グリーン・バリューチェーンプラットフォームは、企業が環境に配慮した持続可能なバリューチェーンを構築するための支援を目的に、脱炭素化に役立つ様々な情報を発信する環境省の情報プラットフォームです。脱炭素経営を推進するための情報や事例なども提供されています。
近年では、エネルギー効率の改善、リサイクル可能な素材の選定、フードロス削減、低炭素交通手段の導入などが推奨されるだけでなく、業界別の取り組みを明確にし、企業同士のネットワーキングを促進することで、効果的な環境対策の実現を目指すことが求められています。
本章ではグリーン・バリューチェーンプラットフォームの基本的な概要、提供される情報、脱炭素経営が求められる背景などについて説明します。
「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」は、脱炭素経営に関する情報を発信する環境省のプラットフォームです。企業に向けて脱炭素化への取り組みに役立つ様々な情報が発信されています。
※参考:環境省,グリーン・バリューチェーンプラットフォーム
環境省は、グリーン・バリューチェーンプラットフォームで以下のような情報発信を行っています。
環境負荷を低減するための具体的な手法やステップを示した資料を開示し、企業による導入をサポートしています。
企業が自社の排出量を把握し、改善策を見つけるための支援ツールを提供しています。
脱炭素経営に成功した企業の事例を共有し、他の企業が参考にできるような情報を提供しています。
脱炭素に取り組む企業同士がつながり、知見を共有できる場を設置し、共同での取り組みを促進しています。
脱炭素経営に関するセミナーやワークショップを定期的に開催し、企業や関係者に対して最新の情報や技術を提供しています。また、中小企業向けのハンドブックや取組事例集も用意されています。
脱炭素化に向けた政府の施策や助成金、補助金に関する情報を発信し、政策を効果的に活用できるよう支援が行われています。
気候変動による影響は世界的に顕在化しており、特に温暖化が進行しています。日本においても過去100年間で1.3℃の気温上昇が確認されており、これに伴い、豪雨や猛暑、台風などの自然災害の頻度が上昇しています。(※)
極端な気象、海面上昇、生態系の変化などが深刻な問題であり、これに対処するための取り組みが必要です。
※出典:環境省脱炭素ポータル,カーボンニュートラルとは
2015年に採択されたパリ協定に基づき、各国は温室効果ガスの排出削減目標を設定しています。日本は、2030年までに温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減し、2050年までにカーボンニュートラル(実質的な温室効果ガス排出ゼロ)を達成する目標を掲げています。(※)
これに伴い、企業も脱炭素化を進めることが求められます。
※出典:環境省,パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(令和3年10月22日閣議決定)
消費者や投資家の環境問題に対する意識が高まっており、どの程度環境へ配慮しているかが企業の評価基準の1つになりつつあります。そのため、企業は持続可能性を重視する必要があります。
日本では、省エネ法や温室効果ガス排出量報告制度などにより環境への配慮が企業に課されており、エネルギー消費の効率化と温室効果ガス排出の削減が求められています。政府による環境規制や支援は強化されており、企業はこれに適応することが努力目標から義務へと移行しつつあります。
日本における地球温暖化対策の基本方針を定めた地球温暖化対策推進法の改正案が2024年3月に閣議決定されています。本改正では国内外で地球温暖化対策を加速するため、JCMクレジットの発行、管理に関する主務大臣の手続きなどを規定しました。
また、主務大臣に代わりこれらの手続きなどを行うことができる指定法人制度を創設する他、地域共生型再エネの導入促進に向けた地域脱炭素化促進事業制度の拡充が定められています。
この制度により地域レベルでの再エネ普及が強化され、地方自治体や企業が協力して脱炭素化を進めることが期待されています。
このような動きによって、企業から見ると脱炭素化の計画策定や報告義務が課せられる傾向が強まってきており、従来の経済的利益だけでなく環境への配慮や社会的責任を果たすことが求められます。
※参考:環境省,地球温暖化対策推進法と地球温暖化対策計画
※関連記事:サプライチェーン排出量とは?算定方法や削減に向けた取り組みを紹介
グリーン・バリューチェーンプラットフォームでは、業種別に脱炭素経営を推進するための具体的な取り組み事例が紹介されています。
低炭素交通手段、すなわち電動車両やハイブリッド車の導入、公共交通機関の利用を促進しています。また、物流プロセスを最適化するために、輸送効率を向上させるルート計画や輸送手段を集約化する取り組みを検討しています。これにより、輸送に伴う温室効果ガスの排出を大幅に削減することが期待されています。
高効率な断熱材や再生可能エネルギー設備を導入し省エネ建築を推進しています。また、環境に配慮した建設資材を選定し、施工時の廃棄物を削減する取り組みを進めています。
エネルギー効率改善の観点で生産プロセスのエネルギー使用を見直し、できる限り再生可能エネルギーの導入を促進しています。また、素材選定において環境負荷の少ない原材料を優先し、リサイクル可能な製品設計を意識しています。
環境に配慮した農産物や水産物の調達を行っています。さらにフードロスの削減を意識して、生産から販売までの工程ごとに廃棄物削減策を講じています。
サプライチェーンの透明性を確保するために取引先の環境への配慮状況を評価し、持続可能なサプライチェーンの構築を目指しています。また、環境に優しい商品を増やし顧客への啓発を行うことで、エコ商品・エコサービスの提供を進めています。
データ分析やAIを用いたエネルギー管理、業務効率化によって省力化を促進しています。データセンターのエネルギー効率改善や、クラウドサービスの運用における再生可能エネルギーの利用にも取り組んでいます。また、リモートワーク環境を整備し柔軟な働き方を実現することで人の移動を減らし、企業の脱炭素経営に間接的に貢献しています。
これら業界別の取り組みは業界固有の環境課題に応じたものです。企業はそれぞれが持つ強みや特性を活かして脱炭素化を進める必要があります。グリーン・バリューチェーンプラットフォームは、こうした業界ごとの取り組みを支援し、情報を提供する役割を果たしています。
グリーン・バリューチェーンプラットフォームは、環境に優しい持続可能なビジネスモデルを促進するため、脱炭素経営に関する情報を発信する環境省のプラットフォームです。企業は、バリューチェーン全体で環境負荷を低減する方法を検討し、資源の効率的な使用や廃棄物の削減を目指す必要があります。各業種で様々な取り組みを行っており、それぞれの業界で環境への影響を軽減し、持続可能な成長を実現しています。今回取り上げた具体例を参考に、自社の取り組み方について検討してみてください。