2024年問題によるドライバー不足の対策方法とは?原因や影響も解説

2024年問題によるドライバー不足の対策方法とは?原因や影響も解説

2024年問題により、物流業界でのドライバー不足はより深刻化することが懸念されています。その理由は、ドライバーの労働環境が他の産業と比べて厳しい点にあり、それゆえにドライバーの確保が難しいことが挙げられます。

この問題に対処するためには、ドライバー不足を他の手段で補うための仕組み構築が必要です。荷主企業も運送会社や物流事業者に丸投げするのではなく、積極的に課題解決に取り組む姿勢が欠かせません。より具体的には、物流DXシステムの導入により、無駄な待機時間を抑制することや効率的な配車を推進することが求められます。

本記事では、これらの対策方法を具体的に掘り下げ、物流業界が持続的に発展していくためのポイントを解説します。

この記事でわかること

  • 2024年に予想されるドライバー不足による影響について
  • 2024年問題にドライバーが不足する背景や原因、課題、解決策
  • ドライバー不足に対処するための対策

1. 2024年問題におけるドライバー不足の原因

本章ではドライバー不足の原因を説明します。現在生じているドライバー不足の実態について、統計資料などを活用して詳述します。

働き方改革関連法によるトラックドライバーの労働時間の制限

ドライバー不足の原因は、働き方改革関連法によるトラックドライバーの労働時間の制限です。

そもそも物流業界における2024年問題とは、2024年4月1日に施行された働き方改革関連法が物流業界に与える影響の総称です。労働時間の制限により、現在の労働力では対応できなくなるため、さらなる人手不足が懸念されます。


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ドライバー不足の実態

2023年度(令和5年度)時点の統計をもとに全産業平均とドライバーの働き方を比較すると、多くの点で労働条件が悪いことが指摘できます。このような状況から、ドライバーの確保が社会的に困難になっています。

・労働時間

全産業平均の年間労働時間が2,136時間であるのに対し、ドライバーの労働時間は約2,500時間となっており、全産業平均より約2割長いと言えます。

・年間賃金

全産業平均の年間賃金が507万円であるのに対し、ドライバーの年間賃金は大型トラックで485万円(全産業比:約95.7%)、中小型トラックで438万円(全産業比:約86.4%)となっており、全産業平均より約5~15%低いと言えます。

・人手不足

全産業平均の有効求人倍率が1.17倍であるのに対し、ドライバーの有効求人倍率は2.18倍となっており、全産業平均より約2倍高いと言えます。

・年齢構成

全産業平均における若年層(15歳~29歳)の構成比率はドライバーよりも高いのに対し、中年層(45~59歳)の構成比率はドライバーのほうが高く、全体的に高齢化が進んでいることが分かります。

また、国の統計とは別に、日本ロジスティクスシステム協会が2020年に行った2030年時点のドライバー数の推計では、2015年と比較して約3割減少すると見込まれています。将来的にますます状況が悪化することが想定されるでしょう。

さらに、EC市場の盛り上がりによる宅配便取り扱い実績の急増や小口多頻度化の急速な進行なども、ドライバー不足に拍車をかけています。

※出典:国土交通省,第1回トラック運送業における多重下請構造検討会 資料1:本検討会開催の背景・目的,p1

※出典:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会,ロジスティクスコンセプト2030

※出典:経済産業省・国土交通省・農林水産省,我が国の物流を取り巻く現状と取組状況


2. ドライバー不足の影響

2024年問題によるドライバー不足の主な影響は、以下の3つです。


  • 運送コストの上昇・利益率の低下
  • 供給チェーンの遅延
  • ドライバーの離職が加速


運送コストの上昇・利益率の低下

ドライバー不足の対策として給与改善を実施すると、人件費の高騰から利益率の低下を招きます。

また、時間外労働の上限が960時間になることで、ドライバー1人あたりの走行距離が短くなるでしょう。従来と同じ量の貨物を輸送するためにより多くのドライバーが必要となり、人件費が増加します。

これらのコスト増加は運送会社の利益率低下を引き起こすだけでなく、荷主企業に転嫁される可能性もあります。結果として運賃の引き上げが必要になり、荷主は発注を減少させる可能性があるでしょう。

これにより運送会社の売上が減少し、さらなる利益率低下を招くおそれがあります。


供給チェーンの遅延

ドライバーの残業時間及び拘束時間が制限されるため、配送の頻度やスピードが低下し、供給チェーン全体の遅延を引き起こします。

長距離の物流においては特にその傾向が顕著となり、商品の納期遅れが発生しやすくなるでしょう。国土交通省「物流の2024年問題について」によると、特に長距離輸送のドライバー不足が懸念されています(※)。これまで1日・1人で運送可能であったものが、2日又は2人での運送が必要になる場合もあります。これは企業間の取引において重大な問題となり、企業の信頼性にも影響を及ぼしかねません。

