物流業務の効率化が求められる中、その解決策として外部に物流を委託する3PL(サードパーティロジスティクス)が注目されています。3PLを導入することで、企業は輸送や倉庫管理、在庫管理など複雑な物流業務にリソースを割く必要がなくなります。もちろんメリットが多い一方で、外部委託ならではのリスクも存在します。
本記事では、3PLの基本的な定義や提供されるサービス、導入のメリット、そして注意点について詳しく解説します。
ここでは、3PLの意味について詳しく解説します。
3PLとは、サードパーティロジスティクス(Third Party Logistics)の略称です。このサードパーティとは、荷主や運送会社以外の第三者を示しています。
つまり3PLとは、第三者が「荷主企業に代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に受託し、実行すること(※)」を言います。
輸送、倉庫管理、在庫管理など物流に関連する様々な業務を包括的に受託し実行することがポイントです。
※出典:国土交通省,3PL事業の総合支援
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3PLはアメリカで生まれた物流サービスで、1990年代初頭に欧米諸国で普及しました。日本では1990年代後半から徐々に浸透していきました。
欧米では専門分野を専門業者へ委託することは一般的な考え方でしたが、日本では荷主が自社で物流業務を行う場合が多かったため、普及に時間がかかりました。
※参考:国土交通省,日本における3PLビジネスの育成に関する調査報告書,p7
3PL以外に、1PL(ファーストパーティロジスティクス)、2PL(セカンドパーティロジスティクス)、4PL(フォースパーティロジスティクス)があります。以下に、各形態の違いを解説します。
物流形態 | 概要 |
1PL(ファーストパーティロジスティクス) | ファーストパーティとは、荷主企業(メーカーなど)を示します。 1PLは、荷主企業が物流業務をすべて自社内で行う形態です。 自社で倉庫や配送車両を所有し、商品の保管、輸送、配送を担当します。 |
2PL(セカンドパーティロジスティクス) | セカンドパーティとは、荷主企業が契約する業者を示します。例えば運送会社や倉庫会社、問屋、小売店などが該当します。 2PLは、荷主企業が特定の物流サービス(輸送や保管など)を外部の業者に委託する形態です。基本的には輸送部分のみを業者に依頼し、荷主は倉庫管理など他の部分を自社で行います。 |
3PL(サードパーティロジスティクス) | サードパーティとは、荷主企業とは契約関係がない第三者の専門業者、または物流事業者を示します。 3PLは、物流業務全般(保管、輸送、在庫管理、配送など)を外部の専門業者に包括的に委託する形態です。物流機能のアウトソーシングに重点を置いています。 |
4PL(フォースパーティロジスティクス) | フォースパーティとは、荷主企業とは契約関係がない、第四者の専門業者、または物流事業者を示します。 4PLは、物流全体の設計、管理、監督を外部業者に委託する形態です。コンサルティング要素が強く、3PLより戦略的な物流運営を行います。委託内容には3PL事業者の管理や統括も含みます。 |
上記のように、業務範囲の広さに違いがあります。
1PLや2PLは自社でのコントロールが強い一方、3PLや4PLは外部業者に委託する部分が多いと言えます。
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3PL事業者は、その事業形態によってアセット型とノンアセット型に分類されます。
事業者が自社で倉庫や車両などの物流資産(アセット)を保有し、それらを活用してサービスを提供する形態のことです。例えば、大手の物流企業が自社のトラックや倉庫を使って物流サービスを提供するケースがあります。
設備投資が必要なため初期コストは高くなりますが、自社でコントロールできる範囲が広く、柔軟なサービス提供が可能という特徴があります。
事業者自体は物流資産を保有せず、他社の施設や車両を活用してサービスを提供する形態のことです。例えば、複数の物流企業や輸送会社と提携し、最適な物流ネットワークを構築する場合です。
初期投資が少なく、様々な荷主企業のニーズに応じて柔軟にサービスを組み合わせることが可能です。
それぞれ特徴が異なるため、安定性を重視する場合はアセット型3PL、柔軟性を重視する場合はノンアセット型3PLなど、ニーズに合わせて選択することが重要です。
