トラック・物流Gメンとは?改組の背景と荷主企業が知るべき対応策

トラック・物流Gメンとは?改組の背景と荷主企業が知るべき対応策

物流業界が抱える課題が深刻化する中、トラック・物流Gメンの勧告や指導に対してどのように取り組むべきか悩んでいる荷主企業も多いでしょう。

特に長時間労働や不適切な取引条件といった問題は、物流の効率低下や法令違反リスクを高める要因になり得ます。

本記事では、トラック・物流Gメンの設立背景やその役割を詳しく解説し、勧告内容や是正指導に基づいた具体的な対応策を紹介します。

社内体制の整備、取引慣行の適正化、持続可能なサプライチェーンの構築など、管理職や経営層が押さえておくべきポイントをまとめました。法令遵守と実践的な取り組みを知ることは、物流業務の効率化と健全化に有益な情報となるでしょう。

この記事でわかること

  • トラック物流・Gメンの概要
  • 知っておくべき対応方法

1. トラック・物流Gメンの改組・拡充の背景

トラック・物流Gメンの改組・拡充は、物流全体の効率化と適正化を目指して実施されました。

ここでは、設立の経緯や改組の必要性、倉庫業者からの情報収集体制強化について詳しく解説します。

トラックGメン設立の経緯と目的

トラックGメンは、物流業界における違法行為や不正取引を防止するため、2023年7月に設立されました。(※)その目的は、トラックドライバーの労働環境改善と法令遵守の徹底を図ることです。

背景には、慢性的なドライバー不足や過酷な労働条件が原因とされる事故の増加があります。このような課題を解決するため、トラックGメンは発足当初から荷主企業や元請事業者に対し、是正指導や改善要請を行ってきました。

※出典:国土交通省,トラックGメンを「トラック・物流Gメン」へ改組・拡充し、集中監視月間を実施します

関連記事▶トラックGメンとは?取り締まり内容や企業がとるべき対策を紹介

物流全体の適正化を目指し改組・拡充

物流全体の適正化のためには、個々の事業者だけでなく、サプライチェーン全体の改善が必要とされています。そのため、トラックGメンは倉庫業者も対象に含め「トラック・物流Gメン」へと改組されました。(※)

倉庫業者からの意見聴取や情報収集を可能にすることで、荷主企業による不適切な指示や不当な取引慣行を特定する取り組みが強化されます。

※出典:国土交通省,トラックGメンを「トラック・物流Gメン」へ改組・拡充し、集中監視月間を実施します

倉庫業者からの情報収集強化と体制拡充の詳細

トラック・物流Gメンの改組に伴い、倉庫業者からの情報収集体制が拡充されています。具体的には、地方運輸局やトラック協会が連携し、360名規模で対応することになりました。(※)

また倉庫業界団体には専用の情報収集窓口が設置され、地方運輸局と連携して違反原因行為の疑いがある荷主企業の情報を集約しています。

※出典:国土交通省,トラックGメンを「トラック・物流Gメン」へ改組・拡充し、集中監視月間を実施します


2. 勧告内容と是正指導

トラック・物流Gメンは、違反原因行為や不適切な取引に関与する荷主・元請事業者に対して是正指導を行い、その実績を積み重ねています。

ここでは、具体的な勧告内容や是正指導の実績について詳細に解説します。

勧告の定義とその法的根拠

トラック・物流Gメンの勧告とは、違反原因行為や不適切な取引を是正するために荷主や元請事業者に対して指導を行うことです。

勧告は、運送業法や労働基準法に基づいて行われ、法的拘束力はないものの、業界内での改善を促す重要な手段となります。

トラック・物流Gメンの是正指導には次の種類があります。

是正指導

説明

働きかけ

荷主・元請事業者が違反原因行為をしている疑いがある場合の改善提案。

要請

荷主・元請事業者の違反原因行為を疑う相当な理由がある場合、改善の協力を求める指導。

勧告・公表

要請しても改善されない悪質な違反の場合の指導。

※出典:国土交通省,「トラックGメン」について

是正指導の件数と内訳

2024年9月までの是正指導の累計実績は次の通りです。

  • 働きかけ:914件
  • 要請:175件
  • 勧告:2件


「働きかけ」は、荷主企業・元請事業者に対する直接的な指導が中心で、具体的な改善提案が含まれます。「要請」は、改善のための協力を求める形で行われます。「勧告」は、悪質な違反原因行為が確認された場合に限定されます。

