物流業務における不良在庫は、保管スペースを圧迫し管理コストを増加させるだけでなく、他の商品への悪影響を引き起こす要因となります。不良在庫を放置すれば企業の経営に負の作用をもたらす可能性があるため、原因を正確に把握し適切な対策を講じることが重要です。
本記事では、不良在庫の定義をはじめ、発生する主な要因や削減に向けた具体的な方法を解説します。
不良在庫とは、倉庫や店舗に長期間滞留し、今後も通常価格で販売できる見込みがない在庫のことです。不良在庫には流行が過ぎた商品や型落ち品、不良品や過剰な仕入れによる売れ残り商品などが該当します。
不良在庫が増えると、保管スペースを圧迫するだけでなく、人件費や光熱費といった管理コストを増大させる原因となります。また、他の商品へ悪影響が及ぶ場合もあり、売れ筋商品の保管スペースが不足して販売機会を損失するリスクも生じるでしょう。
なお、不良在庫と似た概念に過剰在庫や不動在庫があります。過剰在庫は販売可能な商品が過剰に仕入れられた状態を指し、不動在庫は一定期間売れずに残った在庫を指しますが、不良在庫とは異なり、将来的に販売できる可能性が残っています。
在庫の種類 | 定義 | 主な例 |
不良在庫 | 販売見込みがなく、長期間滞留している在庫 | 型落ち商品、流行遅れの商品、不良品など |
過剰在庫 | 販売可能だが、供給過多で余剰となった在庫 | シーズンオフ商品、過大な発注量の商品など |
不動在庫 | 一定期間売れず、動きがない在庫 | 売れ行き不振の在庫、ニッチな商品など |
不良在庫を適切に管理し迅速に対応することで、保管コストの削減や販売機会の確保などが可能です。企業にとって在庫管理は重要であり、適切な対策が求められます。
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不良在庫が発生する原因は、主に以下の4つです。
原因 | 詳細 | 対策例 |
需要予測の誤り | 市場の需要を過大評価 | データ分析を活用した精度向上 |
在庫管理の不備 | 適切な管理がされず、長期間放置された在庫 | 在庫回転率の定期的なチェック |
流行遅れ・型落ち商品 | トレンドの変化により需要がなくなった商品 | 販売促進キャンペーンの実施 |
賞味期限・消費期限切れ | 食品や医薬品の期限切れ | 適正な在庫数を維持、販売計画の強化 |
不良在庫は、上の表の通りさまざまな要因によって発生します。市場の需要を過大に見積もることで供給が需要を上回り、在庫が積み上がるほか、発注ミスによる余剰在庫や流行が終わった商品などが主な原因です。
また、食品や医薬品などの賞味期限・消費期限切れや、初期段階での品質管理の不備による不良品や欠陥品も不良在庫の一因になります。保管スペースを圧迫し管理コストを増大させるだけでなく、企業の財務状況に悪影響を与えるため、適切な在庫管理や需要予測の精度向上が求められます。
続いて、不良在庫の削減方法を解説します。
過剰な生産や仕入れは不良在庫の発生リスクを高めるため、市場データや過去の販売実績を基に正確な需要予測を行い、適正な在庫水準を保ちましょう。在庫の積み上がりを防ぎ、コスト効率の向上につながります。
また、生産や仕入れの判断を担当者の勘や経験に頼るのではなく、システムやデータ分析を活用して客観的な基準で管理することも有効です。
ABC分析を活用することで、効率的な管理が可能になります。売上や出荷量を重要度別にA(高優先度)、B(中優先度)、C(低優先度)の3つのグループに分け、収益に最も大きな影響を与えるAグループを重点的に管理します。
これにより限られた管理リソースを効率よく配分でき、不必要な在庫や過剰在庫の見直しが可能になります。また、低優先度の在庫については適切な削減策を講じることで、不良在庫の発生を未然に防げます。
在庫回転率とは、一定期間内に在庫が何回入れ替わったかを示す指標で、数値が高いほど在庫が効率的に消費・出庫されていることを意味します。
需要予測に基づいた仕入れや生産量の調整を行い、適正な回転率を維持することが重要です。ただし、在庫回転率が高すぎると欠品リスクが生じるため、適正在庫数を見直しながらバランスを保つことを目標にしましょう。
過剰在庫は管理コストを増大させるだけでなく、賞味期限や消費期限が過ぎてしまうことで不良在庫化するリスクが高まります。そのため、在庫の適正な管理を行い、売上だけでなく利益確保を意識した運営が重要です。
販売が見込めない在庫については、買取業者を活用して少しでも資金化するか、正当な手続きを経て速やかに廃棄処分を行いましょう。
在庫管理システムを導入することで、不良在庫の発生リスクを低減できます。システムが在庫データを自動的に収集・管理するため、リアルタイムで在庫状況を把握でき、手作業でのミスや過剰発注を防ぎます。
また、ハンディターミナルを使用すれば、入出庫や棚卸し時にデータを迅速かつ正確に記録可能です。業務効率が向上すると同時に在庫の過不足を防ぎ、適正な在庫管理を実現できるでしょう。
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在庫管理を外部に委託することで、不良在庫の削減が期待できます。物流専門企業は在庫管理に関する豊富なノウハウや最新設備を持っています。
また、委託によって自社内での管理負担を軽減でき、リソースを商品企画やマーケティングなどの重要な業務に集中できるメリットもあります。特に、管理リソースが不足している企業や在庫管理の負担が大きい部署には、効果的な選択肢と言えます。
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不良在庫は、企業のコスト増大や販売機会の損失を招き、経営に深刻な影響を与える可能性があります。不良在庫の発生を防ぐためには、適正な在庫数を維持すること、またABC分析、在庫回転率の向上といった管理手法を活用し、在庫管理を徹底することが重要です。
在庫管理システムの導入や外部委託を活用することができれば、業務の効率化と不良在庫の削減を図ることも可能です。これらの対策を組み合わせて実施することで、不良在庫を抑えながら収益性を高め、持続可能な事業運営を実現できるでしょう。