2025年1月21日
シェアシェア

物流業界の市場規模とは?特徴や近年の変化の影響、成長分野を解説!

物流業界の市場規模とは?特徴や近年の変化の影響、成長分野を解説!

経済の血液とも言われる物流。現代社会で必要な物資の物理的な流動の多くは物流業界が担っており、物流業界の市場規模(営業収入)は、国土交通省の調査では全体で28~29兆円と推計されています。

ただし、物流業界の中でも業種ごとに異なる特徴があり、それらを明らかにできれば各業種の詳細な動向が理解できます。また、各業種の近年の変化を見ていくことで、物流業界に与えている影響も理解できるでしょう。

加えて、今後の見通しを立てる上では、物流業界における成長分野についても理解することが有効と言えます。

本記事では、業種単位で見た物流業界の市場規模、市場規模の変化による影響、注目を浴びる成長分野などについて解説します。

この記事でわかること

  • 物流業界の市場規模とは
  • 上記の影響と成長分野

1. 業種別に見た物流業界の市場規模

物流業界は陸運、海運、空運、貨物流通施設といった業種で区分できます。本章では全体像を把握した上で、業種別に見た特徴を解説します。

なお、業種別の特徴を把握しやすくするために「貨物利用運送事業」は輸送手段別にまとめますが、「陸運」はトラックと鉄道に分けて記述します。

物流業界全体の市場規模

物流業界全体の市場規模(営業収入)は民間調査会社の調査レポートの他、物流事業者が国土交通省に提出する事業概況報告書を基にした国土交通省のまとめから推測できます。

国土交通省の資料によると、2020~2022年度(令和元~3年度)の物流業界の主な業種の営業収入の合計は28~29兆円と推測されます。

※出典:経済産業省・国土交通省・農林水産省,資料2 我が国の物流を取り巻く現状と取組状況,p6

国土交通省,我が国の物流を取り巻く状況,p2

国土交通省,資料1 物流を取り巻く現状と取組状況について,p1

業種別に見た市場規模の特徴

以下では業種別にその特徴について説明します。

・トラック

市場規模(営業収入)は年間約19兆円であり、物流市場の2/3を占めます(※1)。事業者の多くはBtoBの輸送を担当する運送会社ですが、消費者に馴染みのある宅配便も含まれます。

2023年度(令和5年度)の宅配便取扱個数は50億個を超え、前年度比約0.3%の増加となりました。宅配便におけるトラック運送でのシェアは上位3社で約95.0%を占めており、寡占状態となっています(※2)。

・鉄道

国土交通省資料では実運送事業者はJR貨物1社しか公開されていません。鉄道の市場規模(営業収入)は利用運送事業を含めて年間約4,500~4,900億円です(※1)。近年では自然災害やコロナ禍の影響を受けて伸び悩んでいます。

※出典:日本貨物鉄道株式会社,鉄道コンテナの更なるご利用拡大に向けて(官民物流標準化懇談会 第5回モーダルシフト推進・標準化分科会),p2

・海運

海上輸送を行う事業は、国内輸送が対象の内航海運と国際貿易を担う外航海運に大きく分かれます。

内航海運の市場規模(営業収入)は年間約8,000億円です。内航貨物の輸送量は減少傾向が長く続いており、将来的な市場規模の縮小が懸念されています。

一方で外航海運は利用運送事業も含めて年間約2.8~4.2兆円で振れ幅が大きいのが特徴です。2020年度(令和2年度)はコロナ禍の影響を受けて市場規模が大きく縮小しましたが、市況の急回復を受けて2021年度(令和3年度)は前年比40%以上の伸びを記録しました。

港湾での荷役や検数などを事業とする港湾運送業は、年間約1兆円程度の市場規模です。(※1)

・空運

航空利用運送事業を含めて年間約0.9~1.7兆円の市場規模(営業収入)を持ち、直近では増加傾向にあります。航空業界はプレーヤーが少なく、1事業者あたりの営業収入が大きいのが特徴と言えるでしょう(※1)。

物流業界の市場規模に占める比率は高くないものの、対象期間における伸び率は最も高くなっています。

・貨物流通施設

倉庫業とトラックターミナル業を含む貨物流通施設の市場規模(営業収入)は、年間約2.4~2.6兆円に上ります(※1)。特に倉庫業の市場規模は漸増傾向にあり、保管残高数量及び所管面積が継続的に拡大しています。

