物流自動化とは?自動化で実現する効率化とコスト削減の未来

物流自動化とは?自動化で実現する効率化とコスト削減の未来

物流業界では人手不足やコスト増加が課題となっており、その解決策として物流業務の自動化が注目されています。自動化技術の導入は、業務効率の向上だけではなく、作業ミスの低減やコスト削減に寄与します。

本記事では、物流自動化の基本概念から具体例、導入のメリットや課題、さらに成功事例まで詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 物流自動化の具体例

1. 物流の自動化とは

物流業界における自動化は、労働力不足や効率化ニーズへの対応策として進化を続けています。国土交通省の「総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)」においても物流DXや自動化が推進されています。ここでは、物流自動化の基本概念、現状のトレンドについて詳しく解説します。

物流自動化の現状とトレンド



※出典:国土交通省,総合物流施策大綱(2021年度~2025年度) 概要,p2

物流の自動化とは、手作業をデジタル技術や機械化により効率化することを指します。物流自動化は、人口減少による労働力不足や業務効率化への対応策として注目されており、AIやIoT、ドローンなどの革新技術が次々と導入されています。

例えば、配送業務ではドローン配送や自動運転トラックの実証実験が進み、将来的には無人化が期待されています。また、物流全体の効率化を目指す「フィジカルインターネット」や、仮想空間で最適な物流をシミュレーションする「デジタルツイン」も注目されています。このように物流自動化のトレンドは年々進化しており、企業にとってはコスト削減や効率化のチャンスとも言えるでしょう。

※出典:国土交通省,総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度),p6

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物流自動化によるメリットと課題

次に、自動化技術導入によるメリットと課題について解説します。

物流自動化のメリット

物流の自動化は、作業効率の向上や人的ミスの減少、品質管理の改善に寄与します。プロセスの単純化と標準化によりスキルの伝承が容易になり、多様な労働力の確保が可能です。その結果、人件費削減や労働力不足の解消が期待できます。さらにデータ管理の効率化により、在庫の最適化や予測精度の向上も実現します。

※参考:国土交通省,総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度),p14



物流自動化の課題

自動化には高額な初期投資が必要であり、特に中小企業にとっては大きな負担となる可能性があります。そのため国は「自立型ゼロエネルギー倉庫モデル促進事業」や「物流総合効率化法」など、導入支援策を強化しています。

また、導入後のメンテナンス費用や操作方法に慣れるための社員教育、さらに既存のシステムや設備との連携も必要なため、スムーズな導入が難しい場合もあります。

※参考:国土交通省,総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度),p17

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2. 物流自動化の具体例

物流自動化技術にはさまざまな種類があります。本章では、倉庫内作業、配送業務、在庫管理、仕分け作業、荷卸し・積み込み、運行管理の6つのカテゴリに分けて具体例を紹介します。

倉庫内作業

以下に倉庫内で使用されている自動化技術を紹介します。

自動ピッキングシステム

自動ピッキングシステムは、商品のピッキング作業を自動化するシステムです。ピッキングミスを減らし作業スピードを上げるだけでなく、作業員の移動時間を短縮し、倉庫全体の効率化に貢献します。

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無人搬送車(AGV)

自動棚システム(AS/RS)は、商品の保管棚を自動的に操作し、必要なアイテムを素早く取り出すシステムです。倉庫内の空間を最大限に活用でき、保管効率が向上します。

倉庫管理システム(WMS)

倉庫管理システム(WMS)は、在庫状況や入出庫情報をリアルタイムで把握・管理するシステムです。これにより商品の位置確認が容易になり、入出庫作業が効率化します。さらに、WMSの分析機能で在庫過多や不足を防ぎ、適切な在庫管理が可能になります。

※関連記事:WMS(倉庫管理システム)とは?概要や役割・メリット・導入事例を解説

自動フォークリフト

自動フォークリフトは、荷物の持ち上げや移動を自動化するフォークリフトです。倉庫内の作業効率を高め、作業者の負担軽減と安全性の向上に寄与します。

配送業務

以下に、配送業務で使用されている自動化技術を紹介します。

ドローン配送

ドローン配送は、山間部や過疎地などアクセスが難しい地域での配送を想定した技術です。2018年度以降、国による実用化に向けた支援が実施されています。実現すれば短時間での配送が可能となり、配送コストの削減や顧客満足度の向上が期待されています。

