VMIとは?基本概念やメリット、注意点、従来の在庫管理との違いを解説

VMIとは?基本概念やメリット、注意点、従来の在庫管理との違いを解説

2024年問題で物流業界は大きな変革期を迎えています。業務を継続するために試行錯誤している経営者も少なくないでしょう。こうした課題に対する解決策として、VMI(ベンダー主導型在庫管理)というシステムが注目を集めているのをご存知でしょうか?

従来、需要予測や適切な在庫量の決定、発注、納入予定の管理などは商品を販売する企業(顧客側)が行っていましたが、VMIの導入により、これらをベンダー(仕入先側)で行うことになるため、業務の効率化につながると期待されています。

本記事では、VMIの基本概念やメリット、注意点、従来の在庫管理との違いを詳しく解説します。ぜひ社内業務の効率化の参考にしてください。

この記事でわかること

  • VMI(Vendor Managed Inventory)の基礎知識
  • VMI導入のメリットと注意点

1. VMIとは

VMI(Vendor Managed Inventory)とは、仕入先(ベンダー)が、顧客企業に代わり在庫を管理し、在庫レベルを適切に保つために必要な補充や発注を行う在庫管理方式を指します。


VMIの基本概念

VMIでは、顧客側が仕入先に対して在庫データや販売情報を提供し、それに基づいて仕入先が最適なタイミングで適切な量を補充します。仕入先は、在庫の過不足や欠品を避けるため、売れ行きや需要予測を把握して在庫管理や発注を行います。

米国の小売業者であるウォルマートが1980年代にVMIを導入し、在庫削減と販売機会の損失防止に成功した事例もあります。

※参考:J-STAGE,米国ウォルマー ト社の小売技術革新の展開,p11
※関連記事:在庫管理の基本や重要性|現場で活かせる最適化の手法・分析方法まで解説


VMIの仕組み

VMIは仕入先が顧客の在庫情報を共有し、需要予測に基づいて在庫を補充する仕組みです。仕入れ先は、顧客の在庫情報をEDI(電子データ交換)やAPI連携、クラウドプラットフォームなどを通じて共有するのが一般的です。

顧客の在庫データを定期的またはリアルタイムで共有することで、仕入先は需要予測や販売実績に基づいた自動補充システムを活用し、最適な在庫補充量と補充タイミングを決定できます。たとえば販売店の在庫情報を共有することで、仕入先は最適なタイミングで販売店に商品を届けることが可能になります。


2. VMIと在庫管理の違い

VMIは在庫管理の一手法ですが、従来の在庫管理とは主体や情報共有の点で異なります。

項目

従来の在庫管理

VMI

在庫管理の責任者

顧客

仕入先(ベンダー)

情報共有

限定的

リアルタイムでの情報共有

在庫コスト

顧客負担

仕入先と顧客で分担

欠品リスク

高い

低い

需要予測

顧客が実施

仕入先が実施



在庫管理の責任者

従来の在庫管理では顧客側が主体となって在庫管理を行うのに対し、VMIでは仕入先が主体となります。

情報共有

従来の在庫管理では情報共有が限定的ですが、VMIでは顧客が在庫状況や販売データを仕入先に提供し、これを基に仕入先が在庫計画を立てます。この情報共有の仕組みによって、在庫切れや過剰在庫のリスクが軽減され、供給チェーン全体の効率が向上します。

在庫コスト

在庫コストに関してもVMIが顧客と仕入先で分担するのに対し、従来の在庫管理では顧客のみで負担していました。VMIでは仕入先が在庫の所有権を持ち、在庫管理の責任を負うことで、顧客の在庫コストを削減できます。

たとえば従来の在庫管理では、メーカー(仕入先)と卸売業者(顧客)は月次で在庫情報を共有していましたが、VMI導入後はリアルタイムでの在庫情報共有が可能になります。VMIでは欠品リスクが従来の在庫管理に比べて低い点が特徴です。

欠品リスクと需要予測

従来の在庫管理では顧客が需要予測を行うため、予測精度の低さから、欠品や過剰在庫が発生しやすい傾向にありました。一方、VMIでは仕入先が需要予測を行い、適切なタイミングで在庫を補充するため、欠品リスクを最小限に抑えられます。

