物流業界は今、かつてない変革期を迎えています。eコマース市場の拡大や多様化する消費者ニーズ、深刻化する人手不足など、従来のオペレーションでは業務を継続するのが困難だと言わざるを得ません。その解決策として注目が高まっているのがロジスティクスソリューションです。
ロジスティクスソリューションは、倉庫管理や輸配送の効率化だけでなく、需要予測、リアルタイムの可視化、環境への配慮など、サプライチェーン全体の最適化を支援します。
そこで本記事では、ロジスティクスソリューションの概要や目的、役割、メリット、具体的な導入事例を解説します。
まずロジスティクスソリューションの概要や目的、背景について解説します。
ロジスティクスソリューションとは、物流を含む企業のサプライチェーンを最適化、効率化するためのシステムやサービスの総称です。
近年のeコマース市場の拡大や消費者ニーズの多様化に伴い、企業の物流業務はますます複雑化しています。経済産業省の調査によると、日本のBtoC-EC市場規模は2021年に20兆円を突破しました。(※)このような急速な成長に対応するため、多くの企業がロジスティクスソリューションの導入を検討しています。
※出典:経済産業省,令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書,p7
ロジスティクスソリューションの役割は、物流プロセスとサプライチェーンの効率化・最適化を通じて、企業の競争力を強化することです。具体的には以下のとおりです。
倉庫管理、在庫管理、輸送計画の最適化などを通じて、物流プロセス全体の効率化を実現します。例えば、倉庫内作業で音声ピッキングシステムを導入することにより、ピッキング効率の向上が期待できます。
また、近年の人手不足や小口多頻度配送の増加に対応するため、ロボットやIoTデバイスとの連携も進んでいます。
倉庫管理システム(WMS)や輸配送管理システム(TMS)などを活用し、在庫管理や輸送の状況をリアルタイムで可視化します。これにより、商品がどこにあり、いつ配送されるのかをすぐに把握できるようになるでしょう。
各物流プロセスにおけるコストを可視化し、無駄を削減することで総合的なコスト管理・削減を実現します。具体的にはバーコードやRFIDタグのスキャンなどで自動化することにより、入荷検品時の伝票処理負荷を軽減します。伝票処理と在庫管理の精度を向上させることで、在庫差異を削減できます。
他にも、需要予測システムによる過剰在庫の保管コストの削減、倉庫管理や輸送計画の最適化による輸送コストや保管コストの削減など、単に物流コストを削減するだけでなく、サプライチェーンの最適化を通じて企業全体のコスト削減に貢献します。
顧客の要求に応じた物流サービスの提供は、顧客満足度を高め、企業の信頼性とブランド価値を向上させます。具体的には配送のトラッキングや短納期配送の実現が有効です。
ロジスティクスソリューションは環境への配慮にも重要な役割を担います。配送ルート最適化による CO2 排出量の削減や、ペーパーレス化による環境負荷低減も見込めます。
※参考:国土交通省,物流・配送会社のための物流DX導入事例集,p13
主要なロジスティクスソリューションを紹介します。
ロジスティクスの活動 | 支援するソリューション |
調達 | ・需要予測システム ・サプライヤー管理システム(SRM) |
生産 | ・生産管理システム(MES) |
販売 | ・オーダーマネジメントシステム(OMS) ・ECプラットフォーム |
物流 (輸送、保管、荷役、梱包、流通加工、情報処理) | ・輸配送管理システム(TMS) ・倉庫管理システム(WMS) ・倉庫運用管理システム(WES) ・倉庫制御システム(WCS) ・フルフィルメントソリューション ・デジタルツインソリューション |
過去の販売データや外部要因(天候、イベントなど)を分析し、将来の販売需要を予測するシステムです。機械学習やAIを活用した高度な予測モデルを用いることで、予測精度の向上を図ります。
