中長期計画書の書き方と定期報告のポイントを解説

中長期計画書の書き方と定期報告のポイントを解説

特定荷主とは、一定規模以上の貨物を取り扱う荷主として、改正物流効率化法に基づき中長期計画の作成・定期報告・物流統括管理者の選任などが求められる事業者です。

物流2024年問題への対応として2024年5月に公布された「改正物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)」は、2026年4月に全面施行されました。

本記事では、特定荷主の定義から判定方法、中長期計画書の書き方、定期報告のポイント、システム活用まで実務目線で解説します。

この記事でわかること

  • 特定荷主の概要
  • 特定荷主が求められる法的義務と対応策
  • 実務上の重要ポイント

目次

1. 特定荷主とは

特定荷主とは、第一種荷主または第二種荷主の中で、年度の取扱貨物重量が基準重量である9万トン以上となり、国から指定を受ける荷主のことです。

 

第一種荷主として基準を上回る場合は「特定第一種荷主」、第二種荷主として基準を上回る場合は「特定第二種荷主」となります。

 

基準重量を上回る荷主は、指定の届出を行うことで特定荷主として指定され、物流統括管理者の選任、中長期計画の作成、定期報告などの主要手続きに対応する必要があります。

 

本章では、特定荷主の定義や当該規定が設けられた背景について説明します。

 

特定荷主の定義

 

改正物流効率化法では、全ての物流関係者を対象に物流効率化に向けた努力義務を定めています。その中でも、一定規模以上の荷主は「特定荷主」として指定され、以下の法的義務が課されます。各手続きの期限や実施のタイミングは、3章で詳しく解説します。

 

義務項目

内容

実施頻度

指定届出の提出

第一種荷主・第二種荷主の区分や取扱貨物重量などを国に届け出る

基準重量を上回った年度の翌年度5月末まで(既に特定荷主である事業者は提出不要)

物流統括管理者の選任

実効性のある体制を構築するために役員級(経営幹部)を選任

指定後すみやかに
※中長期計画又は定期報告を提出するまでが目安必須

中長期計画の作成

積載効率向上・荷待ち時間短縮を含む具体的な改善計画策定

計画に変更がなければ5年に1回

定期報告の提出

努力義務の実施状況及び実態データを国に報告

特定荷主の指定を受けた年度の翌年度から、毎年度7月末まで

 

一定の基準以上の物流関係者に対しては①中長期計画の策定等の法的義務や②努力義務の実施状況が不十分な場合、国の勧告・命令が行われると定められており、該当する物流関係者は特定事業者と呼ばれます。

 

特定事業者は図版1の通り、物流関係者のカテゴリーに応じて4つに分けられます。その1つである特定荷主とは、物流事業者にトラック輸送業務を委託する第一種荷主(≒発荷主)、及び貨物を受領する第二種荷主(≒着荷主)のうち、その貨物の合計重量が政令で定める重量以上の事業者を指します。

  

特定事業者のひとつである特定荷主は、トラック輸送業務を委託する第一種荷主、または貨物を受け渡しする第二種荷主のうち、各区分での取扱貨物重量が政令で定める基準以上となる事業者を指します。

 

※参考:経済産業省,特定荷主の物流効率化法への対応の手引き 

参考:e-Gov法令検索,物資の流通の効率化に関する法律

 

特定荷主の規定が設けられた背景

 

改正物流効率化法の背景には、物流業界の慢性的な課題である「トラックドライバー不足」「輸送効率の低下」が挙げられます。これに対処するため、日本の物流インフラ全体への影響が大きい事業者を特定荷主として指定し、国が直接的に物流改革を主導させることとなりました。

 

特定荷主は、2章で説明するように、政令で定められる指定基準値に基づき選定されます。この指定基準値は、改正物流効率化法が目的とする物流の効率化に向け、全体への影響が大きい事業者が対象となる線引きがなされています。つまり、特定荷主となった企業は単なる規制対象ではなく、自らが主導して業界における非効率な取引慣行を改善し、サプライチェーン全体の維持を牽引するリーダーとしての役割を期待されています。

