荷待ち時間・荷役時間の算定と計測方法

荷待ち時間・荷役時間の算定と計測方法

物流業界では、トラックドライバーの長時間労働や人手不足などの課題が深刻化しており、「2024年問題」を契機に新たな変革が求められています。なかでも荷待ち時間や荷役時間の正確な算定・削減は、持続可能な物流を実現するために欠かせない取り組みです。


本記事では、物流業務の効率化を目指す企業に向けて、荷待ち時間と荷役時間の算定方法を解説します。

この記事でわかること

  • 荷待ち時間と荷役時間の算定

1. 荷待ち時間と荷役時間の算定が必要な背景

荷待ち時間と荷役時間は、ただ算定すればいいだけではなく、法律の施行やトラックドライバーの長時間労働改善などの背景があります。

改正物流法の施行

2024年に施行された改正物流法では、荷主や運送事業者に荷待ち時間・荷役時間の短縮努力を求めています。トラックドライバーの長時間労働を削減し、物流「2024年問題」への対応策として制定されました。


改正物流法では、荷主企業と運送事業者に荷待ち・荷役時間のデータを記録・報告する義務が課され、規制遵守状況を確認する仕組みが導入されています。これにより、運送業務における責任の明確化と効率的な労働環境の構築が進められています。

関連記事▶改正物流法とは?荷主企業が知っておくべきポイントを詳しく解説

トラックドライバーの長時間労働問題

トラックドライバーの長時間労働の主な原因とされているのが、荷待ち時間や荷役時間の長さです。特に荷待ち時間が「休憩時間」として扱われ、残業代が支払われないケースが問題視されています。


2024年には、ドライバーの時間外労働が年間960時間に制限され、従来のような長時間輸送の維持が難しくなりました。「2024年問題」はこの上限規制に伴う課題を指し、これらを解決するには荷待ち時間を削減し、労働環境を適正化することが急務です。

関連記事▶2024年問題と労働時間規制|荷主企業が今すぐ知るべき対策


2. 荷待ち時間と荷役時間の算定方法

ここでは、荷待ち時間と荷役時間の算定方法を解説します。まずは、荷待ち時間と荷役時間の算定方法を学びましょう。

荷待ち時間

到着時刻・時間帯の指示がない場合は、以下を基準に算定します。

・集貨・配達場所またはその周辺に到着した時刻(速やかに受付等を行う場合は受付時刻)から荷役開始時刻まで。 


到着時刻・時間帯の指示がある場合は、以下の基準で算定します。

・指示時刻より前に到着:指示時刻から荷役開始時刻まで。 

・指示時刻・時間帯内に到着:到着時刻(速やかに受付等を行う場合はその時刻)から荷役開始時刻まで。

 ・指示時刻を過ぎて到着:到着時刻(速やかに受付等を行う場合はその時刻)から荷役開始時刻まで。ただし、トラックドライバーの都合で遅れた場合は除外。

荷役時間

荷役時間は、以下の基準で算定します。


・荷役、検品、荷造り、入庫・出庫、棚入れ・棚出し、仕分け、商品陳列、ラベル貼り、代金の取立て・立替えなど、運転業務に附帯する業務の開始時間から終了時間まで。

・荷卸しと荷積みを並行して行う場合や、帰り荷(復荷)を積込む場合は、別々に計測することも可能。


トラックドライバーが到着後、指示により休憩を取る場合、休憩時間は計算に含まれません。

ただし、車を動かせるように待機したり、荷役作業を見守ったりして完全に休憩できない時間は計測に含まれます。


※参考:国土交通省,合同会議取りまとめ(2024年11月27日),p17


3. 荷待ち時間と荷役時間の計測方法

次に、荷待ち時間と荷役時間の計測方法を紹介します。下記の内容に沿って、荷待ち時間と荷役時間を計測してみましょう。

計測方法

・原則、荷待ち時間と荷役等時間は分けてそれぞれ計測する。

・実態として切り分けられない場合は「荷待ち時間等」として荷待ち時間と荷役等時間を分けないで計測することも可能 。

・複数施設の場合: 1つの事業所内に複数の停留場所がある場合、原則として各施設ごとに荷待ち時間と荷役等時間を計測する。

 ・事業所全体を1施設とする場合: 入構から出構までの時間を一括して計測することも可能。ただし、事業所内の移動時間が含まれ、荷待ち時間等が過大評価される場合がある。


荷待ち時間(待機時間)と荷役等時間(荷物の積卸し作業にかかる時間)は、別々に計測します。


荷待ち時間と荷役等時間を分けることが難しい場合は「荷待ち時間等」として一括して計測することも可能です。これは現場の実態に応じた柔軟な対応として認められています。

計測対象施設

計測対象となる施設は以下の通りです。


  • 荷主または連鎖化事業者が直接管理している施設
  • 荷主または連鎖化事業者と寄託契約を結んだ者が管理している施設(周辺の停留場所を含む)


これにより、計測の対象範囲を明確にし、漏れなくデータを収集することが可能です。

報告方法

計測したデータは、以下の方法で報告します。


  • 計測した平均時間を施設ごとに報告
  • 対象施設、期間、運行の最低基準を満たして計測・報告


計測した平均時間を施設ごとに報告することで、施設ごとのパフォーマンスを比較することが可能です。

特例措置

特殊な条件下では、計測や報告に特例が適用されます。


  • 特殊車両や危険物の取り扱いなどで短縮が困難な場合は、計測省略可能
  • 対象施設の貨物重量が多い施設を優先的に選定する



※参考:国土交通省,合同会議取りまとめ(2024年11月27日),p23-26


4. 荷待ち時間と荷役時間を算定したあとに必要なこと

荷待ち時間や荷役時間の算定は、改善への第一歩に過ぎません。これらのデータを基に具体的な時間削減策を講じることが重要です。


具体的には、荷主の協力を得てパレットを活用し荷役作業を効率化する取り組みや、仕分け作業の自動化による人為的ミスの削減などが挙げられます。また、物流量の平準化や配送ルート最適化システムの導入によって、全体の流れを効率的に整えることが可能になるでしょう。


これらの取り組みはトラックドライバーの長時間労働を軽減し、2024年問題による労働時間制限にも対応できるため、持続可能な物流体制の実現につながります。物流業界と荷主が一体となって改善に取り組むことで労働環境を改善し、業務の効率化を達成することが求められています。

関連記事▶物流効率化に向けた政府の取り組みとは?荷主企業に求められることも解説


5.まとめ

荷待ち時間と荷役時間の算定や計測方法は、物流業務の効率化や労働環境の適正化を目指す上で重要です。正確な時間管理を行うことで、労働時間の適正化や法令遵守、さらにはドライバーの長時間労働問題の解決にもつながります。 


また、これらのデータを活用し、パレットの利用や仕分け作業の自動化、配送ルートの最適化システム導入など、具体的な効率化策を講じることが欠かせません。物流業界全体が一丸となり、荷主との連携を深めながら改善に取り組むことで、持続可能な物流の実現と2024年問題への対応が可能になります。


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