脱炭素社会の実現に向けて|政府や企業の取り組み事例を紹介

脱炭素社会の実現に向けて|政府や企業の取り組み事例を紹介

脱炭素社会の実現に向けて、世界中で環境負荷の低減が求められています。日本でも、温暖化ガスの排出量削減を目指し、政府や企業が積極的に取り組んでおり、脱炭素化は経済活動の新たな潮流といえるでしょう。

政府は「2050年カーボンニュートラル」を達成するための政策を推進し、再生可能エネルギーの普及やエネルギー効率の改善を進めています。企業もその動きに応じて、さまざまな取り組みを実践しており、特に物流業界では、効率的な輸送手段や電動車両の導入といった先進的な事例が数多く見られます。物流業界の脱炭素化は、持続可能な社会の実現に欠かせません。

本記事では、脱炭素社会を実現するための取り組みと、企業による具体的な事例を紹介します。

この記事でわかること

  • 脱炭素社会実現に向けた取り組みについて

1. 脱炭素社会とは

脱炭素社会とは、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を極力削減し、地球温暖化を抑制することを目指す社会のことです。最終的には温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現が目標とされています。


2. 脱炭素社会の実現に向けた政府の取り組み

日本政府は、2050年までにカーボンニュートラルを達成するための具体的な施策を推進しています。これには、再生可能エネルギーの拡大、地域ごとの脱炭素化支援、法的枠組みの強化、脱炭素化支援機構の設立、エネルギー基本計画の見直し、カーボンプライシングの導入など、多岐にわたる取り組みが含まれます。

持続可能な低炭素社会の実現に向けた、政府の取り組みについて見ていきましょう。

グリーン成長戦略

日本政府は、2050年カーボンニュートラルの達成を目標に、グリーン成長戦略を推進しています。再生可能エネルギーの導入促進や低炭素技術の開発を加速させ、経済の成長と環境保護を両立させることを目指す戦略です。グリーン技術のイノベーションにより、新たな産業創出と雇用の拡大も見込まれています。

※参考:経済産業省,2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

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地域脱炭素ロードマップ

地域脱炭素ロードマップとは、地域ごとに温室効果ガス排出削減の具体的な目標と行動計画を示すものです。各地域が持つ特性や資源を活用した、脱炭素社会の実現を目指しています。地域密着型の取り組みで、地元の企業や住民と協力しながら、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率化が進められています。

※参考:内閣官房,地域脱炭素ロードマップ

地球温暖化対策の推進に関する法律の改正

地球温暖化対策法は、温暖化ガスの排出削減を法律で義務付ける重要な枠組みです。改正により、企業や自治体に対してさらなる温暖化対策の実行が求められ、カーボンプライシングの導入や再生可能エネルギーの普及促進が強化されました。また、環境負荷の少ない社会への転換を促進するための法的支援が進められています。

※参考:環境省,地球温暖化対策推進法と地球温暖化対策計画

脱炭素化支援機構の設立

脱炭素化支援機構は、企業や自治体が脱炭素化を進めるための資金援助や技術支援を行う組織です。再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率化技術の普及を促進し、脱炭素社会への移行を支える役割を果たしています。これにより、企業の脱炭素化への投資を後押しし、社会全体の環境負荷低減に貢献しています。

※参考:環境省,株式会社脱炭素化支援機構の設立について

エネルギー基本計画の見直し

エネルギー基本計画の見直しは、脱炭素社会に向けた重要な施策です。新たな計画では、再生可能エネルギーの比率を高め、化石燃料依存から脱却する方針が示されました。また、電力自由化の推進やエネルギー効率の改善、電動車の普及促進が含まれ、総合的なエネルギー政策の転換を目指しています。

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3. 企業による脱炭素化の取り組み事例

以下は、物流業界における脱炭素化の取り組み事例です。それぞれの企業がどのような取り組みを行い、脱炭素化に成功を収めたのかを紹介します。

ヤマト運輸株式会社のEV(電動車両)導入

ヤマト運輸は、脱炭素社会に向けた取り組みの一環として、都市部を中心に小型EVトラック900台の導入を進めています(2023年度実績)。特に、都市部での小口配送を中心に、CO2排出量を削減するための取り組みを強化中です。このEVの導入計画では、全国で数百台の電動トラックや電動バイクを投入し、配送業務に活用しています。

ヤマト運輸は、配送の効率化を図りながら、環境負荷の低減を実現し、都市部の渋滞緩和や排気ガス削減にも寄与しています。また、EVの充電インフラの整備にも力を入れており、同社は2030年までに自社配送車両の50%をEV化する計画です。この取り組みにより、同社は物流業界における脱炭素化のモデルケースとなりつつあります。

※参考:日本経済新聞, ヤマト運輸、小型EVトラック900台導入 三菱ふそう開発

佐川急便株式会社の「グリーン物流」の推進

佐川急便は、環境に配慮した物流運営を推進するため、さまざまな「グリーン物流」施策を実施しています。特に注目されるのは、再生可能エネルギーを活用した配送センターの運営と、低燃費車両の導入です。

自社の配送センターに太陽光発電設備を導入し、再生可能エネルギーでの運営を拡大しています。また、配送用車両には、ハイブリッド車や電気自動車(EV)の導入を進めており、従来のディーゼル車に代わる環境負荷の少ない車両を増加させました。これにより、二酸化炭素排出量の削減に成功し、企業全体における環境意識の向上にもつながっています。佐川急便の取り組みは、物流業界全体に良い影響を与えており、今後さらに規模を拡大させる予定です。

※参考:佐川急便株式会社, SAGAWAのグリーンソリューション(物流の脱炭素化)

日本郵便株式会社のCO₂削減への挑戦

日本郵便は、脱炭素化に向けた取り組みとして、物流業務でのCO2削減に注力しています。具体的には、郵便車両の電動化を進め、全国の郵便局での電動車両の割合を大幅に増やす計画を発表しました。

また、日本郵便は、デジタル技術を活用した最適ルートの設定により、配送の効率化と環境負荷の削減を実現しています。さらに、配送拠点でのエネルギー効率の向上を目指し、太陽光発電システムや省エネ型設備の導入を進めています。持続可能な物流システムの実現に向けて、温室効果ガスの削減を達成した先駆的な事例といえるでしょう。

※参考:日本郵便株式会社, 気候変動に関する取り組み

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4.まとめ

脱炭素社会を実現するには、政府と企業が協力して取り組むことが重要です。政府は政策や規制を通じて脱炭素社会の基盤を整備し、再生可能エネルギーの普及促進やカーボンプライシングの導入などを進めています。

一方で、企業は省エネルギー技術の導入やカーボンニュートラルを目指す取り組みを強化し、持続可能な事業モデルの構築に努めなければなりません。

他企業の成功事例を参考にしながら、自社の脱炭素戦略を早期に策定・実行することが、競争力向上と持続可能な社会への貢献につながるでしょう。



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