TMSで物流を最適化|TMSの機能、事例、普及の背景を詳しく解説

TMSで物流を最適化|TMSの機能、事例、普及の背景を詳しく解説

物流業界が直面する燃料コスト高騰や人手不足などの課題を解決するため、TMS(輸配送管理システム)が注目されています。TMSには、輸送計画の自動化、ルートの最適化、リアルタイム追跡などの機能があり、業務の効率化やコスト削減が期待できます。

本記事では、TMSの物流における役割や事例、普及の背景、今後について詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 物流におけるTMSの役割
  • TMSの導入事例

1. 物流におけるTMSの役割

TMSとは輸配送管理システムのことで、Transport Management Systemの頭文字です。

物流に関するシステムでは、倉庫管理システム(WMS)が知られています。WMSは在庫管理など倉庫内の情報を管理するのに対し、TMSは輸配送を管理するシステムです。その役割は主に、配車機能や運行ルートの最適化などですが、日報作成や請求書発行など管理機能を持つものもあります。以下に、TMSの具体的な役割について詳しく解説します。

輸送計画

輸送計画に関する役割は以下の3つがあります。

配車計画の自動化

車両の利用状況や積載量などの複雑なデータをTMSが自動で分析し、最も効率的な配車計画を瞬時に立案します。従来の手作業による計画立案では、多くの時間と労力が必要でしたが、TMSにより配車が自動化されるため、業務効率化や人手不足の解消につながります。

また、手作業の場合、配車担当者の経験やノウハウにより配車の品質や効率に差が出てしまうことがありますが、TMSによりそれらが標準化され、人的ミスの削減も期待できるでしょう。

※参考:経済産業省,物流効率化に資する「物流デジタルサービス」事例集,p68

積み付け計画の管理

貨物のサイズ、重量、形状を考慮し、車両やコンテナに積み込む最適な配置を自動で提案できるTMSもあります。システムによっては3Dシミュレーション画像で確認し、手動で修正することも可能です。この機能により過積載や空積みを防ぐことができるため、積載率の向上や無駄な運行の削減につながり、全体的な輸送効率を高めることができます。

輸送計画の自動化とルート最適化

TMSはAIやアルゴリズムを活用し、交通状況、道路の混雑具合、距離、天候などの複数の要素をリアルタイムに分析し、最短かつ最も効率的なルートを自動的に提案します。これにより、ドライバーが無駄な時間や距離を費やすことなく、迅速に目的地に到達することが可能です。TMSを導入することで燃料費の削減や輸送時間の短縮が期待できます。

また、手作業によるルート選定の場合、担当者の経験やノウハウによりルート選定の品質や効率に差が出てしまうことがありますが、TMSによりそれらが標準化され、人的ミスの削減も期待できるでしょう。

※参考:経済産業省,物流効率化に資する「物流デジタルサービス」事例集,p68

GPSを使った輸送車両のリアルタイム追跡

TMSに組み込まれたGPS機能を活用することで、輸送車両の現在地をリアルタイムで把握できます。これにより、管理者は輸送の進行状況を即座に確認し、遅延やトラブルが発生した場合にも迅速に対応することが可能です。

また、顧客からの問い合わせにも正確な位置情報を提供できるため、信頼性の高いサービスを実現し、顧客満足度の向上が期待できます。

※参考:経済産業省,物流効率化に資する「物流デジタルサービス」事例集,p68

関連記事:動態管理とは?荷主の立場で動態管理システムを活用するメリットを解説

日報等帳票作成、請求書発行

TMSには日報作成や運賃計算、請求書発行機能を備えたものがあり、ペーパーレス化や作業負荷の軽減、人的ミスの防止が期待できます。また、請求書発行にかかる時間や人的リソースを削減し、戦略的な業務に集中できるようになります。

例えばハコベル株式会社の物流DXシステムでは、配車依頼から運行管理、請求確認までをWeb上で完結でき、従来のFAXやエクセル作業を効率化します。

※参考:ハコベル株式会社,物流DXシステム

データの一元管理

TMSをWMSやバース予約システムなどと連携することにより、データの一元管理が可能です。これにより、様々なデータの集計、分析が可能となり、長期的な物流改善やコスト改善が期待できます。