※参考:国土交通省,総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度) ,p6

※関連記事:ドローン物流の未来|革新的配送システムの仕組みと導入メリット

自動運転トラック

自動運転トラックは、ドライバーの負担軽減と安全性向上を目指した技術で、特に長距離輸送での効率向上が期待されています。しかし、安全性の確保や法規制の整備が課題となっています。2021年2月には新東名高速道路の一部区間で、後続車の運転席を無人とした状態でのトラック隊列走行技術が実現されました。

※参考:国道交通省,総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度) ,p6

無人配送ロボット

都市部や施設内での小口配送に使用される無人配送ロボットは、ラストワンマイルの自動化に貢献しています。2023年の道路交通法改正で一部公道の走行も可能となり、飲食店からのデリバリーなどさまざまな用途での活用が期待されています。

※参考:経済産業省, 自動配送ロボットの社会実装に向けて,p2-6

在庫管理

以下に、在庫管理で使用されている自動化技術を紹介します。

無線識別技術(RFID)

無線識別技術(RFID)は、無線通信を利用して在庫情報を管理する技術で、商品の位置や数量をリアルタイムで把握することが可能です。在庫管理の精度が向上し、在庫不足や過剰在庫の予防にも役立ちます。

※関連記事:マテハンの基本と役割とは?導入で得られるメリットと事例解説

ドローンによる在庫チェック

ドローンを用いた在庫チェックは、倉庫内をドローンが自動で巡回し、商品数や配置を確認する技術です。これにより在庫確認のための労働力が削減され、効率的な在庫管理が可能となります。

仕分け作業

以下に、仕分け作業の自動化技術を紹介します。

自動仕分け機(ソーター)

自動仕分け機(ソーター)は、商品の種類や配送先に応じて自動的に仕分けを行う機械です。大量の商品を短時間で処理できるため、物流センターでの作業スピードが向上します。仕分け精度も高く、ミスの削減にも効果的です。

荷卸し・積み込み

以下に、荷卸しや積み込みで使用されている自動化技術を紹介します。

自動デバンニング(荷卸し)ロボット

コンテナから商品を自動で卸すロボットで、人手を介さず迅速な作業を実現し、人件費削減や作業時間短縮に寄与します。

パレット積卸しロボット

パレットへの積卸しを自動で行うロボットで、作業員の負担を減らします。そのため人手不足の解消や作業の効率化が図れます。

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運行管理

以下に、運行管理で使用されている自動化技術を紹介します。

輸配送管理システム(TMS)

TMSは、輸配送の効率化と最適化を支援するシステムで、ルート設定や燃料費削減につながります。輸送コストの削減とともにリアルタイムでの車両管理が可能となり、運行の安全性も向上します。

※関連記事:TMSとは何か?求められる理由やメリット・導入のポイントを解説

デジタルタコグラフ(デジタコ)

デジタコは、運転時間や速度の記録をデジタルで管理し、安全運転の確保や法令遵守に役立つツールです。ドライバーの過労防止や事故防止に貢献し、安全な運行を支援します。

トラック予約システム

トラック予約システムは、荷主や倉庫がトラックの入庫時間を事前に調整し混雑を避けることで、効率的な運行管理を支援します。これにより、待機時間の削減とスムーズな貨物ハンドリングが実現し、全体の物流効率向上につながります。


3. 物流の自動化技術導入の事例

自動化技術の導入には、数十万円から数百万円の導入コストが発生しますが、月額制やリースなど、初期費用を抑えて導入できるサービスもあります。

月額制の倉庫ロボットサービスの例:三菱商事株式会社の「Roboware」

「Roboware」は、設計・導入から運用・保守までを一括管理する月額制の倉庫ロボットサービスです。その一環である「Ranger GTP」は、商品の入庫・保管・出庫を自動化し、ピッキング生産性を従来の2倍以上に向上させる棚搬送型ロボットです。他にも多様な倉庫ロボットがあり、ロボットにより月額料金は異なります。Ranger GTPの場合の月額料金は、以下の通りです。

台数

月額料金

10〜20台

月額24万円/台

21〜50台

月額17万円/台

51〜100台

月額15万円/台

日本梱包運輸倉庫株式会社で導入したところ、高齢従業員の作業負荷が軽減され、パートや海外実習生など誰でも簡単・正確に作業ができるようになりました。

このように、月額制サービスを利用することで導入のハードルを下げ、自動化技術の効果を試すこともできます。

※参考:国土交通省,物流・配送会社のための物流DX導入事例集,p13


4. まとめ

物流の自動化は物流業界に不可欠であり、技術の進歩によりさらなる高度化が期待されます。しかし、自動化技術の導入にはコストや運用面での課題を伴うため、自社の業務に適した技術を選び、コストと効果を比較しながら導入を検討する必要があるでしょう。



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