物流のアウトソーシングとは?メリット・デメリットと業者選定を解説

物流のアウトソーシングとは?メリット・デメリットと業者選定を解説

物流のアウトソーシングとは、自社の物流業務を外部の専門業者に委託する手法です。近年、企業がコスト削減や業務効率化を目指し、この手法を積極的に取り入れるケースが増えています。特に、輸送や倉庫管理といった専門性が求められる業務において、アウトソーシングの効果は大きくなります。しかし、外部委託にはリスクも伴うため、メリットとデメリットを理解し、慎重に検討することが重要です。

本記事では、物流アウトソーシングの基本から具体的な導入事例、業者選定のポイントまでを解説し、企業が物流戦略を見直すための参考情報を提供します。

この記事でわかること

  • 物流におけるアウトソーシングとは
  • アウトソーシングのメリット・デメリットについて

1. 物流のアウトソーシングとは

近年では、多くの中小企業が競争力を強化するために、物流アウトソーシングを検討しています。ここでは、物流のアウトソーシングの定義と背景、委託できる範囲について解説します。

物流のアウトソーシングの定義と背景

物流のアウトソーシングとは、企業が物流業務を外部の専門業者に委託する手法です。

近年、eコマースの急速な発展や物流の複雑化に伴い、企業が自社内ですべての物流業務を処理することが困難となっています。特に、中小企業では、内部リソースの限界から、物流業務全体を自社で賄えないケースも少なくありません。

物流業務を外部に委託すれば、専門業者の知識や技術を活用でき、コストの最適化や業務負担の軽減が期待できます。その結果、コア業務にリソースを集中させることができ、競争力の強化につながるでしょう。

物流業務の委託可能な範囲

物流のアウトソーシングは、輸送業務、倉庫管理、在庫管理、梱包・ピッキングなど幅広い業務に対応しており、企業のニーズに応じて必要な業務のみを委託可能です。

例えば、倉庫業務を外部業者に委託することで、保管スペースの確保や人員の調整が不要となり、コスト削減と業務効率化が期待できます。また、輸送業務をアウトソーシングすれば、配送スピードの向上やサービス品質の安定化を図れるでしょう。

また、物流アウトソーシングには、3PL(サードパーティロジスティクス)という形態もあります。3PLとは、専門業者が物流業務を包括的に受託するサービスです。輸送だけではなく、倉庫管理や在庫管理も含むため、物流全体の最適化を実現できます。


2. 物流のアウトソーシングのメリットとデメリット

物流のアウトソーシングには、コスト削減や業務効率化など多くのメリットがあります。しかし、外部に依存することにはリスクも伴うため、各業務のメリットとデメリットを十分に理解することが重要です。

以下の表に、輸送、倉庫管理、在庫管理、梱包・流通加工、返品処理をアウトソーシングするメリットとデメリットをまとめました。

業務

メリット

デメリット

輸送

コスト削減、配送効率の向上

外部依存によるトラブル発生時の対応遅延

倉庫管理

保管スペースの削減、管理業務の簡素化

外部管理による保管状態の監視が困難

在庫管理

在庫精度の向上、効率的な流通

情報漏洩リスク、管理の複雑化

梱包・流通加工

業界標準や商品特性に応じた最適な梱包、コスト効率の向上

特注品や特別な要求に即対応できないおそれがある

返品処理

返品作業の負担軽減、業務の簡素化

品質管理が難しくなる


物流のアウトソーシングのメリット

物流アウトソーシングの大きなメリットは、コスト削減と業務効率化です。特に輸送業務では、外部業者の広範なネットワークを活用することで、配送コストを削減し、効率的な輸送が可能となるでしょう。

また、倉庫管理を外部に委託すれば、保管スペースの確保や管理の負担が減り、企業は重要なコア業務に集中できます。さらに、外部業者の高度な倉庫管理システム(WMS)を利用することで、在庫管理の精度が向上し、無駄な在庫の削減や在庫の回転率改善につながります。