 

特定荷主に該当する場合は、改正物流効率化法の主旨を理解し、他事業者の模範となるような対応策を立案・遂行することが望まれます。

 

2. 自社が特定荷主に該当するか確認する方法

 

自社が特定荷主に該当するかを判断するには、政令で定める指定基準値と、第一種荷主・第二種荷主それぞれの算定方法を理解する必要があります。本章では、最新の政令に基づき、特定荷主の判定基準と確認方法を解説します。

第一種荷主と第二種荷主を分けて確認する

 

改正物流効率化法では、貨物の運送契約の有無によって以下のように分類しています。

  

※出典:経済産業省,「物流効率化法」理解促進ポータルサイト」 第一種荷主(主に発荷主)、第二種荷主(主に着荷主)とは

 

  • 第一種荷主:自らの事業に関して、継続して貨物自動車運送事業者や貨物利用運送事業者と運送契約を締結して運送を委託する者(主に発荷主が該当)
  • 第二種荷主:自らの事業に関して、他の事業者が雇用しているトラックドライバー(いわゆる白ナンバートラックのドライバーを含む。)から貨物を受け取る又は引き渡す者(主に着荷主が該当)

 

実務上の発荷主・着荷主という呼び方だけで判断せず、運送契約や貨物受渡しの実態に応じて確認する必要があります。

 

ただし、合同会議の議論を受けて、重量の把握に支障が生じることが想定される一部の業種においては、貨物の容積などを重量として換算することが認められました。

 

※参考:経済産業省,「物流パターンごとの荷主の考え方」

 

指定基準値の根拠

 

「合同会議とりまとめ」によれば、第一種荷主・第二種荷主及び連鎖化事業者の取扱貨物の重量が多い順に対象とし、日本の物流全体の約50%を占める基準値及び対象事業者数となるように算出されています。これは、物流インフラへの影響力が大きい上位事業者が優先的に改善に取り組むことで、業界全体の商慣行の適正化を牽引することを目的としているためです。

 

※参考:国土交通省,合同会議とりまとめ 2024年11月27日

 

年間取扱貨物重量9万トン以上が基準

  

特定荷主は取扱貨物の重量が「9万トン以上」と規定され、荷主の上位3,200社程度が該当すると見込まれています。また、この重量は第一種荷主と第二種荷主のそれぞれの立場での重量をもって計算され、事業者としての合計重量ではないことに注意が必要です。

 

  • 基準重量:年間取扱貨物重量9万トン以上
  • 集計期間:各年度(毎年度4月から翌年3月までの1年間)
  • 判定単位:第一種荷主・第二種荷主をそれぞれ別に判定
  • 対象となる貨物:自社の事業に関して、運送委託または貨物の受渡しに関わる貨物

 

取扱貨物重量が基準重量を上回った場合は、翌年度5月末までに、荷主事業所管大臣に対して指定に関する届出を行う必要があります。

 

特定荷主の対象判定フロー

 

自社が特定荷主に該当するかは、以下のステップで確認します。

 

ステップ

確認内容

1

第一種荷主・第二種荷主に該当する業務を持つか確認

2

取扱貨物重量に含める範囲を確認
※寄託倉庫・3PL委託分・倉庫間輸送など、自社が運送を委託しているか、貨物の受渡しに関与しているかを基準に確認する

3

第一種荷主としての年度取扱貨物重量を集計
※出荷実績、配送伝票、運送会社の請求データ、製品マスタの重量情報など、既存データを活用して算定する

4

第二種荷主としての年度取扱貨物重量を集計
※入荷実績、納品実績、拠点での受渡し記録などを元に集計する

5

それぞれ9万トン以上か確認

 

取扱貨物重量の算定では、9万トンを超えているか否かを明確に説明できるようにすることが重要です。自社の物流パターンに応じて、合理的に説明でき、継続的に運用できる算定方法を選択しましょう。