また昨今のECサイトでは「当日発送」が当然ですが、供給チェーンが遅延すると消費者にも影響を及ぼすことになります。

このようにドライバー不足は物流の根幹を揺るがし、経済活動全体に悪影響を与える可能性があります。

※出典:国土交通省,(資料1)物流の2024年問題について,p5


ドライバーの離職が加速

労働時間の制限により収入が減少することが主な理由であり、年間の時間外労働が960時間に制限されることで、時間外手当が大幅に減少します。この結果、他業種への転職を考える人が増える可能性があります。

運送業界全体の労働環境が厳しくなると新規参入者も減少し、人手不足が一層深刻化することが懸念されます。

また、現時点でトラック運転者の有効求人倍率は全業種平均の約2倍の数値であるため、新たなドライバーの雇用は高い給与を提示しなければ困難であると考えられます(※)。

※出典:国土交通省,統計からみるトラック運転者の仕事

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3. ドライバー不足への対策

上記の通り、ドライバー不足は物流業界の今後にも影響を及ぼします。

対策としては「ドライバー不足を他の手段で補う」ことが有効です。


具体的な方法をそれぞれ紹介します。


対策1:共同輸配送の導入

共同輸配送は、複数の運送会社が協力して荷物を配送するもので、ドライバーの労働時間の削減に有効です。

たとえば、異なる会社の荷物を1台のトラックにまとめることで、トラックの稼働率を向上させ、効率的な配送が期待できるでしょう。

ただし複数の企業が関与するため柔軟性に欠ける部分があり、追加の荷物への対応や現在地の追跡、到着日の予測が困難な場合があります。

また現状、配送に関わる情報を紙・FAXでやり取りしていることが多く、複数企業で荷物や荷届け先の情報をスピーディーに共有することができません。共同輸配送の実現には、配送情報をデータでやり取りできる環境づくりが大切です。


対策2:中継輸送の導入

複数のドライバーがリレー形式で運転する中継輸送は、ドライバーの長時間労働を減らすのに寄与します。

長距離輸送を1人で行うとドライバーの負担が大きいため、中継地点を設けて交代で運転することで解決できます。

しかし、中継地点での荷物の積み替えに時間がかかると、配達が遅れる可能性や作業中に荷物が破損するリスクがあります。中継輸送は一長一短があることを認識し、効率的に運用することが重要です。

対策3:モーダルシフトの導入

モーダルシフトとは、トラックで行っている貨物輸送を鉄道・船舶の利用へと転換することを指します。

長距離幹線輸送に鉄道・船舶を活用すれば、宿泊を伴うドライバーの拘束時間を減らせるため、長時間労働の抑制につながります。また、大量輸送が可能な鉄道・船舶を利用することで輸送効率が高まり、トラックの台数及びドライバー数を抑制することも期待できるでしょう。

その他、環境負荷の低減もメリットとして挙げられます。ただし、デメリットとしてはコストの増加や輸送リードタイムの延長などが想定されます。モーダルシフトは、荷主と運送会社がコミュニケーションを取り、双方が合意した上で進めることが必要です。

なお、政府はモーダルシフトに対して政策的な支援を行っています。こういった取り組みを活用してコスト増の抑制を検討すると良いでしょう。

※出典:国土交通省,モーダルシフト等推進事業

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対策4:配送システム・自動化機器の導入

効率的な配送システムや自動化機器を導入することで、ドライバーの負担を軽減し、運送効率を向上させることができます。たとえば、IT技術を活用した配送ルートの最適化や荷物の積卸し作業の自動化などです。

また、配送センターの集約や協力によって、効率的な運送体制を構築することも効果的です。

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対策5:在庫拠点の分散

在庫を複数の拠点に分散させることで配送距離を短縮できるため、長距離輸送の必要がなくなり、ドライバーの労働時間を短縮することが可能です。

しかし拠点を増やすと維持費や管理コストが増加するため、これらのバランスを取ることが求められます。また、各拠点に在庫を振り分ける作業も必要となります。在庫拠点の分散は配送の信頼性を高めますが、管理コストの増加を考慮しておくことが大切です。

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対策6:荷主と運送会社の連携

ドライバーが少しでも働きやすくなる環境づくりのため、荷主と運送会社の連携も必要です。荷主企業として運賃アップの交渉に真剣に臨みましょう。ドライバー確保・事業継続のためにどの程度の値上げが必要なのか、値上げ以外に代替手段はないのかなどをパートナー企業と一緒に模索する姿勢が大切です。

ドライバーが働き続けたいと思えるよう、荷待ち・荷役時間や過剰な附帯作業を削減するなどの取り組みが荷主企業にも求められます。荷役時間を減らすため、パレットや折り畳みコンテナ等の活用も検討しましょう。

※出典:国土交通省,トラックドライバーの採用・定着に向けた取り組み事例・ポイントを紹介します
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対策7:女性ドライバーの活用

