NECとNLJが共創、業種・業態超えた共同輸配送プラットフォームに新次元!

NECとNLJが共創、業種・業態超えた共同輸配送プラットフォームに新次元!

エルテックラボ代表の物流ジャーナリスト 菊田一郎氏をホストに、さまざまなゲストをお迎えするハコベルスペシャル対談。2024年10月は「NECとNLJが共創、業種・業態超えた共同輸配送プラットフォームに新次元!」と題し、日本電気株式会社(以下、NEC)の武藤 裕美氏と、NEXT Logistics Japan 株式会社(以下、NLJ)の梅村 幸生氏をお迎えしました。

NECとNLJは2024年6月に戦略的提携を発表しました。第一弾の取り組みとして、NECの「共同輸配送プラットフォーム」とNLJの物流最適化ソリューションシステム「NeLOSS(ネロス)」の相互連携による、物流の計画〜実行までをシームレスに連携させるサービスの早期提供を目指しています。そして将来的には、2040年を目標に物流のあるべき将来像「フィジカルインターネット」の実現に向けて取り組む考えです。両社にその背景と意義、今後の展望などをうかがいました。

この記事でわかること

  • NECとNLJの戦略的提携における取り組みについて
  • 2040年を目標に物流のあるべき将来像「フィジカルインターネット」とは

日本電気株式会社

トランスポート・サービスソリューション事業部門

モビリティソリューション統括部 上席プロフェッショナル

武藤 裕美 氏

学生時代に自動車の運転支援システムを研究、AIについても学ぶ。NECにSEとして入社。デマンドチェーンマネジメントや物流関連のシステム開発を担当。途中、営業職へ転換。主に物流会社を担当し、情報システムから現場系のシステムまで幅広く対応。その後、ロジスティクス分野の事業企画に従事後、現在はモビリティ分野の事業企画を担当。



NEXT Logistics Japan株式会社

代表取締役社長 CEO

梅村 幸生 氏

慶應義塾大学総合政策学部卒。1996年日野自動車工業(現日野自動車株式会社)入社以来、国内営業部門において小型トラック「日野デュトロ」のマーケティング、商品企画、宣伝プロモーションを担当。2014年地域担当部近畿地区担当部長、2015年トヨタ自動車(株)総合企画部出向、2018年日野自動車株式会社新事業企画部部長、2018年6月NEXT Logistics Japan株式会社設立、現職に至る。



エルテックラボ L-Tech Lab

菊田 一郎 氏

1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年間勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体役員等を兼務歴任。この間、国内・欧米・アジアの物流現場・企業取材は約1,000件、講演・寄稿など外部発信多数。

2020年6月に独立し現職に至る。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化/DX、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスし、著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。17年6月より㈱大田花き 社外取締役、20年6月より㈱日本海事新聞社顧問、同年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル㈱顧問。著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。



サステナブルな物流の目指す姿「フィジカルインターネット」

物流の将来像といわれる「フィジカルインターネット」とはどのようなものでしょうか。菊田氏による「前ぶり解説」では、その仕組みと利点が解説されました。

デジタルの「インターネット」は、データを一定のサイズに分割し、標準化された通信規格で送出し、受信者のもとで再び統合する「パケット通信」という方法でデータをやり取りしています。通信は1対1ではなく多対多で、通信回線は多くの通信が共有している構造です。



この仕組みを物理的な貨物の運搬に応用したのが「フィジカルインターネット」の概念です。貨物を標準化された荷姿に仕立て、生産地や倉庫等からクロスドック(XD)といわれる積み替え拠点に持ち込み、そこでマッチング・混載して各地の物流センターにリレー輸送し、着地近くの拠点で仕分け・再統合して着荷主の元に届ける、という仕組みです。

標準化された物流情報とプロセス管理により、積載から荷下ろしまでリアルタイムにトレース可能にする構想。実現できれば混載による積載率最大化やリレー輸送による効率化で温室効果ガスの排出量も削減されます。フランスの大手小売企業2社への配送を対象にしたPoC(概念実証)の推計では、在庫は1/3に圧縮、CO2排出量は60%削減、輸送キロは15%削減など、大きな効果が期待できることがわかりました(第5回国際フィジカルインターネット会議資料(2018年)による)。

菊田氏「フィジカルインターネットの最終目的は、物流と地球社会を持続可能にすることです。その鍵は、働く人の環境保全、そして地球と社会の環境保全にあります。SDGsという言葉を最近聞かなくなりましたが、今本気でやらなければまったく達成できないという危機的状況にあります。私は物流にできることは今すぐ、すべてやろうと呼びかけ、物流SDGsの推進に貢献していこうと常に訴えています」


高効率物流の社会実装へ取り組みを拡大するNLJ

梅村氏がCEOを務めるNLJは、物流課題解決のためにダブル連結トラックを使った混載輸送を行い、その積載率をより高めるためのシステムや枠組みづくりに取り組んでいます。


梅村氏「こだわっているのは輸送力です。その源泉となる積載率は、業界平均38%に対して当社は60%以上を達成し、この5年間で9,500人の省人化、CO2排出量を2,000トン低減という実績を挙げています。現在は、この我々の取り組みをより広げていくフェーズに来ています」