 

特定荷主判定でよくある疑問

 

第一種・第二種の判定や取扱貨物重量の集計には、契約形態や物流実態に応じた判断が必要です。実務で問題になりやすい論点を整理します。

 

  • 第一種・第二種を両方満たす場合:
    両区分でそれぞれ9万トン以上の場合は、両方の特定荷主として届け出ます。片方のみ基準を超える場合は、超えた区分のみの特定荷主となります。
  • 倉庫間輸送、宅配便、路線便、委託先輸送:
    自社の事業として継続的に運送契約を結んでいる輸送は第一種荷主の取扱貨物重量に含めます。委託先(3PL等)の運送でも、契約主体が自社であれば算入対象です。受渡しのみの場合は第二種荷主としての計上となります。
  • グループ会社:
    単純合算ではなく、法人・契約主体・運送委託や貨物受渡しの実態に応じて法人ごとに算定します。親会社が一括して運送契約を締結している場合も、契約実態を踏まえて判定する必要があります。
  • 重量データの集計:
    出荷管理システム、配送伝票、運送会社からの請求書などから、年度単位(4月〜翌年3月)で集計します。重量データが取得しにくい業種では、容積からの換算も一部認められています。

 

判定に迷う場合は、改正物流効率化法第30条・第45条及び最新の政省令、行政の相談窓口で確認することが望ましいです。

 

※参考:国土交通省,「物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法)Q&A」 

参考:e-Gov法令検索,「物資の流通の効率化に関する法律」

 

3. 特定荷主に求められる行政への届出

特定荷主に該当する可能性がある企業は、重量把握から指定の届出、物流統括管理者の選任、中長期計画、定期報告まで、複数の手続きを期限に沿って進める必要があります。本章では、特定荷主に課せられる規制の詳細とその対応策を説明します。

 

特定荷主に課せられる規制

 

改正物効法では、全物流関係者に課される努力義務に加えて、特定荷主(特定事業者)には特有の法的義務や国による勧告・命令措置が課されます。

 

特定荷主の法的義務は図版3に記載の3点が挙げられます。以下では、それぞれの詳細を説明します。

 

中長期計画の策定

 

「積載効率の向上」や「荷待ち・荷役時間の短縮」に関する実施措置、及び具体的な措置の内容・目標や実施時期などをまとめた計画の策定が求められます。毎年度の提出が基本ですが、計画内容に変更がない限りは5年に1回の提出でも可とされます。

 

定期報告の作成

 

努力義務の実施状況について報告が求められます。なお、全施設の全運行の荷待ち時間の計測は難しいケースが想定されるため、サンプリングなどの手法や一部の報告の省略(既に荷待ち時間などが短い場合に限る)が認められました。

 

物流統括管理者の選任

 

中長期計画の策定等の業務を統括管理する物流統括管理者も必要です。物流統括管理者には関係部署間の調整や社外事業者との連携が期待されるため、重要な経営判断が可能な役員など経営幹部から選任することが義務付けられています。

 

また、特定荷主の努力義務に関する取り組みが国により不十分と判断された場合、勧告もしくは命令という措置が下されることも明記されました。

 

4. 貨物の運送の委託及び受渡しの状況届出書の書き方

 

「貨物の運送の委託及び受渡しの状況届出書」は、特定荷主に該当することを国に届け出るための書類です。提出期限・提出先・記載内容は法令で定められており、対応の起点となる重要な手続きです。

 

提出書類とフォーマット

 

特定事業者の指定に係る届出等は、原則としてオンラインで行います。提出にあたっては、所定の様式に沿って事業者情報や第一種荷主・第二種荷主の該当状況などを記載します。

 

 

出典:経済産業省, 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト, 特定事業者の指定

 

提出期限と提出後の流れ

 

提出期限は、基準重量を上回った年度の翌年度5月末までです。

 

