2024年12月12日
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サプライチェーンに潜む4つのリスク|発生要因や対策まで徹底解説!

サプライチェーンに潜む4つのリスク|発生要因や対策まで徹底解説!

サプライチェーンリスクは、業務運営において避けられない課題の1つです。自然災害やサイバー攻撃などがサプライチェーンに影響を及ぼし、供給の遅延や停止といった深刻な事態を引き起こすことがあります。

しかし、リスクへの対策を講じることで、影響を最小限に抑えることが可能です。そこで本記事では、サプライチェーンリスクの発生要因や具体的な対策方法について解説します。

この記事でわかること

  • サプライチェーンリスクの概要

1. サプライチェーンリスクとは

サプライチェーンリスクとは、製品やサービスが消費者に届けられるまでに発生し得るさまざまなリスクの総称です。従来は、自然災害やサプライヤーのトラブルにより供給が一時的に止まるといった「物理的なリスク」が主な懸念とされていました。

しかし近年では、サイバー攻撃や情報漏洩といった「情報セキュリティリスク」が大きな課題です。多くの企業がネットワークを活用してサプライチェーンを管理する現代では、関連企業のセキュリティ対策が不十分だと、サイバー攻撃の標的になる可能性があります。結果、自社も被害を受けるリスクが高まっています。


2. サプライチェーンにおける4つのリスクと要因

以下では、サプライチェーンにおける4つのリスクと要因について説明します。

環境的リスク

環境的リスクとは、サプライチェーンに自然環境や気候変動が及ぼすリスクのことです。具体的には、地震や台風、洪水などの自然災害や、パンデミックのような大規模な健康危機が該当します。

環境的リスクは、工場の稼働停止や物流の遅延を引き起こし、供給網全体に深刻な影響を与える要因です。

地政学的リスク

地政学的リスクとは、紛争や政治的不安定、貿易規制、テロなど、国家間や地域間の緊張がサプライチェーンに与える影響のことです。特定の国や地域で政情が不安定になると、物流の寸断や輸出入の規制、取引先の操業停止などが発生する可能性があります。具体的には、関税の引き上げや特定品目の輸出入禁止、輸出許可制の導入などの貿易規制が実施される場合があり、これにより取引コストの増加や原材料調達の遅延・停止といったリスクが生じます。近年はウクライナ情勢や中東情勢を背景に、原材料やエネルギーの供給が不安定となり、世界的な価格高騰や調達遅延が発生しています。

経済的リスク

経済的リスクとは、以下に挙げるような経済環境の変化によってサプライチェーンが影響を受けるリスクのことです。

需要ショック

パンデミックや経済危機、戦争などにより、需要が急激に増減することです。供給体制が対応できず、欠品や過剰在庫が発生するおそれ【虞】があります。

商品価格の変動(原価高騰・為替リスク)

原材料やエネルギー価格の高騰、為替レートの急変などにより、製造・調達コストが想定以上に増加し、利益率を圧迫する事態が起こるおそれがあります。例えば、エネルギー価格や穀物価格などの国際価格が上昇すると、商品単価に影響を及ぼす可能性があります。

投資規制

経済安全保障の観点から外国資本の流入規制を行う国があった場合、現地法人の設立や拠点の拡大に制限がかかる可能性があります。特に中国や新興国における法規制の変更は、サプライヤー選定や生産移管に影響を与えます。

物流業界の労働力不足

日本では少子高齢化の影響で労働力不足が深刻化しており、特に物流業界ではドライバーの労働規制強化によって輸送力の確保が困難になっています。その結果、供給の遅れや輸送コストの上昇による商品価格の高騰が懸念されています。

関連記事▶ 2024年問題によるドライバー不足の対策方法とは?原因や影響も解説

技術的リスク

技術的リスクとは、サプライチェーンに関連する技術やシステムの問題によって引き起こされるリスクのことです。サイバー攻撃による情報漏洩やランサムウェアの脅威、輸送インフラの障害やシステムダウンなどが含まれます。

特にネットワークに接続されたサプライチェーンは、サイバー攻撃の標的になりやすいです。セキュリティ対策が不十分な取引先やサプライヤーを介した攻撃がリスクを増大させます。

