過積載とは?罰則内容や責任の所在・積載量を守るための対策

過積載とは?罰則内容や責任の所在・積載量を守るための対策

運送業務を行なう際には、過積載に注意が必要です。しかし、過積載の定義や罰則の内容、責任の範囲などがよくわからないという方もいるでしょう。

 

過積載とは、道路運送車両法に定められた最大積載量を超える量の荷物を載せた状態で、走行することです。過積載と判断されると、運転者だけでなく事業者や荷主も罰則の対象となるため、荷物にかかわるすべての方が罰則内容や最大積載量などを知っておく必要があります。

 

本記事では、過積載の定義や最大積載量の目安、罰則の内容について詳しく解説します。過積載を防ぐための対策も紹介しますので、日々の物流業務にお役立てください。

 

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この記事でわかること

  • 過積載の定義や最大積載量の目安、罰則の内容について
  • 過積載を防ぐための対策について

過積載とは

過積載(かせきさい)とは、トラックや軽貨物などの運送目的の車両に、最大積載量を超える荷物を載せて走行する行為のことです。


過積載で検挙されると、道路運送車両法や道路交通法、貨物自動車運送事業法などの法律に基づき、罰則を受けることになります。政府統計によると、2023年に告知・送致された積載違反の件数は2,840件でした。


運送業においては、多く積載するほど一度の運送で多くの荷物を運べるため、効率良く業務を進められます。しかし、過積載走行は危険性が高く、大きな事故を引き起こす可能性があり、運転者の身の安全にもかかわります。


過積載は運転者だけでなく、事業者や荷主も罰則の対象となるため、運送業に携わる方は最大積載量を理解し、安全に運行できるように注意しなければなりません。



過積載が起きる背景

前述のとおり、過積載は危険性が高く、罰則の対象となる違法行為です。しかしながら、過積載の状態で走行する車両はあとを絶たないのが現状です。過積載はなぜ起きてしまうのでしょうか。


過積載が起きる背景の一つに、運送業の規制緩和による過当競争が挙げられます。1990年に、それまで免許制だった運送業は許可制へと変わり、運賃に関する制度も変更されるなど規制緩和され、運送会社の数が急増しました。


需要と供給のバランスが崩れたことにより、供給側である運送会社では、差別化として値下げをする傾向が強まります。


コストを抑えて収入の減少を防ぐためには、一度の運行でなるべく多くの荷物を運ばなくてはなりません。そのため、利益追求を優先して過積載をするケースがあります。



過積載に許容範囲はない

過積載に許容範囲はなく、最大積載量を少しでも超えた場合は過積載として検挙されます。たとえ1kgのオーバーであっても、多く積んで走行した時点で違反になります。


しかしながら、1割程度の過積載では、警察官が目視で判断するのは困難です。そのため、「少しくらいの過積載では検挙されない」という誤った認識を持つ方もいるかもしれませんが、あくまでも検挙されづらいだけであり、違反に変わりありません。


計測器を使用した取締りが行なわれた場合は、決められた最大積載量を少しでも超過していれば検挙され、罰則を受けることになります。



最大積載量の目安

前述のとおり、過積載には許容範囲がないため、最大積載量を守ることが非常に大切です。では具体的に、最大積載量とはどのくらいなのでしょうか。


最大積載量は、次の計算式で求められます。


・最大積載量=車両総重量-車両重量-乗車定員(1人当たり55kg×人数)


例えば、以下の条件で乗車定員が3人の場合、最大積載量は1,335kgです。


・7,000kg(車両総重量)-5,500kg(車両重量)-165kg(定員3人×55kg)=1,335kg(最大積載量)


また、車検証には最大積載量や車両総重量、車両重量、乗車定員が記載されています。乗車前に必ず確認し、最大積載量を超えないように注意しましょう。



過積載にかかわる責任の所在

過積載が発覚した場合は、運転者・事業者・荷主が責任を負うことになります。運搬を指示した事業者や荷主も対象となるため、注意しましょう。


罰則の重さは、最大積載量の超過分や事案の悪質性により異なります。それぞれに科される罰則のおもな内容は、下表のとおりです。


運転者

重量測定受任義務、積荷の現場取り下ろし、警察官による通行指示、違反点数および反則金、免許停止、懲役

事業者

公安委員会による指示、車両の使用制限処分、懲役、罰金、事業許可の取消処分、運行管理者の資格の取り消し

荷主

再発防止命令勧告、懲役、罰金、協力要請書や警告書の発出、荷主勧告の発動

参考:過積載は、荷主にも罰則が適用されます!!しない・させない・過積載!|国土交通省


上記のように、事業者や荷主に対しても罰金や事業許可の取り消しなどの罰則があります。安全に運行し続けるためには、荷物にかかわるすべての方が過積載を防ごうと意識することが大切です。