提出後の扱いは、翌年度以降の取扱貨物重量によって異なります。

 

  • 翌年度以降も基準重量以上の場合
    一度届出を行い、特定荷主として指定された後、翌年度以降も引き続き指定基準値以上に該当する場合は、改めて指定の届出を行う必要はありません。ただし、定期報告など、特定荷主として求められる手続きは継続して対応します。
  • 翌年度以降に一時的に基準重量を下回った場合:
    9万トンを一時的に下回った場合、直ちに手続きが不要になるとは限りません。今後も再び基準重量以上となる可能性がある場合は、引き続き特定荷主としての対応が必要になる可能性があります。
  • 今後も基準重量以上になる見込みがない場合
    指定基準値を下回り、再び基準値以上となることがないと明らかに認められる場合は、指定取消しの申出を行うことができます。該当する可能性がある場合は、取扱貨物重量の算定根拠や今後の見通しを整理したうえで、所管省庁の案内に従って確認します。

 

なお、前年度実績が基準以上であるにもかかわらず所管大臣への届出をしなかった場合や、虚偽の届出をした場合は、50万円以下の罰金が科されます。期限超過や届出内容の誤りが判明した場合は、すみやかに行政の相談窓口へ確認し、修正・再提出など必要な対応を行いましょう。

 

※参考:経済産業省,「物流効率化法」理解促進ポータルサイト 「特定事業者の指定」

 

提出にあたっての実務上の注意点

 

届出担当は、「重量集計を行う物流・SCM部門」と「行政手続きを担う総務・法務部門」などが関与するケースもあるため、社内で担当範囲をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

 

重量データの集計には時間がかかるため、年度末(3月末)の数値が確定し次第、5月末の期限から逆算したスケジュールで動くことが現実的です。

 

グループ会社や3PL委託分の扱いで判断に迷う場合は、届出書を提出する前に、所管省庁の相談窓口で事前確認を行うことが、後の差し戻しや再提出などを防ぐうえで有効です。

 

5. 物流統括管理者の選任

 

特定荷主に指定された事業者は、物流統括管理者を選任し、行政へ届け出る義務があります。物流統括管理者の役割や人選パターンの詳細は別記事で解説しているため、本章では特定荷主としての手続き面と、選任にあたって押さえるべき要件、実務上の注意点を整理します。

 

物流関連記事|物流統括管理者とは?選任義務化への対応ガイド|ハコベル

 

選任要件と人選の考え方

 

物流統括管理者は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者から選任する必要があります。役員等の経営幹部が対象とされており、物流部門長のみでの選任は、その者が経営判断に参画できる立場である場合に限られます。部長クラスを選任する場合は、その者が事業運営上の重要な決定に参画できる立場かどうかを確認する必要があります。

 

単に物流部門の実務責任者であるだけでは、制度上求められる役割を満たさない可能性があります。外部委託ではなく、自社の役員等から選任します。

 

グループ会社であっても、特定荷主に該当する法人ごとに物流統括管理者の選任・届出が必要です。兼任の可否は、当該人物が各法人で事業運営上の重要な決定に参画できる立場にあるかなど、権限や所属の実態を踏まえて確認する必要があります。

 

選任届出と異動時の対応

 

選任後は、所管省庁所定の様式で届出を行います。様式は、特定荷主の指定届出書と同様、最新版を物流効率化法理解促進ポータルで確認します。物流統括管理者が異動・退任等で交代する場合は、後任者を選任のうえ、再度届出が必要です。

 

届出を怠った場合は20万円以下の過料、選任そのものを行わない場合は100万円以下の罰金の対象となります。

 

※参考:経済産業省,「物流効率化法」理解促進ポータルサイト 「物流統括管理者(CLO)の選任」

 

6. 中長期計画書の書き方

 

中長期計画書は、特定荷主が物流効率化に向けて取り組む施策・KPI・実施時期を整理し、国に提出する計画書です。本章では、記載項目、3つの取組テーマ、優先順位の考え方を解説します。

