物流コストとは?費用内訳と削減方法を徹底解説

物流コストとは?費用内訳と削減方法を徹底解説

物流業界では、コスト削減が企業の競争力を高め、収益を改善する重要な課題となっています。しかし、コストの削減とサービス品質の維持、両方のバランスを取るには、具体的な戦略と実践的な手法が必要です。

本記事では物流コストの内訳を詳しく説明し、コストの高騰要因を分析するとともに、効率的にコストを抑えるための具体的な方法を解説します。

この記事でわかること

  • 物流コストの基礎知識
  • 物流コスト高騰の理由

1. 物流コストとは

物流コストとは、商品が生産地点から消費地点に届くまでの一連の流れにおいて発生する全ての費用を指します。単なる輸送費用にとどまらず、物流関連のあらゆる費用を含むため、その内訳を把握することが重要です。

ここでは、物流コストの内訳について詳しく解説します。

「自家物流費」と「支払物流費」

物流コストは、自家物流費と支払物流費に分類されます。

分類

意味

具体例

自家物流費

社内で発生する物流関連のコスト

・倉庫管理システムの運用費

・人件費

・情報システムの保守費用

など

支払物流費

外部業者への支払いに該当するコスト

・輸送費

・倉庫賃料

・梱包材の購入費

など

物流コストを削減するには、まず内訳を正確に把握することが必要です。支払物流費と自家物流費では削減方法が異なるため、物流コストを支払い形態別に整理しておくと、効果的な削減策を検討しやすくなります。

支払物流費については、取引先の選定や契約条件の見直しにより削減が期待できます。一方、自家物流費では、人員配置の最適化や業務プロセスの改善が削減につながります。

物流コストの主な内訳

物流コストの具体的な内訳は、以下の通りです。

項目

内訳

輸送・運送費

運送料、配送業者費用、チャーター費、燃料費、通行料金

荷役費

荷物のピッキングや仕分け、積付け、入出庫・運搬作業にかかる費用、荷役作業スタッフの人件費

保管費

倉庫賃料、光熱費、倉庫維持費、保険料

包装費

梱包資材費、梱包作業費

物流管理費

物流管理システムの導入、運用費、人件費



※参考:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 ,2024年度物流コスト調査(記入要領),p2

1.輸送・運送費

商品の運搬に必要な費用で、チャーター車両費、配送業者の配送料、ガソリン代、減価償却費などが含まれます。物流コスト全体における割合が高く、効率的に削減することで企業の利益向上に寄与します。

2.荷役費

荷物のピッキングや仕分け、流通加工、積付け、入出庫・運搬といった作業にかかる費用を示します。人件費が主要なコストであり、作業効率化やロケーション管理、倉庫管理システム(WMS)の導入により削減が可能です。

関連記事▶WMS(倉庫管理システム)とは?概要や役割・メリット・導入事例を解説

3.保管費

商品を保管するための費用で、外部倉庫の賃料や自社倉庫の維持費、倉庫の火災保険料などが含まれます。外部倉庫と自社倉庫で費用の差が大きく、保管方法や契約の見直しによりコスト削減が期待できるでしょう。

4.包装費

商品の包装に必要な材料費と作業人件費が含まれます。包装作業の効率化や繁忙期に合わせた外注契約により、コスト負担を抑えられる可能性があります。

5.物流管理費

物流管理システムや受発注システムの導入、運用費、および物流担当者や営業スタッフの人件費が含まれます。繁忙期には柔軟な人員配置が求められるため、外注化によりコスト抑制が可能です。

企業の売上高に占める物流コストの割合

企業の売上高に占める物流コストの割合は業種によって異なりますが、一般的に売上高の5〜10%程度とされ、この比率を下げることが直接的な収益改善につながります。

日本ロジスティクスシステム協会の2023年度の調査では、売上高物流コスト比率は平均5.00%。前年の5.31%からやや減少しました。この減少は、物流単価は上昇傾向にあるものの、それ以上に物流量に対する売上高(販売単価)の伸びが大きいためと推測されています。



※出典:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会,2023 年度 物流コスト調査報告書【概要版】,p1-2

値上げ要請の有無

値上げ要請の有無についての調査では、86.7%の企業が物流事業者から値上げ要請を受けており、主な費目は輸送費と荷役費です。この結果から、今後も2024年問題への対応などで物流コストの上昇は避けられないと予想されます。



※出典:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会,2023 年度 物流コスト調査報告書【概要版】,p9

物流コストの構成比

物流コスト全体の中で輸送費は平均で57.6%を、保管費は16.4%を占めています。特に製造業では輸送費の割合が大きく、支払形態別構成比を見てみると、支払物流費が89.4%を占めました。

こうした構成比を理解し、構成比が高いコストから削減方法を検討することが、効果的なコスト削減につながるでしょう。



※出典:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会,2023 年度 物流コスト調査報告書【概要版】,p3


2. 物流コスト高騰の要因

物流コストが高騰する要因として、以下の3つが挙げられます。

1.ガソリン価格の高騰

ガソリン価格の上昇は、輸送費に直接影響します。近年、原油価格の変動によりガソリン価格が高騰し続けており、輸送コストの増加につながっています。物流コストを管理するには、ガソリン価格の動向を注視し、価格変動を見越した予算管理が必要となります。

