物流DXの進展に伴い、AIやIoTを活用した最新の荷役機械が注目されています。物流現場では、形状も重量も多種多様な荷物を扱うため、人力だけでの作業には限界があります。効率化や安全性向上のために、荷役機械が欠かせません。
本記事では、フォークリフトやクレーンといった基本的な荷役機械の種類と導入するメリットを解説します。さらに、AIやIoTを活用した最新技術や導入事例を紹介し、物流現場の課題解決に役立つ情報を提供します。
荷役機械とは、荷物の移動や積卸し、仕分け作業を効率化するための多様な機械を指します。以下に、代表的な荷役機械の種類と特徴を紹介します。
※出典:国土交通省,令和3年度 特定港湾施設整備事業 基本計画(案)の概要について,p11
荷物を吊り上げて移動させるための機械で、重量物を扱う現場で活躍します。
以下に代表的な種類を紹介します。
種類 | 特徴 |
天井クレーン | 天井に設置されたレール上を移動し、荷物を高い位置から効率的に移動するためのクレーン。 大型の荷物や重量物の取り扱いに最適です。 |
ジブクレーン | 垂直の支柱にアームを取り付けたクレーンで、特定の範囲内で荷物を吊り上げたり移動したりする際に使用されます。 設置が比較的容易です。 |
アンローダ | トラックや船舶から貨物を取り出すために使用されるクレーンで、大量の貨物を迅速に移動させることができます。 |
※出典:国土交通省,空港グランドハンドリング作業の生産性向上に関する技術検討会~先進事例調査結果~,p1
貨物を自動的に一定の方向へ運搬する装置で、作業効率の向上と作業者の負担軽減を実現します。以下に主な種類と特徴を紹介します。
種類 | 特徴 |
ベルトコンベア | モーターによって動くベルトに荷物を載せることで運搬する装置です。直線だけでなく曲線の移動にも対応可能で、幅広い用途で利用されています。 |
ローラーコンベア | 回転するローラーを使用して荷物を運搬する装置で、特に重い荷物や大型貨物の移動に適しています。 |
チェーンコンベア | 連結したチェーンを回転させることで大型荷物を運搬する装置です。 製造業や倉庫業で広く利用されています。 |
スクリューコンベア | 螺旋状のスクリューを回転させ、粉状や液状の物質を運搬する装置です。 食品や化学工業で多く使用されています。 |
※出典:国土交通省,物流の2024年問題に向けた対応について,p11
荷物の積卸しや倉庫内での移動に欠かせない荷役機械です。用途に応じた多様な種類が存在します。以下に主なフォークリフトの種類と特徴を紹介します。
種類 | 特徴 |
カウンターバランスフォークリフト | 一般的なフォークリフトであり、パレットやコンテナの移動に最適です。 |
リーチフォークリフト | 高所作業を得意とし、倉庫内での棚上げ作業やピッキングに活用されます。 |
オーダーピッキングトラック | オンライン小売業での需要が増加しています。ピッキングや組み立てに特化したタイプです。 |
サイドフォークリフト | 長尺物品(例えば鋼材、木材など)の運搬に適したフォークリフトです。 |
マルチディレクションフォークリフト | 狭い通路での操作性に優れ、棚と棚の間の作業に最適です。 |
ウォーキーフォークリフト | 小規模倉庫や店舗内で使用される小型フォークリフトです。 |
マテハン機器は、物流業務の効率化を目的とした荷役支援機械の総称です。以下に代表的なものを紹介します。
小型で軽量な荷役機械です。軽量物の移動や狭いスペースでの作業に適しており、低コストで導入できる点が特徴です。
※出典:経済産業省,「物流の2024年問題」等への対応について,p8
荷物を自動でパレットに積み上げる装置で、入庫作業の効率を大幅に向上させます。
※出典:国土交通省,物流施設の自動化の現状について,p5
流通センターや配送センターで使用される仕分け機で、荷物を行き先別に分類します。
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※出典:国土交通省,最近の物流政策について,p25
無人搬送車(AGV)は、床面の磁気を読み取りながら無人で物品を運搬する機械です。近年では、磁気不要で自律的に動作する自律走行搬送ロボット(AMR)も普及しつつあります。
荷役機械の導入は多くの業務改善効果をもたらします。その主なメリットを以下に解説します。
機械化により作業速度が向上し、連続稼働が可能になることで生産性が向上します。
重量物の取り扱いによる疲労やケガのリスクが低減され、作業者の安全性が向上します。
機械を活用することで人的ミスが減少し、作業のばらつきが抑えられます。その結果、安定した品質が確保されるため、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