 

中長期計画書の4つの記載項目と提出ルール

 

中長期計画書には、以下の項目を記載します。

 

記載項目

内容

実施する措置

積載効率向上・荷待ち時間短縮・荷役等時間短縮に関する措置

具体的な措置の内容・目標

施策の具体内容、KPI、目標値

実施時期

実施年度、実施時期、計画期間(最長5年)など

参考事項

社内体制、関係事業者との連携状況など

 

中長期計画書の計画期間は最長5年間で設定します。計画に変更がない場合、計画期間中に毎年提出する必要はありません。

 

計画内容を変更した場合は、変更があった年度の翌年度7月末までに更新版を提出します。ただし、定期報告書は別途、毎年度提出が必要です。

 

※参考:経済産業省, 「物流効率化法について」

 

中長期計画の3つの取組

 

中長期計画書では、以下の施策を記載します。

 

取組

内容

積載効率の向上等

1回の運送でトラックに積載する貨物量を増加する

荷待ち時間の短縮

ドライバーが到着した時間から荷役等の開始時間までの待ち時間を短縮する

荷役等時間の短縮

荷役(荷積み・荷卸し)等の開始から終了までの時間を短縮する

 

テーマの優先順位の考え方

 

3テーマ全てに同時に取り組むことが理想ですが、実際には自社の課題と立場に応じて優先順位を決めます。物流効率化法で求められる取組内容や定期報告で確認される項目を踏まえ、実務上は以下のような観点で優先順位を検討するとよいでしょう。

 

条件

判断の軸

自社の立場・関与する範囲

出荷計画や配送手配に関与しやすい場合は積載効率向上や出荷平準化を優先する。
納品先や入荷拠点の運用に関与しやすい場合は荷待ち時間・荷役等時間の短縮が調整しやすいため優先する。
ただし、実際には自社の運送契約、貨物受渡し、拠点運用の実態に応じて判断する。

データ取得の容易性

既に取得できているデータを優先する。

改善効果の見込み

影響範囲が大きい施策、現場負荷の高い課題を優先する。

 

※参考:経済産業省,「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「荷主(第一種・第二種)の判断基準等」

 

現場課題から計画項目への変換

 

中長期計画書を作成する際は、現場で起きている課題を、積載効率向上・荷待ち時間短縮・荷役等時間短縮の3つのテーマに照らして整理すると、施策やKPIに落とし込みやすくなります。

 

現場課題と分類の例を以下に示します。

 

現場課題

中長期計画上の分類

午前中にトラックが集中する

荷待ち時間の短縮

受付後の呼出まで時間がかかる

荷待ち時間の短縮

荷積み・荷卸しに時間がかかる

荷役等時間の短縮

検品・仕分け・立会いに時間がかかる

荷役等時間の短縮

低積載の便が多い

積載効率の向上

小口配送が多く車両台数が増えている

積載効率の向上

 

KPIと実施時期の決め方

 

各テーマの代表的なKPI例は以下のとおりです。

 

テーマ

KPI例

荷待ち時間短縮

平均待機時間、受渡し1回あたりの荷待ち時間が2時間超となった件数、時間帯別来場台数

荷役等時間短縮

平均荷役時間、作業別所要時間、長時間作業件数

積載効率向上

平均積載率、便数、車両台数、ルート別積載量

出荷平準化

曜日別出荷量、時間帯別出荷件数、ピーク時間帯車両集中率

 

物流効率化法の目標では、トラックドライバー1人当たり年間125時間の拘束時間短縮に向け、1運行の荷待ち時間・荷役等時間を2時間以内、1回の受渡しごとの荷待ち時間・荷役等時間を1時間以内にすることが示されています。

 

KPIは把握できる粒度で計測を開始し、翌年度以降の定期報告で計測精度を上げ、施策の効果検証に応える形に精緻化していく前提で設計するのが現実的です。

 

