2024年12月13日
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バリューチェーン分析とは?概要や分析の手順、成功事例などを詳しく解説

バリューチェーン分析とは?概要や分析の手順、成功事例などを詳しく解説

近年、グローバル化や技術革新により、企業間の競争が激しくなっています。企業が競争優位を維持するためには、コスト効率や生産性、付加価値の向上が欠かせません。そこで活用されるのがバリューチェーン分析です。

バリューチェーン分析とは企業の一連の活動(原材料の調達~販売・サービス)を個別の活動ごとに分析し、それぞれがどのように収益を生み出し、競争優位を高めているか評価する手法です。

バリューチェーン分析を行うことで各活動におけるコストや効率を見直すことができ、改善点を明確にできます。自社の強みや問題点を明らかにできるため、差別化の戦略を打ち立てる助けにもなります。

本稿では、バリューチェーン分析の概要や手順、成功事例について解説します。

この記事でわかること

  • バリューチェーン分析の手順

1. バリューチェーン分析とは

バリューチェーン分析は、製品やサービスを制作するための原材料の調達〜販売までの事業の各プロセスで生み出される価値を「付加価値」として捉え、事業全体の「価値連鎖」を高めるための経営戦略の1つです。

バリューチェーンは「主活動」と「支援活動」の2つの要素で構成されています。

主活動

製品やサービスに直接関係のある事業活動

支援活動

主活動を支援する事業活動


バリューチェーン分析をすると、プロセスごとの価値が一目でわかるメリットがあります。自社の強みや問題点を把握したり、無駄なコストを削減したりする際に役立ちます。自社の分析のみならず、競合他社の分析にも役立つものです。

※関連記事:バリューチェーンとは?概要や構成要素などをわかりやすく解説


2. バリューチェーン分析の手順

バリューチェーン分析のフレームワーク自体はすべて共通ですが、業界ごとに分析の対象とする活動が異なります。たとえば、製造業では主活動は「原材料の調達」や「製造」ですが、サービス業では「サービス提供」や「料金徴収」が重要な役割を果たします。自社の分析を進める際は、業界特有の活動に着目することが有効です。

上記の図は、業種別のバリューチェーンの例です。自社の分析を進める際の参考にしてください。

バリューチェーン分析の具体的な手順について詳しく解説します。

1.企業の活動を主活動と支援活動に分類する

はじめに、自社の活動を2つの構成要素に当てはまるよう分類しましょう。たとえば製造業であれば以下のように抽出できます。

構成要素

活動

概要

主活動

購買物流

商品の企画、原料の仕入れ・搬入

製造

商品の製造・販売

出荷物流

配送業務

マーケティング・販売

営業、販売、PR

サービス

カスタマーサポート

支援活動

技術開発

新技術の開発やプロセス改善

人事・労務管理

人材の採用、トレーニング、労務管理

全般管理

企業全体の管理業務

調達活動

必要な資材やサービスの調達


企業全体の活動を洗い出す際には活動の流れに沿って記載し、さらに自社の優位性の高い部分をまとめておくと良いでしょう。

2.各活動におけるコストを算出し、収益を把握する

企業全体の活動の洗い出しが終わったら、各活動にかかるコストと収益を細かく把握し、競争力を強化するための強み・弱みを明らかにします。これにより、どの活動がコスト効率を高めているか、またどの活動が収益に貢献しているかを理解できます。

コストを算出する

各活動におけるコストを算出し、収益の把握をします。コストを算出する際には、表計算ソフト(Excelなど)を利用するのがおすすめです。

たとえば製造業で各活動のコストを算出する場合、以下のような表になります。

各活動

部署

コスト(年間)

原料の仕入れ

仕入れ

〇〇円

製造


工場A

〇〇円

工場B

〇〇円

配送業務

配送

〇〇円


コストを算出する際には以下のようなデータを参考にすると良いでしょう。

・各部門のコストデータ

・工程ごとの付加価値データ

・市場や競合のデータ

・顧客の購買行動やフィードバックなど

コストを表形式で一覧表示すれば、かかりすぎているコストを発見することができます。この部署のコストを削減したら他部署のコスト増加につながるなど、各工程の関連性を見つけることも可能です。

コストと収益をもとに強み・弱みを分析する

各活動のコストと収益を把握したら、その活動がバリューチェーン全体において強みになるか弱みになるかを分析します。コストが高く収益が少ない活動は弱みであり、改善やコスト削減の対象となります。一方、コストが比較的低く収益に大きく貢献している活動は強みと捉え、さらに強化を図ります。

