荷待ち時間の削減で物流業界全体の改善へ!荷主企業が取り組める効率化対策

荷待ち時間の削減で物流業界全体の改善へ!荷主企業が取り組める効率化対策

荷物の積み降ろしにともない、トラックドライバーが待機する「荷待ち時間」。これはドライバーの長時間労働を招くほか、労働環境の悪化による人材不足にもつながるとして、物流業界全体で大きな問題とされています。


しかしこれまで、荷主企業や配送事業者がその実態を把握できておらず、なかなか改善されてこなかったのが実情です。


近年では国の制度改正が進み、2024年の働き方改革関連法の改正では、ドライバーの時間外労働などに上限規制が導入されました。こうしたドライバーの労働環境改善の動きにともない、荷主企業も荷待ち時間の改善に向けた取り組みが必要不可欠です。


この記事では、荷待ち時間の発生原因および問題点、さらに改善に向けた国の制度改正の概要を紹介します。また、荷主企業が取り組むべき業務効率化の具体策、荷待ち時間削減の成功事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事でわかること

  • 荷待ち時間の発生原因および問題点
  • 改善に向けた国の制度改正の概要
  • 荷主企業が取り組むべき業務効率化の具体策
  • 荷待ち時間削減の成功事例

荷待ち時間とは

荷待ち時間とは、荷主や物流施設の都合により、ドライバーが待機させられる時間のことです。具体的には、荷物の積み込み・積み降ろし待ちの時間、指示待ちの時間などが該当します。


ドライバーの時間と場所を拘束するため、荷待ち時間を休憩時間として扱うことはできません。特定の作業を行なっていなくても、労働時間としてカウントされます。


2021年に国土交通省が行なった調査によると、1運行当たりの荷待ち時間は平均1時間34分でした。そのうち、荷待ち時間が30分に満たない割合はわずか20.3%で、残りの79.7%では30分を超える荷待ち時間が発生しています。


そのうち1時間を超えるケースは50.1%、2時間を超えるケースは17.7%にものぼっています。

参照元:トラック輸送状況の実態調査結果(概要版)|国土交通省


次の章では、こうした荷待ち時間によって生じる物流業界全体のさまざまな問題について解説します。



荷待ち時間の発生による問題・課題

荷待ち時間の発生は、ドライバーはもちろん、ドライバーを雇用する配送事業者、さらに物流業界全体にとっても大きな問題です。

ここでは、荷待ち時間が発生することで起こる問題や課題についてみていきましょう。


◇配送ドライバーの労働環境問題

荷待ち時間によって労働時間が長くなると、疲労の蓄積や睡眠不足など、ドライバーの健康面にも悪影響がおよぶおそれがあります。


また健康を害する状態で業務を続けると、運転中の事故リスクも高くなってしまいます。


このような労働環境のもとでは、ドライバーの安全性を十分に確保できません。万が一大事故に発展した場合、取返しのつかないことになってしまいます。


◇配送事業者の課題

荷待ち時間に対して、ドライバーを雇用する配送事業者も対応を求められています。


国は荷待ち時間の改善に向けて動いており、2017年7月からは配送事業者に乗務記録の記載を義務付けています(荷待ち時間が30分を超える場合)。


さらに、2024年4月からはドライバーの拘束時間の上限が厳しくなりました。そのため配送事業者は、改正後の基準に準拠した対応が必要です。


ここで取り上げた国の施策については、本記事内「荷待ち時間問題への国の対応」でも紹介します。


◇物流業界全体の問題

荷待ち時間によるドライバーの労働環境の悪化は人材不足の一因であり、物流業界にとっても大きな問題です。また、荷待ちの発生による配送効率の低下も、物流業界全体にとってマイナスであることに疑う余地はありません。


そのため、荷待ち時間の発生は決してドライバー個人の問題ではありません。配送事業者・荷主企業など、物流業界全体で改善に取り組む必要があるのです。


実際に、2023年6月に策定された「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」では、荷主事業者に対して荷待ち・荷役の作業時間を2時間以内に収めるようルールが明確化されました。また、荷主企業も荷待ち・荷役時間を把握し、2時間を超える作業をさせてはならないとしています。



荷待ち時間が発生する4つの原因

多くの問題を引き起こす荷待ち時間は、発生原因もさまざまです。

いずれもドライバー個人が改善できるものではないため、荷主企業側が改善に取り組む必要があります。


ここでは、荷待ち時間が発生する原因を4つ紹介します。


◇物流施設のオペレーション

まず、ドライバーが荷物の積み降ろしを待つ、物流施設のオペレーションがうまくいっていないことが考えられます。


例えば「生産が間に合わない」などの理由で出荷体制が整っていないために、ドライバーがトラックに商品の積み込みを行なえず、荷待ち時間が発生するケースは少なくありません。


