物流業界が抱える課題は複雑化し、2024年問題を機に多くの企業が新たな管理方法を模索しています。特に、効率的な倉庫運営や在庫管理は、企業の利益に直結する重要な要素と言えるでしょう。そこで注目されているのがWMS(倉庫管理システム)とOMS(受注管理システム)です。これらのシステムを連携させることで、在庫のリアルタイム管理や注文処理の効率化を実現し、顧客満足度も向上させることが可能になると期待されています。
本記事では、WMSとOMSそれぞれの定義や役割、両者の違い、連携によるメリットと注意点について解説します。また、OMSの選定ポイントも解説するため、物流業務の改善を目指す上でぜひ参考にしてください。
WMS(Warehouse Management System)とOMS(Order Management System)の定義と役割、両者の違いを解説します。
システム | 管理対象 | 役割 | 主な機能 |
WMS | 実在庫 | 倉庫内の在庫やオペレーションを効率化する | 入荷管理、在庫管理、出荷管理など |
OMS | 理論在庫(データ) | 顧客からの注文を受けてから出荷するまでのプロセスを効率化する | 受注管理、商品ページ管理、在庫管理など |
WMSは倉庫業務の効率化を目的としたシステムで、在庫管理や入出庫、ピッキングなどの作業を最適化する役割を持ち、倉庫内のオペレーション全般を管理・効率化します。また、倉庫内の在庫をリアルタイムで把握し、効率的な在庫管理をサポートする役割を担います。
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OMSは在庫、出荷、顧客対応などの一連のプロセスを一元管理するシステムで、受注処理、在庫割当、出荷指示などオーダーに関する業務を自動化します。オムニチャネル対応の必要性から、OMSの導入が加速していると言えるでしょう。OMSはECサイトや店舗など複数のチャネルからの注文を一元管理し、在庫の適正配分や配送の効率化を図ります。
OMSの導入により顧客の注文から出荷までを自動化することで、業務効率と顧客満足度の向上が期待できます。また、複数チャネルからの注文を効率的に管理することで、顧客体験を向上させることも可能です。
WMSは倉庫内の業務に特化しているのに対し、OMSは受注から出荷までの一連のプロセスを管理します。WMSは主に倉庫内の在庫管理や作業の効率化を担い、OMSは受注処理、在庫割当、出荷指示など、オーダーに関する業務を幅広く管理するのが役割です。
WMSとOMSの役割はそれぞれ異なりますが、連携することでより強力なサプライチェーン管理を実現します。WMSとOMSを連携させることで注文処理から出荷までをシームレスに管理することができ、リードタイムの短縮と在庫管理の精度向上にもつながります。
WMSとOMSを連携することによる主なメリットを詳しく解説します。
OMSで受けた注文情報をWMSに自動的に連携することで、手動での情報入力や転記の作業負担を軽減できます。また、在庫情報に基づいた最適な出荷指示やピッキングリストの自動生成などにより、出荷作業の効率化が図れます。
WMSとOMSを連携させることで、受注情報と在庫情報がリアルタイムで同期されます。これにより、正確な在庫状況を把握でき、適切な在庫管理とオーダー処理が可能になります。その結果、在庫切れや過剰在庫のリスクを減らし、適正な在庫レベルを維持できるでしょう。
在庫情報と注文情報がリアルタイムで連携されることで、受注から出荷までのリードタイムを大幅に短縮できます。これにより、顧客満足度の向上と競争力の強化が期待できるでしょう。
複数の拠点や販売チャネルを一元管理できるようになるため、企業全体での在庫の可視化が可能です。これにより、過剰在庫の防止や、在庫の最適配置による物流コストの削減効果が期待できます。
リアルタイムの在庫情報をもとに、顧客の問い合わせやキャンセル・返品対応がスムーズに行えるようになります。正確で迅速な対応により、顧客満足度の向上が図れるでしょう。
このようにWMSとOMSの連携は、物流業務全体の最適化と効率化に大きく貢献します。在庫管理の精度向上、オペレーションの生産性アップ、顧客対応力の強化など、多岐にわたるメリットを提供するでしょう。
WMSとOMSを連携する際は以下の点に注意が必要です。
OMSで受けた注文情報をWMSに連携し、出荷をスムーズに行うためには、リアルタイムでデータを同期することが不可欠です。在庫情報や注文ステータスなどのデータが遅延なく更新されないと、在庫不整合による出荷遅延が起こったり、顧客への情報提供などに問題が生じたりしかねません。そのため、各システム間のAPI連携を行うなど、リアルタイムなデータ更新が可能な仕組みを整えることが重要です。
WMSとOMSを連携する際は、両者でデータの一貫性と整合性を保つことが必須です。たとえば在庫情報や注文情報に不整合があると、適切な在庫割当や出荷処理が行えなくなります。データの整合性を確保するために、マスターデータの一元管理や、定期的なデータチェックとプロセスの見直しが不可欠と言えるでしょう。
WMSとOMS間のデータ連携が増えると、セキュリティリスクも高まります。不正アクセスや情報漏洩を防ぐため、データの暗号化、アクセス制御、ログ管理など、適切なセキュリティ対策を講じる必要があるでしょう。また、定期的なセキュリティ監査や従業員へのセキュリティ教育も欠かせません。
OMSの選定は、物流業務の効率化と顧客満足度の向上に直結する重要な意思決定です。OMSを選ぶ際の主なポイントを詳しく解説します。
自社の業務プロセスや物流戦略に合致したOMSを選ぶことが大前提です。現状の課題や将来の目標を踏まえ、必要な機能や拡張性を備えたシステムを選定しましょう。
リアルタイムの在庫管理は、OMSの中核機能の1つです。複数の拠点や販売チャネルの在庫を一元管理でき、高い精度と柔軟性を持つシステムが求められます。
OMSの選定には、WMSをはじめERP(基幹システム)や販売管理システムなど他のシステムとのスムーズな連携が欠かせません。APIやデータ連携ツールなど、柔軟な連携オプションを持つOMSを選ぶことが肝要です。
ビジネスの成長や変化に合わせて、システムを柔軟に拡張できることも重要な選定ポイントです。ユーザー数や取引量の増加に対応できるスケーラビリティや、新たな機能追加が容易な拡張性を備えたOMSが望ましいでしょう。
現場の従業員が使いやすく、業務効率を高められるユーザーインターフェースはOMSを選定する上での必須条件です。また、導入時のサポートやトラブル発生時の体制も重要と言えるでしょう。
OMSの選定には、初期費用だけでなく、ランニングコストやメンテナンス費用などトータルコストも見極める必要があります。長期的な投資対効果を見据え、自社に最適なコストパフォーマンスの高いOMSを選びましょう。
WMSとOMSは倉庫管理と受注管理に特化したシステムです。WMSとOMSを連携させることで、在庫のリアルタイム管理やオーダー処理の効率化、リードタイム短縮などのメリットが得られます。一方、初期投資やシステム間の調整、運用の複雑化などに注意する必要があります。OMSを選定する際は業務適合性や拡張性、コストなどを総合的に評価することが不可欠と言えるでしょう。WMSとOMSを連携させることにより、物流業務の効率化と顧客満足度の向上に大きく貢献することが見込まれます。2024年問題の解決策の1つとして、WMS・OMSの導入および連携を検討してはいかがでしょうか?