過積載の罰則

前述のとおり、過積載では運転者・事業者・荷主に罰則が科されます。ここでは、罰則の内容について詳しく解説します。


◇運転者への罰則

運転者に対しては、道路交通法に基づいて違反点数および罰則が科されます。最大積載量の超過割合による罰則内容の違いは、下表のとおりです。


最大積載量超過割合

大型車

違反点数

罰則

普通車

違反点数

罰則

5割未満

2点

3万円の反則金

1点

2万5,000円の反則金

5割以上10割未満

3点

4万円の反則金

2点

3万円の反則金

10割以上

6点

・10万円以下の罰金または6ヵ月以下の懲役

・免許停止

3点

3万5,000円の反則金

参考:過積載は、荷主にも罰則が適用されます!!しない・させない・過積載!|国土交通省


大型車では、行政処分前歴のない方が違反点数6点を加算された場合、30日間の免許停止となります。そのほか、過積載による事故を起こした場合は、自分だけでなく所属している企業が処分されるケースもあります。


また、民事訴訟においては、運転者に対しても損害賠償が生じる可能性があるため注意が必要です。


◇事業者への罰則

運送事業者が過積載を指示・容認した場合は、貨物自動車運送事業法に基づいて車両停止処分が行なわれます。


最大積載量の超過割合・違反回数ごとの罰則内容は、下表のとおりです。


初回

2回目

3回目

4回目

過積載の程度が5割未満

違反車両数×10日

違反車両数×30日

違反車両数×80日

違反車両数×200日

過積載の程度が5割以上10割未満

違反車両数×20日

違反車両数×50日

違反車両数×130日

違反車両数×330日

過積載の程度が10割以上

違反車両数×30日

違反車両数×80日

違反車両数×200日

違反車両数×500日

参考:過積載は、荷主にも罰則が適用されます!!しない・させない・過積載!|国土交通省


加えて、過積載運行を繰り返すと、車両停止期間の大幅延長や事業許可の取り消しなどの処分が行なわれます。過積載により重大な事故を起こしたり、過積載運行が恒常的に行なわれていたりするなど悪質な場合は、運行管理者資格の取消処分を受ける可能性もあります。


社会的な信用を失うことにもつながるため、防止に向けた対策を徹底しましょう。


◇荷主への罰則

荷主に対しては、道路交通法と貨物自動車運送事業法に基づいて罰則などが科されます。


道路交通法第58条の5第1項では、過積載になることを知りながら、運転者に対して車両への積載の目的で、積載物を売り渡し・引き渡ししてはならないと定められています。


違反した荷主が過積載の要求を繰り返すおそれがある場合、警察署長から「再発防止命令」が出されます(道路交通法第58条の5第2項)。再発防止命令に違反した場合の罰則は、6ヵ月以下の懲役または10万円以下の罰金です。

参考:e-Gov法令検索「道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)」


貨物自動車運送事業法については下表のとおり、協力要請書や警告書の発出、荷主勧告の発動が行なわれます。


措置の内容

措置の発出・発動条件

協力要請書

・運送事業者の違反に際し、再発防止のために荷主への協力要請が必要な場合

警告書

・協力要請書を3年間で2回出された場合

・荷主勧告には至らないが、過積載にあたり荷主の関与が認められる場合

荷主勧告

・警告に従わず、3年以内に再び過積載運行をした場合

・運送事業者の過積載運行について、荷主が指示するなどの主体的な関与が認められた場合


以前は警告書の発出や荷主勧告の発動を行なう要件として、過去3年以内の協力要請書の発出が必要とされていました。しかし、制度改正によって、協力要請書の発出を経ずに行なうことが可能になりました。


積み込み前に貨物量を増やすような急な依頼をする、荷主が事業者に対し違反行為を指示・強要するなどの行為があった場合は、荷主勧告が発動される可能性があります。


荷主勧告が発動されると、当該荷主名の公表および事案の概要が公表されます。



過積載における5つの危険性

ここまで、過積載の概要や罰則内容について解説しました。過積載に対して厳しい罰則が科せられる理由は、過積載運行が重大な事故につながる危険性があるためです。


過積載にはどのような危険があるのか、おもに考えらえる5つの危険性について確認しておきましょう。


◇1:ブレーキが利きづらく制御が難しい

過積載車両はブレーキが利きづらくなり、制御が難しくなります。トラックは車両総重量をもとにブレーキの制動力を設計されており、過積載の状態では想定の制動力を上回ってしまうためです。


過積載運行では、ブレーキを踏み込んでから停止するまでの制動距離が伸びるため、急には停止できません。追突事故などを引き起こす要因となるため注意しましょう。


特に下り坂は加速しやすく、ブレーキを踏んでも十分に減速できない可能性があります。さらに、熱によってブレーキが利きづらくなる「フェード現象」にも注意が必要です。


◇2:車両のバランスが取りづらい

過積載車両はたくさんの荷物を積み込むため、積荷の高さが高くなってしまいがちです。そうなると重心が高くなり、左右の重量バランスも取りづらくなります。


重量バランスが悪いと、以下のようなリスクがあります。


  • 走行時の安定性の悪化
  • カーブでの横転
  • 対向車線へはみ出し
  • 積荷の荷崩れ


上記のような場合は荷物の破損だけでなく、道路やほかの車両に被害がおよぶ甚大な事故へと発展する可能性もあります。


◇3:衝撃力が大きく、重大な事故につながりやすい

過積載車両は車両自体に重量があり、前方の車などに衝突したときの衝撃が大きくなるため、重大な事故につながりやすくなります。前述のとおり、スピードの制御がしづらいことやバランスが取りづらいことも、事故を引き起こす要因となるため注意が必要です。


