物流効率化法(物効法)施行に伴い、荷主・物流事業者に対して「積載効率の向上」「荷役時間の短縮」「荷待ち時間の短縮」へ向けた取り組みが求められています。ハコベルでは、これらへの具体的な対応策を探している企業様に向けて、役立つソリューションや事例を紹介するウェビナーを開催しています。
今回は日本パレットレンタル株式会社様との共同ウェビナーとして、日本パレットレンタル様の納品伝票電子化・共有化システム「DD Plus」、およびハコベルの物流DXシステム「配車計画」と「トラック簿」をご紹介しました。
日本パレットレンタル株式会社
デジタルロジスティクス事業開発部 DL営業グループ グループ長
海老澤 博規 氏
2012年日本パレットレンタル株式会社入社。人事部、経営企画部を経て、2019年より「標準化・物流DX」をキーワードにサプライチェーンの全体最適に資するソリューション企画に従事。 標準データフォーマットの策定から物流現場での実証実験まで、構想段階から実行までを一貫して担当。空理空論ではなく、現場に寄り添った実行性のある課題解決に力を注いでいる。
ハコベル株式会社
プロダクト開発部 部長
宮武 晋也 氏
慶応義塾大学法学部政治学科卒業。2011年、グリー株式会社に入社。プロデューサー/シニアマネージャー、ベトナム開発拠点の組織立ち上げ・マネジメントなどを幅広く経験。2015年4月にラクスル入社。新規事業のMgrとして、プロダクトマネジメント、事業開発、オペレーション構築など幅広い業務に従事。現在はプロダクト開発組織のマネジメント、配車計画の事業開発を主に担当。
はじめに、ハコベルより改めて物効法の概要を簡単に整理しました。物効法が改正された背景には、深刻な輸送力不足の問題があります。何も対策を講じなければ2024年度に14%、2030年度には34%の輸送力不足が発生するとされており、この解決が最優先課題です。今回の改正は物流事業者だけでなく、荷主企業や一般消費者も含めた包括的な取り組みが求められていることが大きな特徴です。
詳しい情報を知るには、国土交通省の「『物流効率化法』理解促進ポータルサイト」がおすすめです。一見複雑に思えますが、次の3つのポイントを軸にすると理解しやすくなります。
1)物流効率化に向けた3つの取組を理解する
2)自社の立場と取組内容を理解する
3)特定事業者が取り組むべき3つの事項を理解する
まず、(1)が示すのは次の3点です。
・積載効率の向上等(1回の運送でトラックに積載する貨物量を増加する)
・荷待ち時間の短縮(ドライバーが到着した時間から荷役等の開始時間までの待ち時間を短縮する)
・荷役等時間の短縮(荷役(荷積み・荷卸し)等の開始から終了までの時間を短縮する)
上記のどの項目が自社に該当するかは、荷主やトラック事業者など立場によって異なります。これが「(2)自社の立場と取組内容を理解する」に当たります。自社に求められる取り組みが何かを把握しておくことが重要です。
また(3)については、2026年度より一定規模以上の事業者が「特定事業者」に指定され、「中長期計画の作成」「定期報告」「CLO(物流統括管理者)の専任が」義務付けられる見通しです。行政からの通達はなく、事業者自身が基準に該当するかを判断して手続きを行う必要があるため、注意が必要です。
次に、日本パレットレンタル株式会社 デジタルロジスティクス事業開発部 DL営業グループ グループ長 海老澤博規氏が登壇し、同社の納品伝票電子化・共有化システム「DD Plus(ディーディープラス)」について紹介されました。
納品伝票には「いつ、誰が、どこからどこに、何を、いくつ移動させる」という物流の核となる情報が全て含まれており、その電子化は単なるペーパーレスではなく、本質的な物流DXの第一歩として位置づけられます。
DD Plusは、その納品情報/受領情報の電子的な共有・保存を実現するWebシステムです。従来の紙伝票が電子化されることで、次のような成果が期待できます。
<従来業務>
大量の紙伝票を印刷するためプリンタ・インク・用紙代がかかる
配車表を確認しながら手作業で納品車両毎に伝票を仕分ける
受領書の回収や受領印の押印有無、伝票訂正有無を目視でチェック
<電子化>
データアップロードと補助帳票(納品レポート)の印刷のみ
1車両1帳票なので仕分は不要で、車両を指定して出力することも可能
未受領書の回収は必要なく、受領や伝票訂正が行われた際に通知が届く
<従来業務>
乗務員から提示された伝票を確認し、検品対象の情報を作成
入荷予定で検品するため欠品があると確認に時間を要する
検品結果と納品伝票の内容明細を目視でチェック
<電子化>
納品単位で事前にデータを取得し、確認する
入荷予定・出荷予定を事前にチェックできる
伝票データと検品データを機械的に照合が可能