強みの例

製造業において、製品の自動化技術が進んでいることで高品質な製品を低コストで大量生産できる。これにより、他社より優位に立てる。

弱みの例

物流プロセスで在庫管理が不十分で欠品が頻発する。これが顧客満足度の低下や売上の減少につながっている。



3.競合他社も同様に算出する

競合他社に対しても同様にバリューチェーン分析をしてみましょう。自社と競合のコスト効率や強み・弱みを比較し、自社の競争優位性を把握することができます。他社との差別化を図るきっかけとなるでしょう。

たとえば、ある製造業の競合企業がどの程度の設備投資を行い、どの技術開発に注力しているかを確認し、競争優位のある工程や設備に目を向けます。競合が新技術の導入に多額の投資を行っている場合、その技術が製品の品質やコスト効率にどう影響しているかを分析します。分析には、公表されている財務情報や業界レポート、市場調査から得られるデータを活用すると良いでしょう。

4.改善案を検討する

競合他社と比べてコストが高く、付加価値が低い活動に注目し、効率化や外注化などの改善案を検討します。

バリューチェーン分析だけでは判断できない内容もあるため、以下のような分析手法を併せて行うこともおすすめです。

分析方法

概要

VRIO分析

・経営資源の競争優位性を判断するための分析手法

・企業のリソースや能力を価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣可能性(Imitability)、組織(Organization)の4つの要素で評価し、持続的な競争優位性を分析する

PEST分析

・企業の経営に関わる外部環境を分析する

・政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の要因を分析し、バリューチェーンの外部環境が事業に与える影響を把握する

ファイブフォース分析

・自社の環境を5つの視点で分類し、効果的な資源配分を行うための分析手法

・業界の競争要因を「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「供給業者の交渉力」「買い手の交渉力」「業界内競争」として分析し、競争環境を理解する

SWOT分析

・現状を把握するための分析手法

・自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を分析し、強み・弱みを外部環境と組み合わせて戦略を立てる




3.バリューチェーン分析を活用した成功事例

ここでは、実際にバリューチェーン分析を活用して成功した企業の具体的な事例を紹介します。

事例1:スターバックスコーヒージャパン

スターバックスコーヒージャパンはマーケティングとサービスによってブランディングを成功させました。バリューチェーン分析を通じて他社との差別化を図り、策として導入したのが「サードプレイス」の概念です。職場や学校、家とは別の居心地の良い空間を実現し、結果としてコーヒーを飲むだけではなく、勉強や仕事目的で来店する顧客が増加しました。

さらにスターバックスコーヒージャパンはデジタルを活用した顧客体験にも力を入れました。会員向けプログラムやWebサイトからの注文制度を導入し、スターバックスの付加価値を提供することに成功しています。 

※参考:東洋経済オンライン,スタバが世界的企業になれた、たった1つの"秘訣"

事例2 東京ガスグループ

東京ガスグループは原料の調達から製品の提供まで主要な事業活動を自社で管理し、快適な暮らしの実現を通して顧客に価値を提供しています。また、バリューチェーン分析を利用して経営資源の配分にも成功しました。

東京ガスグループは効率的な手法により、エネルギーコストの削減や地球環境に貢献しています。環境負荷の低減や省エネ技術の導入などサステナビリティを重視した取り組みにより、他社との差別化と顧客満足度の向上を実現しました。

※参考:東京ガス株式会社,2023年2月22日発表 東京ガスグループ2023-2025年度 中期経営計画

事例3 IKEA

家具量販店IKEAは価格を抑えるためにバリューチェーン分析により「物流」にかかるコストを削減しました。

一般的な家具・インテリアの専門店は組み立て済みの家具を販売することが多いですが、IKEAは組み立て式の家具を販売し、顧客自らが組み立てることが特徴です。顧客が自分で組み立てることでコストを抑えています。

また、購入者は組み立て済みの家具よりも自分で組み立てた家具に愛着を持ちやすい傾向にあります。顧客自身で家具を組み立てる点がIKEAの付加価値です。これにより、顧客にとっても愛着のある商品体験を提供しています。


4. まとめ

本記事ではバリューチェーン分析の目的と手順について解説しました。

バリューチェーン分析は、製品やサービスを制作する原材料調達〜販売までの事業の各活動で生まれる価値を「付加価値」と考え、事業活動ごとに分析するフレームワークです。分析により、事業戦略や経営戦略の改善につなげることが可能です。

バリューチェーン分析の種類は業界によって異なるため、業界別の分析事例を参考にすると良いでしょう。成功事例を参考にすれば、さらに具体的な分析の方法を知ることもできます。



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