【セミナーレポート】アイディオットの「ADT」で物流持続可能化へ CLOの業務支援、進化・成熟を促進!

【セミナーレポート】アイディオットの「ADT」で物流持続可能化へ CLOの業務支援、進化・成熟を促進!

エルテックラボ代表の物流ジャーナリスト 菊田一郎氏をホストに毎月お届けしているハコベルウェビナー。今回は、CLOならびに物流統括管理者の業務支援ツール「ADT」を開発する株式会社アイディオット代表取締役の井上智喜氏を迎え、製品の活用法や導入メリットなどを伺いました。

この記事でわかること

  • 株式会社アイディオットの目指す事業
  • 物流最適化ツール「ADT」について
  • アイディオットが考えるフィジカルインターネット実現へのロードマップ

株式会社アイディオット 代表取締役

井上 智喜 氏

1992年生まれ。東京都立大学在学中の2014年11月に株式会社アイディオットを創業。人工知能とソフトウェアの開発事業を展開している。

2020年頃からサプライチェーンの最適化に注力。

2022年に内閣府の国家重点プロジェクト(SPI)に採択されたことで注目を集め、台湾政府とも連携。

啓蒙活動にも力を入れていて、『物流デジタルツイン(商標申請中)』という概念を打ち立て、フィジカルインターネットなどについて自社メディアで発信するほか、研究開発内容や特許技術の一部を論文や専門誌に発表。


エルテックラボ L-Tech Lab 代表

物流ジャーナリスト 菊田 一郎 氏

1982年、名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年間勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体役員等を兼務歴任。この間、国内・欧米・アジアの物流現場・企業取材は1,000件以上、講演・寄稿など外部発信多数。

2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化/DX、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスし、著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。17年6月より株式会社大田花き 社外取締役、20年6月より23年5月まで株式会社日本海事新聞社顧問、20年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル㈱顧問。著書に「先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える」(白桃書房、共著)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。



菊田氏の聞きどころ解説

冒頭は菊田氏が、今回のテーマである「物流統括管理者とCLOの業務」について解説しました。

2024年5月に改正物流効率化法が公布され、積載効率の向上等、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮という3大努力義務がすべての荷主や物流事業者に課されました。これに加え、特定荷主に物流統括管理者の選任や中長期計画の策定などが義務付けられました。本日のテーマの1つは、この物流統括管理者、そしてCLOの業務です。

カバーエリアは重なる部分が多いものの、そのまま物流統括管理者=CLOなのではありません。この点について、先月ついに国交省が公式に説明しました。物流政策課長の髙田龍さんが、「物流統括管理者は法令上の責務を果たしつつ、それにとどまらずCLOの役割も果たすことが期待される」と述べました。「法令上はそこまで定められていないが、CLOの役割も期待されている」ということなのです。



選任が義務付けられた物流統括管理者の業務は、主に3大義務の実行と実務の計画管理です。一方でCLOあるいはCSCOの業務は、主に戦術・戦略・パーパスが責任領域になります。JPIC(一般社団法人フィジカルインターネットセンター)によれば、CLOは「サプライチェーンにおいて、経営視点で社内外を俯瞰した全体最適を図る役割を担う責任者」です。「まずは物流統括管理者として3大義務に集中的に取り組んでもらい、その後CLOをめざしてもらいたい」と菊田氏は話します。


物流統括管理者ならびにCLOの力になると期待されるのが、株式会社アイディオットが開発・提供するツールです。「一体どんな機能を持ち、この課題満載の物流業界にどんなソリューションをもたらしてくれるのでしょうか。それでは、井上社長のお話を聞きましょう」


会社紹介 AIで物流課題を解決する株式会社アイディオット

紹介とともに井上智喜氏が登壇し、会社の事業内容について説明しました。

株式会社アイディオットは、井上氏が大学3年生だった2014年に設立したスタートアップ企業。「データプラットフォームを用いてビジネスの価値を最大化・最適化する」をミッションに掲げ、AIとデジタルツインの技術を用いてサプライチェーンの最適化をめざす事業を展開しています。渋谷にオフィスを構え、現在は総勢70名ほどで事業に取り組んでいます。

「これまで日本経済も世界経済も、GDPの向上こそが国家・国民の幸せだと信じて大量生産を推進し、付随する大量廃棄に目をつぶってきました。利益の最大化を目指してきたわけです。しかし近年、SDGsの考えによって世の中の考え方は変わりつつあります」と井上氏は語ります。

「私自身も当初は“最大化”を目標に事業を進めていましたが、違和感を覚えて“最適化”をミッションにしました。製造量や売上額の最大化の陰では、製品廃棄などの問題が生じているかもしれない。そういった視点を強みとし、そこに共感いただいた企業に株主になっていただき、実証の場をお借りして製品をブラッシュアップしています」

起業当初はAIを活用できれば分野は問いませんでしたが、2020年に初めて物流分野に関わり、アイディオットの事業が立場の異なる全員を幸せにできると実感。「物流は全員をWin-Winにできる領域だ」と感じ、物流・サプライチェーンの最適化に注力するようになったといいます。

転機となったのは、2022年に内閣府の国家重点プロジェクト(SPI)。スマート物流を推進するサービスとして、6テーマのうち同社が3つ採択され、1年間大手企業や大学と実証実験を行ったことで、物流業界での知名度や製品の質を高めました。