経済産業省が公開している記載事例集が「これから取組を深める企業向け」と「取組が進んでいる企業向け」の2段階で提示されていることも、段階的な精緻化を想定したものと位置付けられます。

 

※参考:経済産業省,「物流効率化法」理解促進ポータルサイト,中長期計画書・定期報告書の記載事例集

 

7. データ・対象拠点・体制から考える中長期計画書の記載例

 

中長期計画書で必要となるデータ項目、サンプリング、対象拠点の選び方を整理します。

 

計画・報告に必要なデータ一覧

 

中長期計画の作成や定期報告では、荷待ち時間・荷役等時間の短縮と、積載効率の向上に関する状況を把握するため、以下のようなデータが必要となります。

 

データ項目

活用目的

入場・受付時刻

荷待ち時間・荷役等時間の起点把握

荷役等の作業開始時刻

荷待ち時間の終点、荷役等時間の起点把握

荷役等の作業終了時刻

荷役等時間の終点把握

積載重量

積載効率の把握

積載容積・荷量

容積ベースでの積載効率や積み残しの有無把握

車両台数・便数

輸送回数や車両使用状況把握

 

必要なデータ項目は、報告様式や企業ごとの物流パターンによって異なります。行政からの確認や、運送会社・関係部門との改善協議に対応できるよう、実態を説明できるデータを揃えておくことが重要です。

 

参考:経済産業省,特定荷主編「物流効率化法」対応の手引書

 

定期報告での計測を見据えたサンプリングの考え方

 

荷待ち時間などのデータは全拠点・全運行を最初から計測するのではなく、実効性を担保できる範囲で対象を選ぶ考え方もあります。

 

サンプリングを行う場合は、対象拠点・対象期間・対象運行を選んだ理由を説明できるようにすることが重要です。

 

優先的に対象とすべき拠点としては、トラック出入りが多い拠点、荷待ちが発生しやすい拠点、取扱貨物量が多い拠点などが挙げられます。報告省略が認められるケースもありますが、計測や管理そのものが不要になるわけではないため、長時間待機が発生していないことを説明できる記録体制を整えておく必要があります。

 

対象拠点の選び方と全社共通・拠点別の書き分け

 

計画書の記載では、全社方針として書く部分(取組テーマ・基本方針・KPIの考え方)と、拠点別に書く部分(現状値・施策内容・実施時期・対象設備)を分けて整理するとよいでしょう。複数拠点を持つ場合、全社共通方針の下に主要拠点を分けて記述する形が現実的です。

 

関係部門との連携と社内体制

 

中長期計画の実行は、物流部門だけでは完結しません。テーマ別に必要な連携部門は以下のように異なります。

 

テーマ

主な連携先

荷待ち時間短縮

倉庫現場、運送会社、配車担当

荷役等時間短縮

倉庫現場、品質管理、検品担当

積載効率向上

営業、生産管理、調達、配車担当

出荷平準化

営業、生産管理、需要予測、販売計画

 

物流統括管理者(CLO)を中心に、物流部長・各部門責任者で構成する物流横断会議体を設置する例が現実解となります。現場は通常業務で手一杯のため、データ収集を仕組み化することで現場負荷を抑えつつ、関係部門が同じKPIを共有できる状態をつくることが重要です。

 

物流関連記事|物流統括管理者とは?選任義務化への対応ガイド|ハコベル

 

中長期計画書の記載例

 

中長期計画書は、自社の業態や拠点、物流契約、取得できるデータに応じて記載します。製造業・卸売業・小売業で想定される記載例を示します。

 

業種

想定される課題

実施措置の例

計画内容(具体的な措置の内容、目標 等)

