ロジスティクスの業務では、モノの輸送や配送、保管、荷役、在庫管理など、物流に関する幅広いプロセスを管理する人材が必要となります。
この分野での専門知識やスキルを習得するためには、ロジスティクス管理に関連する資格取得が有効です。特に、ロジスティクス管理資格は中央職業能力開発協会(JAVADA)が実施するビジネス・キャリア検定の1つで、物流に関する専門知識を証明し、業務の効率化を推進する上でとても役立つ資格となっています。
本記事では、ロジスティクス管理資格の概要や資格取得によるメリットについて詳しく解説します。
ロジスティクス管理資格とは、中央職業能力開発協会(JAVADA)が主催するビジネス・キャリア検定の1つで、厚生労働省が定める職業能力評価基準に基づいた公的資格です。(※)
試験は47都道府県で実施され、原則年2回(1級及びBASIC級は年1回)、10月と2月に実施されます。受験資格に制限はなく、誰でもどの等級からでも受験することが可能です。
この資格の概要を以下に詳しく解説していきます。
※出典:特別民間法人 中央職業能力開発協会(JAVADA):ビジネス・キャリア検定試験とは
以下の資格はいずれもロジスティクスの企画・運営に関する知識を体系的に学ぶもので、取得者のキャリアパスに応じた等級に分かれています。
資格名 | 対象者・求められるスキル |
ロジスティクス1級 | 実務経験10年以上の経営層や管理職でマネジメントを目指す方。 企業全体のロジスティクス戦略を統括する知識が求められます。 |
ロジスティクス管理2級 | 実務経験5年程度の課長やマネージャー相当職を目指す方。 需給管理や業務管理など、企業内での物流の企画や管理業務に関する知識が求められます。 |
ロジスティクス・オペレーション2級 | 実務経験5年程度の倉庫や輸送業務の現場責任者やリーダーを目指す方。 物流センターや倉庫での荷役、保管、輸配送管理などのオペレーション業務に関する知識が求められます。 |
ロジスティクス管理3級 | 実務経験3年程度の初級管理職、リーダー相当職を目指す方。 物流管理の基本的な知識を持ち、上司の指導のもとで日常業務を遂行する能力が求められます。 |
ロジスティクス・オペレーション3級 | 実務経験3年程度の倉庫作業員や物流現場のスタッフを目指す方。 保管や荷役、輸送業務を中心に、基本的な管理スキルが求められます。 |
ロジスティクスBASIC級 | 学生や就職希望者、または入社間もない方。 ロジスティクス管理の試験範囲には、物流業務の効率化や管理に必要な基礎的な知識から、実務に直結する知識が求められます。 |
※参考:特別民間法人 中央職業能力開発協会(JAVADA):ビジネス・キャリア検定試験とは
2級、3級には「ロジスティクス管理」と「ロジスティクス・オペレーション」という2つの区分があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
主にロジスティクス部門などで、ロジスティクス企画、生産・販売計画・在庫状況等を調整する需給管理、注文状況等を把握する業務管理に従事している方を対象としています。
主に物流センターなどで、荷役・保管、流通加工・包装、輸配送管理業務に従事している方を対象としています。
※参考:特別民間法人 中央職業能力開発協会(JAVADA):「ロジスティクス」分野
試験範囲は、等級や区分により以下の通り異なります。
2級ロジスティクス管理及び2級ロジスティクス・オペレーションの試験範囲に準拠します。部長相当職として必要な能力(課題の分析能力、解決方策の立案能力、これを実施するためのマネジメント能力)を問う内容です。
「物流の概念と物流管理」「在庫管理」「物流システム管理」「物流コスト管理」「物流情報システム」に関する内容です。
「包装・荷役・MH(※)・保管」「輸配送システム」「国際輸送」「物流センター計画」「物流センターの管理と運営」に関する内容です。
※MH(Material Handling):マテリアルハンドリングの略称。
仕事の全体像の把握や職場でのコミュニケーションを円滑に図ることができるよう、仕事を行う上で前提となる基本的用語やコンセプトなど基本的知識に関する内容です。
※参考:特別民間法人 中央職業能力開発協会(JAVADA):「ロジスティクス」分野
ロジスティクス管理資格の役割について、以下に解説します。
ロジスティクス管理資格は、厚生労働省が定める職業能力評価基準(働く人の能力が適正に評価されるために策定された基準)に基づいた公的資格です(※)。そのため、この資格を取得することは、物流に関する専門知識を客観的に証明することになります。
※出典:特別民間法人 中央職業能力開発協会(JAVADA):よくあるご質問
物流業務全般にわたるカリキュラムが含まれており、これに沿って学習することで物流に関する体系的な知識を習得できます。
ロジスティクス管理資格習得のための学習は、仕事への理解を深めることにつながるため、物流現場の管理者を育成する上でも役立つ資格となっています。すでに企業の社内教育や自己啓発に活用されています。
※参考:特別民間法人 中央職業能力開発協会(JAVADA):ビジキャリ活用事例のご紹介
2,3級ロジスティクス管理、2,3級ロジスティクス・オペレーションに合格し、企業等で実務経験を有する場合、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)主催の物流技術管理士補資格認定コースを受講可能です。修了後に「物流技術管理士補」の資格を取得できます。
※出典:公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会(JILS):物流技術管理士補資格認定コース
ロジスティクス管理資格を取得することにはさまざまなメリットがあります。特に、物流部門に従事する人々にとって資格は単なる知識の証明にとどまらず、業務効率の向上やキャリアアップにつながる可能性もあります。
以下に主なメリットを詳しく解説します。
ロジスティクスを体系的に学ぶことで、専門用語についての共通理解が深まります。そのため、社員間のコミュニケーションや認識のすり合わせにも役立ち、部門を超えたコミュニケーションが促進され、業務の効率化につながります。また、お客様とのコミュニケーションがスムーズになったという事例(※)もあります。
※出典:特別民間法人 中央職業能力開発協会(JAVADA): 企業事例 NTSグループ(株式会社NTSロジ、株式会社キョウエイ)
物流業務におけるミスや遅延は、企業の信頼を損なうおそれがあります。資格保有者を増やすことにより、これらのリスクを最小限に抑え、顧客満足度の向上や企業の信頼を高める効果が期待できます。また、物流効率が向上することで、競争力の強化にもつながります。
資格取得を通じて、物流に関する専門的な知識を体系的に学ぶことができます。これにより、日々の業務においてより高度な問題解決が可能となり、物流業務全体の効率化を図ることにつながります。
資格を持つことで自らの専門性を証明し、企業内での信頼を得ることが期待できます。資格取得者は、人事評価が向上し、昇進や転職の際に有利になるなどキャリアアップの可能性も高まります。
※参考:特別民間法人 中央職業能力開発協会(JAVADA):ビジキャリ合格者の声(ロジスティクス)
ロジスティクス管理資格の取得を通じて、物流業界における最新のトレンドや技術の知識を習得することができます。例えば、AIやIoT、ビッグデータを活用した物流のデジタル化が進む中、これらの技術を駆使して業務改善を行うスキルを身につけることは、今後の物流業務において非常に重要です。
※参考:特別民間法人 中央職業能力開発協会(JAVADA):「ロジスティクス」分野
ロジスティクス管理資格は、物流業務に携わる方にとってスキル向上に役立つ資格です。物流のプロフェッショナルとしての知識を証明するだけでなく、実務に即したスキルを身につけることで、企業内外での信頼を獲得し、キャリアアップの機会も期待できます。
物流のデジタル化、効率化が進む中、今後ますますロジスティクスを管理する人材が求められていくでしょう。