また、過積載はカーブで横転などをした際にも、当該車両や運転者だけでなく、周辺の車両や通行人を巻き込む重大事故を引き起こす危険性があります。


◇4:車両の傷みが早くなる

過積載では、車両設計時に想定されていた重量を超えるため、車両にも大きな負担がかかります。これにより、車体や車軸、フレーム、サスペンションなど、あらゆる部品の損傷・故障を引き起こすことになりかねません。


過積載によるダメージでタイヤが摩耗したり、パンクしたりするといったケースも考えられます。買い替えや修理などで余計なコストがかかるだけでなく、走行中の故障が事故につながる危険性もあります。


事故を防ぐだけでなく車両の寿命を長くするためにも、過積載の防止対策は必要です。


◇5:道路や橋などの劣化につながる

過積載は車両だけでなく、道路や橋にもダメージを与えて寿命を縮めてしまいます。


道路は、一定の寸法や重量の車両が通行することを想定して設計されているため、過積載車両が通行すると想定以上の負荷がかかり、路面や橋にひび割れなどが出ることがあります。


国土交通省の資料によると、全交通のうち0.3%の過積載車両が、道路橋の劣化に与える影響の約9割を占めているのが現状です。道路の安全を守るためにも、運転者・事業者・荷主のそれぞれが過積載を防ぐ意識を持たなければなりません。

参考:国土交通省「大型車両の通行適正化の取組について」



過積載の取締り事例

国土交通省や警察、高速道路株式会社などでは、過積載を防ぐための取り組みを強化しています。


2020年11月5日には、国土交通省・警察・高速道路株式会社が合同で首都圏に流入する過積載車両を一斉に取締る「首都圏大規模同時取締り」を実施しました。


取締りは全20ヵ所で実施され、車両83台を実際に計測し、このうち39台に指導警告等を行なっています。


また、2023年11月16日には中国運輸局による、トラックの過積載防止キャンペーンも行なわれました。


実施内容は、運行するトラックの運転者へのチラシ・グッズの配布や、違反車両の取締りなどです。実際に違反が疑われた13台のトラックのうち、過積載の車両2台が見つかっています。



過積載を防ぐための3つの対策

危険な過積載を防ぐには、日頃の対策が重要です。ここでは、過積載を防ぐための3つの対策を紹介します。


◇1.自重計で積荷を計測する

過積載を防止するには、自重計を使った積荷の計測が有効です。自重計とは、トラックなどの荷台の下部に設置されている、積載量を計測するための装置です。出発前に積荷の重量を計測すれば、積載物の正確な重さを確認できます。


積載量を守って運行していることを確認できるよう、計測した積載量は日付や車両番号とともに記録しておきましょう。積載状況を写真で撮影しておくこともおすすめです。万が一、過積載が起きてしまった際も、記録しておけば早い対応が可能になります。


◇2.目視で積載量を確認する

運行前には、目視で積載量を確認することも大切です。自重計での計測ほど確実性はありませんが、自重計を導入する手間やコストがかからず、すぐに対策できます。積載を済ませた状態で、サスペンションの下がり具合や荷台のへこみ具合を確認します。


ただし、素人目での判断は危険です。正確な積載量を認識できていない状態では、目視での確認ができません。その場合は、自重計で計測して積載量を確認しましょう。


◇3.監督者を設ける

最大積載量を守っていることを確認する監督者を設けるのも、有効な対策の一つです。


運転者が積載量を確認する場合、業務量の増加や時間に追われているなどの理由により、確認が疎かになります。


監督者を設けてダブルチェックを徹底すれば、確認漏れによる過積載を未然に防げます。安全に運行するためにも、過積載防止の責任者として監督者を設けることも検討しましょう。



まとめ:過積載の危険性を理解し防止策の徹底を

過積載とは、道路運送車両法で設定している最大積載量を超過した状態で走行することです。たとえ1kgでも最大積載量を超過して走行すると、罰則の対象となります。


過積載はかかわった運転者・事業者だけでなく、荷主に対しても厳しい罰則が科されるため、荷物にかかわるすべての方が、最大積載量を理解したうえで過積載の防止策を徹底するようにしましょう。


また、過積載が起きる原因としては、業務効率化や行きすぎた利益の追求なども考えられます。荷主としても過積載の危険性を理解して、安全で無理のない運行計画を立てましょう。


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