サプライチェーン・物流を取り巻く環境

次に井上氏は、物流の現状を説明しました。

経済の血流としてあらゆる産業を下支えする物流業界は、世界情勢や規制の影響を受けやすいもの。新しい技術や考え方への転換を迫られると同時に、環境への配慮や消費者への対応もあり、三重苦、四重苦の状況になっています。

そして物流効率化法が約20年ぶりに改正され、運送事業者だけでなく荷主にも責任を課すなどの対応がなされました。「物流会社は国交省の管轄、荷主企業は経産省の管轄です。そこを国交省がリードする形で農林水産省を含む3省が手を組み、罰金もある強制力のある法律を作り上げた点に本気度が伺えます」

現在、各企業の物流統括管理者ならびにCLOは、どのようなレベルにあるのでしょうか。アイディオットは荷主企業と物流事業者を5段階に分けて現在地を示した「CLOの成熟度モデル」を作成。業務支援ツール導入を検討する企業に、自社の現状を大まかに掴んでもらうために活用しています。「経営層の認識と現実には乖離があることが多いため、それぞれを確認できるようにしています」と井上氏。別途、無料の成熟度診断ツールも用意しています。



「3大義務を果たしながら、荷主企業はコスト削減、リードタイム短縮によるキャッシュフローの改善、在庫削減によるバランスシートの軽量化などに取り組まなければなりません。そこで私たちは、業務領域の広いCLOの業務支援を念頭に支援ツールを開発しました」


物流最適化ツール「ADT」のソリューション概要

物流業務の中には配車、在庫管理、バース予約受付など多くのシステムがあるため、倉庫内など限定的な最適化はできても会社全体の最適化は困難です。これを支援するのが、AIとデジタルツイン技術を活用した「ADT(Aidiot Digital Twin)」です。


ADTには2つの機能があります。1つは多様な物流データを統合し、国交省の物流情報標準ガイドラインに沿って標準化する機能。もう1つは、そのデータを可視化・分析・最適化する機能です。①データの収集と標準化 ②可視化 ③最適化の3ステップで活用します。

STEP1 データの取集と標準化

製品、タリフ、荷姿、在庫、入出荷など社内のあらゆる情報を集めて整理します。3カ月から半年ほどかかりますが、ここを乗り越えればあとは早いです。集めた情報をクラウドに取り込み、標準データに変換します。アイディオットが持つ天候や交通のデータを加えることも可能。さらに、同社のパートナー企業から資金商流データなどを購入して需要予測などに活用することもできます。



STEP2 可視化

データが標準化されると、地図上に物流拠点、在庫、車両、配送員などの情報が表示されます。在庫、コスト、流量などさまざまな観点から眺められるようになり、経営判断の材料となります。例えば、在庫を減らすと欠品リスクが高まり、在庫を増やすと保管コストや廃棄リスクが高まります。どちらを優先させるかは企業によって違います。「在庫をたくさん抱えてでも欠品は避けたい」「とにかく安くしたい」など、その企業が重視するKPIの実現に役立ちます。



STEP3 最適化

条件を設定すると、即座にデータを分析してシミュレーション結果を出すので、さまざまなシナリオを検討して最適化を図れます。「もし拠点が2つだったら」「もし輸送をA社からB社に変えたら」といった複数のシナリオのシミュレーションが可能。調達と販売の物流を同時に確認することもできます。



この標準化・可視化・最適化は、戦略立案だけでなく現場業務の効率化にも役立ちます。物流統括管理者ならびにCLOはExcelファイルなどによるデータの作成・管理作業から解放され、意思決定に集中できるようになります。また、データの標準化が普及すれば共同配送が便利になります。井上氏は「医療現場で広まる電子カルテも、共有すべき項目や文書など標準化が進んでいます」と話し、物流業界でもいずれ標準データがルール化されるとの考えを示しました。

なお、ADTが活用するAIは、統計学を用いた数理最適化、過去のデータからパターンを見つける機械学習であり、答えが導き出されるプロセスを説明できないディープランニングは使っていません。


まとめ フィジカルインターネットの実現に必要なこと

日本は2040年を目標に、複数企業がトラックなどを共有してリレー輸送を行うフィジカルインターネットの実現をめざしています。そのためにADTを活用してほしいと井上氏は考えています。

アイディオットが考えるロードマップはこうです。まずは各企業にADTで個社最適化を実行してもらい、次にADTを通し荷主同士で連携して課題解決を図り、それから物流事業者も一緒になって荷主の課題解決を進めます。「そうして水平連携・垂直統合が始まり、フィジカルインターネットにつながっていくでしょう」


井上氏は、ADTのようなオープンプラットフォームで複数の企業が連携する際のポイントも語りました。「重要なのは座組みです。誰が責任者で、誰が実行するのか。費用分担と成果配分をあらかじめ設計しておくことが必要です。統括管理者が選任されれば、こうした企業の連携もスムーズになるのではないかと期待しています」

デジタルツインは本来リアルタイム連携を指しますが、現在のADTはまだ実現できていません。最後に展望を聞かれた井上氏は、「3年以内にはリアルタイム連携させたいです。そして2040年までには分断されている調達物流と販売物流もつなげ、サプライチェーンすべてを連携させたいです。そのために、CLOならびに物流統括管理者の業務支援をしていきます」と力を込めました。

「お話を聞いて、ADTはフィジカルインターネットのインフラになり得る仕組みだと感じました」と菊田氏。データの標準化とデータ分析による最適化。物流の未来に希望を感じた人も多いのではないでしょうか。





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