DD Plusの特徴は、大きく下記の3点です。
「SIPスマート物流」で定められた標準的なデータ形式に対応し、他社のさまざまなシステムと連携が可能です。オープンな姿勢で業界全体の電子化を推進しています。
取引先の業務形態に応じて紙の伝票を出力したり、QRコードのついた「納品レポート」の出力で現場のオペレーションに対応するなど、多彩な運用方法で過渡期の業務をサポートします。
既存のパレット伝票と納品伝票を一つのシステムで管理可能。2つのシステムを使い分ける必要がなく、ワンストップでの伝票管理を実現します。
DD Plusは電子帳簿保存法にも対応し、紙の伝票の印刷もできるハイブリッドな仕組みで、業務効率化を実現する実用的なソリューションとして、物流業界のデジタル化を支援しています。
続いて、ハコベル株式会社 プロダクト開発部 部長 宮武晋也氏より、積載率向上対策として「配車計画」を、また荷待ち荷役時間短縮対策として「トラック簿」をご紹介しました。
配車計画は、AIの最適化計算によって配車計画業務の標準化・高速化を可能にするサービスです。配車業務については、多くの企業から「配車計画業務が属人化している」「煩雑化で時間がかかる」「最適なコストがわからない」といった声が聞かれます。
配車計画なら、事前登録した荷物情報や車両条件に基づき、チャーター便と路線便の自動振り分け、車両サイズの最適選択、複数拠点を巡る最短ルートの計算ができます。さらに、計算された計画を担当者が柔軟に編集することも可能です。
これにより、次の3つの面で積載率向上に寄与します。
積載重量・容積制約と納品先座標から最適ルートを選定し、利用台数を最少化します。
調達物流と生産物流の統合や、共同配送による効率化が可能です。
支払い運賃ベースでチャーター・路線便を自動最適化(業界初)。今後は鉄道・海上コンテナ輸送へも対応予定です。
また、トラックをマッチングする「ハコベル運送手配サービス」を同じプラットフォームから利用でき、繁忙期の機動的な対応が可能です。
次に紹介されたのが「トラック簿」です。こちらはバースの混雑解消や入退場のデジタル管理を目的としたバース受付・予約システムです。業界最安値(初期費用1拠点目0円)、1カ月からの短期契約が可能で、メーカー、3PL、小売、建設など多様な業種での導入実績を持ち、業界No.1の成長率を誇ります。
トラック簿には大きく2つの使い方があります。1つは「受付のみ」の使い方。トラックの受付・呼び出しから退場までをタブレットやスマートフォンの操作で完結できます。もう1つは「受付+予約」の使い方。こちらは予約機能で事前に時間調整を行うことで、当日の荷待ち時間の緩和に貢献します。
ハコベルではお客様がお持ちのデータを基にこれらのシステムを用いたシミュレーションも提供しています。
最後に、日本パレットレンタルの海老澤氏とハコベルの宮武氏が、直近の「DD Plus」の事例と今後の可能性についてディスカッションしました。
昨年11月、東急ストアを中心とした大規模な納品伝票電子化のパイロット運用が実施されました。味の素、伊藤園、キッコーマン食品、ヤマサ醤油、UCC 上島珈琲の各社とそのパートナー物流会社が参加し、東急ストアの東扇島流通センターにて2週間にわたって「DD Plus」を運用するというものです。
「運用の結果、従来と比べて伝票発行作業は30%〜75%の削減、帳表印刷枚数は60〜75%削減されました。さらに受入側の照合作業が不要になったことで、延べ4〜6時間/日の作業時間削減という成果が得られたのです。また、事務作業だけでなく、ドライバーの業務負担改善にも効果があることがわかりました」(海老澤氏)
海老澤氏は、納品伝票電子化に隣接した取り組みとして「ASN(Advanced Shipping Notice=事前出荷情報)」を活用した検品レスの取り組みへの発展にも言及しました。検品レスによりバースの回転率が高まることで、荷降ろし待機時間の削減も期待されます。
このパイロット運用以降、参加企業以外からも導入への関心が高まっていると言います。宮武氏が納品伝票の電子化を成功させるポイントについて質問すると、海老澤氏は次のように答えました。
「データの視点で見ると、納品車両単位で伝票の情報をまとめることです。どの車にどの伝票の荷物が積載されているかという情報を連携することで、受入側の検品前準備や作業効率が大幅に向上します。これが発側様、着側様、それぞれにメリットを感じていただけるポイントになると考えています」(海老澤氏)
ハコベルの「配車計画」は、まさにその情報の連携を可能にする構造を持っています。ハコベルでは、一層の物流改善への寄与を目指して連携案を協議していきたいと考えています。
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