2024年8月8日
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2024年問題における荷主の責任とは?影響を避けるための3つの対策を解説

2024年問題における荷主の責任とは?影響を避けるための3つの対策を解説

働き方改革関連法によって、2024年4月から物流トラックドライバーの年間時間外労働の上限が960時間に制限されました。それに伴い、荷主も運賃の値上げや長距離輸送が難しくなるなどの影響を受けると予測されます。さらに、トラックドライバーの違法労働に荷主も関与していた場合、社会からの信用が大きく低下する厳しい罰則を受けるおそれもあります。


これらのリスクを避けながら物流を継続するために、荷主も2024年問題への対策を講じる責任が求められています。そこで本記事では、2024年問題における荷主の責任や対策について解説します。

この記事でわかること

  • 2024年問題における荷主の責任
  • 荷主ができる3つの対策

1. 2024年問題における荷主の責任

2024年問題に対して、荷主は運送会社と一体となって対策を講じる必要があります。本章では、2024年問題において荷主が果たすべき責任を解説します。


ポイント1:輸送方法の見直し

2024年問題に伴い、トラックドライバーの時間外労働は960時間までに制限されました。トラックドライバー1人あたりの労働時間が短くなるため、少ないドライバーでも効率よく輸送できる方法への見直しが必要です。


ポイント2:荷待ち時間の削減

トラックドライバーが長時間労働を強いられる原因が、荷待ち時間です。1ヶ所あたりの荷待ち時間が3時間以上になるドライバーも少なくありません。しかし、荷待ち時間を「休憩」と捉えられることも多く、荷主から追加料金を支払われない実態が問題視されてきました。


トラックドライバー1人あたりの労働時間が限られることや長時間労働を防ぐためにも、荷待ち時間の削減は必須です。国のガイドラインでも、荷待ち・荷役作業等にかかる時間を合計2時間以内とすることが荷主に求められています。(※)


※出典:経済産業省,物流の適正化・生産性向上に向けた 荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン


ポイント3:荷役作業の効率化

荷待ち時間を削減するためには、荷役作業を効率化して正確かつスピーディーに行う必要があります。また、トラックドライバーに過度な負担をかけている作業がないか確認し、改善に取り組みましょう。荷役作業など附帯業務の合理化について要請があった場合は、真摯に協議に応じる姿勢が求められます。


ポイント4:納品期限の見直し

トラックドライバーの労働時間が見直されたことで、これからは長距離輸送を1人で行うことは困難になります。これまでの納品期限では、トラックドライバーの長時間労働だけではなく、納品が間に合わないなど荷主にも影響が出かねません。そのため、余裕ある納品期限へ見直す必要があります。


ポイント5:適正な運賃へ見直し

1人あたりの労働時間が制限されたことによって、トラックドライバーの運送力が低下します。結果、荷物を運んで欲しい荷主の需要と、運送会社の供給のバランスが崩れ、運賃の値上げが発生するでしょう。条件によっては運送会社から契約を断られる可能性もあります。そのため、適正な運賃への見直しも荷主の果たすべき責任です。


国のガイドラインでも、運賃水準の引き上げ幅を以下のように提示しています。


  • 平均約8%の運賃引き上げ
  • 運賃表の算定根拠となる原価のうち、燃料費を120円に変更し、燃料サーチャージも120円を基準価格に設定
  • 荷待ち・荷役の時間が合計2時間を超えた場合は割増率5割を加算する


上記を参考に、適正な運賃への見直しを検討しましょう。


ポイント6:長時間労働の見直し

荷待ち時間の長さや長距離運送などが原因で、トラックドライバーは長時間労働を強いられています。トラックドライバーを守り、人員の離職や運送会社との契約打ち切りを避けるためにも、長時間労働の見直しが必須です。ドライバーが少しでも働きやすくなる環境づくりのために、運賃アップや荷役作業の効率化など、荷主も運送会社へ協力する責任があります。


