物流総合効率化法とは?概要や背景、目的などを詳しく解説

物流総合効率化法とは?概要や背景、目的などを詳しく解説

物流業界には、人手不足や労働環境の悪化、環境問題など取り組むべき課題が多くあります。このような問題を解決するためには、流通業の効率化が必要です。そこで国は流通業務の一体化や物流の効率化を目的に、物流総合効率化法を策定しました。

日本では2024年に働き方改革関連法の影響により、トラックドライバーの労働時間が短縮されるなど、さらなる労働力不足が予想されています。この「2024年問題」を受けて物流効率化が一層の課題となりました。物流総合効率化法はこうした影響を緩和し、効率化を進める法的支援の枠組みを整備しています。

この記事でわかること

  • 物流総合効率化法の基礎知識

1. 物流総合効率化法とは

物流総合効率化法は正式名称で「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」と呼ばれています。法令では「流通業務の総合化及び効率化の促進を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与すること」と記載されています。流通業務の効率化を図るために、流通業務の一体化や輸送の合理化を行うのが目的の法律です。

物流総合効率化法は2005年に施行され、2008年と2020年、2024年に改正されました。物流総合効率化法は流通業務の総合化と効率化を図る法律であり、環境負荷の低減や省力化に資する事業に対して政府が支援を行うことを定めています。

2024年の改正内容

2024年の法改正では、主に以下の項目に重点が置かれています。

 ・物流DX・GXの支援拡充

 ・努力義務の導入

 ・特定事業者への規制強化

この改正は物流企業に大きな影響を及ぼします。特に物流企業、荷主に求められる努力義務については、物流業界で働く人は確認が必要です。

物流事業者

輸送網の集約、配送の共同化、ドライバーの負荷軽減の努力義務

荷主

物流事業者との連携や契約条件の見直しの努力義務

特定事業者

中長期計画の作成、定期報告の義務化

物流総合総括管理者の選任の義務化


2024年の改正内容では罰則も追加されました。物流総合効率化法の認定を受ける企業は、計画書を提出しなければ罰則50万円(最大)が科されます。また、達成までの行動が不十分で勧告や命令を行っても違反を繰り返す場合には100万円(最大)が科されます。

罰則の改正は物流業界にデメリットのある話のように聞こえますが、狙いは荷待ち時間や荷役時間を減らしたり、積載量の増加を見込んだりする点にあります。

物流総合効率化の対象となる施策

物流総合効率化の支援対象となる施策は以下の通りです。

内容

目的

モーダルシフト

自動車で行っている輸送(トラックなど)を鉄道や船舶などの輸送に切り替える

  • 環境負荷の低減
  • 人手不足の解消

輸配送の共同化

倉庫設備やトラックを共同で利用して輸配送を行う

  • 人手不足の解消
  • コスト削減
  • 積載量の増加
  • CO2排出量削減

輸送網の集約

物流拠点を集約し、輸送ルートを削減する(輸送ルートの中心部に輸送連携型倉庫を設置)

  • トラック数の削減
  • トラックドライバー数の削減
  • 積載量の増加

物流DX

物流施設の自動化に必要な施設の導入など

  • 業務効率化
  • コスト削減
  • 人手不足の解消

物流GX

EV車両、再生可能エネルギー関係施設の導入など

  • CO2排出量削減
  • エネルギー効率の向上



物流総合効率化法の支援措置

物流総合効率化法の支援措置は以下の通りです。

事業の立ち上げ・実施の措置

  • モーダルシフト等の取り組みに対する計画策定経費・運行費用の補助

施設・設備などへの支援

  • 輸送連携型倉庫への税制特例
  • 施設の立地規制に関する配慮

金融支援

  • 長期低利子貸付制度
  • 長期無利子貸付制度
  • 信用保険制度の限度額拡充

鉄道・輸送機構による支援

  • 事業実施のための資金貸付


支援を受けるためには「流通業務総合効率化事業についての計画」を作成しなければなりません。また、支援の相談窓口は、輸送局の物流担当です。国土交通大臣に認定されると支援措置を受けられます。

※参考:国土交通省,物流総合効率化法に基づく支援

認定基準

物流総合効率化法の支援のために政府(国土交通省)は以下の認定基準を定めています。(※)

 1. 基本方針に照らして適切なものであること

 2. 流通業務総合効率化事業を確実に遂行できるものであること

 3. 各事業法が定める欠格事由に該当せず、また、許可・登録基準等に適合すること
 4. 特定流通業務施設を整備する場合、主務省令で定める基準に適合すること(営業倉庫の場合)

※出典:国土交通省,「総合効率化計画」認定申請の手引き,p14

詳細については国土交通省のホームページをご確認ください。



2.物流総合効率化法の背景


物流総合効率化法施行の背景には以下のような問題があります。

 ・ECの普及

 ・人手不足と過重労働

 ・環境問題への対応(CO2削減)

 ・2024年問題への対応

近年ではECが右肩上がりに普及し(※)、翌日配送などのサービスが物流業界に大きな影響をもたらしています。荷物の多頻度化・小口化、配送による環境負荷の増大、人手不足はますます深刻化しているのが現状です。

また、2024年問題(トラックドライバーの年間時間外労働960時間の上限規制に端を発する諸問題)も見逃せません。企業には規制の影響によって、売上や利益の減少、収入減によるドライバーの離職が発生する可能性があります。今後いかに流通業務を効率化できるかが重要なポイントになるでしょう。

このような背景があり、国は物流総合効率化法を策定し、支援措置を定めました。

※出典:経済産業省,令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書,p5



3. 物流業界への影響

物流総合効率化法は流通業務の効率化を図ることが目的です。物流業界にとって良い影響が期待できます。

物流総合効率化法の認定を受けることにより、得られるメリットは以下の3つです。
 ・補助金の支援を受けられる

 ・物流の総合化・効率化を推進できる

 ・環境問題に配慮ができる

認定されると以下の補助金が受けられたり、法人税や固定資産税減免のメリットがあります。

 ・計画策定経費・運行経費の補助

 ・輸送連携型倉庫の法人税・固定資産税の減税 

 ・信用保険制度の限度額の拡充

 ・長期低利子・無利子貸付 など

物流総合効率化法の認定を受けるには物流業務の効率化や合理化に向けた事業計画を立てる手間が発生しますが、結果として業務改善や人手不足の解消、あらゆるコストの削減に繋がリます。

また、認定を受けるには環境問題への配慮も必要です。環境負荷の低減への貢献は企業のイメージアップにも繋がるでしょう。

※関連記事:物流効率化に向けた政府の取り組みとは?荷主企業に求められることも解説


まとめ

本記事では物流総合効率化法の概要や業界に与える影響、背景について解説をしました。

物流総合効率化法は、物流業界において問題視されている人手不足や労働環境の悪化、環境問題の改善などの解決に寄与する法律です。

支援を受けられるのはモーダルシフトや輸配送の共同化、輸送網の集約化などの事業です。認定を受けることで国からの補助金の支援、物流の総合化や効率化の推進、環境問題への配慮などさまざまなメリットがあります。

ぜひこの機会に物流総合効率化法の認定を受けて、慢性的な人手不足や労働環境、環境問題の改善に取り組んでみてはどうでしょうか。



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