物流倉庫の効率化!WMS・WCS・WESの概要と違いを徹底解説

物流倉庫の効率化!WMS・WCS・WESの概要と違いを徹底解説

2024年問題により、物流業界は大きな変革期を迎えています。労働時間が制限されるなか、従来の業務を継続するために、試行錯誤している経営者の方も多いのではないでしょうか。こうした課題に対する解決策として注目を集めているのが、WMS(倉庫管理システム)・WCS(倉庫制御システム)・WES(倉庫運用管理システム)という3つのシステムです。倉庫の規模や特性に応じてこれらのシステムを導入することで、倉庫業務全体の最適化と効率化が期待できます。

本記事では、WMS・WCS・WESの概要や違い、ケーススタディ、各システムの選定ポイントを詳しく解説します。

この記事でわかること

  • WMS・WCS・WESの概要

1. WMS・WCS・WESの概要

WMS・WCS・WESの役割、機能、効果、対象は以下のとおりです。

システム名

WMS

WCS

WES

役割

倉庫内の在庫管理やオペレーション全般を効率化する

倉庫設備の制御を行う

倉庫内の在庫やオペレーションを効率化する

機能

・在庫管理

・入出庫管理

・ピッキング管理

・作業の進捗、パフォーマンスの管理

・在庫状況や作業進捗のモニタリング

・自動化された機器の制御

・設備の状態監視

・搬送システムの最適化

・WMSやWESと連携して、機械の動作を指示

・作業の優先順位管理

・作業者や機器のリソース管理

・倉庫全体のフローの最適化

効果

・ヒューマンエラーの軽減

・作業効率の向上

・マテハン機器やIoT機器を遠隔制御

・最適なスケジュールでの入出庫

マテハン機器やIoT機器のリアルタイム制御

対象

あらゆる商品、部品

・コンベア

・自動搬送機器

・ロボットアーム

など

・仕分けコンベア

・ソーター

・自動倉庫

など



WMS(倉庫管理システム)とは

WMS(Warehouse Management System)とは、倉庫内の物流業務を管理し、在庫管理や入出庫管理など倉庫内のオペレーション全般を効率化するシステムです。

WMSの導入により、在庫の可視化や入出庫の効率化、ピッキングの最適化などを実現できます。また、倉庫内の在庫をリアルタイムで管理するため、在庫の正確性が向上し、適正在庫の維持も可能です。入出庫作業が効率化すれば、リードタイムの短縮やヒューマンエラーの削減が期待できるでしょう。

※関連記事:WMS(倉庫管理システム)とは?概要や役割・メリット・導入事例を解説


WCS(倉庫制御システム)とは

WCS(Warehouse Control System)とは、倉庫内にある設備や自動化された機器の制御を行うシステムです。

WCSの導入により、自動化設備の制御や最適化が可能となり、作業効率が向上します。設備の稼働状況を可視化することで、人的ミスの削減にもつながるでしょう。コンベアやロボットアームなどの自動化設備が適切に制御されると、荷物の搬送ルートが最適化されるため、オペレーターと機器の衝突リスクも減少し、倉庫内の安全性向上を図れます。

※関連記事:WCSとは?倉庫管理の効率化と導入メリットを徹底解説

WES(倉庫運用管理システム)とは

WES(Warehouse Execution System)とは、倉庫内の在庫やオペレーションを効率化するシステムです。特に、自動化設備が増えている倉庫において、各作業工程の最適化と調整を行います。WMS・WCSと連携することで、在庫管理から自動化された機器の制御まで、倉庫運営全体の作業フローをリアルタイムで管理可能です。

WESは、ピッキング、梱包、出荷といった各作業の優先順位付けとスケジューリングを行い、全体の作業効率を向上させます。

また、WMSと連携すれば、在庫管理や入出庫管理、ピッキング、搬送など物流業務全体の最適化が可能です。さらに、WCSを介してマテハン機器やIoT機器をリアルタイムに制御するため、大幅な作業効率の向上と人的ミスの削減にもつながるでしょう。

