TMSとは何か?求められる理由やメリット・導入のポイントを解説

TMSとは何か?求められる理由やメリット・導入のポイントを解説

近年の物流業界は需要が増加傾向にあり、今後も増え続けることが予測されています。自社の売上を拡大していくためには、需要の増加に対応していく必要があるでしょう。

しかし慢性的な人手不足や労働者の高齢化、燃料費の高騰によるコストの増大など、課題が山積みとなっているのが現状です。これらを解決することが急務となっています。

このような物流業界の課題解決に効果を発揮するのが、TMS(輸配送管理システム)です。TMSでは、各業務を適切に管理し効率化を図ることができます。また、業務を可視化したりコスト削減を実現したりすることも可能です。

本記事では、TMSの基本的な定義、求められる理由、導入のメリットなどについて解説します。

この記事でわかること

  • TMSの基礎知識
  • TMS導入・活用のポイント

1. TMSとは

TMSの基本的な定義、TMSの機能について解説します。

TMSの定義

TMS(Transport Management System)とは、物流業務の輸配送に関する各フェーズを管理し効率化を図る「輸配送管理システム」です。

例えば、効率の良い配送ルートや配車を自動で計画したり、コスト管理や進捗管理を行ったりすることができます。TMSを活用した場合、物流業務の効率化、生産性向上、コスト削減、品質の確保などが期待できるでしょう。

TMSの機能

TMSでは、商品の出荷から到着までの輸配送に関する業務をトータルで管理します。TMSの主な機能は、次の4つです。

主な機能

説明

配車管理

荷物の量、納品時間、納品先などの情報から、最適な車両と配送ルートを自動で構築する。

動態管理

GPSを利用して道路状況や車両位置をリアルタイムに把握できる。

送り状番号から荷物の追跡と状況を確認できる。

コスト管理

車両の燃費計算やリース費用などの車両コストの管理ができる。

走行時間や走行距離、時間帯による通行料などの運賃計算ができる。

拡張機能

TMSに関連する周辺システムと連携し、物流プロセス全体の効率化に貢献できる。

走行データから自動で運転日報を生成する。



4つ目の拡張機能については、バース管理システムとの連携などが考えられます。

TMSの配車管理機能で作成した情報をバース管理システムに連携すれば、バースの予約登録を自動で作成できるようになり、予約作業の省力化や荷待ち時間削減につながります。TMSと連携可能なバース管理システムの1つである「ハコベル トラック簿」を活用することで、蓄積された実績データの分析結果を配車計画の改善に反映させることもできます。

その他にも、WMSと連携させることで倉庫の出荷作業の進捗度合いを反映し、配車計画を柔軟に変更することができるといったメリットも挙げることができます。

トラック予約/受付サービス(バース予約システム)ハコベル トラック簿」

※関連記事:物流システムの全体像|覚えておきたい6大機能と主要システム


2. TMSが求められる理由と重要性

TMSが求められる理由は、輸配送業務の多くの課題の解決に役立つからです。課題を適切に解決し、増加する物流需要に対応していくことが、今後の企業成長につながると言えるでしょう。

ここでは、輸配送業務の主な課題やTMSの重要性について解説します。

輸配送業務の主な課題

輸配送業務で実際に発生している課題について説明します。

人材の不足

輸配送業務では慢性的な人材不足に陥っており、労働力が低下しています。労働力が低下すると品質が下がったり配送が遅延したりするなど、業務に大きな影響を及ぼす可能性があります。

燃費コストの増加

エネルギー需要の高まりや石油価格の高騰など、燃費コストが増加しています。利益を確保するためには、燃費コストの増加に対処していく必要があります。

労働環境の悪化

さまざまなサービスを展開することで、労働者に負担がかかっています。例えば再配達、翌日配送、到着日指定などです。これらのサービスを実現するため深夜労働や長時間労働が常態化しており、労働環境が悪化していると言えるでしょう。

時間外労働の割増賃金引き上げ

労働基準法の改正により、中小企業の時間外労働の割増賃金率が大企業同様50%に引き上げられました。(※)労働時間の見直しや人件費の高騰に対応する必要があります。

※参考:厚生労働省,月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます

ビジネス面でのTMSの重要性

物流業界では今後さらに需要が高まる傾向にあります。貨物1件あたりの貨物量が減少する一方で、物流件数はほぼ倍増しており、物流の小口多頻度化が急速に進行しています。(※)

需要の高まりをチャンスと捉え今後のビジネスを有利に展開していくには、TMSの活用が欠かせません。TMSを活用すれば、輸送計画や配車手配に関して人に依存しない仕組みを実現できます。業務の効率化や時間外労働を抑えることができコスト削減につながるでしょう。

