物流業務において、在庫の管理や業務の効率化にお悩みの経営者も多いのではないでしょうか?物流センターはそのような悩みを解決する1つのポイントと言えるでしょう。なぜなら物流センターを円滑に運営することで、在庫の一元管理やリードタイムの短縮など、物流業務における作業の効率化が実現できるからです。
本記事では、物流センターの役割や機能、種類、特徴、課題などを解説します。また、業務効率化を図るための潮流についても紹介します。物流業界における中小企業の経営者や物流業務の担当者の参考になれば幸いです。
物流センターは商品の入荷から出荷までを一手に引き受ける物流施設を指します。単なる倉庫とは異なり、保管だけでなく、仕分け、梱包、流通加工など多岐にわたる業務を担います。まずは物流センターの基本的な機能を5つ解説します。
商品を入荷してから出荷するまでの間、適切な環境で保管します。温度管理や在庫管理などが求められます。
生産地から消費地まで、トラックや船舶などを使って商品を輸送します。輸送ルートの最適化を実現できればコスト削減や配送時間の短縮が可能になります。
倉庫内での入出庫作業、ピッキング、仕分けなどを指します。作業効率がコストに直結します。
輸送中の破損を防ぐため、商品を適切に梱包します。環境に配慮した梱包材の選択も重要なポイントです。
商品の価値を高めるため、ラベル貼りやセット組みなどの作業を行います。EC市場の拡大に伴い需要が高まっています。
これらの機能を高い精度で実現することにより、物流センターはサプライチェーンの効率化と最適化に貢献していくと期待されています。
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物流センターには役割や立地によってさまざまな種類があります。ここでは代表的な物流センターを解説します。
商品の保管と配送機能を持ち、各店舗や顧客に向けて商品の出荷を行う施設を指します。入庫、保管、ピッキング、仕分け、出荷などの在庫管理が行われるため、中長期的な在庫保有が可能です。一定の在庫を持つため、リードタイムを短縮できるのが特徴と言えるでしょう。ただし、デメリットとして在庫リスクを負うことは否めません。
商品を一時的に集積し、仕分け・振り分けして短期間で出荷を行う施設を指します。在庫を持たず、入荷した商品をすぐに出荷する通過型の物流センターです。入庫から出庫までの滞留時間が短く、在庫をほとんど持たずに商品の流通を効率化できる点が特徴です。在庫リスクは低いですが、リードタイムは長くなる傾向にあります。クロスドッキングとも呼ばれています。
受注処理や顧客対応などを含む機能を持つ施設です。特にEC事業者の利用が多いのが特徴で、ECサイトなどで注文を受けた商品の在庫管理、ピッキング、梱包、出荷、返品処理まで行います。ECビジネスの成長に欠かせない存在と言えるでしょう。
流通加工機能を持つ物流センターを指します。生鮮食品や家具などさまざまな製品の加工や組み立てを行い、セット商品を加工する・組み合わせる拠点として利用されます。商品の組み立てや包装、ラベル貼りなど付加価値の高いサービスを提供できる点が特徴です。
物流センターの立地の種類を説明します。
生産拠点の近くに立地し、製品を一括して出荷することでコスト削減を図る物流センターを指します。原材料の調達や工場間の輸送にも利用されます。
消費地の近くに立地し、迅速な配送を実現する物流センターを指します。ECサイトの配送センターなどに利用され、多頻度小口配送に適しています。
コスト削減と顧客満足度の向上を両立するには、物流センターの効率化が欠かせません。ここでは近年のトレンドから効率化のためのポイントを紹介します。
過剰在庫や欠品はコスト増や機会損失につながるため、需要予測に基づいた適正在庫管理が重要です。最近では、AIを活用した需要予測システムを導入することで、在庫の回転率を向上させる企業が増えています。これにより無駄な在庫を削減し、全体のコストを抑えることが可能です。
人手不足や人件費の高騰を背景に、物流センターの自動化が加速しています。ピッキングや仕分けなどの作業を自動化することで、大幅な効率アップが期待できます。自動ピッキングシステムを導入した企業では、手作業に比べて作業スピードが向上し、より多くの注文に迅速に対応できるようになっています。
倉庫管理システム(WMS)や輸配送管理システム(TMS)など、いまやITシステムの活用は欠かせません。ITシステムを活用することにより、リアルタイムでの在庫可視化や最適な配送ルートの選定が可能になります。クラウド型のシステムを導入することで、在庫管理や出荷作業の精度が向上し、より迅速な対応が可能となった事例もあります。
サプライチェーン全体の最適化には、パートナー企業との連携がますます重要視されています。その理由は、情報共有や協働物流などを通じて無駄を削減し、全体の最適化を目指せるからです。複数の企業が共同で物流センターを運営することで、効率的な輸送体制を構築し、積載効率を高めるといった事例も増加しています。
物流センターのリアルな状況をデジタル空間に再現し、シミュレーションや予測を行うデジタルツインの活用も進んでいます。物流センターの効率化には、商品の動向や作業動線を分析し、頻繁に使用される商品を出荷口付近に配置するなど、無駄を減らすレイアウト設計が必要です。
デジタルツインを活用して倉庫内のオペレーションやレイアウト変更の効果を事前に検証することで、無駄なコストや時間を削減できます。デジタルツインを用いたシミュレーションを通じて作業動線を最適化し、作業効率を向上させることが可能です。
顧客への配送の最終段階であるラストワンマイルの効率化は、物流コスト削減と顧客満足度向上の鍵となります。研究段階ではありますが、ドローンや自動運転車などを活用した配送モデルを取り入れることで、配送時間の短縮やコスト削減が可能になるでしょう。
複数の物流拠点を1つのセンターに集約することで、在庫管理や配送ルートの効率化を図ることができ、コスト削減とオペレーションの最適化が実現します。これにより、在庫の重複や無駄な輸送が減少し、リードタイムの短縮も可能です。たとえば地域ごとに分散していたセンターを集約することで全体の管理コストを削減し、顧客への迅速な対応ができるでしょう。
業務の効率化には自社の課題を正しく認識し、自社に合った戦略を選択することが大切です。また、定期的な効果検証とPDCAサイクルによる継続的な改善も忘れてはなりません。
※参考:国土交通省,物流・配送会社のための物流DX導入事例集
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物流センターは現代の物流を支える重要なインフラです。その役割と機能を理解し、効率化に取り組むことが企業の競争力強化につながると言えるでしょう。在庫の適正化、自動化の推進、システムの高度化、コラボレーションの強化など、さまざまな戦略を組み合わせながら最適な物流センター運営を目指していくことが求められます。
物流センターの改善は一朝一夕では実現できません。地道な努力の積み重ねが大きな成果につながるでしょう。本記事が物流業務に関わる企業の経営者や物流センターの運営者の一助となれば幸いです。