※参考:国土交通省,物流・配送会社のための物流DX導入事例集,p6

※関連記事:WESとは?導入メリットと最新技術との連携を徹底解説

WMS・WCS・WESの違い

WMSは倉庫全体の管理・指示出しを行い、原料や在庫を管理するのに対し、WCSは自動化設備や機器を制御・監視し、リアルタイムでの稼働管理を担います。

WESはWMSとWCSの機能を連携させ、作業指示の優先順位付けや業務の最適化を行い、作業のフロー全体を管理するシステムです。

各システムは異なる役割を持ちつつも、相互に連携することで、物流倉庫の効率化を実現します。

※参考:国土交通省,物流分野(倉庫)における情報セキュリティ確保に係る安全ガイドライン


2. ケーススタディ

WMS・WCS・WESのケーススタディを、小規模・中規模・小規模の3つのパターンで紹介します。

小規模倉庫の場合

小規模倉庫では、WMSの導入が適しています。在庫管理や入出庫管理を中心とした業務が主であり、自動化設備が少ないためです。在庫数が少なく、入出庫頻度が低い小規模倉庫では、WMSを用いて在庫の可視化や入出庫の効率化を図れます。

中規模倉庫の場合

中規模倉庫では、WMSとWCSの併用が適しています。在庫管理や入出庫管理に加え、一部の自動化設備を導入しているケースが多いため、WMSとWCSを連携させることで、効率的な倉庫運営が可能です。たとえば、ピッキング作業にピッキングカートを導入している中規模倉庫では、WMSで在庫管理を行い、WCSでピッキングカートを制御すると、作業効率の向上が期待できます。

大規模倉庫の場合

大規模倉庫では、WMSとWES(場合によってはWCS)の併用により、包括的かつ効率的な倉庫運営を実現可能です。WMSが在庫管理の基盤となり、WESがオペレーションの迅速化と自動化をサポートすることで、在庫管理とオペレーションの効率が同時に向上し、倉庫運営の全体的なパフォーマンスが高まります。


3. WMS・WCS・WESの選定ポイント

WMSの選定では、倉庫の規模や業務内容、将来的な拡張性などを考慮する必要があります。

WMSの選定ポイント

WMSの選定では、倉庫の規模や業務内容、将来的な拡張性などを考慮する必要があります。

自社の業務プロセスとの適合性

自社の業務プロセス(入庫、ピッキング、出庫、在庫管理など)に対応できる機能を備えているかを確認します。

リアルタイム在庫管理

WMSでは在庫の状況をリアルタイムで追跡・管理できることが重要です。特に、マルチチャネルや多拠点倉庫での運用を想定している場合、在庫の可視化を正確に行えるかを確認しましょう。

他システムとの連携性

OMSやERPなど、ほかの業務システムと容易に連携できるかどうかも重要なポイントです。API連携の柔軟性や、標準で対応しているシステムの種類を確認します。

WCSの選定ポイント

WCSの選定では、倉庫内の自動化設備との互換性や、WMSとの連携性を重視する必要があります。



機器や設備との互換性

WCSは自動搬送システムやピッキングロボット、コンベアなどの機器を制御するため、導入予定の機器や既存の自動化設備との互換性を確認しましょう。

リアルタイム制御の精度

倉庫内の機器をリアルタイムで正確に制御する能力も重要な選定ポイントです。作業の優先順位や業務のスムーズな進行が保証されるかを、シミュレーションや実績に基づいて評価しましょう。

拡張性と柔軟性

将来的に自動化の範囲を広げたい場合は、自動化機器の追加や変更を容易に行えるか、拡張性や柔軟性を確認することも重要です。また、WCSはWMSやWESと連携して動作します。そのため、システム間とデータのやり取りや指示伝達、既存のシステムとの連携がスムーズかどうかを確認しましょう。

WESの選定ポイント

WESは倉庫内の業務全体を見据えたうえで、最適なシステムを選ぶ必要があります。

リアルタイムの作業優先順位管理

倉庫内の作業をリアルタイムで監視し、優先順位を適切に管理できることが重要です。たとえば、繁忙期や突然の需要変動に対して、作業の自動調整がスムーズに行われるかが評価のポイントとなります。

柔軟なリソース管理

作業者や機器のリソースを、作業の進行に応じて適切に割り当てられるかを確認します。人員や機械の稼働状況に基づき、柔軟に調整できることが効率化のポイントです。

WMS・WCSとの統合性

WESはWMSやWCSと密接に連携し、指示をリアルタイムで最適化します。そのため、既存のWMSやWCSとの統合性が高く、データをスムーズにやり取りできる必要があります。

※関連記事:物流システムの全体像|6大機能と主要システムを解説


4. まとめ

WMS・WCS・WESは、倉庫運営の最適化を図るうえで効果的なシステムです。それぞれの機能や特性を理解し、自社の倉庫規模や業務内容に適したシステムを選定することで、作業効率の向上やミスの削減などが期待できます。物流戦略の一貫として、WMS・WCS・WESの導入を検討してはいかがでしょうか。

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