このような場合、根本原因である物流施設のオペレーション効率や人手不足などを改善する必要があるでしょう。


◇物流施設のキャパシティ

トラックドライバーは、基本的に物流施設内にある「トラックバース」と呼ばれる場所で荷物の積み降ろしを行ないます。施設によっては、トラックバースの少なさが荷待ち時間発生の原因となっているケースがあります。


仮に物流施設側の出荷・荷受け作業の体制が整い、ドライバーが到着していても、トラックバースが空いていなければ順番待ちとなってしまうでしょう。特に配送車両が集中しやすい時間帯では、荷待ち時間が長くなりがちです。


このように、ドライバーが指定時間に物流施設に到着しても、施設側の事情で荷待ち時間が発生するケースも珍しくありません。


◇バラ積み商品の存在

パレットを使用せず、荷物のバラ積み・バラ降ろしを行なうケースが多いことも、荷待ち時間が長くなってしまう原因の一つです。


荷物の形状などの事情でパレット積みができないこともありますが、なかには積載量を増やす目的でパレットを使用しない事業者も存在します。


また、バラ積み・バラ降ろしは基本的に手作業で行なうため時間がかかります。そのぶん荷待ち時間もより長くなってしまうのです。


◇荷主の理解が不十分

ここまで紹介してきたように、現場ではさまざまな原因によって多くの荷待ち時間が発生しています。しかし、この実態を正確に把握できていた荷主企業はごくわずかではないでしょうか。


荷主側の理解不足こそが荷待ち時間発生の大きな原因である一方、現状の理解が進まないままでは、改善も難しかったのが実情です。


しかし法改正が進み、具体的な基準が設けられたことで、対応すべき点が明確になったともいえるでしょう。



荷待ち時間問題への国の対応

物流業界全体に影響をおよぼす荷待ち時間の改善を求め、国はさまざまな対応策を講じてきました。ここでは、荷待ち時間の削減に関連して制定された施策の概要を紹介します。


◇荷待ち時間の記録を義務付け

2017年7月より、荷主都合で30分を超える荷待ち時間が発生した場合には「乗務記録」の記載が義務化されました。


記載項目は「集貨地点等、集貨地点等への到着・出発日時、荷積み・荷卸しの開始・終了日時」などで、最低1年間の保存が必要です。


なお対象となるのは、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上のトラックに乗務したケースです。

参考:荷待ち時間の記録義務付けについて|国土交通省


◇荷待ち時間の情報窓口を設置

厚生労働省は、2022年の「改善基準告示」の改正にともない「荷主特別対策チーム」を編成し、ドライバーが長時間の荷待ちに関する情報を提供できるメール窓口を新設しました。


ここで収集した情報をもとに、労働基準監督署が荷主企業などに対して要請を行なえる体制を整備しています。


なお、受付対象となる法律は「労働基準法」および「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」です。


◇「物流総合効率化法(物効法)」の改正

2024年2月に「物流総合効率化法(物効法)」の改正案が閣議決定され、荷主企業および配送事業者が取り組むべき措置の判断基準が定められました。


非効率な荷役作業の効率化など、荷待ち時間短縮につながる内容が含まれています。


これにともない荷主企業が行なうべき取り組みについては、次の「荷待ち時間・荷役時間削減のために荷主企業ができる効率化への取り組み」内で詳しく紹介します。


◇労働基準法の改正

働き方改革関連法の改正により、2024年4月1日から時間外労働の上限規制が導入され、ドライバーに適用される「自動車運転者業務」のルールが変更になりました。


具体的には、時間外労働における年960時間の上限規制が新たに適用されています。また、1日の拘束時間を原則13時間以内とし、休息時間は継続して11時間以上の付与を目標とするなどの新たな基準が定められました。


違反した事業者には罰金も課されるため、基準をしっかり確認し、遵守することが重要です。

参照元:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント|厚生労働省



荷待ち時間・荷役時間削減のために荷主企業ができる効率化への取り組み

前述のとおり、荷待ち時間・荷役時間の発生にはさまざまな要因があり、その削減には業務全体の効率化が欠かせません。ここでは、荷主企業が取り組める具体的な対策を紹介します。


