サプライチェーンとバリューチェーンは、企業活動においてそれぞれ異なる役割を持ちながらも密接に関係している経営手法です。
サプライチェーンは、効率的な供給プロセスを通じてコスト削減やタイムリーな商品提供を目指し、安定した供給を支えることが目的です。バリューチェーンは価値創出に注力し、各工程で付加価値を生み出すことで競争力を高めます。
本記事では、サプライチェーンとバリューチェーンの違いや関係性、統合運用によるメリットを解説します。
サプライチェーンとバリューチェーンは、持続可能な物流事業において異なる目的を持っています。ここでは、サプライチェーンとバリューチェーンの違いを解説します。
サプライチェーンは、原材料の調達から製品が消費者に届くまでの一連の流れを指します。部品調達・製造・在庫管理・流通・販売・消費といった各工程が連続して結びついており、日本語では「供給連鎖」とも呼ばれます。
サプライチェーンは、企業が効率的にモノの流れを管理し、コスト削減や安定した供給体制の確保を図るための重要な仕組みです。
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バリューチェーンは、企業の事業活動を「価値を生み出す流れ」として捉える考え方で、日本語では「価値連鎖」とも呼ばれます。製品やサービスが消費者に届けられるまでの各プロセスで、付加価値が加わっていく流れを示します。
具体的には、原材料の調達・製造・流通・販売、さらにはアフターサービスまでを通じて価値が生み出されます。バリューチェーンの分析により、競合との差別化や資源の最適化が図られ、企業の競争力を高めることが可能です。
バリューチェーンは、以下の要素で構成されています。
・主活動
「主活動」とは、製品やサービスが顧客に届くまでの一連の流れに直接関わる事業活動のこと。製造業やサービス業など業種によって異なるものの基本的に「購買物流」「製造」「出荷物流」「販売・マーケティング」「アフターサービス」の5つの要素に分類される。
・支援活動
「支援活動」とは、主活動をサポートし、企業全体の効率性を高めるための活動のこと。直接的に製品の製造や販売に関わるわけではないが、企業が事業活動をスムーズに進めるために欠かせない。「全般管理」「人事・労務管理」「技術開発」「調達」の要素に分類される。
主活動は顧客に価値を直接届け、支援活動はそのプロセスを裏で支えることで、バリューチェーン全体の価値創造に貢献しています。
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サプライチェーンとバリューチェーンには5つの明確な違いがあります。
サプライチェーンは製品やサービスが原材料から顧客に届くまでの全体の流れを指し、効率的な供給を目指しています。バリューチェーンは企業の事業活動がいかに価値を生むかに注目した概念です。
サプライチェーンの目的は、顧客へ商品が届くプロセスの効率化にあり、供給リスクの管理や持続可能性、顧客満足度の向上を目指します。バリューチェーンは活動ごとの最適化を通して価値を生み出し、差別化を図ることに重点を置いています。
サプライチェーンは調達から供給までの流れ全体に焦点を当て、バリューチェーンは事業活動を「価値創造の連鎖」として、支援活動も含めて幅広く対象としています。
サプライチェーンは「調達>製造>在庫管理>流通>販売」の要素で構成されます。バリューチェーンは主活動と支援活動に分かれ、前者には購買物流・製造・出荷物流・販売・マーケティング・アフターサービス、後者には全般管理・人事・労務管理・技術開発・調達が含まれます。
サプライチェーンはサプライヤーを起点とし、優良なサプライヤーとの協力関係が不可欠です。バリューチェーンは顧客を出発点にし、顧客のニーズを中心に価値創造を行います。
サプライチェーンとバリューチェーンは、異なる目的を持ちながらも、密接に連携して企業の競争力を支えています。サプライチェーンの改善により供給の無駄が省かれると、コスト削減や製品の提供スピードが向上し、バリューチェーン全体の価値が引き上げられる関係です。
また、バリューチェーンのなかで発見された企業の強みや課題は、サプライチェーンの見直しにも役立ちます。たとえば、特定のプロセスでの価値創造が企業の強みであれば、サプライチェーンも強みに合わせて最適化することで、効率がさらに向上します。
サプライチェーンとバリューチェーンは一方通行ではなく、相互にフィードバックし合いながら、企業全体の競争力を強化する関係にあります。
サプライチェーンとバリューチェーンを統合運用することで、以下3つのメリットが期待できます。
サプライチェーンの効率化により、重複した業務や非効率な物流コストが排除され、運営全体のコストが低減されます。
また、サプライヤーとのパートナーシップ強化を通じて、原材料調達コストを抑えることも可能です。一方、バリューチェーンでは各事業活動のコスト分析により、無駄な資源の配分を見直し、全体的なコスト効率を最適化できます。
サプライチェーンは効率的な供給プロセスに焦点を当て、バリューチェーンは価値創出を重視しているため、競争力が強化されます。
両者を統合することで、企業は市場でのポジショニングと付加価値を高めることができ、競争優位性を確立して持続的な成長を図ることが可能です。
サプライチェーンの効率化によるタイムリーな配送とバリューチェーンによる高品質な製品の提供で、企業は顧客の期待に一貫して応えられるようになります。
結果、顧客のリピート利用やポジティブな口コミ、さらには長期的な顧客ロイヤルティの向上が期待できます。
サプライチェーンは効率的な供給プロセスを最適化し、コスト削減や顧客満足度の向上に貢献します。一方で、バリューチェーンは企業の価値創造活動に焦点を当て、競争優位性を高める目的があります。
両者を統合することで、企業はより強固な経営基盤を築き、持続可能な成長に向けて戦略的に対応できるでしょう。