精度の高い予測により、過剰在庫や欠品のリスクを低減します。また、不要な在庫の積み増しや無駄な生産を防ぐことでコスト削減にもつながります。
サプライヤー(供給者)との関係を効率的に管理するためのシステムです。調達プロセスの改善、リスク管理を目的とし、企業とサプライヤーの連携を最適化します。
サプライヤーとのやり取りや契約状況を一元管理することで、調達プロセスを透明化します。サプライヤーに関する詳細なデータ(品質、納期、持続可能性など)を基に、リスクの早期発見と対策が可能になります。
生産プロセス全体をリアルタイムで監視・管理し、作業効率を向上させるためのシステムです。原材料の受け入れから最終製品の出荷までのプロセスを一貫して管理することで、生産性の向上、品質の維持、不良品の削減などを実現し、製造効率を最大化します。
作業の進捗をリアルタイムで把握できるため、問題が発生した際には即座に対応可能です。ダウンタイムや不良品の発生を最小限に抑えられるでしょう。
注文を管理するシステムです。顧客からの注文を受け、出荷指示を出すまでのプロセスを最適化します。
注文ステータスや配送状況を顧客に提供することで、注文状況を透明化します。これにより顧客からの注文に対して、自動的に在庫を確認し、出荷指示を行うなど注文処理の自動化・効率化につながります。
オンライン販売を通じて顧客に商品を提供するための基盤となるシステムサービスです。注文情報を物流倉庫や輸配送のシステムと連携させ、スピーディで正確な出荷を実現します。
テンプレートや既存の機能が利用可能なため、専門的な知識がなくとも使用できます。セキュリティやシステムの保守運用は提供元が行うため、作業負担も軽減されるでしょう。
輸送計画の最適化、運行管理、配送状況の追跡、コストの管理などを行うサービスです。
配車計画の最適化により輸送コストを削減したり、リアルタイムな配送状況の可視化により配送のリードタイムを短縮したりとさまざまなメリットがあります。
在庫管理、ピッキング管理、入荷・出荷管理、ロケーション管理などの倉庫内業務を効率化するシステムです。
入出荷業務や在庫管理、棚卸しなどの可視化・自動化によって作業効率を向上させ、人為的ミスの削減、リードタイム短縮による顧客満足度の向上にも貢献します。
倉庫内のオペレーションをリアルタイムで管理し、全体の作業フローを最適化するシステムです。
各作業を最適な順序で自動的に割り振り、ボトルネックを減少させ、作業のスムーズな進行を支援します。また、倉庫内の作業進捗や機器の稼働状況をリアルタイムで把握でき、問題に即座に対処できる点もメリットと言えるでしょう。
倉庫内で稼働する自動機器(コンベア、ロボット、スタッカークレーンなど)を制御し、各機器の動作を最適化するシステムです。
自動化設備の動きを最適化することで、作業の効率化とエラー削減を実現します。倉庫内での作業がリアルタイムに制御されるため、機器の稼働状態の確認や異常時の即時対応が可能です。
在庫管理、ピッキング、梱包、発送、返品処理までの一連のプロセスを代行するサービスやシステムです。
専門業者に任せることで、EC事業者は販売活動に集中できる点がメリットです。その結果、自社で倉庫や物流システムを整備する必要がなくなり、設備投資や人件費を削減できます。
現実の物流拠点を仮想空間に構築し、倉庫業務全般のシミュレーションを行うサービスです。新しい倉庫や物流センターの設計・運営を行う際や、既存の運営の改善を目指す場合に活用できます。
事前のシミュレーションにより、リスクの低減や業務の最適化が可能です。また、設備の故障予兆検知を行えば、業務効率化にもつながります。
ロジスティクスソリューションは、物流業務の効率化や顧客サービスの向上、コスト削減など、多くのメリットをもたらします。
物流業界は今後も変化し続けると予想されます。例えば2030年には、物流業界の人手不足は78万人に達すると言われています。このような課題に対応するためにも、ロジスティクスソリューションの活用は不可欠となるでしょう。自社の競争力を高め、持続可能な成長を実現するために、今こそロジスティクスソリューションの導入を真剣に検討するべきではないでしょうか。