※参考:経済産業省資源エネルギー庁,令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022) 第1部 第3章 第2節 世界的なエネルギー価格の高騰とロシアのウクライナ侵略

2.人手不足

現在、物流業界ではドライバー不足が深刻化しています。少子高齢化に伴い労働力が減少し、適切な人材確保が困難な状況です。加えて2024年問題により労働時間の短縮や労働環境の改善、賃金引き上げが求められており、その結果として物流コストが増加傾向にあります。

※参考:国土交通省, 総合物流施策大綱(2021年度~2025年度) 概要,p1

関連記事▶2024年問題によるドライバー不足の対策方法とは?原因や影響も解説

3.多頻度小口輸送の増加

EC市場の需要増加に伴い、多頻度小口配送が増加し、積載効率が低下しています。そのため運搬・輸送の回数が増え、輸送費用が高騰する一因となっています。効率的な配送ルートの設定や積載率の向上が求められます。

関連記事▶物流クライシスとは?原因や影響から解決策までを解説!


3. 物流コストの削減方法

物流コストを抑えながらも顧客満足度を損なわないためには、コスト削減と同時にサービス品質の維持が求められます。以下に、コスト削減と品質向上の両方が期待できる8つの方法について解説します。

輸送の効率化

輸送コストの効率化には、車両積載率の向上や最適ルートの設定が求められます。輸配送管理システム(TMS)を導入することで燃料の無駄を減らし、配送時間を短縮することが可能です。

ある事業では、輸配送管理システム(TMS)と倉庫管理システム(WMS)などのシステム連携を実施しました。その結果、荷主・倉庫事業者・トラック運送事業者間の情報共有と業務効率化を実現しました。(※)

※出典:国土交通省,物流総合効率化法

在庫管理の改善

倉庫管理システム(WMS)を活用して在庫情報のデジタル化を進めることは、在庫管理の精度を向上させ、保管コストの抑制につながります。具体的には在庫過多や不足のリスクを減らし、適正な在庫数の維持を可能にします。また、データを活用することで、顧客のニーズに合った売れ筋商品や需要の変動に合わせた在庫配置が可能となります。

関連記事▶在庫管理が変わる!WMSの仕組みを図解で解説

モーダルシフトの活用

トラック輸送に依存するのではなく、鉄道や海運など、環境に配慮した輸送手段への移行を進めることもコスト削減につながります。燃料費や通行料金の削減が可能となり、長距離輸送で特に効果的です。また、環境負荷低減への努力は企業イメージの向上にも寄与するでしょう。

関連記事▶ 2024年問題対策!モーダルシフトの概要やメリット、取り組み事例を解説

ルールの策定

在庫量の基準や輸送時の梱包規定などのルールを明確化し徹底することで、無駄なコストを省くことができます。また、物流プロセスの定型化ができれば、作業効率の向上と人的ミスの削減にもつながります。

過剰包装の見直し

他企業と共同で配送したり共有倉庫を利用したりすると、輸送や保管のコストを分担することになり、全体の経費を削減できます。共同配送は配送回数を減らす効果があるため、環境負荷の軽減にも効果的です。

公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会がまとめた経済産業省の「荷主連携によるエリア共同配送推進の手引き」では、以下のような共同配送の事例が紹介されています。

事例

具体的な実施例や効果など

過疎地域における共同配送

・千葉県房総半島地域と島根県をモデル地域として、荷主企業2社による共同配送のシミュレーションを実施。

・配送費用や二酸化炭素排出量の削減効果がありました。

この事例は、共同配送によるコスト削減や環境負荷低減の効果を示しており、今後の物流効率化に向けた重要な取り組みとして注目されています。

※参考:経済産業省,荷主連携によるエリア共同配送推進の手引き

アウトソーシングの活用

物流業務の一部をアウトソーシングすることで、人件費や物流管理費の削減が可能です。例えば、倉庫業務や配送業務を専門業者に委託すれば、コスト削減と同時に業務効率の向上につながるでしょう。ただし、業者選定にはサービス品質や信頼性も重要な基準となります。

関連記事▶物流のアウトソーシングとは?メリット・デメリットと業者選定を解説

自動化技術とITツールの導入

荷役作業に作業ロボットなどの自動化技術を導入することにより、コスト削減だけではなく、作業効率向上や人的ミスの削減を期待できます。物流管理やコスト分析ツールを活用することは、リアルタイムでのデータ把握を可能にし、効果的なコスト管理を実現するでしょう。また、データの蓄積を通じてさらなる効率化に向けた改善策の検討も可能となります。

※参考:国土交通省, 総合物流施策大綱(2021年度~2025年度) 概要

関連記事▶物流効率化に向けた政府の取り組みとは?荷主企業に求められることも解説


4. まとめ

本記事で紹介した方法を活用し、自社にとって最適なコスト削減方法を見つけることが重要です。

物流コストの内訳を把握して適切な削減策を実行することにより、サービス品質を維持しながら効率的なコスト削減を実現できるでしょう。



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