※参考:経済産業省,通商白書2021 第2部 第1章 第2節 サプライチェーンリスクと危機からの復旧


3. サプライチェーンリスクを軽減するための対策

サプライチェーンリスクがいつ発生しても被害を最小限に抑えられるよう、日頃から対策を講じることが重要です。

ここでは、サプライチェーンリスクを軽減するための対策を紹介します。

サプライチェーンリスクマネジメントの実施

サプライチェーンリスクマネジメントとは、リスクを予測・評価し、発生時の影響を最小限に抑えるためのプロセスを整備することです。

具体的には、以下のステップで進めます。



<具体的なステップ>

・サプライチェーンの現状把握

・リスクの特定と評価

・リスクの優先順位付けと対策の策定

・リスク軽減策の実行

・定期的な対策と評価

サプライチェーンリスクマネジメントによって、リスク発生時の被害を最小限に抑え、供給の安定性を維持できます。契約書にリスク想定を盛り込むことも、リスク管理を強化する方法の1つです。

関連記事▶ サプライチェーンマネジメントの成功事例|マネジメントのポイントまで紹介

BCPを策定する

BCP(事業継続計画)とは、企業が災害や事故などの緊急事態に直面した際、重要業務を継続し、迅速な復旧を図るための具体的な計画のことです。策定には、業務の優先順位の分析・リスクの明確化・発動基準の設定・社内共有・訓練と評価といった段階が必要です。

BCPの導入により、サプライチェーンが一時的に寸断される状況でも早期復旧が可能となり、被害を最小限に抑えられます。

関連記事▶ サプライチェーン強靭化への取り組みとは|実現に欠かせない3つの要素


4.リスク要因への具体的対策


まず、第2章で説明した4つのリスク要因に対する具体的な対策を、以下の表に整理しました。

リスク

要因

対策

環境的リスク

自然災害、気候変動、パンデミック

・供給ルートの多様化と分散調達

・在庫の適正管理

・災害発生時の早期警戒や被害予測をするため、 IoTセンサーやGIS(地理情報システム)などのデジタルツールを活用する

地政学的リスク

紛争、政治的不安定、貿易規制、テロ

・供給ルートの多様化と分散調達

・各地域のリスク情報をリアルタイムで把握するため、サプライチェーン可視化ツール(SCV)などのデジタルツールを活用する

経済的リスク

需要ショック、商品価格の変動、投資規制、労働力不足

・供給ルートの多様化と分散調達

・在庫の適正管理

・リアルタイムの需要予測のため、AIとビッグデータ分析ツールなどのデジタルツールを活用する

技術的リスク

サイバー攻撃、情報通信途絶、輸送インフラ不全

・在庫の適正管理

・サプライチェーン全体のデータ保護とサイバー攻撃へ対処するため、セキュリティツールなどのデジタルツールを活用する

以下に、具体的な対策の内容について詳しく解説します。

供給ルートの多様化と分散調達

リスクの発生により特定地域や特定企業からの供給が断たれると、サプライチェーン全体に深刻な影響を及ぼします。こうしたリスクを回避するには、供給ルートの多様化や分散調達が有効な対策です。

地理的リスクへの対応

特定地域に生産や調達を集中させている場合、自然災害、政情不安、輸送インフラの混乱などにより、供給が突然途絶するリスクが高まります。ただし調達先や製造拠点を複数の地域に分散することによって特定地域で障害が発生しても他の地域でカバーする体制が整い、リスク分散が可能となります。

供給元の多様化

1社のサプライヤーに依存している場合、その企業が生産停止や経営不安に陥ると、即座に供給が滞るおそれがあります。こうした状況を回避するため、同一製品、部品を提供可能な複数の供給元を確保し、平時から関係を構築しておくことが必要です。発注の一部を他社にも分散することで、緊急時にスムーズな切り替えができ、業務の継続性を高められるでしょう。

在庫の適正管理

在庫の過不足はサプライチェーンの安定性に直結します。在庫管理の精度向上によって、欠品や過剰在庫といったリスクを抑えることが可能です。

予測精度の向上

高精度な需要予測は、適切な在庫確保と無駄の削減に貢献します。AIやビッグデータを活用することで、過去データや市場動向に基づき、柔軟かつ的確な在庫計画が可能となります。

