物流業界におけるトラック待機時間の長さや混雑などの課題を解消し、業務効率を劇的に改善するのがバース予約システムです。このシステムを活用することで、ドライバーや運送会社がオンラインで予約を行い、物流施設の管理や調整をリアルタイムで行うことが可能になります。
また、国土交通省もバース予約システムの普及促進に取り組んでおり、使用率の向上を推進しています。(※)
本記事では、バース予約システムの概要や機能、導入による具体的なメリット、導入時の注意点について詳しく解説します。
※出典:国土交通省近畿運輸局,トラック予約受付システムの使用率向上による長時間労働の改善に向けて,p2
バース予約システムとは、物流現場でのトラックバースの混雑を緩和し、効率的な利用を可能にするシステムです。
ここでは、システムの概要や物流業界の課題について解説します。
バース予約システムは、物流センターや倉庫におけるトラックの到着時間、バース利用などを効率的に管理するためのシステムです。
ドライバーや運送会社が事前にWebまたはアプリを通じて到着予定時刻を予約し、物流施設側がその情報をもとにバースを割り当てます。これにより、トラックの到着時間が集中することを防ぎ、待機時間や混雑を最小限に抑えることが可能です。例えばバース利用が午前中に集中している場合、午後に予約を振り分けることで、業務の均等化が実現します。
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物流業界には多くの課題が長年にわたり存在しており、特にドライバーの負担が大きく、労働環境の改善が求められています。
物流施設では、荷物の積卸しにかかる時間が長引く「荷待ち時間」が問題となっています。
国土交通省の調査によると、1運行当たりの平均荷待ち時間は「1時間34分」という結果でした。(※)このような長時間の待機は、トラックドライバーのスケジュールを圧迫し、効率的な輸送を妨げる原因となっています。
※出典:国土交通省,トラック輸送状況の実態調査結果(概要版),p15
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ドライバーの拘束時間も大きな課題です。拘束時間には、運転時間だけでなく、荷待ちや休憩時間も含まれます。
長時間の拘束はドライバーの健康に悪影響を及ぼすだけでなく、労働基準法の遵守にも影響を与えます。厚生労働省では、1日の拘束時間を原則13時間以内とする改善基準告示を公布しています。(※)
※出典:厚生労働省,自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト トラック運転者の改善基準告示
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運送業界では長時間労働が慢性化しており、ドライバーの健康や安全性に深刻な影響を及ぼしています。長時間労働は、過労死や交通事故のリスクを高めるだけでなく、労働者の離職率の上昇にもつながるため、業界全体での対策が急務となっています。
バース予約システムには、物流業務を円滑に進めるための多彩な機能が搭載されています。
ここでは、主要な4つの機能について説明します。
予約受付と管理は、バース予約システムの中核となる機能です。オンラインでの予約受付から進捗状況の確認まで、効率的な管理を実現します。
項目 | 説明 |
オンライン予約の仕組み | 運送会社やドライバーがスマートフォンやパソコンを使って簡単に予約が可能。 |
予約状況のリアルタイム確認 | 予約状況をリアルタイムで確認できる機能は、物流センター側と運送会社側双方に利便性がある。 |
バースの割り当てと調整機能は、予約済みトラックをスムーズにバースに配置するための重要な役割を果たします。
項目 | 説明 |
自動割り当て機能 | システムは予約情報をもとに空いているバースを自動で割り当てる。 作業スピードが向上し、人的ミスが減少する。 |
手動調整オプション | 緊急時や特殊な状況に備え、管理者が手動で割り当てを調整できる。 突発的な遅延やトラブルにも柔軟に対応可能。 |
システムとドライバーの連携をスムーズにすることで、バース利用の効率を最大化します。通知機能や位置情報共有が業務全体の流れを最適化します。
項目 | 説明 |