※出典:国土交通省,「トラックGメン」について

違反原因行為の主な種類とその割合

違反原因行為として多く報告されるのは、長時間の荷待ち時間や運賃の不当な削減要求です。主な種類とその割合は次の通りとなります。

違反原因行為の種類

割合

長時間の荷待ち

52%

契約にない附帯業務

17%

運賃・料金の不当な据置き

14%

無理な運送依頼

8%

過積載運送の指示・容認

6%

異常気象時の運送依頼

3%



3. 勧告事例と企業の対応

トラック・物流Gメンの勧告を受けた企業2社の事例を紹介します。企業の対策を理解し、ヒントにしてください。

王子マテリア株式会社

総合包装用途紙素材サプライヤーである王子マテリアは、荷主として長時間の荷待ちを改善しなかったとして勧告を受けています。

項目

説明

違反原因行為内容

全国複数の拠点において、長時間の荷待ちが発生している疑い。

要請

2022年(令和4年)8月、トラック事業者に対し長時間の荷待ちをさせている疑いがあるため、違反原因行為の是正を要請。

要請後、改善計画を提出し、計画に基づく取り組みにより一定の改善が確認された。

勧告

2024年(令和6年)1月、再び違反原因行為に関する情報が多数寄せられていた。

要請後も違反原因行為を疑う理由があると認め、違反原因行為を正すように勧告し、その内容を公表した。

違反原因行為の早急な是正と改善計画の提出を指示した。

勧告後の対応

2024年(令和6年)3月、改善計画が提出された。

以降の状況については、トラックGメンによるヒアリング、訪問などを行い、フォローアップする。

改善が図られない場合は、更なる法的措置の実施を含め、厳正に対処する。



ヤマト運輸株式会社

宅急便を中心とした国内輸配送サービスを提供しているヤマト運輸は、元請事業者として下請事業者に長時間の荷待ちや契約外の附帯業務などを指示した疑いで勧告を受けています。

項目

説明

違反原因行為内容

全国の複数の拠点において、以下の違反原因行為の疑い。

・長時間の荷待ち

・契約にない附帯業務

・運賃・料金の不当な据置き

・過積載運行の指示

・その他の無理な配送依頼

要請

2022年(令和4年)11月、下請事業者に過積載運行を指示している疑いがあるため、違反原因行為の是正を要請した。

要請後、改善計画を提出し、計画に基づく取り組みにより一定の改善が確認された。

勧告

2024年(令和6年)1月、再び違反原因行為に関する情報が多数寄せられていた。

要請後も違反原因行為を疑う理由があると認め、違反原因行為を正すように勧告し、その内容を公表した。

違反原因行為の早急な是正と改善計画の提出を指示した。

勧告後の対応

2024年(令和6年)2月、改善計画が提出された。

以降の状況については、トラックGメンによるヒアリング、訪問などを行い、フォローアップする。

改善が図られない場合は、更なる法的措置の実施を含め、厳正に対処する。




4. 荷主企業の管理職・経営層が知っておくべき対応方法

トラック・物流Gメンの監視強化に伴い、荷主企業の管理職や経営層には具体的な対応策の実施が求められています。ここでは、対応方法の重要なポイントを解説します。

社内体制の整備

物流業務に関する社内体制を整備することは、トラック・物流Gメンの監視強化への基本的な対応策です。具体的には、物流業務に精通した管理者を選任し、日常的な取引慣行の見直しや法令遵守状況のチェックを行う体制を構築します。

契約外業務が発生していないかを確認することも欠かせません。社内で定期的にモニタリングする仕組みを導入すれば、監視対象となるリスクを低減できます。体制整備は早期の問題発見と対応を可能にするため、健全な業務遂行ができるようになるでしょう。

適正な取引と労働環境の改善

荷主企業がまず取り組むべきは、適正な取引慣行の確立です。具体的には、運送契約を文書化し、業務範囲や対価を明確にすることで契約外業務の発生を防ぎます。


荷待ち時間削減のためにトラック予約システムの導入などを検討し、効率的な配送を実現することも重要です。


また、ドライバーの労働環境改善にも注力する必要があります。

例えば過積載の回避や適切な運賃設定を徹底することで、ドライバーの負担軽減と業界全体の健全化が可能となるでしょう。

関連記事▶実運送体制管理簿とは? 荷主企業への影響から、具体的な準備方法まで解説


5. まとめ

今回は、トラック・物流Gメンの設立背景やその役割を詳しく解説し、勧告内容や是正指導への企業の対応策を紹介しました。


トラック・物流Gメンの改組・拡充は、物流業界全体の効率化と適正化を目指して行われています。具体的には、ドライバーの長時間労働や違反原因行為を是正することです。そのためには倉庫業者との連携を強化して荷待ち時間の情報収集を行い、監視体制を充実させることが欠かせません。


荷主企業は、取引慣行の適正化や労働環境改善に取り組む必要があります。そのために社内体制の整備や物流業務の効率化を行い、法令違反のリスクを軽減することが重要です。


これらの対策を実施することで、トラック・物流Gメンの監視に対応しつつ、持続可能なサプライチェーンの構築を目指すことが可能となるでしょう。


法改定からみるトラック予約受付システム「トラック簿」の必要性と活用方法
シェアシェア

おすすめ記事