1. WMSの概要

倉庫管理システムWMS（Warehouse Management System）は倉庫内の業務を効率化し、在庫管理の最適化を実現するシステムを指します。倉庫業務の品質向上、作業効率化、コスト削減に効果的です。

※関連記事：WMS（倉庫管理システム）とは？概要や役割・メリット・導入事例を解説

2. WMSを使った倉庫管理の仕組み

次にWMSを使用した倉庫管理の仕組みを解説します。以下の3つに分けてそれぞれ詳しく解説していきます。

• 在庫管理のリアルタイム化
• 入出庫管理の自動化
• 倉庫内作業の最適化

在庫管理のリアルタイム化

WMSを導入することで在庫情報がリアルタイムで更新され、正確な在庫管理が可能になります。具体的には入出庫データをリアルタイムで集計するため、常に最新の在庫状況を把握できます。

また、在庫の可視化により、適切な在庫量の維持やデッドストックの防止にも貢献します。倉庫内のどの商品がどこにあるのかが常に把握できるため、ピッキングや出荷のスピードが向上するでしょう。バーコードやRFIDを活用したデジタル管理により、在庫精度が向上する点もメリットと言えます。

入出庫管理の自動化

WMSを導入することで、入出庫作業の自動化が可能になります。具体的にはバーコードやRFIDを用いた自動入力により、手作業による入力ミスを防止し、作業効率を向上させることができます。

また、ピッキングリストの自動生成や最適ルートの提示により、作業者の動線が最適化され、ピッキング作業のスピードアップとミスの削減が期待できます。出荷時には自動ソート機能を活用することで出荷先ごとに商品を仕分けし、梱包作業の効率化も図れるでしょう。

倉庫内作業の最適化

WMSを導入することで倉庫内の各工程を最適化し、作業効率の向上とコスト削減を実現することができます。たとえば保管場所の最適化により、ピッキング動線の短縮と作業効率の向上が可能になります。

また、適切な梱包方法の指示により、梱包作業の効率化と品質向上が図れます。さらに、リアルタイムの在庫情報を活用することで適切なタイミングでの補充や在庫の再配置が可能になり、倉庫スペースを有効活用することにもつながるでしょう。

WMSを導入することで、倉庫業務全体の効率化とコスト削減を実現し、競争力と顧客満足度の向上を図ることができます。在庫管理のリアルタイム化、入出庫管理の自動化、倉庫内作業の最適化という3つの仕組みを理解し、自社の倉庫運営に活かしていくことが重要です。

3. WMSと他システムとの違い

ここではWMSと他システム（基幹システム・在庫管理システム）との違いについて解説します。

WMSと基幹システムとの違い

WMSは倉庫管理に特化したシステムであるのに対し、基幹システムはERP（Enterprise Resource Planning）と呼ばれ、企業全体の業務を管理します。WMSは倉庫内の在庫や作業をきめ細かく管理し、効率化を図る役割を担います。

WMSと基幹システムはそれぞれ異なる役割を担うシステムであり、連携させることで相乗効果が期待できます。

WMSと在庫管理システムとの違い

WMSは在庫管理システムの機能を包含しつつ、倉庫業務全般の効率化を図るシステムです。在庫管理システムが在庫の把握や管理に特化しているのに対し、WMSは入出庫や倉庫内作業の管理も行います。

また、WMSは在庫管理に加え、作業効率の向上やコスト削減にも貢献します。在庫管理システムは在庫の管理に限定されますが、WMSは入出庫やピッキング、梱包作業など、物流に関するさまざまなプロセスを管理する役割を担います。

WMSは倉庫業務に特化した機能を提供することで、在庫管理の精度向上、作業効率の改善、コスト削減など、多岐にわたる効果を発揮します。ERPや在庫管理システムとは役割が異なりますが、これらのシステムと連携させることで、企業全体の業務最適化と競争力強化につなげることができるでしょう。

※関連記事：物流倉庫の効率化！WMS・WCS・WESの概要と違いを徹底解説

4. WMSの導入による倉庫管理の事例

次にWMS導入による事例と効果を解説します。

経済産業省の物流デジタルサービス事例集によると、WMS導入により倉庫業務全体の効率が大幅に向上し、業務の精度が高まることが報告されています。具体的には在庫精度の向上や作業ミスの削減、効率的な倉庫管理の実現などが挙げられます。特に繁忙期などにも対応できるため、柔軟な倉庫運営が可能です。

国土交通省の物流DX導入事例集では、全米約450の地域密着型の卸販売店を展開する企業でWMSを導入した結果、在庫精度が99.9%まで向上し、入力作業の効率化により人件費も削減されたという事例が紹介されています。このように、WMSの導入による事例は倉庫の効率化だけでなく、生産性の向上やコスト削減にも寄与することが示されています。

自社の倉庫運営における課題や目標を明確にし、WMS導入による改善効果を検討することが重要です。

※参考：

経済産業省,荷主・物流事業者のための物流効率化に資する「物流デジタルサービス」事例集

国土交通省,物流・配送会社のための物流DX導入事例集,p5

5. WMS導入・運用時の注意点

ここでWMS導入および運用時における注意点を解説します。メリットや導入効果だけでなく、こちらも理解しておきましょう。

現状分析

最適なシステム設計を行うためには、課題や改善点を明確にし、現状の業務プロセスや在庫管理の方法を詳細に分析することが重要です。

目的の明確化

WMS導入の目的を明確にし達成すべき目標を設定することで、導入効果の評価や継続的な改善につなげることができます。

教育・訓練

WMSを適切に使用するためには従業員への教育・訓練が不可欠です。初期段階ではシステムに慣れるまでの時間が必要ですが、継続的なトレーニングとマニュアルの整備により、効率的な運用が可能になります。

データの整備

WMSの導入にあたっては、在庫データや商品マスターなどのデータを整備し、正確性を確保することが重要です。データの不備や誤りは、システムの運用に支障をきたす可能性があります。

柔軟性の確保

業務の変化や成長に合わせて、WMSを柔軟に拡張・変更できる仕組みを構築することが重要です。将来的な業務拡大や変更に対応できるよう、スケーラビリティを考慮したシステム設計が求められます。

これらの注意点を踏まえ、入念な準備と継続的な改善を行うことでWMS導入・運用の成功確率を高めることができるでしょう。自社の物流戦略に合わせて、WMSを効果的に活用していくことが重要です。

※関連記事：WMSとは？物流業務を効率化するシステムの役割と事例

6. まとめ

WMSは倉庫業務の効率化と最適化を実現するシステムです。在庫管理のリアルタイム化、入出庫管理の自動化、倉庫内作業の最適化により、作業効率の向上とコスト削減を図ります。また、基幹システムや在庫管理システムとは異なる役割を担い、連携させることで相乗効果も期待できるでしょう。

WMSの導入により、在庫の可視化、欠品率の減少、作業時間の短縮など多岐にわたる改善効果が見込まれます。ただし、導入・運用には現状分析、目的の明確化、教育・訓練などが重要であり、入念な準備と継続的な改善が不可欠です。自社の物流戦略の一貫として、WMSを導入し、倉庫管理の効率化を検討してはいかがでしょうか？