術の活用やシステム導入等、環境整備を支援する助成金・補助金についても記載されています。)

 

ひとつ目は荷主・物流事業者を対象とした「流通業務総合効率化法」の改正です。



物流効率化のための措置(荷待ち・荷役時間の削減、積載率向上など)を努力義務とし、一定規模以上の事業者に対して中長期計画の作成、及び定期報告、そして物流統括管理者の選任を義務付ける内容となっています。



2つ目はトラック事業者を対象とした「貨物自動車運送事業法」です。


実運送体制管理簿の作成や役務内容や対価の明記を義務付けるほか、下請けに出す際の適正化の努力義務が課されます。

現在、物流業界全体をあげて物流効率化に取り組んでいこうという機運が高まっている中、自社が取り組むべき方策は何であるのか。そのヒントのひとつとして、ウェビナーでは、株式会社ナビタイムジャパン ビジネスナビタイム事業部 部長 内門氏をお迎えし、物流効率化をソフト面で支援する同社の取り組みについてうかがいます。


経路探索技術を活かした勤怠管理ソリューション


株式会社ナビタイムジャパンは、コア技術である経路探索技術で様々なサービスを開発、提供している企業です。同社が物流業界に関わり始めたのは2012年。以来、動態管理ソリューションやトラックドライバー専用のカーナビアプリなどを展開してきました。


主力サービスであるビジネスナビタイム動態管理ソリューションは、配車計画から輸配送の動態管理まで一気通貫で支援できるのが特徴です。ドライバーはスマホ1台で作業内容の確認・報告から、車幅や車高を考慮した最適ルートを確認することができます。



内門:「配送先をどの順番で回るのが効率的か、経路探索技術を活かして最適な配車計画を算出します。また、荷主企業様にとっては、ドライバーの位置情報が画面上で確認できるのがメリットです。もうひとつ、到着時刻を高い精度で予測でき、指定時間帯通りに運行できるため、荷待ち時間の削減にもつながるのではないでしょうか」

ドライバーの走行実績や勤怠状況といったデータが蓄積され、法改正による書面作成にも役立てることができます。



物流効率化はバース予約がカギを握るか


物効法の改正にあたり、株式会社ナビタイムジャパンが注目しているのは「荷待ち・荷役時間の削減」「積載率の向上」の二点。荷主・物流事業者に課される“努力義務”の部分が一部議論の最中であるものの、主に荷主企業に求められる想定範囲をまとめていただきました。



内門「物効法の改正によると、積載率の向上は、貨物の積み合わせや共同配送等、他社との連携が求められます。適切なリードタイムを予測しながら運行効率化を目指さなければなりません。荷待ち時間の短縮は、トラック予約システム(バース予約)を活用し、時間を分散させるよう計画を立てること。そして荷役時間の短縮は、検品の効率化や伝票レス等の業務効率化が求められています」

その他、荷主企業も中長期計画を作成する上では貨物や施設等の情報をしっかり把握しなければならず、荷待ち・荷役時間の可視化は必須であると語ります。



内門「求められる想定範囲を整理してみると、今後は、よりバース予約による荷待ち時間の短縮はもちろん、それに伴って時間指定での運行も求められるため、正確な運行管理が重要視されると考えています」

荷待ち・荷役時間の短縮が努力義務とされる中、業務の効率化は喫緊の課題となっています。倉庫側の人手不足をカバーし、かつバースの混雑を緩和して荷待ち時間の短縮を図るためにもバース予約を導入しつつ、時間指定を考慮した配車計画の作成や動態管理など、正確で効率的な運行管理を実現するための仕組み作りが求められていると言えるのです。


ドライバー起点の使い勝手で顧客満足度向上


では、輸配送の効率化を具体的にどのような形で実現していけば良いのでしょうか。株式会社ナビタイムジャパンの「ビジネスナビタイム動態管理ソリューション」の特徴を、さらに詳しく説明していただきました。



1.経路検索技術で効率的な配車計画を作成

内門「たとえば、複数の訪問先を1人で効率よく回りたい場合、最適な巡回経路を自動計算できます。配車計画は勘と経験で成り立っているケースが多く、属人化しやすい業務です。システムを導入することで属人化の解消につながることも。実際、「ビジネスナビタイム動態管理ソリューション」を導入してから配車計画に費やす時間が98%削減、1日1便あたりの配送件数が21%増加した例もあります」