実施時期の例

製造業

出荷拠点にトラックが集中し、受付後の待機時間が長い

バース予約を導入

予約受付システムを導入し、来場時間を分散することで、荷待ち時間を現状の90分から60分以内に短縮する

A物流センターで2026年度下期に試行、2027年度に本格運用

卸売業

DCでの荷卸し後、検品・附帯作業に時間がかかる

長時間化工程の特定

作業開始・終了時刻を記録することで検品・仕分け・附帯作業に時間がかかる工程を特定し、平均荷役等時間を現状の80分から60分以内に短縮する

主要入荷拠点で2026年度に現状把握、2027年度に改善施策を展開

小売業

一部配送ルートで積載率が低く、車両台数が増えている

出荷頻度・配送ルート・共同配送の見直し

対象ルートの平均積載率を現状の45%から50%に引き上げる

B配送拠点・C配送エリアで2026年度に分析、2027年度にルート見直しを実施

 

参考:経済産業省,「物流効率化法」理解促進ポータルサイト「中長期計画書・定期報告書の記載事例集を作成しました」

 

8. 定期報告の項目と提出時の注意点

 

中長期計画は、提出して終わりではなく、翌年度以降の定期報告で取組状況や実績を説明する必要があります。本章では、定期報告を見据えたデータ収集やシステム活用の考え方を解説します。

 

中長期計画と定期報告のつながり

 

中長期計画では、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮、積載効率の向上などについて、実施する施策や目標、実施時期を整理します。一方、定期報告では、計画に基づいて実施した取組や、荷待ち時間等の計測結果、改善状況、今後の課題を国に報告します。

 

そのため、計画段階から、現状値、目標値、実施状況、改善結果を記録できる形にしておくことが重要です。書類作成だけでなく、実行・記録・改善までを一連の流れとして管理する必要があります。

 

定期報告で求められる項目

 

主な報告項目は以下のとおりです。

 

  • 事業者の判断基準の遵守状況
  • 関連事業者との連携状況など、判断基準に関連した取組
  • 荷待ち時間等の状況
  • 実施した施策の内容
  • 改善状況や今後の課題

 

計画段階から、翌年度以降の報告に使えるデータを記録できるようにしておくことが重要です。

 

定期報告の実務上の注意点

 

  • データが不足している場合:
    対象施設・対象期間のデータが完全に揃わない場合でも、サンプリングによる計測・報告で対応できます。サンプリング選定の理由、対象期間、対象運行を明確に説明できる形で記録することが重要です。
  • 誤記があった場合:
    提出後に記載内容の誤りが判明した場合は、所管省庁の案内に従い、修正・再提出などの対応を行います。誤記放置は虚偽報告に該当する可能性があるため、判明次第すみやかに対応することが重要です。
  • 提出を怠った場合:
    報告徴収、立入検査、勧告、命令、社名公表の対象となる可能性があります。毎年度7月末の期限から逆算し、4月以降にデータ集計、5〜6月に内部レビュー、7月初旬に提出という段取りが現実的です。
  • 提出の頻度:
    中長期計画は、計画に変更がない場合は計画期間中に毎年提出する必要はありません。一方、定期報告は毎年度の提出が必要です。実績値だけでなく、実施した施策、改善状況、今後の課題まで含めて報告します。

 

9. まとめ

 

特定荷主に該当する企業は、自社該当の確認、届出、物流統括管理者(CLO)の選任、中長期計画の作成、定期報告という一連の流れで対応を進める必要があります。計画段階から、定期報告で必要となるデータ収集を意識した設計が重要であり、現状や目標を数値で説明できるように準備することが望ましいです。

 

実務の進め方をより詳しくまとめた資料「物流効率化法 中長期計画の立て方のポイント」をご用意しています。中長期計画書作成のポイントや、計画立案のために把握しておくべき情報の例を整理しているため、自社の対応を進める際の参考にしてください。

 

資料DL:https://www.hacobell.com/documents/7cpgn59qxi

<食品スーパー・マルアイ@関西SM物流研究会>
物流センターのオーバーフローを機にオペレーションの抜本改善に成功物流子会社・利用運送事業者必見!
トラック新法で求められる「新たな義務」の詳細と具体的な対応策をお伝えします
シェアシェア

おすすめ記事