NLJは「高効率物流をあなたの会社に実装します」というコンセプトで、こうした企業の物流課題解決を提案しています。その一つとして、物流最適化システム「NeLOSS」シリーズの提供をこの10月より正式に開始しました。これは量子Inspired技術の一つであるアニーリング方式(組み合わせ最適化問題に特化した技術)を用いたシステムで、物流会社で専門のベテラン社員が時間をかけて行っている配車と積載の組み合わせ最適化を、どんな人でも数十秒~数分間で完了させることを可能にします。

さらに、将来的に輸送が自動運転になっていくことを見据え、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)公募のレベル4自動運転トラックによる輸送の実証実験を受託し、物流サービスデータ連携システムの開発・検証を行います。来年3月、新東名高速道路(駿河湾沼津〜浜松SA間)約100キロの区間を走行する計画です。


梅村氏「どうやって自動運転区間までトラックを持って行くか、どのように人の運転とリレーするか、いかに積載率を上げるかなど、自動運転が社会実装されたときのオペレーションを意識して取り組みを進めています」




1社だけでは実現できない価値の「共創」を目指すNEC


武藤氏は、NECでモビリティ分野の事業企画を担当しています。NECは物流・ロジスティクス・サプライチェーンに対して「『安全・安心な人とモノの移動』を『デジタル』で支え、すべての人々と産業が公平にサービス・機会を享受できる社会を実現」するというビジョンを描き、バリューチェーンの改革を目指しています。

武藤氏「1社だけではできないことを、皆さんとやっていくから価値がつくられます。働き方の革新、物流現場そのものの革新、そして、私たちも工場を持つメーカーでもありますが、生産・販売・流通の連携によりロジスティクスを革新、さらに企業間の連携によりサプライチェーンを革新する。この4つのカテゴリでソリューションを提供することに取り組んできました」

すでに一部は実用化、あるいは実用化間近となっており、例として「人と協調する自律・遠隔操作フォークリフト」「自律・遠隔操作ハンドラーロボット」などが紹介されました。遅延のない通信制御技術、目標指向タスクプランニング等のAI技術など、いずれも同社の持つさまざまな技術により実現されています。



これらは完全自動の巨大倉庫というよりは、日本の物流現場に求められる「人と協調できる自律制御」を目指したものです。武藤氏はこうしたソリューションを「フィジカルインターネットを実現するためのツール」とも説明しました。輸配送とつながる倉庫内も、フィジカルインターネットに接続する重要な結節点だからです。

武藤氏「私は長い間、ロジスティクスをバーチャル化して、サプライチェーンのデータを集めて見える化し、さらにそこから最適化を図る“サイバーロジスティクスネットワーク”の構築を妄想してきました。最適なルート選択、最適なリソース、最適なサプライチェーンの構築によって、社会全体の最適化を支えたいと考えています」



フィジカルインターネットに近づく両社の提携

NLJとNEC、両社の提携によりどのような価値が実現されるのでしょうか。解決すべき物流課題は、コスト・物流網の維持・ドライバー不足・SDGs対策など、荷主企業・運送事業者の双方にあります。そこで両社は「つなぐ、束ねる、はこぶ」をキーワードに、ロジスティクス全体を最適化し、物流の計画から実行までをシームレス行う新たなサービスを開発しました。具体的には、次の5つの段階で運用されます。


1)グルーピング

共同輸配送を希望する企業のうち、似た輸配送条件の複数企業をグルーピング

2)プランニング

発地・着地、出荷・納品時間、その他の条件を組み合わせ、グループ内で最適な共同輸配送の運行プランを策定


3)積付・割付

条件、荷姿、リードタイムが異なる荷物をどう組み合わせ、どのように積めばもっとも効率的に運べるか、「NeLOSS」で算出


4)オペレーション

ICTの活用により、企業間での荷量やリソースの調整を可能とし、電話やメールでの調整を不要に


5)幹線輸送

NLJの輸送網を使った幹線輸送を行う


このサービスによって物流の効率向上を提案できるだけでなく、検討からオペレーションまでの期間短縮も期待できるといいます。


武藤氏「共同輸配送をしたい荷主同士は、まず適した相手に出会うことが難しく、さらにさまざまな条件を協議するうちに1年2年はすぐに経ってしまいます。それがこのシステムによって大幅に短縮され、最終的に実際のオペレーション開始までの期間が3分の1程度になると見込んでいます」

梅村氏「これまで当社でも共同輸配送のためにいろいろな荷主企業様をつないできましたが、これは本当に時間がかかるのです。だんだんと荷主企業様の熱が冷めてしまうこともあります。ですから、困っている時に早く解決するスピード感は非常に大切です」

両社の持つ技術とそのシナジーにより、さらに進んだ企業の課題解決も期待できます。例えば、納品時間を30分ずらせば積載率が10%向上する、となれば中長期的なコスト削減・環境負荷低減につながります。そうしたデータを元に、これまで納期最優先だったものを経営的な判断でずらすことが可能になるかもしれません。また、こうした調整をAIが自律的に交渉することも実現できるでしょう。両社の提携によって今後どのような価値が生まれていくのか、期待が高まります。




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