※1.出典:国土交通省,物流を取り巻く現状と取組状況について,p1

※2.出典:国土交通省,令和5年度 宅配便・メール便取扱実績について


2. 業種別の市場規模の変化による影響

物流業界全体の市場規模は大きくは変わりませんが、詳細に見ると様々な変化が生じています。本章では業種別の変化の影響について解説します。

物流業界全体の変化

市場規模の拡大が見られる業種では様々な企業により新規投資が図られています。一方、市場規模が停滞・縮小する傾向にある業種では政府の支援が行われています。

業種別に見た変化とその影響

以下では業種別に変化と影響について説明します。

・トラック

EC需要の拡大を背景に宅配需要が伸びており、ラストワンマイルにおけるドライバーの確保が課題となっています。

なお、前述の年間約19兆円のトラック業界の市場に含まれていませんが、黒ナンバーの車両を利用する貨物軽自動車運送事業も急激に伸長しました。2020年度(令和2年度)以降、貨物軽自動車運送事業の事業者数は毎年5%以上の増加率を示しています。


※参考:国土交通省,貨物自動車運送事業者数の推移

国土交通省,貨物軽自動車運送事業者数及び車両数の推移

・鉄道・海運(内航海運)

近年の市場規模は停滞もしくは縮小傾向ですが、環境にやさしい輸送手段として鉄道・海運(内航海運)に注目が集まる中、政府は荷主と運送会社に対する経費補助などを通じてモーダルシフト(トラックから鉄道・内航海運への切り替え)を推進しています。

関連記事▶2024年問題対策!モーダルシフトの概要やメリット、取り組み事例を解説

・空運

「物流2024年問題」の対応を背景に、物流業界では貨物事業の拡大が図られています。

例えばヤマトグループと日本航空株式会社(JAL)は2024年(令和6年)8月から貨物専用機の運航を開始し、長距離幹線輸送手段の確保を進めています。

※出典:ヤマトホールディングス株式会社,8月1日(木)から羽田空港と新千歳空港・北九州空港間で貨物専用機の運航を開始

関連記事▶運送業界が直面している2024年問題とは?影響や課題をわかりやすく解説!

・貨物流通施設

EC需要の拡大を背景に倉庫機能の高度化に取り組む企業が増えてきました。

例えばEC企業や3PL企業はマテリアルハンドリング(マテハン)機器に投資を行い、自動化・機械化を進めることで出荷能力の増強を図っています。また、物流不動産に商機を見出した不動産業界からマルチテナント型物流施設の供給が相次いでいます。


3. 現在注目されている成長分野

これまで見たように、物流業界を構成する各業種は変化に伴って新たなサービスを展開し始めています。本章では注目を集めている動きについて解説します。

SDGsの推進

現在、環境負荷の軽減などを背景にSDGs推進の動きが浸透しています。例えば、先述の鉄道・海運(内航海運)を利用したモーダルシフトや複数の運送会社による共同配送の実施が挙げられます。

宅配便事業者が本州最北端の青森県下北郡向け荷物を共同輸配送した事例では、積載率の向上から運行車両数を減らすことができ、CO2排出量の削減につながりました。

※参考:国土交通省,令和5年度グリーン物流パートナーシップ会議 優良事業者表彰 事業概要(国土交通省),p4

なお、共同輸配送は車両の効率的な利用が期待できるため、「物流2024年問題」の対策としても注目されています。

物流DXの推進

EC需要の拡大を受けてラストワンマイル配送の重要性が増しており、デジタル技術の進歩を反映した新たなサービスが拡充されてきました。Web上で荷主と運送会社や個人ドライバーを結ぶマッチングプラットフォームやAIによる配送計画の最適化、アプリを活用した動態管理なども市場に登場しています。

物流施設内に目を転じると、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)といったマテハン機器や物流管理システムが導入されており、それぞれが連携して作業の効率化を図る仕組みも整備されています。

関連記事▶物流業とは?基本知識から最新トレンドまでを解説!

関連記事▶物流業界の全体像と未来展望|現状の課題とトレンドを解説


4. まとめ

本記事では業種別の物流業界の市場規模やその変化による影響、そして注目を浴びる成長分野を解説しました。

物流業界全体の市場規模は大きく変化していませんが、業種別の特徴や動向などを細かく見ると業種ごとの成長の方向性がよく理解できると思えます。

絶えず進歩を続ける新たな物流サービスの行方を見定めるために、荷主としても物流業界の変化をよく理解することが必要だと言えるのではないでしょうか?


事例で学ぶ 物流特殊指定・下請法の概要と具体的対応策経済産業省に聞く!法改正に関する2025年2月最新情報
~省令・補助金もご解説いただきます~
シェアシェア

おすすめ記事