物流のアウトソーシングのデメリット

輸送業務を外部に委託すると、トラブル発生時の対応が遅れるおそれがあります。また、倉庫管理においても、外部業者に依存することで品質管理が難しくなるでしょう。

さらに、物流のアウトソーシングには、情報漏洩や管理体制の複雑化といったリスクも存在します。リスクを最小限に抑えるためには、業者との信頼関係の構築と定期的な監査が必要です。

※参考:経済産業省,物流アウトソーシングマニュアル,P13


3. 物流アウトソーシングの成功事例

実際に、さまざまな企業が物流アウトソーシングを活用して、コスト削減や業務効率化を実現しています。

本章では、具体的な成功事例をもとに、物流アウトソーシングがどのように企業の成長に貢献しているかを解説します。

鉄鋼団地での混載型共同配送

鉄鋼団地での混載型共同配送は、複数の企業が協力して配送システムを共有することで、輸送効率の向上とコスト削減を実現した事例です。

個別配送では、配送頻度が高くなるほどコストが増加し、運送の非効率さが問題となっていました。そこで、混載型共同配送を導入したところ、各企業が輸送経路を最適化でき、コストの大幅な削減に成功しました。

この取り組みは、資源の共有を通じて物流の効率を高め、各企業の競争力を強化する良い例となっています。

自動車部品のJIT納入対応


自動車部品メーカーがJIT(Just In Time)方式を取り入れ、部品の供給を必要なタイミングで適切に行うことで、在庫管理を最適化した成功事例です。システム導入により、余剰在庫を減らし、保管コストを大幅に削減できました。

JIT納入では、生産スケジュールに合わせて部品を供給するため、在庫の過剰や不足を防ぎ、効率的な生産体制を確立できます。

また、物流アウトソーシングの活用により、専門業者のサポートを受けながら納入の精度を高め、物流全体のパフォーマンスを向上させることができました。

※参考:経済産業省,物流アウトソーシングマニュアル,P22


4. 業者選定のポイント


物流アウトソーシングでは、適切な業者を選ぶことで、物流の効率化やコスト削減の効果を最大限に引き出せます。

本章では、業者選定の際に考慮すべきポイントについて解説します。

<業者選定基準>

物流アウトソーシング業者を選定する際は、以下の要素について評価することが重要です。

コスト

料金体系が合理的で、長期的に利益を確保できるかを確認しましょう。単に安価な業者を選ぶのではなく、価格に見合った価値を得られるかがポイントです。

サービス品質

サービス品質としては、納期の遵守、顧客対応の迅速さ、クレーム対応力などの信頼性を評価します。特に緊急時の対応力は、業者の信頼性を測る大切な基準です。

技術力

最新の倉庫管理システム(WMS)や輸送トラッキングシステムの導入が進んでいるかが、業務効率化の鍵となります。

業界経験

業界経験も選定時に考慮すべき点です。特定の業界での実績が豊富な業者は、その業界特有の課題にも迅速に対応できます。


長期的なパートナーシップの構築のために

業者との長期的なパートナーシップを築くためには、信頼関係が不可欠です。定期的なミーティングやコミュニケーションを通じて、双方が直面している問題点を共有し、改善策を積極的に提案しましょう。

信頼関係の構築により、業務の円滑化につながるほか、将来的な改善も図れます。また、業務改善に対するフィードバックをお互いに提供し合うことで、双方が成長し合えるパートナーシップを築けるはずです。

コストや効率面だけではなく、業者の成長や技術的な進化にも目を向け、相互の利益を追求する姿勢を持てば、より強固な協力関係が長期にわたり維持されるでしょう。


5.まとめ

物流アウトソーシングは、企業が業務の負担を軽減し、コア業務に集中するための有効な手段です。しかし、物流アウトソーシングの効果を最大限に高めるには、業者選定の基準をしっかりと見極め、信頼できるパートナーを選ぶことが欠かせません。また、長期的なパートナーシップの構築が、成功を持続させるためのカギとなります。

本記事を通じて、自社に適した物流アウトソーシングを検討し、最適な物流戦略を実行に移しましょう。


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