呼び出し通知機能 | ドライバーが順番待ちの際、システムからスマートフォンなどに呼び出し通知を送信する。 ドライバーは自分の番が来るまでリラックスして待機が可能。 |
位置情報の共有 | トラックの現在地や到着予定時刻をリアルタイムで共有できる機能。 倉庫側はこの情報をもとに準備作業を効率化し、受け入れ体制を整えることができる。 |
バース予約システムには、蓄積されたデータを分析し、業務の効率化や改善につなげる機能も含まれています。
項目 | 説明 |
作業実績の可視化 | 待機時間やバース利用率といった作業実績を自動で記録・集計し、視覚的に表示できる。 現場の問題点を直感的に把握することが可能となる。 |
業務改善のためデータ活用 | 蓄積されたデータは長期的な業務改善に活用可能。 例えば頻繁に発生する遅延の原因を特定し、具体的な対策を立てる指針とする。 |
バース予約システムを導入することで、物流業務全体の効率化やコスト削減、働きやすい環境の整備を実現可能です。ここでは5つの主要なメリットを詳しく解説します。
ドライバーの到着時間が事前に調整されるため、バースでの無駄な待機時間を大幅に短縮できます。これにより運行スケジュールがより正確になり、効率的な配送が可能です。
例えばドライバーが到着した時点でスムーズにバースへ誘導される仕組みを導入すると、長時間待機によるストレスを軽減し、燃料費の削減も実現できます。
バース利用を効率化できれば物流施設全体の稼働率が向上します。バースの空き状況をリアルタイムで把握できるため、必要に応じて適切な割り当てが可能です。
例えばシステムが繁忙時間帯の混雑を事前に回避するスケジュールを自動生成することで、施設の効率的な運用が実現できるでしょう。
トラックが集中して待機することによる混雑を防ぐことが可能です。周辺道路や待機エリアでの渋滞が減少すると、近隣住民や他の交通機関への影響も軽減されます。
順番待ちを管理することで、トラックの待機場所を効率的に運用し、物流施設周辺の環境改善を図れます。
システムにより収集されたデータを分析することで、物流業務の課題を明確にし、改善に役立てることができます。
例えば特定の時間帯における遅延や混雑の原因を把握し、次回以降の業務改善に活用可能です。データの可視化により、管理者は現場の状況を迅速かつ正確に把握できます。
バース予約システムを導入することで、物流センター全体の生産性も向上します。
トラックの到着時間を調整し、作業員の準備時間を確保できれば、無駄な待機や混乱を防ぐことが可能です。その結果、入出荷作業がスムーズに進行し、物流業務全体の効率化を実現できるでしょう。
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バース予約システムの導入は多くのメリットをもたらします。しかしその一方で、いくつかの注意点もあるため、それらを事前に把握し対策を講じておく必要があります。
システム導入の効果を最大化するには、従業員やドライバーへの適切な教育と周知が欠かせません。新しいシステムに慣れるまでの間、現場で混乱が生じる可能性があるため、事前の準備が重要です。
例えばドライバーがスマートフォンやタブレットを使い慣れていない場合、簡潔な操作マニュアルやトレーニングセッションを提供することでスムーズな導入が可能となるでしょう。
システム導入の初期費用は高額になる場合があり、企業にとっては大きな投資となります。またハードウェアやソフトウェアの更新費用、運用維持コストも発生するため、事前に理解しておくことが必要です。
例えば小規模な倉庫でもシステムの設置や設定に費用がかかります。現場の運用に合わせたカスタマイズが必要になった場合は、追加で費用が発生することもあるでしょう。
また、従業員への教育費やシステムを運用するための管理リソースも必要です。
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本記事では、バース予約システムの概要や機能、導入による具体的なメリット、導入時の注意すべき点について解説しました。
バース予約システムは、物流現場でのトラック待機時間や混雑を解消し、効率的なオペレーションを可能にするシステムです。待機時間の短縮、バース利用の効率化、混雑緩和、生産性向上が期待できます。
バース予約システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。