2.正確な実績情報の取得

内門「ドライバーのスマホにアプリをインストールしておくだけで、位置情報が取得でき、業務ステータスも自動更新されます。動態管理については、「デジタコ等、異なるメーカーの車載器だと一元管理が難しい」という問題をよく聞きますが、弊社のアプリならスマホさえあれば導入できるためその心配がなく、情報収集することに優れた機能を持っています」

また、収集したデータを元に様々な分析ができるのも特徴のひとつ。直近では、「〇〇場所でよく荷待ちが発生する」など、訪問先ごとの特性が得られる機能を新たにリリースしました。今後、荷主企業様が様々な書類作成をするうえで、協力会社の情報収集がしやすいと思います」



3.正確な運行の実現

内門「大型車の車高や車幅等を考慮し、車両サイズごとに最適ルートを検索できるのが一番の強みです。メールで接近通知も入り正確な到着時間が予測できるので、着荷主様が荷受け準備をしやすくなります。遅延の場合も画面上で確認することが可能です」



バース予約システム「トラック簿」実装


ここからは、ハコベル渡辺より、自社が提供する物流DXシステムを説明いたしました。以下が、ハコベルが展開する物流DXシステムの全体像です。



ひとつ目が「配車計画」です。配車計画は専門性が高く、知識や経験が必要なため属人化しやすいと言われています。そのもっとも複雑な部分をAIで自動作成し、誰でも行えるようにしました。

渡辺「 注目していただきたいのは“輸送モード最適化”です。荷物量によってチャーター便を手配するかパレット単位で路線便にお願いするのか、などを事前に割り振ることができるため、より効率的な配車計画が可能となります」

ふたつ目の「配車管理」は、従来電話やFAXでやり取りしていた配車依頼等の連絡業務をシステム上で遂行できるものです。履歴データが残るので、実運送体制管理簿の作成等にも役立てることができます。

 

直近のアップデートでは、バース予約受付システム「トラック簿」を実装しました。



渡辺「“予約システム”を使ってバースの混雑を分散、解消することができます。トラック台数や到着時間なども簡単に確認できますから、入出庫作業の段取りがつけやすくなるのもメリットです。実績データは自動的に蓄積されるので、各拠点間の課題解決につなげるヒントを見つけることもできます」


様々なシステムの連携で物流効率化実現へ


ウェビナーの終盤は、株式会社ナビタイムジャパン ビジネスナビタイム事業部 部長 内門氏とハコベル渡辺で、紹介しきれていない内容を中心にディスカッションを行いました。

 

~ナビタイムジャパンの支援事例~


消費者から店舗への配送状況の問い合わせを、「ビジネスナビタイム動態管理ソリューション」を導入することで店舗側が配送状況を常に画面で把握できるようにしました。店舗側は毎回センターやドライバーに電話確認をする必要がなくなり、業務効率化につながった事例です。また、「ビジネスナビタイム動態管理ソリューション」ならではの、車格を考慮した最適なルート検索や到着時間予測が、顧客満足度をさらに高めたと言います。


渡辺「「ビジネスナビタイム動態管理ソリューション」はドライバー起点のサービスというのが良いと思います。物効法の改正で荷待ち・荷役時間の削減に重きが置かれ、バース予約の重要性も問われているところですが、そもそも個人宅や建設現場などバースが設けられていない場所はたくさんあります」

内門「はい。物流施設ひとつとってもバースがないところはありますから、結局は用途に合わせてシステムをうまく混在していくのが得策です。そういう意味では、御社の「トラック簿」との連携も期待できそうですね」

渡辺「ハコベルとして、輸配送に関わるサービスを一気通貫で提供してほしいというお声も多かったので事業承継に至りました。しかし、実際はバース管理システムを導入するだけでは事足りません。施設構造や人手不足、スキルの問題等、様々な観点の解決策を講じる必要があります。これを機に、株式会社ナビタイムジャパン様とも連携しながら物流効率化を進めていければと考えています」



◇◇◇

引き続き、荷主企業様や物流事業者様に向けて定期的に各種セミナーを開催しております。

以下よりご確認いただき、ぜひご参加ください!

2025年「物流持続可能性の危機」を乗り越える!
~「2024 年問題・運命の日」と改正物流法、働く人と地球の環境保全~
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