機械化により、少人数でも効率的に作業を進めることが可能です。物流業界における深刻な人手不足の問題を緩和することにもつながります。
初期投資は必要ですが、作業効率の向上や人件費の削減により、長期的にはコスト削減につながります。導入の際はコストパフォーマンスを考慮して検討すると良いでしょう。
最新の安全基準を満たした荷役機械を導入することで、現場での事故リスクを低減できます。安全性の向上は、従業員の安心感にも寄与するでしょう。
効率的な荷役機械を導入することで作業スペースの最適化が可能となり、限られたスペースを有効活用できます。
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近年、物流業界ではAIやIoTを活用した荷役機械の導入が進んでおり、生産性向上や省人化の実現に寄与しています。以下に、注目される最新技術とその活用事例を紹介します。
AIとIoTを活用した荷役システムは、リアルタイムのデータ収集と分析を通じて効率的な作業を実現します。遠隔操作や稼働状況の可視化ができるため、物流現場の管理負担を軽減する技術として注目されています。
例えば物流倉庫でハンドリフト牽引型AGVを導入した事例では、最長往復500mの作業を自動化しました。タブレット端末で簡単に指示ができるため生産性が15%向上し、2名分の省人化を実現しています。さらに、季節変動に応じた柔軟な運用によって、効率化と現場スタッフの負担軽減を両立しました。
※参考:国土交通省,物流・配送会社のための物流DX導入事例集,p9
自動位置決めや荷重管理機能を備えた高度自動化クレーンは、安全性と効率性を大幅に向上させます。人手を必要とせずに重い貨物の移動が可能となるため、作業品質の向上にも寄与します。
ピッキングや仕分け作業を自動化する物流ロボットは、作業スピードを向上させると同時に人的ミスを削減します。
例えば三井不動産株式会社の物流施設「MFLP船橋Ⅲ」では、2022年にピッキング用ロボットを導入して省人化を実現しました。対象コンテナを自動で判別・搬送し、人手作業の約5倍の速度で荷積みを行うことが見込まれており、労働環境の改善と作業効率の向上に寄与しています。
※出典:国土交通省,国土交通白書2023 第1部 第1章 第2節 デジタル実装の現在地と今後への期待
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AIを搭載した自動運転フォークリフトは、物流施設内の積卸し作業を自動化する次世代技術です。人手によるフォークリフト操作が不要となり、効率化と省人化が同時に図れます。
例えば、大和ハウス工業株式会社など5社が実施した実証事業では、AI搭載の自動運転フォークリフトを活用して積卸し作業を自動化しました。入荷と出荷が自動化できたことで、トラックの待機時間削減や省エネ化を実現しています。さらに、パレタイジングロボット併用で一連の作業を自動化し、サプライチェーン全体の効率化にもつながりました。
※参考:大和ハウス工業株式会社,AIを搭載した自動運転フォークリフトを活用し、トラック運行と連携させる共同実証事業を開始
自律走行搬送ロボット(AMR)は、従来のAGVと異なり磁気テープが不要です。周囲の環境を認識しながら柔軟に動作できるため、物流現場でのレイアウト変更にも簡単に対応できます。この特長により、現場の効率化がさらに進むことが期待されています。
※出典:国土交通省,水素を燃料とする荷役機械に係る動向,p17
省エネ型荷役機械として、水素燃料電池(FC)を活用したフォークリフトやラバータイヤガントリークレーン(RTG)の導入が進んでいます。
東京港で水素燃料電池型RTGの実証実験が始まり、CO2排出量の削減が期待されています。同様の実験は横浜港、神戸港でも行われる予定です。また、豊田自動織機株式会社が開発したFCフォークリフトは、環境負荷を大幅に軽減しつつ高効率の荷役作業を実現しました。今後、物流現場での活用がますます広がっていくでしょう。
※参考:国土交通省,水素を燃料とする荷役機械に係る動向,p11-17
物流現場での効率化や安全性向上には、荷役機械の導入が欠かせません。AIやIoTを活用した最新技術により、省人化や作業品質を安定させることが可能となりました。労働力不足やコスト削減といった課題の解決にも寄与しています。さらに今後は、環境に配慮した荷役機械が普及することで、持続可能な物流体制の実現も期待されています。
企業は自社の課題に合った機械や技術を積極的に採用することで、さらなる効率化と成長を実現できるでしょう。