ラストワンマイル問題とは|現状や課題解決への取り組みをご紹介

ラストワンマイル問題とは|現状や課題解決への取り組みをご紹介

ラストワンマイルとは、物流の最終区間であり、商品が消費者の手に届くまでの最後の配送工程です。この区間は、物流倉庫から個人宅や店舗までの宅配に該当し、企業にとっては顧客満足度に直結する重要な接点でもあります。

EC市場の拡大とともに、消費者の利便性を追求するラストワンマイル配送の需要が急増しています。しかし、再配達によるコスト増や、都市部と地方それぞれが抱える交通問題、ドライバー不足など配送の最終区間にはさまざまな課題が残されているのが現状です。

本記事では、ラストワンマイルにおける現状と問題点、解決策について解説します。

この記事でわかること

  • ラストワンマイル領域で起こっている問題
  • 上記の解決の方向性

1. ラストワンマイルの現状と問題点

ラストワンマイルとは、物流の最終区間であり、商品が物流倉庫から消費者の手元に届くまでの配送工程です。この区間は、物流倉庫から個人宅や店舗までの宅配に該当し、企業にとっては顧客満足度に直結する重要な接点でもあります。


新型コロナウイルスの影響で物流需要が一時的に低下しましたが、巣ごもり需要やオンラインショッピングの普及を受けて急速に回復し、さらに拡大を続けています。特に、翌日配達や送料無料といった高付加価値サービスが一般化した結果、運送会社への負担が増大しました。それに伴い、物流コストの上昇や利益率の圧迫といった課題が深刻化しています。


そのため、効率性とサービス品質の両立が求められており、解決策の模索が急務です。以下で、ラストワンマイルの主な現状と問題点を解説します。


※参考:国土交通省,宅配の再配達の発生による社会的損失の試算について


関連記事▶物流効率化に向けた政府の取り組みとは?荷主企業に求められることも解説

再配達による物流コストの増加

国土交通省の調査によると、令和3年10月の再配達率は11.9%で、10個に1個の荷物が再配達となっています。この再配達が、物流コストを増大させている要因です。


ドライバーは不在時に荷物を持ち帰るだけではなく、再配達を行うために余計な走行距離や労働時間を費やさなければなりません。結果、運送会社には追加の燃料費や保管スペースが必要となり、全体的な利益率が圧迫されます。


※参考:国土交通省,宅配便の再配達率が微増

需要増による労働量の増加

近年のEC市場の急速な拡大により、ラストワンマイルの配送需要は著しく増加しています。その結果、配送ドライバーの労働量も増大し、再配達や配送先での待機時間の増加が、さらなる負担を引き起こしているのです。この負荷は、ドライバー不足を深刻化させるだけではなく、長時間労働による健康リスクの増加にもつながっています。

配達ドライバーの不足

日本の物流業界では、少子高齢化や厳しい労働環境が原因で、配達ドライバーの不足が深刻化しています。加えて、EC市場の拡大によって配送需要が急増し、ドライバーの労働負担は増大する一方です。この問題が解消されない限り、ラストワンマイルの物流コストと、サービス品質の維持が困難となるリスクがあります。

送料無料サービスによる利益圧迫

送料無料サービスは、ECサイト間の競争を勝ち抜くための重要な施策として普及していますが、その裏では運送会社への負担を生じさせています。特に、配送コストをECサイトや運送会社が負担する現状が続けば、経営の持続可能性に影響を及ぼしかねません。


また、利益率の低下は、運送会社がドライバーの待遇改善や新規雇用に投資する余力を奪い、ドライバー不足や業界の高齢化をさらに悪化させる要因です。

地域特有の交通麻痺

ラストワンマイルでは、都市部と地方それぞれに異なる交通問題があります。都市部では、交通渋滞や駐車スペースの不足が深刻です。配送車両が停車しづらく、配達効率の低下を招く要因となっています。


一方、地方では過疎地域への配送が問題視されており、人口が少なく配達件数が少ないため、配送コストの回収が難しい状況です。さらに、配送先までの距離が長いことで、時間と燃料の消費が増大し、採算性の悪化を引き起こしています。これら地域特有の課題が、効率的な配送を妨げる要因となっています。


2. ラストワンマイル問題への解決策

次に、ラストワンマイル問題への解決策を解説します。上記で解説した問題点を解消するためにも、ここで紹介する解決策を取り入れることをおすすめします。

1.受け取り方法の多様化

ラストワンマイルの効率化を図るため、受け取り方法の多様化が進んでいます。消費者は自宅だけではなく、コンビニや駅のロッカー、宅配ボックスといった選択肢を利用できるようになりました。また、玄関先に荷物を置いて配達を完了させる「置き配」も普及が進んでおり、利用者の利便性向上と物流効率の改善に貢献しています。

一方で、置き配における盗難や破損のリスク、セキュリティ対策の必要性といった課題も存在します。

2.配送方法の効率化

輸送網の集約や共同配送などによる配送方法の効率化も効果的です。複数拠点での運営は、管理コストの増加やドライバーへの負担増につながるため、物流拠点を統合することで運営効率を大幅に向上させることが期待できます。また、異なる運送会社の荷物を共同で配送することで積載率を高め、輸送効率を向上させる取り組みも有効です。


さらに、都市部における渋滞や駐車問題に対応する手段として、自転車や台車を活用する方法も注目されています。これにより、都市部での配送コスト削減が図れるとともに、環境負荷の軽減や地域の利便性向上にも寄与します。

3.配送ルートの最適化

配送ルート最適化システムを導入すると、交通状況や納品時間を考慮した最適ルートを自動で計画し、ドライバーの負担を軽減できます。また、積載効率を高めることで、ガソリン代や運行コストの削減も期待できます。


ある物流企業では、最適化システムを導入した結果、従来丸二日かかっていた配送ルート計画が数時間で作成可能となり、効率的な配車業務の実現に成功しました。


※参考:国土交通省,物流・配送会社のための物流DX導入事例集,p17

4.ロボットやドローン配送の導入

ロボットやドローンを活用した配送は、ラストワンマイル問題の解決に向けた注目の技術です。ドローンは空中を活用することで渋滞を回避し、配送時間の短縮を実現できます。


自動配送ロボットは、都市部での駐車スペース不足や地方の採算性の低さを改善する手段として期待されています。ただし、規制の整備や技術開発が必要であり、現在は実証実験が進行中です。今後の実用化に向けた検討が進められています。


3. まとめ

ラストワンマイル問題は、EC市場の成長とともに深刻化しており、効率的な配送が求められています。こうした現状を打破するためには、受け取り方法の多様化や配送ルートの最適化、さらに共同配送やロボット・ドローンの導入といった先進技術の活用が効果的です。

これらの取り組みを進めることで、物流コストの削減と配達品質の向上が期待できます。新たな配送手法を積極的に導入し、効率化と持続可能な物流体制の構築を目指しましょう。



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