物流業界は、ネット通販の需要拡大などに伴い迅速な配送が求められる一方で、人材不足など深刻な課題を抱えています。これらの問題を解決する手段として注目されているのが「物流ロボット」です。
物流ロボットは、単純作業の自動化や省力化を進めることで人手不足を補い、業務の効率化に貢献します。ピッキング作業を行うロボットや荷物を運搬してくれるロボットなど、さまざまな種類が導入されています。
物流ロボットとは、物流業務における「ピッキング」「仕分け」「運搬」などの単純作業を自動化するために開発されたロボットです。主に倉庫や物流センターで活躍し、人手不足の解消や業務効率化のために導入が進んでいます。
種類もさまざまで、人が行うべき判断や作業は人が担当し、単純作業はロボットが行う体制ができれば、業務全体の効率向上につながるでしょう。
物流ロボットには、商品の運搬やピッキング作業など、目的に合わせて多くの種類があります。ここでは、物流ロボットの種類と役割を6つ解説します。
自動搬送ロボットのAGVは「Automatic Guided Vehicle」の略で、搬送業務を目的としたロボットです。主に倉庫や物流センター内で、商品や資材を自動的に搬送する役割を担います。
AGVは、床面に設置された磁気テープやガイドに従って走行し、商品を作業者のもとまで運ぶシステムです。作業者が倉庫内を歩き回る必要がなくなり、移動による時間ロスを削減できます。
人手不足の解消や、運搬業務の効率化において効果を発揮するロボットです。
※参考:国土交通省,物流施設の自動化の現状について,p4
自律走行型ロボットのAMRは「Autonomous Mobile Robot」の略で、物流センターや倉庫内で商品や資材を自律的に搬送するロボットです。
AGVとは異なり、周囲をセンサーで検知することで自動的に障害物を避け、最適なルートを選択して移動します。柔軟にマップを作成し、作業エリアの拡大や変更にも対応できます。
また、スタッフがピッキング作業を行うと、自律的に次の目的地に移動するなど人との協働作業にも優れています。AMRはその柔軟性と自律性が特徴です。
※参考:国土交通省,物流施設の自動化の現状について,p4
棚搬送ロボットのGTPは「Goods To Person」の略で、商品を棚ごと作業員のもとに運ぶロボットです。従来は作業員が商品棚を探す必要がありましたが、GTPを導入すれば移動の手間が省け、効率的な作業が可能になります。
また、作業員が必要な商品をピックした後は、棚をもとの位置に戻してくれます。作業員の移動ロスが削減され、一般的には人力のみで行う作業の3~4倍の効率化が期待されています。
自動フォークリフトのAGFは「Automated Guided Forklift」の略で、フォークリフト作業を自動化したロボットです。荷物の積み上げや搬送作業がシステムやセンサー、GPSなどにより自動で制御されます。
高さ3,000mmまでの積み上げ作業や田の字型・川の字型など異なるパレットの搬送のほか、坂道・高荷重の条件でも安定した走行が可能です。自動で荷物の持ち上げ・降ろしができるため、人手不足を補うだけでなく、リスクのある作業環境でも活躍します。
※参考:国土交通省,物流・配送会社のための物流DX導入事例集,p10
ソーターロボットは、荷物の搬送と仕分けを同時に行います。大量の荷物を短時間で正確に仕分けられるため、倉庫内の業務効率向上に貢献します。
代表的なタイプには、ポップアップ式・スライドシュー式・クロスベルト式があり、商品の形状や重量に応じて機種を選ぶことが可能です。
※参考:国土交通省,物流施設の自動化の現状について,p5
ピッキングロボットは、人に代わってピッキング作業を自動化するロボットです。特にアーム型のピッキングロボットは、AMR(自律走行型ロボット)と連携することで、ピッキングから搬送までの一連の作業を効率化できます。
人によるピッキング作業ではミスを避けられませんが、ピッキングロボットを活用することで精度が向上し、業務品質の向上が期待できます。ピッキングロボットの導入により、作業効率の向上とコスト削減が可能です。
※参考:国土交通省,物流施設の自動化の現状について,p5
物流ロボットを導入するメリットは、以下の4つです。
1. 業務効率化によるリードタイム短縮
2. 労働力の確保
3. 人為的ミスの削減
4. 業務コストの削減
それぞれ詳しく解説します。
例えば、自律走行型ロボット(AMR)を導入すれば作業員は商品の選別に集中でき、「歩く」作業をロボットに任せることが可能です。無駄な移動時間が削減され、作業のスピードが向上するでしょう。
またロボットは、夜間も含めた継続的な作業が可能なため、生産性が大幅に向上します。結果的にリードタイムが短縮されることで、トラックドライバーの荷待ち時間短縮にもつながります。
ロボットは人間の作業速度の3〜4倍の効率で任務を遂行できると言われており、人的リソースをコア業務に集中させることが可能です。
また、ロボットは24時間365日稼働可能なため、夜間や長時間労働が必要な現場でも効率を落とさず、生産性を大幅に向上させられます。
人間が行う作業には、注意を払ってもミスが発生する可能性があり、特に疲労や集中力の低下が影響する場面ではヒューマンエラーが増加します。ヒューマンエラーを防ぐためにはダブルチェック体制が必要ですが、追加の人手やコストがかかるでしょう。
一方で、物流ロボットは設定されたタスクを正確に実行し、ミスを起こさず安定した業務品質を担保できます。結果として、ミスによるトラブルの発生率を下げるだけでなく、従業員の負担軽減にもつながるでしょう。
従来は人手で行っていた単純作業を自動化することで人件費を大幅に削減できるほか、求人や従業員の教育にかかるコストも削減できます。
また、ロボットは24時間365日稼働できるため、夜間や長時間作業でも追加の人員や残業代が必要ありません。特に、大規模な物流倉庫では多くの作業員を必要とするため、ロボットの導入による省人化の効果が顕著で、トータルでのコストダウンが期待できます。
※関連記事:物流効率化に向けた政府の取り組みとは?荷主企業に求められることも解説
物流ロボットは、現場における業務効率化やコスト削減、労働力の確保に大きく貢献する技術です。自動化により人的ミスを削減し、24時間稼働可能な点で生産性を向上させます。
また、物流ロボットの活用は、慢性的な人手不足の解消や従業員の負担軽減にもつながるでしょう。導入には初期コストがかかるものの、長期的には業務効率化やコスト削減につながるため、ぜひ導入をご検討ください。