貨客混載とは?導入された背景やメリット・注意点まで解説

貨客混載とは?導入された背景やメリット・注意点まで解説

物流業界では、EC市場の拡大やドライバー不足、環境負荷の増加といった課題が深刻化しています。解決策の1つとして注目されているのが「貨客混載」です。

貨客混載は、1台の乗り物で旅客と貨物を同時に輸送する仕組みで、輸送効率の向上やコスト削減、環境負荷の軽減といったメリットがあります。しかし、スケジュール管理や法規制対応、荷物の安全性の確保といった課題も無視できません。

本記事では、貨客混載の基本的な仕組みから、メリットと課題について詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 貨客混載の基本的な仕組み
  • 貨客混載のメリットと課題

1. 貨客混載とは

貨客混載とは、1台の乗り物を使って貨物と旅客を同時に輸送する仕組みです。近年の規制緩和によりバス・タクシー・鉄道・飛行機・フェリーなどで、貨物と旅客を同時輸送する取り組みが進められています。

貨客混載は公共交通機関の空きスペースを活用して、環境負荷の低減やコスト削減、労働力不足の緩和といった課題に対する解決策として注目されています。また、人口減少が進む過疎地において、貨客混載は地域の公共交通の存続を支える手段として期待されています。

そして、地方部での実証実験を重ねた結果、貨客混載は2023年には全国的な普及が進みました。(※)貨客混載は、物流業界と地域社会の双方に貢献する新しい輸送形態として、今後ますますの活用が期待されています。

※参考:国土交通省,貨客混載の実施に係るニーズ事例集について


2. 貨客混載が導入された背景

貨客混載が導入された背景には、EC市場の拡大による小口配送の増加や、ドライバー不足の深刻化など物流業界が抱える課題があります。過疎地域では公共交通機関の経営悪化も進み、持続可能な輸送方法の模索が必要とされていました。

これを受けて、2017年に国土交通省は「貨物自動車運送事業法」の一部を改正し、旅客輸送と貨物輸送を統合する「貨客混載」を可能とする規制緩和を実施しました。(※)この規制緩和により、路線バスや鉄道の空きスペースを活用した新しい物流形態の実証実験が行われ、持続可能な輸送手段としての可能性が検証されました。

実証実験を経て、2023年には全国で貨客混載が認められ、都市部と地方部の両方で実施が拡大しました。(※)貨客混載は物流効率化だけでなく、環境負荷軽減や地域の交通インフラ維持にも貢献する新たな輸送手段として、今後も期待されています。

※出典:国土交通省,貨客混載を通じて自動車運送業の生産性向上を促進します

※出典:国土交通省,貨客混載制度の実施区域の見直しについて

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3. 貨客混載のメリット

貨客混載のメリットを、4つ解説します。

輸送効率の向上

貨客混載の導入により、貨物の種類や配送先に応じて最適な輸送手段を選択できるため、輸送効率が向上します。例えば、遠距離の貨物は鉄道や新幹線を活用し、近距離かつ即時配達が必要な場合はトラックを使用するなど、役割分担が可能です。

また、トラックだけに頼らず複数の輸送手段を活用するので、輸送コストの削減とリソースの効率的な活用が期待されています。

輸送コスト削減

貨客混載はタクシーのトランクやバスの荷物置き場など、旅客輸送の空きスペースを活用すれば、輸送コストを削減できます。結果、別々に輸送する場合に必要な燃料費や人件費を抑えられ、全体の運行経費が軽減されます。

また、従来の輸送手段を統合すれば、輸送効率が向上し、コストパフォーマンスが高まります。特に過疎地や需要変動の大きい地域での、経済的な物流ソリューションとして注目されている輸送方法です。

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CO2の排出削減

貨客混載の導入により、トラック輸送への依存を減らし、CO2排出量を削減可能です。例えば、路線バスや鉄道の空きスペースを活用すれば、トラックに比べて環境負荷の低い輸送が実現します。結果、物流業界は脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速させるとともに、持続可能な輸送体制の構築にも貢献します。

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トラックドライバーの負担軽減

トラックドライバーが担っていた輸送区間の一部を、ほかの交通手段で代替すればドライバーの負担を軽減できます。長時間労働や過剰な拘束時間が削減され、労働環境の改善が期待されます。

働きやすい環境の整備は、新たな人材の確保や雇用促進にも貢献し、物流業界全体の持続可能な成長を後押しするでしょう。


4. 貨客混載の課題や注意点

貨客混載はメリットだけでなく、課題や注意点もあります。

ここでは、貨客混載の課題や注意点について解説します。

スケジュール管理

貨客混載では、旅客輸送と貨物輸送のスケジュールを効率よく調整する必要があります。公共交通機関の運行ダイヤや利用可能なスペースに合わせた柔軟な管理が求められ、計画の自由度は限定的です。

そのため、効率的な運用には、輸送需要と運行スケジュールのバランスを考慮して、事前に詳細な計画の作成が重要です。

一度に輸送できる荷物に限りがある

貨客混載では旅客用の空きスペースを活用するため、一度に輸送できる荷物の量が制限されます。例えば、新幹線やバスでは座席の空席やトランクルームを利用しますが、容量は限られており、大量の貨物の積載は難しいです。

また、旅客の快適性を損なわないような配慮が必要で、貨物の配置や量にも注意が求められます。そのため、大規模な輸送には別の手段との併用が必要な場合もあります。

荷物の安全性

貨客混載では、公共交通機関内で貨物を取り扱うため、荷物の安全性が課題です。特に、不特定多数が利用する環境では、破損や紛失のリスクが高まる可能性があります。

また、輸送中の積み替え作業が発生する場合には、さらに慎重な取り扱いが求められます。そのため、運搬手順の計画や追跡管理システムの導入、必要に応じた補償体制の整備が不可欠です。

リードタイムが長くなる

貨客混載では、旅客輸送と貨物輸送を同時に行うため、貨物の配送に時間がかかる場合があります。特に、公共交通機関を利用する場合は運行ダイヤに左右され、柔軟なスケジュール調整が難しい点が課題です。

さらに、貨物の積み替えや調整作業が発生する場合、リードタイムが延びる可能性も高まります。旅客輸送が優先されるケースでは、貨物の配送計画に影響が及ぶおそれがあり、事前の計画と調整が重要です。

関係する人員が多い

貨客混載では、貨物運送業者と旅客運送業者の連携が必要であり、関わる人員や企業が増加します。出発地から到着地、最終配送先までの間に複数の交通機関や業者が関わるため、調整作業が複雑化しやすいのが特徴です。

また、地域特性や貨物の性質に応じた適切な手配も求められるため、計画段階での時間や労力が増加する傾向があります。これらをスムーズに進めるには、関係者間の十分な調整が不可欠です。

法規制対応

貨客混載の導入には、関連する法規制への対応が欠かせません。旅客輸送と貨物輸送を同時に行うため、各輸送手段ごとの運行基準や安全基準を遵守する必要があります。

また、適切な許認可の取得や運行管理体制の整備が求められるほか、関係機関との連携も重要です。これらの準備を怠ると、事業運営に支障をきたす可能性があるため、事前に万全な体制を整えましょう。


5.まとめ

貨客混載は、物流業界に効率化や環境負荷削減、コスト削減など多くのメリットをもたらす一方で、課題も存在します。荷物の安全性確保やスケジュール管理、法規制対応など、計画的かつ適切な準備が求められます。

これらの課題を克服するためには、国や自治体による支援制度の整備や、関係者間の連携強化が不可欠です。貨客混載の普及により、持続可能な物流と地域交通の実現が期待されます。


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