ハコベル トラック簿|成長率No.1トラック予約受付(バース管理)システム


2. TMS導入の事例

以下に、TMS導入の具体的な事例を紹介します。

クラウド型TMSの例

ーハコベル配車計画ー

ハコベル配車計画は、AIアルゴリズムを活用し、配車計画業務の標準化・高速化・コスト最小化を実現するTMSです。

・路線便とチャーター便の最適な組み合わせをAIが自動で計算。

・配車担当者の経験や勘に頼らない、誰でも使える標準化された配車体制を構築。

・輸送モードやチャーター台数を、物流コストが最小になるよう最適化。

・納品先・商品データの一括設定機能。

・車両一覧表など各種帳票の自動作成機能。

・ハコベル配車管理など他製品とシームレスに連携可能。

配車業務の属人性を解消し、AIによるルートと便種の最適割り振りで、戦略的な物流コスト削減が期待できます。

ハコベル|配車計画

ーハコベル配車管理ー

ハコベル配車管理は、以下の機能を持つTMSです。

・配車依頼の一元管理

・リアルタイム更新

・ドライバーアプリ連携(運行ステータスをリアルタイムに関係部門へ通知)

・発注・請求管理

配車業務のデジタル化により、業務時間が4〜8割削減される実績があります。

ハコベル|配車管理

■ハコベル配車管理の導入事例

株式会社NTTロジスコは、物流業務のデジタル化を推進するため、2020年6月にハコベル配車管理を導入しました。全国に29拠点を持ち、ICTや医療機器など幅広い分野で3PL事業を中心に輸配送サービスを展開しています。属人化していた配車業務やアナログな管理の問題を解決するために、このシステムを採用しました。

関連記事▶ 「ハコベル配車管理で属人化していた“輸配送ノウハウの標準化”を実現 データの可視化でホワイト物流の取り組みも加速」NTTロジスコ様

導入による効果

ハコベル配車管理の導入により、属人化していた輸配送ノウハウが標準化され、1日平均3時間の稼働削減を実現しました。具体的な効果は以下の通りです。

・配車業務の見える化が進み、作業ステータスの共有や手配漏れの防止につながった。

・顧客への迅速な情報共有が可能となった。

・ドライバーアプリの導入により業務効率が向上し、メールやFAXが減少した。

・情報のデータ化により請求事務処理の時間の削減につながった。

関連記事▶ 「ハコベル配車管理で属人化していた“輸配送ノウハウの標準化”を実現 データの可視化でホワイト物流の取り組みも加速」NTTロジスコ様

■ハコベル配車計画、配車管理の導入事例

日本ロジテム株式会社では、紙による出荷依頼書管理と担当者に依存した配車業務が課題でした。2023年6月、これらを解決するためにハコベル配車計画とハコベル配車管理を導入し、以下の効果がありました。

導入効果

・導入初日から出荷依頼書の100%ペーパーレスを実現。

・業務時間を約51%削減。

・配車漏れゼロ、人的ミス削減。

・属人化解消により、人材不足の中でも柔軟に業務を回せる体制を実現。

・積載率のデータを元にCO2排出量の可視化に向けた体制も整備中。

導入成功のポイント

以下に導入成功のポイントを整理しました。

・現場経験者が課題を明確に把握し、自社に最適なシステムを選定したこと。

・ハコベル配車計画は、日本ロジテムで使用しているWMSと連携が可能で、既存業務フローに無理なく組み込めたこと。

・ハコベル側のサポート体制が整っており、現場の改善要望に迅速かつ柔軟に対応できたこと。

・操作性が高く、現場も短期間でシステムに順応できたこと。

ハコベルの配車計画と配車管理は、それぞれ計画フェーズと運用フェーズを担うクラウド型TMSツールであり、両方を導入することでTMSの効果を最大化できます。

関連記事▶ 「自動配車システムを導入したその日からペーパーレス100%と業務時間の約51%削減を実現。今後は更なる効率化とCO2排出量削減を目指したい」日本ロジテム株式会社