ロジスティクスとは、物流のプロセスだけでなく、生産から販売までの一括管理のことです。3PLはロジスティクスを包括的に請け負うため、提供するサービスは輸配送管理、在庫管理だけでなく、調達物流や販売物流など多岐にわたります。単に一部の業務だけを外部委託するのではなく、物流全体の最適化を目指すサービスです。
ここでは、主なサービス内容を以下の通りまとめました。
項目 | 提供されるサービス内容 |
輸送管理 | ・最適な輸送手段や経路の選択 ・複数の輸送会社の管理と調整 ・輸送コストの最適化 |
倉庫管理 | ・在庫の保管と管理 ・ ピッキング、パッキング、ラベリング ・ クロスドッキング(荷受けした商品を保管せずに出荷する仕組み) |
在庫管理 | ・需要予測に基づく在庫最適化 ・在庫レベルのリアルタイムモニタリング ・棚卸し業務 |
配送管理 | ・ラストワンマイル配送の最適化 ・配送ルートの効率化 ・配送状況のトラッキングと顧客への情報提供 |
調達物流 | ・サプライヤーとの調整 ・原材料や部品の調達と輸送 ・調達コストの最適化 |
工場内物流 | ・工場内での原材料や製品の移動管理 ・生産ラインへの部品供給 ・工場内在庫の最適化 |
販売物流 | ・受注処理と出荷管理 ・返品処理 ・販売促進物の管理と配送 |
静脈物流 | ・産業廃棄物の収集と処理 ・返品商品の管理と再流通 ・修理品の回収と配送 |
国際物流 | ・輸出入手続き ・国際輸送の手配と管理 ・通関業務の支援 |
情報システム管理 | ・物流関連データの収集と分析 ・在庫情報や配送状況のリアルタイム提供 ・物流KPIの設定と管理 |
コンサルティング | ・物流の運営に関するアドバイスやコスト削減、作業効率向上のための改善提案 ・新しいシステム導入のサポートや物流オペレーションの改善に関する提案 |
上記の通り様々なサービスがありますが、3PL事業者によって提供するサービス内容や範囲は異なります。3PL事業者選定の際には、自社のニーズに合ったサービス内容があるかを確認しましょう。
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以下に、3PL導入のメリットについて解説します。
自社で物流施設や車両を保有・維持する費用や、物流管理に関わる人件費や管理費を削減できます。例えば3PL事業者の大規模なネットワークを利用することで、輸送や保管のコストを抑えられます。
3PL事業者は物流の専門知識とノウハウを持つため、輸送ルートの最適化や在庫管理の効率化が図れます。これにより物流業務のスピードと精度を向上させることができ、サービス品質や顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
物流業務を外部に委託することで、企業は人的リソースや時間をコア業務へ集中させることができます。製品開発や営業活動に注力できれば競争力強化も期待できるでしょう。
また、物流施設や設備への投資を抑え、他の事業分野への投資が可能となります。
物流業界での人材確保が困難な中、3PLを導入することで人材不足が解消できます。季節変動や特需に対しても柔軟な人員配置が可能です。
また、物流の専門知識やスキルを持つ人材を自社で育成することなく高度な物流サービスを受けられます。
3PLの導入にはリスクもありますので、以下に注意点を解説します。
3PL事業者に業務を委託することで、物流業務に対する直接的なコントロールが減少します。特に、緊急対応や顧客対応のスピードに影響が出る可能性があるため、適切な事業者を選定すること、契約時に責任の所在や業務範囲を明確にすることが重要です。
3PL事業者に委託する業務が増えると、それに伴い予期せぬコストが発生する可能性があります。追加業務や特別な対応が必要になった場合、契約外の費用が発生することがあるため、契約内容を明確にしておくことが重要です。
機密情報や顧客データを外部に委託することになるため、情報セキュリティ管理が重要になります。3PL事業者の情報セキュリティ対策やデータ保護方針を十分に確認し、適切な管理体制を構築することが不可欠です。
3PLの導入には上記の注意点もあるため、信頼できる3PL事業者を選ぶことが非常に重要です。以下の記事で3PL企業の選定基準について詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
3PLは、物流業務の効率化を実現するために有効な物流形態の1つです。3PLを導入することによりコスト削減や業務効率化などメリットがある一方、上記で述べたような注意点もあるため、導入に際しては慎重な検討が必要です。
自社の状況やニーズを明確にし、適切な3PL事業者を選定することで、物流の効率化や競争力強化が期待できるでしょう。