※参考:経済産業省,我が国の物流を取り巻く現状と取組状況,p12


3. TMSを導入した場合のメリット

輸配送業務の課題解決にはTMSの導入が効果的です。TMSを導入し、今までの業務の進め方を変えることで解決が可能となるでしょう。

ここではTMSを導入した場合、どのようなメリットがあるのかを解説します。



メリット1.配車業務の標準化

属人化された業務では配車担当者の作業手順に左右されてしまいます。システム導入時に業務を標準化することで無駄な作業や非効率な手順が可視化され、最適な配車方法を社内で共有できます。

メリット2.輸送計画の最適化

物流の配送ルート、ドライバーの手配、運送費用などの各種条件から、最適な輸送計画を割り出すことが可能です。これまでのように熟練者の勘や経験値に頼ることなく、誰でも効率の良い計画を立てることができます。

結果的に業務の属人化を抑制し、精度の高い輸送計画を安定的に作成できる見込みが立ちます。

メリット3.配車の自動化

最適な配車計画を素早く自動で立案することが可能です。業務の効率化だけでなく、配車担当者の負担軽減にもつながるでしょう。経験の少ない担当者でも即戦力として活躍できれば、社内で業務負荷を分散できるようになります。

メリット4.運行のリアルタイム監視

各車両の現在の運行状況をリアルタイムに監視が可能です。事故や渋滞に遭遇した場合など、トラブルが発生した際に迅速なフォローができます。

また、納品先から到着時間の問い合わせが入る際にもドライバーに問い合わせを行う必要がなくなるため、ドライバーは運転に集中できるようになります。

メリット5.リードタイム短縮

リードタイムとは、ユーザーが商品を発注してから手元に届くまでの日数です。運送管理を効率化することで無駄を省き、リードタイムの短縮が可能となります。

メリット6.コスト削減

輸送には有料道路などの通行料、車両の燃料費、ドライバーの賃金などさまざまな費用がかかります。これらの費用をデータ化し最適な計画を立てることで、コスト削減につなげることが可能です。

また、当初の計画と実績の差異を分析して過剰なコストが発生していた部分を定量的に把握することができるようになります。

※関連記事:動態管理とは?荷主の立場で動態管理システムを活用するメリットを解説

4. TMS導入のポイント

TMSを導入する場合、失敗しないためのポイントを把握しましょう。以下に意識すべきポイントをまとめているので参考にしてください。

自社に合ったシステム形態を決める

TMSのシステム形態は、クラウド型とオンプレミス型に分けられます。自社に適した形を選択することが重要です。

システム形態

説明

クラウド型

インターネット上にシステムが存在する形態。

自社にサーバーを構築したり管理したりする必要がないため、導入コストを抑えることができる。

ただし独自のカスタマイズに制限が設けられ、一般的な機能しか使えない可能性もある。

オンプレミス型

自社にサーバーを構築し、システムをインストールする形態。

業務に合わせてシステムのカスタマイズができる。

ただし導入コストが高額で、導入後の保守管理も必要となる。


システムの操作性と使いやすさ

TMSを導入した場合、利用者が使いやすいシステムであることが重要です。操作性が悪いと業務効率に影響してしまうためです。直感的で、誰でも操作が簡単に行えるシステムを選ぶ必要があるでしょう。

また操作が簡単な場合は、導入時のトレーニングや教育にかかる時間を少なくできることもポイントです。

既存システムとの連携

社内で既に稼働しているシステムとの連携が可能かどうかを確認することは重要です。TMSを導入することで、既存システムに負荷がかかったりトラブルが発生したりするのは避ける必要があります。

問題なく連携ができるかどうかを事前に確認しておきましょう。

システムの選び方

システムの選び方としては、選定ポイントや導入フローに注意する必要があります。

まず、選定時には業界や業務の特性に合わせた配車計画のアルゴリズムを実装できるかどうかに注目しましょう。併せて、そのようなカスタマイズに柔軟に対応してくれるシステムベンダーかどうか、という視点も重要となります。

また、導入に際しては、システムベンダーのカスタマーサクセス部門など支援組織が伴走する形で、新しいTMSのスムーズな導入に向けた環境の構築が求められます。システム導入後も予期せぬトラブルが頻発するため、継続的にシステム改修の機会を持つことが望ましいと言えます。


5. まとめ

今回はTMS(輸配送管理システム)の基本定義、求められる理由、メリット、導入のポイントについて解説しました。輸配送業務は物流プロセスの要であり、その課題の解決に貢献できるTMSは物流プロセス全般の効率化に欠かせません。

物流業界は、人材不足や労働環境の悪化、コストの増加など多くの課題に直面しています。これらの課題は大きな環境の変化に伴うものです。既存の業務プロセスの延長線上では解決できないため、システム導入というアプローチを取ることが求められます。

この記事ではその解決策の1つとしてTMSを挙げました。そのメリットを理解し、適切な導入を図ることで輸配送業務の課題解決に効果を発揮することができます。ぜひTMSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。



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