ポイント7:トラックドライバーへの協力

トラックドライバーの労働環境改善のために、荷主の協力が欠かせません。国は2023年7月から、トラックGメンによる悪質な荷主・元請事業者などへの是正指導を行っています。


トラックGメンとは、トラック運送における不適正な取引の監視を強化するために、国土交通省が創設した専門部隊のことです。違反原因行為の疑いのある荷主や元請事業者への「働きかけ」「要請」「勧告・公表」を行い、改善に向けた計画策定を指導しています。(※)


以下のようなケースで、トラックGメンから違反行為と指摘を受ける場合があります。


  • 長時間の荷待ち
  • 契約にない附帯作業(手作業での積込作業、ラベル貼り、検品)
  • 運賃・料金の不正な据置き(燃料サーチャージや運賃の価格交渉に応じない)
  • 無理な運送依頼(無理な配送時間の指定)
  • 過積載運送の指示・容認
  • 異常気象時の運送依頼


国土交通省の調査によると、令和6年6月30日現在、荷主による違反原因行為の割合は、長時間の荷待ちが53.3%と過半数を占めています。荷主としても、荷役作業の効率化を図るなどトラックドライバーに協力する責任があります。

※出典:国土交通省,「トラックGメン」について

    国土交通省,「トラックGメン」とは…



2. 2024年問題に関して荷主ができる3つの対策

2024年問題に関して荷主ができる対策は以下の3つです。


責任

対策

輸送方法の見直し

輸送方法の効率化

・共同配送

・輸送網の集約

・中継輸送

・モルダーシフト

荷待ち時間の削減・荷役作業の効率化

物流業務の効率化

・パレットの使用

・仕分け作業の自動化

・物流量の平準化

・配送ルート最適化システムの導入

長時間労働・納品期限・運賃の見直し

契約内容の適正化

・適正な納品期限の設定

・運賃契約の適正化

・ドライバーの安全確保


それぞれ、詳しく解説します。


対策1:輸送方法の効率化

働き方改革関連法によって1人あたりの労働時間が短くなるため、長距離輸送が難しくなります。限られた労働時間内で多くの荷物を運ぶために、輸送方法の効率化が必須です。


輸送方法の効率化には、以下のような方法があります。


  • 共同配送
  • 輸送網の集約
  • 中継輸送
  • モルダーシフト


上記の方法を取り入れて、輸送方法の効率化に努めましょう。


関連記事:2024年問題対策!モーダルシフトの概要やメリット、取り組み事例を解説


対策2:物流業務の効率化

荷待ちは、トラックドライバーが長時間労働を強いられる大きな原因です。法改正によって1人あたりの労働時間が短くなるため、短い時間・少ない人数で効率的に物流業務を進める必要があります。


物流業務の効率化には、以下のような方法があります。

  • パレットの使用
  • 仕分け作業の自動化
  • 物流量の平準化
  • 配送ルート最適化システムの導入


物流業務を効率化して、トラックドライバーの労働時間削減に努めましょう。


関連記事:物流効率化に向けた政府の取り組みとは?荷主企業に求められることも解説


対策3:契約内容の適正化

働き方改革関連法によって、これまでどおりの配送時間や金額での契約継続は困難になります。そのため、配送時間や金額などの契約内容を適正に見直す必要があります。


適正化が必要な契約内容は、以下のとおりです。(※)

  • 適正な納品期限の設定
  • 運賃契約の適正化
  • ドライバーの安全確保


上記の契約内容を見直して、トラックドライバーの働きやすい環境づくりを進めましょう。


※出典:経済産業省,物流の適正化・生産性向上に向けた 荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン



まとめ

2024年問題をうけて、トラックドライバーの長時間・低賃金労働を見直すためには、運送会社だけでなく荷主も対策を講じる責任があります。トラックドライバーの違法労働に荷主も関与していた場合、トラックGメンによる「働きかけ」「要請」「勧告・公表」が行われるため注意が必要です。輸送方法や物流業務の効率化、契約内容の適正化など、トラックドライバーが働きやすい環境づくりのために荷主も運送会社へ協力していきましょう。

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