需要予測の実施主体も、VMIでは仕入先となります。仕入先には、複数の顧客の販売データを分析し、需要予測の精度を高められるメリットがあります。

このようにVMIは、在庫管理の主体が仕入先に移行し、リアルタイムでの情報共有をすることで、仕入先の在庫管理に対する貢献度が大きく変わります。その結果、サプライチェーン全体の効率化と最適化につながります。


3. VMIの導入メリット

VMIは仕入先と顧客の両者にとってメリットがあります。VMIの主なメリットとして以下に4つ解説します。

メリット1:在庫の最適化

VMIでは、仕入先がリアルタイムで在庫情報を把握し在庫を管理しているため、需要に応じた適正な在庫水準を保ちやすいのが特徴です。過剰在庫や欠品のリスクが大幅に減り、在庫管理コストの削減が可能となります。顧客企業は必要な在庫を最小限に抑えられるため、資産効率の向上が期待できます。

メリット2:サプライチェーンの効率化

リアルタイムの情報共有によって供給体制が整い、サプライチェーン全体がスムーズに機能する点も大きな特徴と言えるでしょう。VMIでは在庫切れや過剰在庫のリスクが低減され、安定した供給が可能になることで、需要変動にも柔軟に対応できます。供給が安定するとリードタイムも短縮できるため、顧客企業はより安定したサービス提供が可能になります。

※関連記事:サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?メリットや最新トレンドを解説

メリット3:キャッシュフローの改善

在庫が適正に管理されることで在庫回転率が向上し、キャッシュフローの改善が期待できます。顧客企業にとっては在庫維持に必要な資金の圧縮が可能になり、経営資金の柔軟な活用が促進できます。これにより、企業は他の成長機会や投資案件に資金を割り当てやすくなります。

メリット4:リードタイム短縮

VMIでは在庫管理と補充を仕入先が行うため、顧客側で発注する手続きが不要となり、リードタイムが短縮されます。仕入先が在庫状況を常時把握しており、適切なタイミングでの補充が行われるため、納期の遅延が発生しにくく、スムーズな供給が可能になります。

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4. VMIを導入する際の注意点

VMIを成功させるためには、顧客・仕入先間の信頼関係の構築、役割分担の明確化、適切なシステム設計が重要です。それぞれ詳しく解説します。

注意点1:信頼関係の構築

VMIでは仕入先が在庫管理の主体となるため、顧客との信頼関係が不可欠です。VMI導入前に十分な協議を行い、双方の目的や期待する効果を共有しましょう。

また、定期的な情報交換や進捗報告を行うことで、顧客と仕入先間のコミュニケーションを円滑に保ち、信頼関係を強化することができます。信頼関係が築けていないとVMIの運用がスムーズに進まず、期待した効果が得られない可能性があるので注意が必要です。

注意点2:役割分担の明確化

VMIでは在庫管理の責任範囲や在庫の所有権、費用負担など、顧客と仕入先間で役割分担を明確にする必要があります。これらはVMI導入時に詳細に契約書で定めることが重要です。

役割分担が曖昧だと、トラブルが発生した際の責任の所在が不明確になり、円滑な運用が困難になるおそれがあります。事前に取り決めておかないと、後に問題になる可能性があるので注意しましょう。

注意点3:適切なシステム設計

VMIを支えるシステムは、顧客と仕入先間で情報を円滑に共有できるよう設計する必要があります。在庫情報を共有するためのクラウドシステムを構築する際には、セキュリティに配慮した上で、仕入先がアクセスしやすいシステムを設計することが重要です。

また、システムの運用やメンテナンスについても、顧客と仕入先で役割分担を明確にしておく必要があります。システム設計が不適切だと情報共有がスムーズに行えず、VMIの運用に支障をきたす可能性があるためです。


5. まとめ

VMIとは仕入先が顧客の在庫管理を行う仕組みです。VMIは在庫情報の共有と需要予測に基づく在庫補充により、適切な在庫管理を実現します。

VMIのメリットには在庫の最適化、サプライチェーンの効率化、キャッシュフローの改善、リードタイム短縮などがあります。VMIは従来の在庫管理と比べ、仕入先が主体となり、顧客と在庫情報を共有して在庫管理を行う点が大きく異なります。

したがってVMIを成功させるためには、顧客・仕入先間の信頼関係構築、明確な役割分担、適切なシステム設計が重要です。

これらの点に留意してVMIを導入することで、サプライチェーン全体の最適化と企業の競争力強化につながるでしょう。



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