◇現状の荷待ち時間・荷役時間を把握する

まずはドライバーの荷待ち時間・荷役時間や付帯業務にかかっている時間を荷主企業が把握し、現状を知ることが重要です。


そのためには、発荷主企業(荷物の出し手)と着荷主企業(荷物の受け手)の連携が不可欠です。互いに積極的な情報共有をすることが、業務全体の改善にもつながります。


ただし発荷主側の企業から、顧客でもある着荷主企業に改善を持ちかけることは難しいのではないでしょうか。そのため、着荷主側の企業から積極的な情報共有や改善提案を行なうことで、よりスムーズな連携ができるでしょう。

参考:SOMPOインスティチュート・プラス「物流の2024年問題と荷待ち・荷役時間」


◇予約管理システム(バース予約システム)を導入する

ドライバーが荷物の積み降ろしを予約できる予約管理システムの導入は、荷待ち時間発生の原因でもあるトラックバースの順番待ち改善につながります。


また、物流施設側の業務負担の軽減・作業の効率化など、ドライバーの待ち時間を削減する以外のメリットも少なくありません。


予約管理システムをはじめとする物流DXの導入は、単なるデジタル化・機械化ではなく、オペレーション改善や働き方改革を実現するものとして、国も推奨しています。

参考:国土交通省「物流DXの推進に関する取組み」「『総合効率化計画』認定申請の手引き2024年4月改訂版(2020年度法改正準拠)」


次の章では、物流DXシステムの導入により“荷待ち時間ゼロ”を実現した荷主企業様の事例を紹介します。


◇荷役作業・付帯作業の最適化

現場での作業効率を上げるには、業務の仕組みやシステムの最適化も重要です。


具体的には、バラ積みからパレット積みに変更したり、ピッキングや検品などの付帯作業に自動システムを導入したりすることが挙げられます。


作業時間の削減だけでなく、人的ミスの軽減などのメリットも期待できるでしょう。



ハコベルの物流DXシステム導入で“荷待ち時間ゼロ!”山田化学株式会社様の事例紹介

先述のとおり、物流業界のDX化は、業界のオペレーション改善や働き方改革に有効な手段の一つとして国も推奨しています。


ハコベル株式会社は、荷待ち時間の削減など物流業界の効率化をお手伝いする物流DXシステムを提供している企業です。


ここでは、実際にハコベルの物流DXシステムサービスを導入し、“荷待ち時間ゼロ”を実現した山田化学株式会社様の事例を紹介します。


◇サービス導入の背景

山田化学株式会社様では、もともと採用していた2つの配送方法のうち、個別手配のチャーター便について「手配状況を関係者に共有できない」という課題を抱えていました。


そのため物流課との連携がうまくいかず、担当者様はチャーター便の手配作業に追われるだけでなく、本来の生産管理業務にも手がまわらない状況が続いていたといいます。


◇実施内容

そこで2024年2月より、チャーター便で「ハコベル配車管理」を導入いただきました。


「ハコベル配車管理」は、配車管理業務のデジタル化により、可視化された情報をリアルタイムに共有し担当者間の連携をスムーズにするシステムです。


導入開始の半年ほど前に当システムを紹介した際、「抱えていた課題の解決がすぐにイメージできた」とのお声をいただいています。その後、提携業者様への説明などを経て、導入に至りました。


◇サービス導入後の変化

サービス導入後は、チャーター手配の状況がリアルタイムで共有できるようになり、作業スケジュールの指示も出しやすくなったそうです。


また“トラックの荷待ち・荷役時間ゼロ”の実現や、社員の残業時間の大幅な削減など、大きな効果を実感いただいています。


山田化学株式会社様の導入事例については、以下の記事で詳しく紹介しています。


関連記事▶配車から出荷、運送会社までシームレスに連携し、荷待ち・荷役時間ゼロ&残業削減を実現 「ドライバーから選んでもらえる荷主になるための足掛かりをつかめた」山田化学株式会社



まとめ:荷待ち時間の削減・物流効率化にDXシステムを導入しよう

さまざまな要因から発生する荷待ち時間は、実際に待機することになるドライバーだけでなく、物流業界全体にとって大きな問題です。


しかし近年では、法制度の改正やDXシステムの導入による効率化が推奨されるようになり、今後は改善に向かうことが期待できるでしょう。


そして荷主企業には、現状の問題を把握したうえで、作業の最適化や有効なシステムの導入など、荷待ち時間削減のための対応が求められています。


ハコベル株式会社では、物流の効率化を目指す荷主企業様向けのDXシステムを提供しています。


本記事内でも導入事例を紹介した「ハコベル配車管理」のほか、配車計画を最適化・標準化する「ハコベル配車計画」、配送品質の改善に役立つ「ハコベル動態管理」と、課題ごとに組み合わせられるシステムを用意しています。それぞれのサービスの紹介は、以下のページからご覧ください。

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