3.TMSを選ぶ際の4つのポイント

自社に合ったTMSを選ぶためには、以下4つのポイントを押さえておく必要があります。

1. 自社課題と導入目的の明確化

TMS選定の第一歩は、自社の課題を明確にすることです。属人化や業務の非効率、配車の最適化など改善したい点を洗い出すことで、必要な機能が見えてくるでしょう。

2. 現場業務との整合性

TMSは既存の業務フローやシステムとの親和性が重要です。現場がスムーズに使える操作性や、WMS・ERPとの連携が可能かどうかを事前に確認することで、導入後の混乱を防ぐことができます。

3.コストと導入期間のバランス

クラウド型TMSは初期費用50万円〜数百万円、月額数万円〜数十万円が目安です。オンプレミス型では初期費用が数百万円以上かかるケースもあります。導入期間も含め、企業の予算や導入スケジュールに見合った選択が必要です。

※参考:経済産業省,荷主・物流事業者のための物流効率化に資する「物流デジタルサービス」事例集,p76,86

4. サポート体制の充実度

導入後の定着にはベンダーの支援体制も欠かせません。操作説明やトラブル対応、機能追加の柔軟性など、継続的なサポートがある企業を選ぶことで、安心して運用できるでしょう。

関連記事▶物流SaaSとは?代表的なサービスの紹介から選定のポイントまで徹底解説


4.TMSが普及する背景

TMS普及の背景には、物流業界でのコスト削減や業務効率化のニーズがあり、TMSは燃料費高騰や人手不足の解決策として注目されています。以下に詳しく解説します。

燃料コストの高騰

ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇や世界的なインフレにより、燃料費の高騰が続いています。物流業界では燃料費が大幅に上昇し、企業の物流コストに大きな影響を与えています。特に長距離輸送を主とする企業にとって、燃料費の増加は深刻な課題です。

TMSはルート最適化によって不要な距離を削減し、燃料消費を抑えることを可能とするため、企業にとって経済的メリットが高いと言えます。

※参考:経済産業省資源エネルギー庁,令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022) 第3章 第2節 世界的なエネルギー価格の高騰とロシアのウクライナ侵略

人手不足

物流業界では、特にドライバー不足が深刻な問題となっています。少子高齢化に伴い適切な人材確保が困難な状況です。労働時間の短縮や労働環境の改善が求められる中、さらに少ない労働力で効率的な業務を維持する必要があります。

TMSによって配車や輸送計画の自動化ができれば、労働力の効率的な活用が実現します。限られた人材で多くの業務を処理することができ、人件費の削減にもつながるでしょう。人手不足や業務負担軽減に対応するため、TMSは欠かせないツールです。

※参考:国土交通省, 総合物流施策大綱(2021年度~2025年度) 概要,p1

関連記事▶ 2024年問題によるドライバー不足の対策方法とは?原因や影響も解説

モーダルシフトなど環境負荷低減への対応

物流業界で地球温暖化対策が進む中、モーダルシフトが推進されています。モーダルシフトとはトラック輸送から環境負荷の小さい鉄道や船舶へ転換すること(※)で、TMSはこれを効果的にサポートします。TMSが異なる輸送手段を統合管理し、効率的な輸送ルートを自動提案することで、CO2排出量を削減します。これにより、持続可能な物流体制の構築が期待されます。

※参考:国土交通省, モーダルシフトとは

関連記事▶ 2024年問題対策!モーダルシフトの概要やメリット、取り組み事例を解説


5.まとめ

TMSは、輸送計画の自動化、ルート最適化、リアルタイム追跡機能などの役割を果たしており、業務の効率化や企業の競争力強化が期待できます。燃料費の高騰や人手不足といった業界課題に対応するため、TMSは今後ますます注目され、機能も充実すると予想されます。自社の課題に合った機能のTMSを導入することで、効率化やコスト削減などが期待できるでしょう。



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