国土交通省と全日本トラック協会がまとめた資料によると、女性のトラックドライバーはドライバー全体の3.4%に過ぎないとされます。過去10年間と比較しても大きな変化はなく、ドライバー不足が懸念される中、女性ドライバーを確保することは喫緊の課題です。

女性ドライバーを活用するには、働きやすい労働環境を整備することが欠かせません。具体的には、女性専用の更衣室やトイレなどの設置が挙げられます。他にも、荷主と運送会社の協力のもと、マテハンやパレットを導入するなどして荷役作業に伴う重労働を削減することが求められます。

また、家庭と仕事を両立できるワークライフバランスに配慮した働き方を積極的に導入することも重要と言えます。

※参考:国土交通省・公益社団法人全日本トラック協会,トラックドライバーの採用・定着に向けた取り組み事例・ポイントを紹介します

対策8:高齢ドライバーの支援

社会全般で高齢化が進む中、高齢ドライバーの活用は有力な選択肢となりえます。経験豊富なドライバーは即戦力としても期待できるためです。

まず、定年退職する人材に対して、定年の延長や短時間勤務などを提案することが考えられます。女性ドライバーの活用と同様に、荷役における機械化の推進を行うことも有効です。

ただし、高齢ドライバーには「身体機能の低下」という固有のリスクが想定されます。健康起因による事故を避けるためにも、運送会社には安全管理対策の充実が求められます。

※参考:国土交通省・公益社団法人全日本トラック協会,ドライバー不足の対策していますか?,p23-24


4.「ハコベル トラック簿」による物流効率化事例の紹介

前章ではドライバー不足への対策案を紹介しました。ここで「物流DXシステムの導入」についても詳しく説明します。

物流DXシステムは物流の課題をシステムで解決する手段であり、無駄な待機時間の抑制や効率的な配車を行うことができればドライバー不足の緩和につながります。本章ではそのような物流DXシステムの事例として「ハコベル トラック簿」を取り上げます。


「トラック簿」とは?

「トラック簿」とはハコベルが提供するトラック予約/受付システムであり、荷待ち時間の把握・削減に効果を発揮するツールです。受付/バース割当だけではなく、ドライバーの呼出しや実績管理/データ分析などの機能も持っています。

ハコベルでは配車計画・配車管理・動態管理などのシステムも提供しており、それらを組み合わせることで車両運行に関わる複数の課題を解決できるという強みがあります。

無駄な待機時間の抑制

「トラック簿」で実現可能なことの1つに「無駄な待機時間の抑制」が挙げられます。

早着順でトラックの入退場を受付している場合、到着が遅れて荷役作業を後回しにされるのを嫌ってドライバーは可能な限り早く来場しようとします。複数のドライバーが同様の動きをすると車両が集中してしまい、結果的に順番待ちが発生します。

トラック予約/受付システムを導入すると、ドライバーは予約時間を目安に入場するようになり順番待ちが無くなるため、不要な待機時間が抑制されます。

実際に「トラック簿」を導入した事例では、3時間以上の長時間待機が平均30分以下に削減されました。

※参考:ハコベル株式会社,トラック簿の導入により3時間以上の長時間待機が平均30分以下に削減

効率的な配車の推進

また「トラック簿」を導入することは「効率的な配車の推進」にもつながります。

ドライバーが倉庫に到着した後に受付を行う場合、倉庫側は受付後に荷役の準備を開始するため、荷役待ちの時間が発生します。また、準備完了後にドライバーを呼び出す際、倉庫内の作業者が倉庫の受付担当者を経由して電話で入場を依頼する運用を行っていると、多くの手間がかかってしまいます。

「トラック簿」にはスマホ遠隔受付の仕組みが備わっているため、到着前の受付や倉庫側の呼出しを効率的に実施できます。その結果、荷待ち時間の抑制など運転以外の時間を削減することが可能になり、他の案件をこなす時間を生み出すことができるでしょう。

他にも、紙の受付簿で発生していた記入漏れが無くなり、データを正確に把握できるようになります。データの手集計に必要な工数が減り、素早いアクションにつなげられるという効果も見られます。

このように、物流DXシステムの導入がドライバーの労働環境の改善につながり、ドライバー不足の緩和につながることが分かります。

※参考:ハコベル株式会社,受付業務の簡素化でドライバーからも好評。運送会社と共に創るセンター運営


まとめ

2024年問題に伴い物流業界では、ドライバーの働き方に関連する政策と労働条件に起因するドライバー不足が深刻化しています。これにより、運送コストの上昇・利益率の低下や供給チェーンの遅延、ドライバー離職の加速などさまざまな問題が発生しています。

これらの問題に対処するため、ドライバーの離職を防ぐとこはもちろん、ドライバー不足を何らかの手段で補うことが必要不可欠です。「ハコベル トラック簿」などの物流DXシステムを導入し、無駄な待機時間の抑制や効率的な配車の推進を実現することが求められます。

本記事の内容が各企業のドライバー不足解決の参考になれば幸いです。


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