安全在庫の設定

不測の供給遅延や急な需要増加に備え、安全在庫を適切に設定することが重要です。商品特性やリードタイムに応じて在庫量を設計することにより、業務の安定性が向上するでしょう。

デジタルツールの活用

地政学的リスクや市場変動に備えるには、サプライチェーン可視化ツール(SCV)の導入が有効です。SCVを活用すれば、在庫や輸送状況を一元的に把握でき、トラブル発生時も迅速な対応が可能となります。また、セキュリティツールを導入することで、サイバー攻撃や情報漏洩といった技術的リスクにも備えることができます。

複数のサプライヤーとの取引では、情報が分散し管理が煩雑になるおそれもあります。そのため、情報をリアルタイムで把握・共有できる環境を平時に整えておく必要があります。

例えばハコベルの物流DXシステムを活用すれば、配送状況や在庫情報などをクラウド上で一元管理でき、情報分断や人的ミスを防げます。リアルタイムな情報共有により、急な変化にも迅速に対応でき、リスク発生時にも柔軟に対応可能です。

ハコベル株式会社,物流DXシステム

バース予約管理による待機リスクの低減

配送効率を高め、サプライチェーンリスクを軽減するためには、バース予約管理も重要な役割を果たします。

ハコベル トラック簿のようなバース予約機能を活用すれば、車両の到着時間やバース割り当てを事前に最適化でき、トラックの待機時間や荷役作業の遅延リスクを抑制することが可能です。

これにより、ドライバーの拘束時間短縮、倉庫作業のスムーズ化、ひいてはサプライチェーン全体の安定性向上につながります。

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AIによる予測

AIは需要予測や災害リスクの予測に有効で、販売実績や天候などをもとに将来的な動向を高精度で予測します。これにより、在庫の最適化や調達計画の精度向上が期待できるでしょう。また、ビッグデータ分析と連携すれば、リアルタイムの需要変化にも柔軟に対応できます。

関連記事▶ 物流業界の問題を解決するにはAIが有効!活用事例やメリットを解説

IoTとブロックチェーンの活用

IoTで輸送中の温度や位置をリアルタイム管理すれば、災害時はGIS(地理情報システム)と連携して被害状況を予測できるため、迅速な対応が可能です。また、ブロックチェーンを活用することで、取引情報を改ざん不可能な形で安全に記録・共有でき、不正防止やトレーサビリティの確保にも有効です。

関連記事▶ 物流業界のトレーサビリティとは?概要や種類をはじめ目的や要素技術も解説

労働力不足への対応

人手不足対策には、自動化技術やロボティクスの導入が効果的です。省人化だけでなく、業務効率や労働環境の改善にも寄与します。

自動化技術の導入

自動倉庫や自動仕分け機などの導入により、作業の省力化と効率化が可能です。繁忙期や夜間など、人手を確保しにくい時間帯でも安定した稼働が実現できます。また、無線識別技術(RFID)を活用した在庫管理を活用すればリアルタイムの在庫状況を把握でき、需要変動などのリスクに迅速に対応できます。

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ロボティクスの活用

ロボティクス技術の導入は、夜間無人化や危険作業の代替に効果的です。日本通運株式会社は自動フォークリフトとオートレーターを連携させ、夜間のパレット搬送を自動化しました。その結果、年間約3,000時間、人件費約1,000万円の削減を実現し、安全性と生産性の両立に成功しています。

※参考:国土交通省,物流・配送会社のための物流DX導入事例集,p10

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5.まとめ

サプライチェーンリスクは、企業の供給体制やビジネス運営に深刻な影響を与える可能性があります。自然災害・地政学的問題・経済的リスク・技術的脅威など、リスクの種類は多岐にわたり、どれも軽視できません。

適切な対策を講じることでリスクの影響を最小限に抑え、事業継続性を高めることが可能です。サプライチェーンリスクの軽減に向けて、BCPの策定や在庫管理の最適化に加え、配送管理やバース予約を含む物流オペレーション全体の可視化・効率化も重要になります。

ハコベルの物流DXシステムやトラック簿のバース予約管理機能を活用することで、配送計画と現場作業の精度を高め、リスク発生時にも柔軟かつ迅速に対応できる体制を整えましょう。



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